49話 ミドリムシはすぐ泣く
「こんにちわ~ シスターか神父さんはいますか?」
緑とピエールは連れだって歩きジェスターの孤児院に着くと周りで遊んでいた孤児たちにシスターを呼んでもらい事の説明をする。
「奥に使ってない部屋があるのでそこを綺麗にするのでそこでしたら、どうぞ自由にお使いください」
話を聞きシスターは特に反対もせず1室をダンジョンの入り口の扉用に空ける。
その作業が終わると緑はシスターに寄付をし、孤児院を緑の子供達に守らせる話を伝える。
シスターは緑の子供達に孤児院を守ってもらう事に感謝し、寄付の額を聞いた時は泣いて緑に感謝する。その姿を見た緑はもらい泣きをするのであった。
「こんなに寄付していただいてよろしいうのですか? ・・・・これで子供達に美味しものを食べさせてあげれます。グス・・・・。本当にありがとうございます。」
「・・・・グスグス、ええ子供達に美味しもの食べさせてあげてください。エグエグ、今後も定期的に寄付はさせていただきますし・・・・グスグス。ダンジョンで作物も育てています。そのうちダンジョンの中で学校も作りたいと思っています」
その後シスターや孤児院の子供達をダンジョンに招待し、緑の家族の蟲人達と子供達、流、人魚の子供達と挨拶をしていく。
初めシスターは蟲人達の子供がモンスターのため戦々恐々としていたが人魚の子供達が一緒になって遊んでいるのを見て安心する。
緑は孤児院の人ならいつでもダンジョンに入っても良いと伝え、この日はダンジョンで孤児院の人達を歓迎するのであった。
数日後、孤児院に住む者全員で寄付をしてもらったお金で滞っていた孤児院の修復をしていた。もちろん、その修復には緑達も参加し、外観はそのまま綺麗にするだけにしておき内側は緑達がダンジョンの資源や魔法を使いとても住みやすいものに魔改造していた。
孤児院の改造から数日後、緑は再びギルドに足を運びピエールに会いに行くのであった。
緑がピエールの部屋に案内されると難しい顔をしたピエールが書類を見ていたが気にせず挨拶をする。
「こんにちは、そんな難しい顔をしてどうしました?」
「それがな・・・・どこかの王様が孤児院にダンジョンの扉を置くと言っていたのに王都には置いていない事が発覚したんだ・・・・」
そう言ってピエールは緑を見る。すると緑は、はっとし申し訳なさそうにピエールに言う。
「あ~ すいません完全に忘れていました・・・・今からヒカリに飛んでもらいます」
そう言って緑はピエールの部屋を出ると緑はダンジョンに戻りヒカリに事情を説明し、急いで王都に飛んでもらうのであった。
数時間後、ダンジョンにヒカリが戻り緑に報告をする。
「緑様、王都に着きました」
「僕が忘れていたためヒカリに苦労を掛けてごめんなさい・・・・、王都まで飛んでくれてありがとう」
そう言って緑はヒカリの頭を撫でる。ヒカリは気持ちよさそうにしながら黙って緑に撫でられる。
しばらくヒカリを撫でていた緑は顔を真っ赤にしながら撫でるのを止める、ヒカリの顔を見ていたら照れくさくなってしまうのであった。
「次はこんな事はないようにすね」
そう言って緑はヒカリから離れる。そんな緑をヒカリは追いかけ抱き着く。
「また、頑張ったら撫でてくれますか?」
「・・・・うん」
緑には頷くことしかできなかった。その後緑はダンジョンからでて王都の孤児院に向かい事情を説明し、ダンジョンの入り口を設置し、寄付をするがいつも通り緑はもらい泣きする。
「うむ、孤児院にダンジョンの入り口を設置してくれたか。初めは設置せずに街を出たと聞いた時は驚いたがそれもすぐに戻って来るとはな・・・・まぁ、設置さえしてくれたらいいしな。あ、それと緑、お前のダンジョンは【緑の王国】にしたから宜しくな! 隣国の王様!」
そう言って王はニヤリと緑に笑いかける。
王都の孤児院にダンジョンの入り口を設置した後、王に設置の報告をする緑であったが、その際に王より緑は、緑のダンジョンを国と認め二つ名を【緑の王国】にしたと言われるのであった。
緑は、王に孤児達の面倒を押し付けられたことに気づかずにいた。
しかし、それも緑達が着実にお金を貯めていくための措置でもあった。緑達が時たまギルドにダンジョン産の農作物などを持っていき買い取りを願う品は世間一般に出回っている物より1段も2段も上でその販売価格も同様に上がる。
緑達は基本生活に必要な物をほとんどダンジョンで賄ってしまう。その為緑達が手に入れた金はほとんど使われることもなく緑の懐に収まる事になる。
そんな事が続くと国の流通貨幣が少なくなり経済が回らなくなるため、緑はできるだけ孤児院に寄付を行い子供達の教育機関を作るのにお金を使おうとおもっていた。
緑が王都の孤児院にダンジョンの入り口を固定した後そのままダンジョンを通ってジェスターの孤児院に出る。
緑はジェスターの孤児院の子供達やシスター達に挨拶をするとピエールの元に向かう。
緑は冒険者ギルドに行き受付嬢にギルドマスターと会いたいことを伝える。ギルドのホールで依頼を見て待っていると緑は声を掛けられピエールの元に案内さた。緑が部屋に入るとすぐにピエールが声をかける。
「さすが王様だな僅か半日で王都まで行って戻って来るんだからな」
「はい、王都まで行ってきましたよ、ついでにサークル王国の王様からダンジョンの件をききました」
「それはご苦労様です。それで今日はどういった要件だ?」
それまで冗談を言っていたピエールが真剣な顔になり緑に尋ねる。緑も真剣な顔つきになる。
「帰ってきて早々何ですが明日にでもゴランの街に向かいます」
「そうか、直ぐに向かうか・・・・」
「といってもダンジョンの入り口をジェースターの孤児院にも設置したので連絡が出来なくなることはないんですが」
「了解した。緑達としっかり連絡がとれるのであればこちらは何も言うまい、久ぶりにゴードンにあって来い」
「はい! ではいってきますね」
ピエールの部屋を後にすると緑はゴランに行くための移動手段を考え始める。緑はダンジョンの中は広大だけどいつもその中なのはさすがに子供達も息がつまるかと考える。
「よし! 決めた! ジェスターの街からゴランの街まで歩いてその間は代わる代わる子供達を外に出そう! たまには違う環境を感じたいだろうしね!」
【緑の王国】のスタンピードが決定した瞬間であった。
翌日緑達は、朝早くにジェスターを出る。ジェスタの城壁が見えなくなると緑は今まで開けた扉の中でも一番大きな扉を開ける。
「じゃあ、3交代で出てこようか」
緑が層いった瞬間、巨大門と言ってもよい扉が開きその中から大量の子供達がでてくるのであった。




