32話 ミドリムシ人魚の街を目指す
「まず最初は温泉施設かな?」
緑は以前の世界の頃から風呂が好きであった。しかし、こちらの世界に来てからは入りたいとは思っていたが今まで風呂に入っていなかった。
今まで宿に泊まっていたころは、宿に風呂は無かったうえ、それ以上にやりたい事や忙しく過ごしていたために後回しになっていた。
今回王都に来て王よりIランクの正式発表に二つ名を受けるなどし緊急依頼もなくこの世界に来て今後縛られる事が何も状態になり、魔法の練習もかねて風呂を作ることを決意する。
まず、緑はダンジョンコアに魔力を大量に注ぎ込む、すると轟音と地響きが起こりそれに気づいた蟲人達と子供達が集まってくる。
緑は集まってきた者達に心配することはないと伝え今から起こると予想されることを話す。丁度話終わったところで地面より温泉が噴き出すのであった。
その後、緑を筆頭にクウと兜の土の魔法が得意な3人で温泉設備を作っていくのであった。以前の世界で日本生まれの緑は温泉旅館などには行くことは無かったがテレビなどで見る事はあったのでそのイメージより露天風呂を作り出す。
「よし、これで完成だ。早速入ろうか」
そういって緑は蟲人全員に湯に入る時のルールなどを説明し、兜と胡蝶と一緒に男湯に入るのであった。緑と兜は体を洗い終わらせ湯につかる。緑は湯につかると声を上げる。
「う~気持ちいい。兜も胡蝶も初めての温泉はどう?」
「大将これは、思った以上にいいですね! 」
「みどりしゃま、きもちいいでしゅ~」
3人が話していると扉が開く音がし、緑が振り返るとそこには、ヒカリ、クウ、レイが入ってくるのであった。その姿を見た緑は慌てて彼女達に背を向け尋ねる。
「ど、どうしたの3人ともこっちは男湯だよ!」
「私達は特に気にしないですし緑様と一緒に入ってはだめですか?」
「私も一緒がいいです♪ 」
「私もです~」
緑が男女別に入るように話すがヒカリ達は、今ダンジョンの中には緑達家族だけしかいないし他の者達が居る時は女湯の方に入ると緑に答える。
さらに、緑がヒカリ達を説得しようとするが頑なに全員で入ると言い緑が折れる形になり、緑はのぼせてないにも関わらず顔を真っ赤にしながら湯につかる。
そんな中、1人流が自分も一緒に入ろうとするが、男湯から緑達全員の話声が聞こえたために自分は後にしておこうと引き返す。
その後、緑達が温泉から家に戻ると流が温泉はどうだったと尋ねるまで流の存在を忘れていたことに気づき全員で謝るのだった。
翌日、朝の訓練を終えた緑達と流は一度ダンジョンを出てギルドの部屋から流の家に向かう。
「じゃあ今から流さんの家をダンジョンにいれますね」
「おお、助かる。やはり家には愛着があるからな」
「でもいいんですか? 家ならダンジョンで僕たちが新しく作りますが? 」
「こんな爺に大きな家などいらんよ、今住んでる家で十分だ」
そう返事をする流の家に着くと緑はダンジョンの扉をあける。ダンジョンの扉を開けた緑はクウと兜と3人で土の魔法を使いそのまま家をダンジョンに運びいれるのであった。
その後、全員で王都のギルドに行き流の引っ越しを伝える。緑達がギルドへの報告が終わると丁度ホールにいたシャーク達に声を掛けられる。
「丁度よかった。緑、人魚の件はどうするんだ?」
それを聞かれると緑は悩み始める。緑はIランクの正式発表と授与の後に二つ名の授与までありさらに模擬戦をしていたために学校の事を王に伝える事を忘れていた。
そこで緑は人魚の人達はどこで会えるのかシャークに尋ねると王都より少し西に行くと川がありその川をさらに南に行くと人魚の街があると言う。
緑は先日寄付をしておいたので人魚の件の後に直ぐに戻って王に謁見をお願いしようと考える。
「シャークさん 人魚の街に案内お願いします」
「わかった! じゃあ今日からいくか? 明日からにするか?」
「今日からでお願いします!」
