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260話 ミドリムシは訪問される


クウの子供達の上の者に会いたいと言ったドワーフ達と会うために、緑達はダンジョンから西の獣人の国に建設したコロシアムに繋がる扉を出る。


軍団(レギオン)の方達がこられた! すぐに王に報告だ!」


 緑が扉を出るとその先では獣人の国の兵士が警備をしており、扉から出て来た緑達を見ると慌てて王に連絡をすために動きはじめる。


 普段であれば獣人の王はコロシアムにいないはずだが、兵士の様子を見ると王がいるようで緑は不思議に思い、魔緑と腐緑へと視線を向けると2人も兵士達の態度に思う事があったのか、緑と顔を近づける。


「緑、ここに獣人の王が来ているらしい。とりあえず俺と一緒に王の元に向かうぞ」


「うん。王様がまたここに来ているのも不思議だし。クウが知らせに来る間に何か動きがあったのかもね」


「みーちゃんとまーちゃんは、王の元に向かうなら、私はクウちゃんと一緒にドワーフ達の方に行って来る」


 そう言って緑と魔緑は腐緑と別れると、近くにいた兵士に声をかけコロシアムに来ている獣人の王の元への案内を頼む。

 緑と魔緑が兵士に案内されコロシアムの中に入り、王の元に向かっていると大きな声が響いてくる。


「訪問が突然すぎる! 軍団(レギオン)の者達の事を考えろ!」


「それは、お前さんが決める事じゃねぇ! 軍団(レギオン)の子らに聞いてみろ!」


 緑達が声の元に案内されると、獣人の王とドワーフの男がメンチを切り合っていたいた。


「王様どうしたんですか⁉」


 獣人の王とドワーフの男の様子に思わず緑が声を上げる。


「緑に魔緑……来てしまったか……」


 緑の声に反応した獣人の王は苦虫を嚙み潰したよう顔をする。


「おお、干支緑達の面影があるな……そなた達があの子らの兄か?」


 一方、獣人の王とメンチの切り合いをしていたドワーフは笑顔になり、緑と魔緑の元に近づこうとするが、ドワーフの男に警戒した魔緑が待ったをかける。


「待て、それ以上近づかないでもらおうか。確かに俺達は、干支緑達の兄のようなものだが……あんたは誰だ? 俺と緑はあんたの事を知らない」


 そう言って魔緑が緑の方を向くと、緑もドワーフの事はしらないと黙って頷く。


 先ほど苦虫を嚙み潰したような顔をした獣人の王は、魔緑の言葉で笑顔になるとドワーフに話しかける。


「ほれ見た事か! あんたはいきなり過ぎるんだ! だいたいドワーフの王のあんたが直接来るなんておかしいだろう⁉」


「「ドワーフの王?」」


 緑と魔緑は獣人の王の言葉に思わず声をそろえる。


 驚いた2人の様子に獣人の王はドワーフの男について説明しはじめる。


「ああ、こいつはドワーフの国の王だ。先日このコロシアムを見たダムの管理をしてるドワーフ達が王に連絡をしたようでな……俺の元に突然コロシアムに来る連絡をしてきて、緑達に会わせるように言ってきたんだ」


 ヤレヤレと獣人の王が理由を説明すると、ドワーフの王が怒りを露わに話しはじめる。


「お前の国だけ緑達と懇意にしてずるいだろうが! 他の国も緑達と友好関係を結びたいにも関わらず、お前の国で緑達を足止めして、他の国が緑達と友好関係を結ぶのを邪魔しよって!」


「他の国と緑達が友好関係を結ぶ邪魔などするものか! 緑達はうち以外の国が我先に自分達の国へ来いと言って困っていると言っておったぞ! それに緑達は東の国の各所に行ける扉をいくつもダンジョン内に置いているんだ、俺達の知らない所で東の国で動かなければならい事もあるだろう⁉」


