29話 ミドリムシはIランク冒険者になる
数日後、緑達はサークル王国の王都ドットの城の謁見の間で王の前で跪いていた。
「冒険者緑よ。これからお主のIランクの授与を発表する!」
緑が王様よりランクの授与をするに至って周りには高位のごく一部の貴族が参列していた。その理由は王国側も低位の貴族の邪魔が入り、授与がスムーズにいかず時間を取られるのを避けたかったからであった。
「本日より、今までの冒険者ランクに新たにIランクを入れ、この水野緑のチームをIランクのチームと認定する!」
これで、緑は授与式が完了し、自分のランクが知られると思い安心する緑であった・・・・。
「続いて水野緑のチームのメンバーにそれぞれ二つ名を授与する!」
それを聞いた緑は目を見開く。すかさず緑は自分達のIランクの授与式のために近くにいたピエールに視線を移すと、いつもの仕返しとばかりにニヤリと笑っていた。
緑が聞いていたのはIランクの正式な発表と授与だけの話であり高ランクの冒険者がさずかる二つ名を王様から授与されるなど聞いてもいないし想像もしていなかった。
そんな中、王様が声を張る。
「蟲人達よ前に!」
「「はい」」
「そなた達に二つ名を与える!」
ヒカリに【蜂の女王】 クウに【蟻の女王】 兜に【巨人】 レイに【暗殺者】の二つ名を付けられる。
二つ名の授与が蟲人達に行わた後、王が再び声を張る。
「冒険者緑前へ! 今この時よりお主の二つ名は【蟲の王】にそして、チームの二つ名を【軍団】とする!」
最後の緑と緑のチームに二つ名がつけられ授与式は終了する。その後、宿に戻ろうとする緑であったが王都の東のギルドマスターのジークとピエールに止められ城の騎士たちが訓練をする場に連れていかれるのであった。
そこには、幾人も冒険者達が待っていた。その冒険者達を前にジークが緑達に彼らが王都にいるS級冒険者達だと説明する。ジークが緑に説明をしていると冒険者が声を上げる。
「ギルドマスター早くそいつらと模擬戦をさせてくれ!」
その言葉を発したは冒険者を緑達が見るとものすごく機嫌が悪い事に気づく。その機嫌の悪い原因が今回のIランクの設立と授与、緑のチームとそのメンバーに二つ名を付けられたことだと言われた緑はただただ苦笑いしかできなかった。
「レッド少し待て、緑に今から模擬戦の説明をする」
そういうとジークは緑に耳打ちをする。
「殺さない程度に模擬戦をしてやってくれないか」
それを聞いた緑は頷く。そんな緑とジークの会話をよそに兜が緑に叫ぶ。
「大将!模擬戦なら俺にさせてくれませんか? この間買った斧も試してみたいんです!」
それを聞いたレッドという冒険者が怒りながら叫ぶ。
「何を言っている!模擬戦をするのはお前たちのチームと俺達のチームでだ!」
それを聞いたジークがレッドに兜とチームで戦うように言うがその言葉は火に油をそそぐ。
レッドは怒り狂いながら死んでもしらないぞと言い放ち自分達のチームを呼ぶ。
兜は緑にアイテムボックスから自分用の斧を出してもらう。それを見たレッドが兜を笑いながらそんな大きな斧2本もどうするのだと馬鹿にするが兜は戦闘の準備をしはじめる。
レッドが兜を馬鹿にしている間に準備を終えた兜はみるみる大きくなり、その二つ名の通りに5mほどの巨人となる。そんな兜を見たレッドは先ほどの怒りはどこにいったのか静かになり、チームのメンバーと話始める。
そして、いざ模擬戦が開始される。このレッドのチームはドラゴンを幾度も倒したことから【ドラゴンスレイヤー】の二つ名を持つようで今回集まった冒険者チームでも一番人数の多いチーム。
兜に対して数人の盾役のメンバーが兜の攻撃を防ごうとしたところ兜の斧に薙ぎ払われる。
普通の人の状態であれば斧1本を操り戦う兜であったが巨人化した兜はその斧を1本づつ両手に持ち手斧の様にして戦う。
巨人化した兜の膂力はレッド達の予想をはるかに上回り盾役のメンバーを魔法で支援せずに配置につかせたために、全員が薙ぎ払われた。
瞬時にレッドは配置の立て直しを戦いながらしようと考え始めるが兜が動かない。そんな中兜が叫ぶ。
「さぁ、早く立て直せ! 魔法の支援も早くしろ!」
兜はレッドのチームが配置につくのを待つのであった。
その後、盾役のメンバーが復帰したのをみると兜はレッドのチームに向かって走り出す。
その姿はまさにレッドのチームが何度も戦ったドラゴンを思い出させる。
魔法で支援をされた盾役の冒険者は先ほどまでとはいかないが兜の攻撃を受け吹き飛ばされる。
しかし、吹き飛ばされたメンバーを他の盾役が瞬時にフォーローし、兜の攻撃は盾役以外の他のメンバーに向けれない様にする。
それでもレッドのチームは兜の圧倒的な攻撃力に反撃できずにいた。
そんな防戦一方だったレッドのチームの魔法攻撃職達と弓職たちが一斉に兜に攻撃を開始する。それを見た兜はクウと同じように土の魔法を使い石の壁を地面から生やす。
その壁に大半の魔法や矢防がれ、残った幾つかの魔法や矢の一部が兜に当たるが兜の昆虫の外骨格に大きなダメージを与える事はできなかった。
そんな、攻防が繰り返される中リーダーのレッドが動く。兜の癖を冷静に分析したレッドはメンバーに指示をに出し兜のスキを作らせる。
そのスキをついて魔法攻撃職が複数で火の魔法を構築し兜の真上に直径10mほどの火の球を作り出し兜に向かって落とす。
兜は真上からの魔法の攻撃に対して、避ける事が出来ないと判断し両手の斧で切り裂きにかかるがそれを見てレッドが飛び出した。
それは、レッドが模擬戦の枠を外れ、自分も死ぬかもしれない覚悟して繰り出された攻撃であった。
レッドが向かってくるのを見て、兜が片方の斧を捨て地面に手をつく、すると今までとは比べ物にならない厚さの土の壁が現れる。それは兜の左右の地面より伸び屋根の様な形になり火の玉を受ける。
その屋根の壁の無い部分からレッドは兜に向かって地面に水平に剣を振るう。それを見た兜は片手を地面に付きながらもう片方の斧でレッドの剣を受ける。
「これ以上はやめろ! お前が燃え尽きちまうぞ!」
兜が作った土の屋根で直撃は受けてはいないがそれでも火の玉は周りを焼き続ける。
レッドは仲間の打った火の玉に燃やし続けられながら兜の斧に剣を押し込む。
それを見かねた兜は叫ぶが一向に剣を止めないレッドに兜は斧を手放す。
その斧に止められていたレッドの剣は兜の向かって振りぬかれるが。
キィン!
そんな、金属同士がぶつかる音がした。
その瞬間、土の壁が防いでいた火の玉が大爆発を起こす。土煙が上がり周りで見ていた冒険者達も視界を一時的に防がれるがすぐにレッドのチームの攻撃魔法職による風魔法で霧散させられる。
視界が晴れるとそこには、大きな土のドームが出来ていた。