緑はアイテムボックスを持っているうえにダンジョンに入れるため、直ぐに行くとシャークに答えるのであった。
緑はヒカリに飛んでもらおうかとも思ったがヒカリだけ移動させるのは悪いと思うのと、しっかり地理を把握しておかなければとも思うため馬車で進もうと考える。
緑とシャーク達は馬車を借り王都を西側から出て街を目指すと話し合う。
緑達が王都の西側の出口を出ようとした時、確認されたギルド証から兵士がIランク冒険者!?と驚きの声を上げてしまう。それを聞いた周りの者達は緑達の馬車の後ろには安全を確保できると考えいくつかの馬車がついてくる。
緑とシャークは後ろを見ながらどうしたものかと考える。無理に引き離そうと急いだりすると良からぬ噂を立てられやしないかと思い、どうやったら自然と離れる事ができるか考える。
そんな中クウが緑に声をかける。
「緑さん♪ 私の子で大きい子に馬車をひかせてはどうですか?」
緑達は一度道から外れ馬車を止める。すると後ろについてきた馬車も休憩に入るのかと止まり始める。緑は後ろの馬車が自分達の近くに止まったことを確認すると大きめのダンジョンの扉を開く。
「ダンジョンオープン!」
緑はわざと周りの注目を集めるように大きな声でダンジョンを開き、それを見た周りの馬車に乗っていた者たちが驚きの声を上げる。
「突然扉が出現したぞ、何をするんだろう」
「中に入るのかしら?」
そんな話声が聞こえる中緑が馬をダンジョンの中に連れていき再び出てきたときに緑の後ろに体長2mほどのホレストアントが4匹ほど出てくるのであった。
「きゃあああああ」
「逃げろ! 逃げろ!」
その姿をみた者達は恐怖の声を上げるものもいれば急いで逃げようとするものなど様々な反応を見せる。そんな中、緑とシャーク達は馬を外した馬車にアリを2匹づつ繋げる。
「じゃあ君達お願いね」
チキチキチキチキ
緑がそう言うとアリ達が返事をし走り始める。そのスピードは恐ろしく速く後ろの馬車にのっていた者たちはただ緑達を見送るだけになってしまった。
「こりゃはえ~や! 緑、こいつらはやっぱりお前のそばを離れないか?」
「たぶん、離れないと思います!」
「そりゃ、残念だうちのチームに入ってくれれば良かったのにな!」
道中、大声でそんな話をしながら進んでいく緑とシャーク達であった。子供達のスピードが思った以上に早くしかも休憩を必要としなかったために一晩野宿をする予定であったが街の門が閉まる少し前に目的の街に着くのであった。
緑達は街の城壁まで子供達にひかせてしまい、その姿を見張りが発見し緑達が街に着くころには数十人の兵士達が待ち構えているのであった。
緑とシャークは顔を見合わせて、なんとしても穏便に街の中に入りたいと思うが兵士が自分達に向かって何者だと大声で尋ねてくることであきらめるのであった。
「お前たちはだ何者だ! なぜモンスターを馬車につないでいる!」
そんな中シャークが前にでて答える。
「驚かせてわりぃ! こいつ等は安全な奴らだ! 王都よりIランク冒険者の発表は届いていないか?」
シャークがそう呼びかけると兵士達がざわつき先ほど話した兵士がさらに聞き返す。
「発表は聞いているが貴方達がそうなのか?」
「俺が乗っていた馬車のチームは違うがもう一つの馬車の中のメンバーはその噂のIランクチームだ!」
そう言ってシャークが兵士達に近づき自分のギルド証を渡すのであった。それを見た兵士はA級チームのギルド証に驚きすぐさま警戒態勢を解くのであった。
そんなシャークをよそに緑はダンジョンの扉を開け子供達を帰らせ、馬を連れてくるのであった。
緑が近づくいて行くとそれまでよく見えていなかったのか兵士の1人が緑を見てゴブリンみたいだとつぶやいてしまう。
運が悪いことに馬を連れてくるために扉が開いたままになっていたためにダンジョン内の緑がゴブリンと呼ばれたのを聞いた子供達が怒り狂い大量に扉から出てくるのであった。




