表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

257/293

256話 ミドリムシは階層ボスを倒す?


「シェイド! 我はクウを正気に戻すために緑の所に行く! 辰緑を頼んだぞ!」


 そう言ってノームは本来の龍の姿となり、クウの元に向かった。


「くくくく、ノームには悪いがここでかっこよく辰緑を守れば、辰緑の心は俺にに向くはず。俺と辰緑がいれば巳緑と戌緑の正気にもどすのも造作もない」


 そう思って辰緑の元に向かおうとし、正気を失ったアミに攻撃されたシェイドはヤスデの蟲人スデファニーと共にアミを先に正気に戻すためにアミと戦った。


 そして、無事スデファニーの機転でアミが正気を取り戻すと、シェイドはその視線を辰緑の方に向け走り出した。


「辰緑! 無事か⁉」


 だが、そこにはシェイドが思いもよらない光景が広がっていた。


「えへへへへ、たつちゃんもっとんなでてー」


「みちゃんばっかりずるい! こっちもなでて!」


 ダンジョンの中、しかもボスの階層にも関わらず、辰緑はアヒル座りをし、その両脇から巳緑と戌緑から抱き着かれて二人をなでていた。


「辰緑、大丈夫か?」


 そんな辰緑達のそばに来たシェイドは恐る恐る辰緑に尋ねる。


「大丈夫じゃない……2人とも頭をなでていないと暴れだす」


 辰緑は困った顔でシェイドに返事をする。


「わかった辰緑はそのまま2人の頭をなでていろ」


 シェイドは辰緑にそう言うと、状態異常を回復する実を取り出しカットする。


「巳緑、戌緑おやつだ、これをやろう」


 シェイドはカットした実を巳緑と戌緑の前に差し出す。


「「たつちゃんがたべさせてー」」


「しょうがない……」


 辰緑はシェイドから実を受け取ると、実をそれぞれの口に持っていく。


 巳緑と辰緑はそれを喜々としてかじる。


「おいしいね、いぬちゃん♪」


「おいしいね、みちゃん♪」


 状態異常を回復する実を食べた巳緑と戌緑だが、様子の変わらない2人に辰緑とシェイドは顔を見合わせる。


「何も変わらないなシェイド殿……」」


「ああ、そうだな……」


 様子の変わらない巳緑と戌緑を見た2人は、話しはじめる。


「もしや、セリアと我が姉の腐緑がかかった罠とは種類が違う?」


「ああ、俺もセリアと腐緑がかかった罠と思ったがどうも違うようだ……ただ、今その話をするべき時ではないな……」


 そう言って階層ボスの姿を探す辰緑シェイド。


 だが、その階層主はアラン達とそれを補佐するウンディーネに倒されようとしていた。


「悪い! ウンディーネ!」


 アランが剣を持ち、ボスへと走りこむとボスが残った左腕を振り上げるのを見てアランがウンディーネに向かって叫ぶ。


「まかせて! それよりもさっさと倒してしまってアラン!」


 ウンディーネは魔法で水を作り出すと、その水でボスの左腕を包み込む。ボスはまるで鎖につながれたように左腕を動かせなくなり、アランに向かって腕を振り上げたまま硬直する。


