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5話 ミドリムシの自己紹介




 アラン達を先頭に緑とキラービーはついていく。


「着いたぞ、とりあえず受付にいってギルドマスターに話を通す。緑、ついてきてくれ。エド、お前たちは依頼の達成報告をしたあと自由にしておいてくれ」


「了解。リーダー、報告が終わったら先に宿に帰ってるわ」


 エド達は緑とアランと別れて依頼達成の報告にいく。


「緑、俺たちはギルドマスターに会いに行く」


「わかりました」


 緑たちがギルドの建物に入ると中にいた冒険者たちが緑たちを見る。


「アランじゃないか!任務からかえってきたのか!」


 身長190㎝程の長身でいかにも盾役を担っている体格の大男がアランに話しかける。


「ああ、そうだ久しぶりだなシャーク」


 シャークと呼ばれた男はアランの後ろにいた緑を見ていたずら小僧のような顔になりアランに問いかける。


「お、何だその緑色のやつは?背の高いゴブリンか?」


 シャークがニヤニヤしながらいう。その直後ギルドのホール内に虫の羽音が響きわたる。キラービーはシャークの首を片手で掴み持ち上げながら空中に浮かんでいる。


「緑様に向かってゴブリンですって?」


 キラービーのこめかみには青筋がういている。周りの冒険者が状況に気が付き一斉に戦闘態勢にはいるがすかさずキラービーが呟く。


「子供たち周りを黙らせなさい」


 キラービーの周りに光の塊が5つほど現れる。その光が消えると30㎝ほどのキラービーが現れる。その光景を目にした周りの冒険者は動けない。動けばキラービーと戦闘をする事になり狭いギルド内がパニックになるからだ。


 静まり帰ったギルドのホールに虫の羽音だけが響く。


「まってその人を下ろして!」


 そんな静寂の中緑が叫ぶ。


「緑様・・・・ わかりました」


 キラービーはしぶしぶシャークから手を離す。


「大丈夫かシャーク」


 そのまま地面に落とされたシャークは咳き込みながらにアランが差し出した手につかまり立ち上がる。


「ああ、すまん」


 そのまま緑に向かって笑いながら。


「すまなかった、兄ちゃんちょっとした冗談のつもりだったんだ。あんなにお姉ちゃんが怒るとは思わなかったんだ」


「うちの方こそすみません、僕も彼女があそこまで怒るとは思わなかったのでどうか彼女を許してはもらえませんか?」


 シャークと緑の会話きいたキラービーがトボトボと緑のもとに戻ってくる。


「申し訳ありません、緑様」


「君が怒ってくれてすごく嬉しいよ、ありがとう。でもあの人も冗談で言ったみたいだしこれからは、聞き流そうね」


「はい、努力します・・・」


「よし!じゃあ用事をすまそうアランさんお願いします」


「ああ、ついでだシャークもきてくれ」


「俺か?」


 シャークは首をかしげながらアランについていく。


「すまないがギルドマスターを呼んでもらえるか」


 受付までいくとアランはギルドマスターを呼ぶように受付嬢にいう。それを聞いた受付嬢がその場を離れギルドマスターを呼びに行くのを見て、緑はまさかすぐに話が通るとは思わずアランのギルド内での信頼の厚さに驚く。


