3話 ミドリムシ街に着く
緑達は、城壁が見えてから何事もなく進み、街への入り口で入る手続きをしようした時、兵士の1人が叫ぶ。
「おい! そいつは背は高いがゴブリンじゃないのか!」
それを聞いたアランが叫び返す。
「こいつはゴブリンじゃない! ゴブリンなら連れてくる理由もないし、むしろ俺たちがゴブリンに襲撃された時にこいつは手伝いをしてくれたんだ。むしろ恩人だ!」
そんな時、2人の叫び声を聞いた責任者らしき男が現れた。
「おいおい、何を叫んでいるんだ? ってアランじゃないか!」
「あんたか、いや俺の恩人がゴブリンと間違われてな思わず叫んでしまったんだ。悪いな」
「なろほどな、そいつは問題はおこさないか?」
「ああ、大丈夫さ、今日会ったばかりだが問題を起こすような奴じゃないのは俺が保証する」
「なら、手続きさえすれば入ればいい」
「ああ、そうするよ。緑あんた何か身分を証明するものをもってるか?」
「僕、田舎から出てきたから身分証になるもの何もってないです。どうすればいいでしょうか?」
「なら、魔法道具で鑑定させてもらうから、問題がなければ中にはいりな」
「ただ入るための通行料は、持ってなければ、アランにでも借りるんだな」
緑が振り返りアランを見ると、アランは頷き返す。
「問題ない入るのにかかる金ぐらいなどはした金だ心配するな」
「助かります」
緑はアランに向かって感謝を伝える。2人がそんなやり取りをしていると、突然鐘の音が鳴り響く。
カーン!カーン!
「おいおい、あれって警報の音とちゃうんか?」
ドナが慌て始める。
「お前たち! 手続きは後回しだ! まずは街の中にはいれ!」
入るために手続きをしようとしていた緑達と兵士たちが急ぎ街の中に入ると、城門はそのまま固く閉ざされた。緑が状況をつかめずにいると、アランが説明をはじめる。
「あの鐘の音は、街にモンスターの集団などが向かってることがわかったら鳴らされる鐘で、鐘のならす回数などで街への脅威度がわかるようになっているんだ」
「今回の鐘の音だと、ゴブリンクラスの20匹程度のランクの低いモンスターが来ているようだ。俺たちも城壁に登って様子を見よう」
アラン達が城壁に登るといい緑もそれについていく。緑達が城壁にのぼると見張りの兵士達は弓を、ローブを着た者達は魔法を使うために杖を準備していた。そんな中アラン達も遠距離で攻撃できる準備をはじめる。
「さっきの戦いを見るに、緑も遠距離での攻撃方法を持ってるよな?」
「あ~できない事もないけど、実は自分でもちゃんとした射程がわからないんです」
緑の言葉を聞き、セリアが尋ねる。
「緑はそんなどこまで射程があるんか自分でわからんほど凄い魔法使いなん?」
「いや、緑は魔法使いでなく暗器つかいなんちゃうか?」
ドナとセリアがそれぞれ緑の職業や武器を予想しながら話しをするの聞き緑が答える。
「どちらも不正解かな……」
緑の言葉を聞き、2人とも当てがはずれるとは思っていなかったらしく首を傾げる。
「実はね……」
そう言いかけた時にアランが緑に待ったをかける。
「まて、緑の事だから俺たちを信用してくれているからとは思うが、安易に自分の手の内を誰が見聞きしているかわからないところで大ぴらに話すのは良くないぞ」
「そうなんですけど、いずれ分かる事ですし、今は非常時です。皆さんに伝えることで戦略に組み込んでいただけるかもしれないですし」
「ほな、緑の遠距離攻撃はなんなん?」
「僕の攻撃は遠距離攻撃というか髪を操ることができるんですよ」
「「髪?」」
アラン達が意味がわからないと困惑している中、緑はポケットから出したように見せて、アイテムボックスより実を取り出す。緑は取り出した実を数本の髪で包み込み、手のひらから持ち上げると、アラン達には実が手のひらより浮かんでいる様に見える。
