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44話 ミドリムシは怒る


 緑達がジェスターに向かうために大きなホレストアントに馬車を引かせ進んでいた時、前に馬車の隊列が見えてくる。


 緑達の馬車が隊列に近づくと馬車を止めようとする者が数名道を塞いでいた。


「おい! お前ら何もんだ? そのでけぇホレストアントはメンバーの誰かの従魔か? 」


 道を塞いでいた者の1人が緑達に叫ぶ。その話を聞いて兜が馬車から降りて話かける。


「こいつは従魔じゃねぇ、俺たちの家族だ」


「「は? 」」「こいつモンスターを家族って言ってやがるぜ」「ぎゃはははは」「ばかじゃねぇの」


 道を塞いでいた者達は、思い思いに緑達を小馬鹿にする。その姿をみて兜はやれやれと思いながら尋ねる。


「そんで馬車を止めた理由はなんだ?」


「俺達はA級チームの【星屑(スターダスト)】だ、俺らの雇い主様がそのアリを買い取ってやると言っている、雇い主様の馬車まで来てもらおうか」


 兜が緑の方を見ると黙って頷いたために緑達は星屑の雇い主の馬車まですすむのであった。


「ようこそお越しくださいました、私はこのたびジェスターの街で商売を始めようと思っている商人のイズルと申します」


「初めまして、水野 緑と申します」「俺は兜です」


 商人の馬車には緑達の代表として緑と兜がきていた。


「単刀直入に申しますとあなた達の馬車を引いている大きなホレストアントを譲って欲しいのです。お題は1000万イェンをお支払いします。いかがでしょうか? 」


 緑は常はニコニコしながら話を聞いているが兜はヤレヤレといった様子で話をきいていた。


 イズルが話終わると兜が一喝しようと思った時、緑が口を開く。


「失礼ですがイズルさんご家族はいらっしゃいますか? 」


「家族ですか? ここの馬車にはおりませんが他の馬車に乗っている妻と子供が2人おりますがそれが何か? 」


「では、ここに1000万イェンありますので子供さんの1人を売ってもらえませんんか? 」


「は? あなたは、何を言っているのですか? 子供売る? それはいくら商人の私に対してでも失礼ですよ? 」


 緑の質問に返すイズルであったがあからさまに不機嫌になるが緑が続ける。


「ここに居る兜はもとモンスターのアサルトビートルです」


「へ? 」


「今、僕の馬車に乗っている者は全員が元モンスターです。先ほど僕らの馬車を引いてくれていた大きなホレストアントも僕のチームのメンバーの・・・・いえ、僕の家族が生み出した子供です。あなたは、僕の家族の子供を売れとおっしゃったんです・・・・もちろんお断りしますが・・・・」


「うちの子供達をモンスター風情と一緒にするな! おい! 星屑こいつらを痛めつけてやりなさい!」


 緑とイズルのやり取りを聞いていた兜は焦っていた。自分がただのモンスターから蟲人になってから今まで緑が怒ったところを見た事なかった。


 話初めから緑は終始ニコニコと笑顔を見せていたが兜には緑の内面の状況が変わっていくのが如実に感じ取れた。


 緑の機嫌が不機嫌から怒りになりその怒りが上がっていくのを感じていた兜は嫌な汗をかいていた。


 それは、嫌な気分から恐怖に代わる。普段からの模擬戦や自身の鍛錬、依頼での龍種の討伐などをこなし確実に実力をつけていた兜は他のメンバーよりも実力をつけ戦闘能力に関しては緑に迫っていると考えていた。


 しかし、このような心ない者の発現で兜は緑との実力の差を感じる事になったが恐怖を覚えるも家族の事で内面怒り狂っている緑を今まで以上に崇拝するのであった。


 緑の内面を読み取っていた兜と違い星屑の者達は目の前の存在が自分達とは比較にならない戦闘力を持っていることに気づかない。それを見かねた兜が緑に言う。


「大将ここは俺が・・・・」「いや、ここは誰か子供達に出てもらおうと思っているんだ」


 そんなやり取りをしている間に星屑のメンバーが集まって来る。


「おいおいおい、お前たち馬鹿じゃねぇの? 俺達の依頼主の提案をことわるなんてなぁ! 」


「お前達とくにそこの緑色のゴブリンのような奴は念入りにな! 」


 その言葉に兜の感情も怒りに大きく傾く。


「大将をゴブリンだと・・・・」


 怒りで頭に血が上る兜だが緑が再度兜にいう。


「兜、怒りはもっともだけど僕に任せてくれるかな? 」


 緑の言葉に兜は一気に冷静になる。先ほどまで緑に恐怖していた兜は緑をゴブリン扱いする発言で怒りで我を忘れそうになるが緑自身の言葉で緑の怒りを思い出しおとなしくなる。


「広い場所に行こうか・・・・」


「そんな時間はねぇよ! 」


 そう言って星屑の者が緑に切りかかるが持っていた剣を振り下ろすが振り下ろした剣が途中でとまる。冒険者が慌てていると緑と兜が離れていくと動かなかった腕に自由が戻る。


 それは、緑が一本の髪で冒険者の腕を止めていたためであったがその場に居た者でそれに気づいていたのは兜だけであった。


 緑は近くの広場に向かい兜は自分達の馬車に向かい家族に経緯を全員に話す。


 それを聞いた緑の家族の他の者は急いで緑の元に向かおうとするが兜がそれを止める。


「大将が自分がやると言って俺を止めたんだ・・・・」


 その言葉を聞いたメンバー全員がその動きを止める。その中ヒカリが兜に聞き返す。


「緑様が兜を止めて子供達にでてもらうとおっしゃったんですか? 」


「そうだ、大将は俺達を止めるときはやりすぎた時にストップをかけるが今回は子供達にさせるように俺を止められたんだ」


「そんな事はいままでありませんでしたな・・・・」


 そうファントムが呟く。


「緑さんが本気で怒ってらっしゃるんですね~ 」


「兜さんは代わりに対処するって言ったんですよね? 」


 レイとクウも心配そうにつぶやく。


「ああ、俺が代わりにやるって言ったんだがそれは止められたよ、正直なところ恥かしい話、恐怖で身がすくんだよ・・・・」


「兜さんが恐怖するくらいですか・・・・」


 クウが呟いたとき外で声があがる。


「こいつをやっちまえばいいんだな!? 」「さっさと囲んじまうぞ! 」


 それを聞いて兜達は緑の様子を見るために声のする方に向かうのであった。





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