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278話 ミドリムシの婚活パーティー


「それでこれからどうするの?」


 三日月がそう言うと、魔緑は【アイテムボックス】を覗き込み中を探るように腕を入れる。


「あった。あった」


 そう言って魔緑が腕を引き抜くと、その手には手紙が握られていた。


「そろそろ、ヒカリとクウが緑と合流すると考えていたが、丁度返事がきていた」


 魔緑が皆の前で手紙を広げる。


「とりあえずこれを読んでから先の事を考えよう」


 魔緑の言葉に皆が頷き、手紙の内容を読みはじめる。

 手紙を読み進めると、全員が手紙の内容に表情コロコロとかえる。

 それぞれの手紙の読むスピードは違うが全員が手紙を読み終わると、深くため息をはいた。


「何をすればこうなるんだ……」


 魔緑が皆の心の内を代表するかのように呟く。


 手紙の内容は、食料問題は何とか解決しそうだと記されていた。それについては皆が明るい表情をしたのだが、そこから先が予想だにしない内容であった。


 そこには魔族達の中でも強い種族と言われる者達が、緑、ヒカリ、クウの3人と戦うために列を作っていると書かれていた。

 そして、その相手をするために手を取られ食料問題の解決に手が回らず、魔緑達に急ぎドライアドとトレントの集落に来て欲しいと書かれていた。


 魔族の領域に入る前に魔族の性質を聞いた魔緑は、自分達なら滅多な事では負けないと思っていたが、まさか魔族達が列を作って自分達に挑戦してくるとは考えもしなかった。


 魔緑は今回緑が召喚され、一番はじめに魔族と戦うのは緑だと考えていた。

 もちろん緑が戦った相手を殺すとは思わず、自分達と魔族との間で大きな問題にならないと踏んでいた。

 だが、いざ蓋を開けると自分達と魔族達の関係は予想しないものになっていた。


 魔緑は無言で頭を抱える。


「とりあえず、ダンジョンの扉を開いてファントムとふーちゃんを呼ばない? あの2人になら何かいい考えを思いつきそうだし」


「ああ、そうだな……」


 三日月の言葉に魔緑は頭を抱えたまま返事をする。




 それから、小一時間立たないうちにケットシーとクーシー達の集落の外に巨大な門が出現した。

 門が開くとそこから大量のデッドマンティス達が姿をあらわす。


「私達を食べても美味しくないニャー。美味しくないニャー」


「そうだワン。僕達は美味しくないワン。美味しくないワン」


 何度もレイやファントムから門から出てくるデッドマンティス達に危険はないと説明されたケットシーやクーシーであったが、大量に門からあらわれたデッドマンティス達を見た彼等は震えながらそう繰り返す。


 そんな彼等をよそにレイとファントムは言葉を交わす。


「レイさん、よろしくお願いします」


「わかりました~」


 ファントムの言葉にレイが返事をすると、そのまま彼女は子供達と森の中に入っていく。

 レイとその子供のデッドマンティス達が森の中に入っていったのは、各種族の集落をかげながら守るため。


 急ぎドライアドとトレントの集落に向かう事になったため、魔緑達は各種族とコンタクトを取り自分達の説明する時間を省くために、密かにデッドマンティス達に各種族を守ってもらう事にした。


 今回の緑と三日月が召喚されたのは、異常気象による食料不足が原因となっていた。

 その緑とも先ほど連絡が取れたのだが、そこで予想外の連絡をうける。


 緑は召喚されたドライアドとトレントの集落で食料問題解決の糸口を見つけたのだが、何故か今、緑、ヒカリ、クウと戦うために魔族が列を作っているとのこと。

 食料問題が解決するのであれば、自分達はそのまま大人しく東の国へ帰れると思っていた魔緑。

 

「魔緑さん。これで魔族でも弱いと言われる種族の方達は安全になったと思われます」


「ああ、よろしく頼む……」


 そう言ってファントムに返事をした魔緑は疲れ切っていた。


 ダンジョンの扉を開き、魔緑はファントムと腐緑を呼ぶと経緯を話す。


 話がおわると、魔緑は何をしたら緑の手紙の様な事になるかと考えはじめたのだが、結局答えは出ずただ疲労が増すだけであった。


「おい! 魔緑いくら考えたって答えが出ない事は山の様にあるんだ! まずは緑と合流してから話を聞くぞ。案外それで納得できるかもしれないだろう?」


「ああ、サラマンダーの言う通りだ。今までも考え付かないような事が起こって来たんだ、これからもきっとそんな事は山の様に起こるだろう」


 疲れ切った様子の魔緑にサラマンダーとノームが声をかける。

 

「兄よ疲れている所すまないが、干支緑も全員集合した。ドライアドとトレントの集落にいつでも出発できる」


「ああ、それじゃあ出発するぞ……」


 魔緑の言葉でケットシーとクーシーの集落を出発する魔緑達であった。




「私が勝ったら結婚してもらう!」


 妖艶な魔族が緑に向かって叫ぶ。


「ごめんさい、お断りします!」



「俺の嫁になってくれ!」


「すいません、私は心に決めた人がいます!」


 そう叫ぶ筋骨隆々な魔族にヒカリが死なない様に手加減して刀を振るう。



「俺のとこに来てくれ! 絶対に幸せにする!」


「ごめんなさい♪」


 クウは返事とばかりに容赦なく魔族の顔面に拳を叩きこむ。


「ぐはっ! ありがとうございます!」


 緑、ヒカリ、クウは魔族から勝ったら結婚してくれと勝負を挑まれ、それを断るために魔族達を退け続けていた。


「2人とも大丈夫? 実はたくさんあるから遠慮なく食べてね」


 そう言った緑は極力体力や魔力を使わない様に魔族と戦っていた。そんな緑の戦いを見たヒカリとクウも体力や魔力を温存して実を食べない様に戦う。


 3人はこの先どれほどの魔族が来るかわかず、何が起きるかわからない中できる限り体力と魔力を温存しながら戦おうと考えていた。

 そんな戦いを一番長く続けていた緑の集中力が切れた瞬間、緑は大きな傷を負う。


「緑様!」


「緑さん!」


「大丈夫!」


 緑は大きな傷をおうも魔力を使い傷を癒す。


 3人は自分達の集中力が切れつつあることに気づき焦りの色浮かべはじめる。


「次は私ね!」


 そう言って緑の前に立つ魔族の女性が声を上げると、森から飛び出すものがいた。


「その相手、我がかわろう」


「子供はお呼びじゃないよ!」


「何、我が負けたら兄が娶ってくれるぞ?」


 辰緑の言葉に魔族の女性の方眉が上がる。


「あんた緑の弟か妹なのかい? あんたに勝てば緑と結婚できるんだね?」


「ああ、我に勝てればな」


「絶対に約束は守らせるからね!」


 そう言って辰緑と魔族の女性が戦いはじめると緑の肩に手が置かれる。

 緑が振り向くとそこには魔緑が立っていた。


「魔族がお前達と戦うために列を作っていると知らせを受けて飛んできたが、なぜ勝てば嫁になるなんて話になっているんだ?」


 緑の肩に置かれていた魔緑の手は震えており、そのこめかみにはしっかりと青筋が浮かんでいた。


「ま、まーちゃん。まって僕もわからないうちにこんな「ふざけるなー!」」


 ドライアドとトレントの集落から少し離れた場所で魔緑の叫び声がこだまするのであった。



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