「なるほど~ そんでゴブリンどもを縛って切り裂いたんやな」
「たしかにうちからは、輪切りになったように見えたから、風の魔法でもつこうたんかと思ったわ」
「しかし、髪の長さはそんなに長くないよな。ゴブリンを倒したときは結構距離があったように見えたが……」
「髪はある程度なら伸縮も可能なんですが、ただどこまでできるかは僕も調べたことがないので、一度実験もかねて攻撃してみようかと……」
そんな会話していると兵士の1人が叫ぶ。
「来たぞ!」
皆が城壁より下を見ると先ほど話していた数より少ない魔物達が見える。
「思ったより数が少ないな……」
こちらに迫る魔物達を見てアランがつぶやく。その間も、緑は【超光合成】のエネルギーを使い、髪を伸ばす。
「では、やってみます」
緑からみて魔物達は目算で60mほど先、数は聞いていた数より、少なく10匹ほどが走ってくる。緑は超光合成で作ったエネルギーを使い、さらに伸ばした髪を魔物達を狙って操作する。
魔物達は、何も知らずに街を目指して走ってくる。そんな中、緑は40mまで髪を伸ばすことに成功し、髪が自分の思う通りに動くか確認すると走ってきた各魔物に髪を絡める。魔物達は、自分達がすでに髪に絡めとられている事に気づかず、城門に向かって走り続ける。
緑は、自分の髪でしっかりと魔物をとらえると、アラン達に向かって叫ぶ。
「捕まえました!」
緑は、アラン達に捕まえたことを伝えると、髪を操作する実験をはじめる。緑は魔物を傷つけないように髪を絡め動けなくしたうえで、そのまま空中に持ち上げる。
兵士達には、突然モンスターが空中に浮きはじめた様にしか見えず、緑が魔物を捕まえていることを知らない兵士達は、慌てて叫びはじめる。
「どういう事だ! 魔物が空中に浮いているぞ!こんな事は初めてだ!」
「あの魔物は、空を飛んだりしなかったはずだ!」
緑が髪を絡め、魔物をとらえたことを知っているアラン達は冷静だが、他の兵士達は知らないため大騒ぎになる。それを見かねたアランが緑に尋ねる。
「緑そのまま捕まえた魔物を処理してしまえないか?」
「わかりました。アランさん城壁の外で処理をした方がいいですか?それとも街の中に引き込んで処理した方がいいですか?」
「そうだな……」
そう呟くとアランは兵士たちに向かって叫ぶ。
「おおい! 安心しろ! 魔物達が空中に浮いてるのは、ここにいる緑が捕まえているからだ!」
「そんな事ができるのか⁉」
アランの言葉を聞き、兵士達は驚きを隠せずにいたが、アランは気にせず、続ける。
「緑に聞いたら、そのまま魔物達は処分できるようだが、処分するなら場所はどこがいい?」
「なら、街の中で処理をしたい。外で処理をすれば他の魔物を呼び出すことになるかもしれないからな」
緑は、兵士達から街の中でモンスターを処理するほうが良いと聞き、捕まえた魔物をそのまま城壁の上を超えて、城壁の内側に運ぼうとする。
だがその時、異変が起こる。街の中まで傷つけないように運んでいた魔物達が、突然体を削られバラバラになる。
緑が街中にモンスターを運ぶと聞き、それを注意深く監視していた兵士達がその異変に気付き緑に叫ぶ。
「おい! モンスターの処理は街の中でと伝えただろう!」
城壁の上で魔物がバラバラになり、思わず兵士が叫ぶ。
「僕ではありません!」
だが、緑も魔物が削り取られていくのを見て、何が起こっているか分からず、慌てて兵士達に返事をする。
「緑がやったんじゃないのか⁉」
緑の言葉を聞き、今度は慌ててアランが緑に尋ねる。
そんな中、どこからか、ブブブブブと虫の羽音が響きわたり、兵士とアラン達が慌ててまわりを探しはじめる。
「お、おい! 見ろ! あそこだ!」
一人の兵士が空に向かって指を指す。それを見たアランが叫ぶ。
「やばい! キラービーだ!」