「アランさん直ぐにギルドマスターに会えるんですか?」


「すぐに話すべきだと思うからな」


 奥から1人のほっそりとしたエルフと思われる男が現れる。


「アランか奥の部屋でいいか?」


「お願いします」


 アラン、緑、キラービー、シャークはギルドマスターのあとをついていく。廊下を全員で進んでいると一つの扉の前でギルドマスターが足を止める。


「この部屋だ」


 ギルドマスターが扉を開け中に入る。


 円状に作られた机の前に並べられている椅子にそれぞれ座るとギルドマスターがアランに話す様に促す。


 アランは緑との出会いから街へ到着し。キラービーの襲撃から人化の事まで話す。


「状況は分かった。しかし緑といったか君は何者だ?そして、その薄い緑色の体はなんだ?容姿自体はエルフに近いものを感じるが・・・・」


 緑は少し考え以前の世界で死んで女神様にあいアラン達に出会うまでの全てを話すことにした。


「なんと違う世界から来たと。もしや勇者なのか?」


「いえ、女神様からは使命は受けておりません。ただこの世界で自由に生きるようにとの事です」


「そうか・・・・。そしてそちらに居るお嬢さんが話に聞いた元キラービーか」


「はい、そうです」


「君の名前はあるのか?」


「いいえ、ありません。私としては緑様につけて頂こうと思っております」


「なら緑、名前をつけてあげなさい。その後2人ともギルドで登録してから宿をさがしなさい。今日は色々ありすぎて疲れただろう。また明日昼食を食べた後にでも来てくれ」


「わかりましたギルドマスター、明日昼食を食べた後に来させてもらいます」


「後、すいませんがキラービーに名前をここでつけてもよいでしょうか?」


「ここでよければ良いぞ」


「キラービー実はここに来るまでに名前は考えていたんだけどこんなタイミングでごめんね。君の名はヒカリにしたいんだけど良いかな?」


「ありがとうございます今日より私はヒカリと名乗ります」


「よし、2人は今から冒険者だそのまま受付で登録を済ますといい」


「わかりました。それでは失礼します」


 緑とヒカリは、2人で受付まで戻る。ふとアランとシャークがそのまま残ったままだと思ったがもともと知り合いとギルドマスターだ他に話があるんだろうと思い受付にむかう。


 残ったギルドマスターとアランとシャークは緑とヒカリが受付に行くのを見送ったあと話し始める。


「ふむ、大体の状況は分かった。でアランは彼をどう思う?」


「マスター私は彼の性質は善だと思います」


「シャークはどう思った。彼らと揉めたんだろう?」


「まぁ、原因は俺が彼に言った冗談が原因でしたし実際に暴れたのはヒカリだけでした。それも彼がすぐに止めました。ただヒカリは彼を崇拝しすぎている。さらにはモンスターを人化させ自分の仲間に引き入れる能力はやっかいですね」


「やっかいか・・・・。危険とは言わないんだな」


「我々が彼の正義と方向性が同じだと彼は非常に強力な仲間となってくれるでしょう。しかし・・・・」


「彼の正義と方向性を違えばか・・・・」


「ドラゴンにそのへんの紐で首輪をしているようだな・・・・」


「確かにそうですね」


 ギルドマスター、アラン、シャークは黙り込む。しばらく3人は黙り込みそれぞれ考え込んだあと席をたち顔を見合わせると頷き部屋を出ていく。


 受付に行った緑とヒカリは無事ギルドに登録することができた。それに合わせるようにシャークとアランが出てきた。


「お~い緑、今日の宿はどうするんだ?」


 呼ばれた緑は振り向くとアランとシャークがいる。


「俺たちは同じ宿をとってて、お勧めだが、緑たちはどうするんだ?」


「確かにお勧めの宿があるのはいいんだけど僕、全然お金を持ってないんです」


「なら緑がヒカリに着せている服と同じ素材で俺も服を作ってくれ」


「いいですけど僕の髪でつくっているんですよ?」


「緑の髪を編み上げてキラービーを捕まえれる強靭な虫取り網を作ったんだろう? それって下手なチェインメイルより丈夫じゃないか?」


「おいおい、何だそのキラービーを捕まえられる虫取り網って。そんな素材で作られる服なんて冒険者は全員欲しがるぞ」


「それほどの装備。うちのチーム6人全員分で30万イェンはくだらないぞ。それだけありゃ1か月は2人で飯付きの宿に泊まれるぞ」


「おい、それなら俺も払うからの俺のチームの分も頼む! 同じ人数だからいいだろう?」


 緑は2か月は宿が確保できると思い喜んで返事をする。


「お2人がそれでいいなら!」


 緑とヒカリはアランとシャークギルドをでるとそのまま2人についていく。


「ここがいつも俺たちが使う宿屋だ」


「ここは安いし飯もうめぇぞ」


 2人に促され緑とヒカリは宿屋に入る。


「アラン戻ったんだね! よく無事でかえってきた!シャークもおかえり」


 宿に入ると恰幅のいい女将さんが2人に話しかける。ふと2人の後ろにいる緑とヒカリを見つける。


「なんだい新しいメンバーかい?かわいらしいお嬢さんと背の高いゴブリン?なはずはないね。とりあえず入口で突っ立ってないで早くおはいり!」


「とりあえず飯にしようか。女将!4人分の飯と酒を頼む!」


「あいよ!奥にいきな!」


 4人は奥に向かって進む。食堂に出るとドナやセリナ達アランのチームメンバーがいた。


「リーダーやっと帰ってきた!早く一緒に飲もうや~」


「ほんま!ほんま!緑もきたんや!一緒にのむよ~」


 アランのチームのメンバーは結構酔いが回っているた。そんな状況に戸惑っているとアランとシャークが同じように席につく。


「緑、ヒカリ俺たちも飲むぞ。さっさと座るんだ。2人ともこれは覚えておくんだ冒険者が一仕事終わった後の休息は仕事の内だ」


 そういわれて緑とヒカリも後を追って席に着く。


「はい!お待ち!しっかり飲んで食いね!」


 女将さんが人数分のお酒と食事をもってくる。


「それでは任務達成と新たな出会いに乾杯!」


「「「乾杯」」」


 この後、緑とヒカリは冒険者の仕事の締めを体験する。


 そして、生まれて初めての酒に大いに飲まれるのであった。

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