「ああ、右腕もクウが引き千切ったんだ、俺達がここまでお膳立てされて苦戦していたら立つ瀬がない!」


 そう言ってアランは、ウンディーネが動けないようにしている間にゴーレムに向かって飛び上がるとゴーレムのコアを剣で一刀両断する。


 ボスはアランにコアを破壊されると、全身を光らせはじめる。


「やばいでアラン! 爆発する!」


 セリアが叫ぶと、アランは一目散にボスから走って距離をとる。


 セリアの言葉にウンディーネがアラン達の前に水の盾を作り出すと同時にボスが大爆発を起こす。


「はぁ、はぁ、倒せた……ウンディーネ助かった。あんたの盾がなかった死んでいたかもしれない」


 ウンディーネがアラン達の前に盾を作り出したにも関わらず、結構な衝撃がアラン達を襲った。アランは息も絶え絶えんそう言うダンジョンの床に大の字になって寝転がる。


 だが、それも束の間にアランは飛び起きると慌ててクウ、アミ、巳緑、戌緑の姿を探す。


 アランの視線に緑、スデファニー、シェイドが腕を使い大きな円を作る。


「全員無事か……今までの人生で一番焦ったのかもしれない」


 そう言うとアランは再び床に寝転がるのであった。




 しばらくして、全員が息を整え集まると、円を描く様に床に座りボスの罠について話しはじめる。


「皆さんすいません」


「ごめんなさい」


 話し合いがはじめると、すぐにクウとアミが立ち上がる。2人は罠にかかり正気を失った間の事を覚えているのか、深々と頭を下げて全員に謝罪する。


 なお、ただ辰緑に甘えていた巳緑と戌緑は今も辰緑に甘え続けていた。


 そんなクウとアミにアラン達が声をかける。


「いや、2人とも気にするな。今回はダンジョンに入ってから言い続けていたように、はじめての事が多すぎるうえに初見殺しと言われる様な罠が凶悪すぎた。その上でのボスの階層に入った瞬間に罠にはまったのは仕方がない。むしろ、ほとんど被害がないのが奇跡と思えるくらいに」


「でも、クウは緑さんを真っ二つにしました……」


 普段明るいクウが位かをして皆の前で涙を流していた。


「私もシェイドとは戦う必要なかったのに……」


 そんな2人の様子に緑とシェイドが立ち上がり、緑はクウを抱きしめシェイドはアミに頭を上げさせる。


「クウは僕を抱きしめたかったんだよね?」


「……はい」


「なら、僕がクウが嫌になるほど抱きしめるようにするよ」


 緑の言葉にクウはうれし涙を流しはじめる。


 一方、アミに頭を上げさせたシェイドも話しはじめる。


「俺はアミ達蟲毒の戦士やあの島の蟲人達に恨まれても仕方がない事をしてきた。とてもではないが償い切れてはいないし、むしろ償いをしてる最中だ。だからそんなに思いつめる必要はない」


「シェイド……」


「むしろお前達が俺達と普通に接しようとしている事に何時も悪いと思っていたんだ」


「……ありがとう」


 握手をするアミとシェイド。その姿を見たアランは頷き話はじめる。


「それにしても、とんでもない罠だった……セリアと腐緑がかかった罠も酷かったが、ボスを前にしての今回の罠……質が悪すぎる」


「ええ、きっと私とセリアがかかった罠でチームの関係にヒビをいれておいて、ボスの前で関係を崩壊させるように心の中の願望を引き出す罠なんて、本来ダンジョンを探索する人数の少ないチームならチームがバラバラになってボスにやられていたと思う」


 アランの言葉に返事をしたのは腐緑。


 ボスの階層に来て罠にかかって者達の正気を失った後の行動を考え、ボスの階層に来た者達にランダムで心の願望を引き出したのだろうと結論付けた緑達。


「2人も気にしないで、そうじゃないと私とセリアもずっと気になっちゃうから……」


 クウとアミに腐緑がそう言うと、腐緑と一緒に罠にかかったセリアが声を上げる。


「そうやで! 罠を見抜くのはうちらのチームの専売特許やけど、今回うちらは罠に翻弄されっぱなしや! それこそダンジョン調査を教えるうちらの立場がないわ」


 セリアの言葉に頷くアランのチーム。


「アラン、今日はそろそろ休みにせぇへん?」


 そう言ったのはセリアの兄ドナ。罠にかかった者達の事を考えドナはアランに今日はこの階層で休みを取ることを提案する。


「ああ、ドナいう通り今日はこの階層で休みを取ろう。一様こんなダンジョンだ普段なら階層ボスを倒した階は安全になるんだが一様結界を張ってもらえるだろうか?」


 アランがそう言うとアミが手を上げる。


「私が糸で巣を作ってその外にさらに結界を張れば大丈夫かと思います」


「なら、罠にかかった後で悪いが巣の製作を頼む」


「はい!」




 それからアミが糸で巣を作ると皆でその中に入り、さらにその外に腐緑が結界を張る。


「これで安心ね」


 そう言ったのはウンディーネ。だが、そこで腐緑が声をあげる。


「……ちょっと毒をまいてみる」


 その言葉に皆がギョッとする。


「まぁ、ここまで性格の悪いダンジョンだから、用心のためにね」


 そして、腐緑が毒をまく。皆がまわりを注意深く見ていると叫び声が上がる。


「ギャアアアアア!」


 皆が驚いて声の方を見ると、小さなサソリのような魔物がのたうち回っていた。


「ボスはさっき倒したはずなのに……」


 アランが魔物を呆然とみていると魔物が動かなくなる。


 皆がほっとした瞬間、ゴーレムを倒したことで現れた階段が崩れ落ち。その階段から少し離れた場所に新たな階段があらわれた。


「今のがこの階層ボスだったみたいですね……」


「「本当に性根が腐ってる!」」


 緑の呟いた言葉にアラン達のチームが苛立ちげに叫び、その後交代で休憩を取ることになるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