 獣人の王の言葉にドワーフの王は冷静になると、干支緑達との会話を思い出す。


「確かに東の国から来たと言っておったな……緑達の能力を考えると東の国でも頼りにされているのはわかる。やはり、ここしばらく西の獣人の国から移動してない様に思っていたが、東の国で何か仕事をしていたのか?」


 冷静になったドワーフの王は、緑達にしか対処のできない仕事をしていたのかと尋ねるが、緑達はたんに休暇を取っていただけのため、どうしたものかと顔を見合わせる。


 顔を見合わせた緑は思わず困った顔をし、それを見た魔緑が緑に代わって返事をする。


「いや、俺達はたんに休暇を取っていただけだ。だが、さっき獣人の王が言った様に他の国が我先に自分達の国に来いと言うものだから、順番をどうするか考えていたのも事実だ」


 魔緑から直接話を聞いたドワーフの王は、緑達を困らせてしまったと聞き渋い顔をした後、突然緑達に向かって頭を下げる。


「すまなかった」


 一国の王が公式、非公式にかかわらず頭を下げる事は少ない。だが、ドワーフの王は魔緑の話を聞くとなんの躊躇もなく頭を下げた。


 しかも非公式ながらも、自国ではないよその国で。


「やめてください! こんな話が世間で噂になったらどうするんですか!」


 叫んだのは緑。ドワーフの王が頭を下げると緑はギョッとして、すぐに頭を上げるように言うが、ドワーフの王はまるで緑の声が聞こえてないかのように頭を上げない。


 緑の声で注目を集めてしまい、その場にいたもの達の目はドワーフの王の姿に釘付けになる。


 しばらくの間、誰も声を上げれない静寂が続いたが、それを断ち切ったのは頭を上げたドワーフの王の言葉であった。


「重ねてすまない。俺は緑達の事を何も考えていなかったようだ……ダムの管理にあたっている者達からの報告でこの建物の話を聞きいて、いてもたってもいられなくて強引な手段で来てしまった。王として情けない、謝罪と言っていいのかわからないが先日の言葉は撤回する。うちの国は最後でいいので必ず来てくれ」


 そう言うとドワーフの王は踵を返しその場から立ち去ろうとする。


 そんな姿に緑がどう声をかければよいかと悩んでいると魔緑が口を開く。


「まて、あんたがここに来たのはこの建物……コロシアムの事を聞きたかっただけか? 俺達を自分達の国へ来るように言いに来たのではないのか?」


 魔緑の言葉にドワーフの王は振り返ると、魔緑に向かって返事をする。


「ああ、両方だが特にコロシアムと言うのか? この建物について聞きたかったのだ。そのために技術者の者達も連れて来た。まぁ、コロシアムの中には俺と近衛だけで来たがな。技術者達はコロシアムの外で待たせてある」


「なら、少し話をしよう。コロシアムの建築技術とあんたの国に行く話をな……」


「いいのか?」


「ああ、あんたと直接話をする方が何かと早い話もある。それに技術の提供であれば俺達以外でもあんた達に教える事ができる技術者達がいる」


「なら、どこか話をできる場所があればいいのだが……」


 そう言ってドワーフの王は獣人の王を見る。


「やれやれ、外の技術者達も中に呼べ。この建物内に話をするのにちょうどいい場所がある」


「ああ、感謝する」


 頭を下げこそはしなかったがドワーフの王が獣人の王に感謝を述べると、獣人の王も疲れた表情をしながら話し合いのできる場所に向かって歩きはじめるのであった。




 獣人の王を先頭に緑達がコロシアムの内部にあるフードコートに着くと、ドワーフの王の側近達が直ぐに連れて来た技術者達のを呼びに行く。


 しばらくして、近衛が技術者達を連れて戻ってくると、その後ろには干支緑達にクウと腐緑の姿があり2人は困った表情でやってきた。


「あれ? 干支ちゃん達にクウにふーちゃん、どうしたの?」


「えっとそれがね……」


「おお! 干支緑達もきたのか! 久しぶりだな、元気にしてたか?」


 緑が腐緑に声をかけると、その横をドワーフの王が嬉しそうに干支緑達に駆け寄っていくのであった。



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