252話 ミドリムシは罠にかかる
「あ、ここに罠がありますね」
「本当だ」
そう言って皆でダンジョンを進む中、話しはじめたのはアミとスデファニー。
2人は罠を見つけると天井から降りてきてセリアに報告する。
「「天井に罠をみつけました」」
「ほんまに? 天井に罠があったん?」
ダンジョンに入る前に天井を歩けるアミとスデファニーがいれば新たな発見ができるかもしれないと思ったアラン達。
しかし、1番最初に報告を受けたのは罠であった。
2人の報告を受け、一行の先頭を歩いていたセリアは全員をストップさせると、アランに天井の罠について相談する。
「なぁ、アラン。天井に罠って今まであらへんかったよな?」
「ああ、と言うかセリアやジンでも天井まで普段は警戒していないだろう?」
アランのパーティーで斥候役をするのは、セリアと弓手で目の良いジンが多いためアランはジンにも声をかける。
「ああ、アミやスデファニーみたいに僕達は天井を歩くことはできないから、天井の罠を発動させることもないしね。でもアラン、きっとセリアが言いたいのはそう言う事じゃないと思うんだ」
アランはそうなのかとセリアの方を見ると、セリアは黙って頷く。
「せやねん。今までうちらは天井まで見てへんかったけど、実際アミとスデファニーは罠を見つけてん。でも2人にしたら、あやしい装置を全部罠と思ってると思うから、それって罠じゃなくて……」
そこまでセリアが言ってアランはハッとする。
「もしかして隠し扉のスイッチか⁉」
アランの言葉にセリアとジンは黙って頷く。
アランは2人の様子を見ると、腕を組んで考えはじめる。しかし、考えても答えは出ずアランは緑に相談する。
「すまない、緑。少し相談したい事があるんだ」
「アランさんが僕に相談ですか? 珍しいですね、僕で良ければうかがいます」
緑がアランに快く返事をすると、アランは緑に天井の罠について相談する。
「なら、セリアに一通り確認してもらって、罠と思われなければ1度発動させてみましょう」
「緑ならそう言うと思ったが良いのか?」
アランは緑に相談すれば、罠を発動させてみようと答えると思いつつ相談したが、それでもやはり不安が残る。
「僕達は、ダンジョンの調査を依頼されていたので、もしアランさん達がいなければ罠を何の知識もない状態で発動させたと思います。幸い今は罠に詳しいセリアをはじめダンジョンに詳しいアランさん達がいます。それに僕達が危機に陥るような罠であれば、他の冒険者達にすれば全滅の可能性が高い罠を放っておけません」
緑の言葉を聞き、アランは考え込むがしばらくして自分を納得させるように頷く。
「緑の言う通りだな……仮に罠だとしても緑達が一緒にいる今が1番被害を抑えられる可能性が高いし今後のダンジョンの探索の新たな発見につながるかもしれない……緑、悪いがお前達の家族にも今の話をしておいてくれ。俺は自分達のチーム全員に今の話を共有する」
「わかりました」
緑が返事をすると、それぞれ緑は家族にアランはチームに今の話を伝える。
しばらくして、緑達とアラン達は全員で天井の罠のまわりに集まる。
皆が罠の下でまわりを警戒する中、アミが天井の罠のまわりを警戒しながらスデファニーが罠を発動させる。
ゴゴゴゴ!
「あそこ扉が開いたで!」
セリアが叫ぶと天井の罠から少し、ダンジョンの奥に進んだ場所で扉が開く。
それを見た巳緑と戌緑が駆け出そうとするも直ぐに足を止め、セリアの方を向く。
「えらいで2人とも、まわりを確認する前に扉に走って行ったら怒るとこやった」
そう言ってセリアは巳緑と戌緑の頭をなでる。
「じゃあ、私が中を覗いてみようかな」
そういって1歩前にでたのは腐緑。
「ふーちゃん、気をつけや」
「うん、ここまでセリアに罠の見分け方や解除方法を習ったからね、実践してみるよ」
そう言って腐緑は扉に向かって歩きはじめる。
腐緑が扉を覗き込んだ瞬間、そのまま固まり動かなくなる。
そんな腐緑の様子にセリアが、心配そうに声をかける。
「ふーちゃん? 大丈夫?」
セリアにそう言われた腐緑は、ゆっくりとセリア達が待っている方に顔を向けると、扉が開いた先を指さす。
皆が腐緑の様子に危険はないと思い、腐緑のそばに駆け寄るとゆっくりと扉の先を覗き込む。
扉の先にあったのは、大量の金銀財宝に加え、それを守るようにいる魔物の姿であった。
通常であれば財宝を守る魔物がいる場合、その魔物は財宝を守るために強力な魔物がいる事が多いがセリア達が見た魔物はとてもではないが強力な魔物とは思えなかった。
何故ならそこにいたのは、とても金銀財宝を守るような強い魔物ではなく、1匹のゴブリンがいるだけであった。
それを見たセリアは一目散にゴブリンに駆け寄ると、その眉間に短剣を刺しゴブリンを倒す。
セリアはゴブリンを倒すと、直ぐに財宝の元に駆け寄り緑達の方に振り返る。
「なぁ、緑ちゃんここにある財宝はどういった分配になるの?」
そう言って緑に尋ねるセリアの瞳はいつもと違い、酷く血走っていた。
そんなセリアの表情を見たアランは、セリアから視線を外さずに緑に近づくと緑に耳打ちする。
「緑、セリアの様子がどうもおかしい、傷つけずに捕まえたい」
「わかりました」
緑はアランと同じように、セリアから視線を外さないままアランに小声で返事をする。
そんな2人の会話が聞こえなかったのかセリアはさらに緑に言う。
「うちがはじめに見つけたんやから、この財宝はうち達が貰ってもいいやんな⁉」
セリアは依頼を受けてダンジョンを調査した場合、ダンジョンで手に入れた物の権利は依頼主にあるルールーを忘れたかのように緑にそう言って半場にらみつける。
だが緑は、そんないつものセリアとは違い、異常ともいえる言動のセリアに頭を振って告げる。
「セリア、僕達が今回依頼されたのは、ダンジョンの調査なんだ。途中で見つけた財宝については依頼主の西の獣人の国の王様に聞かないと何ともいえない」
そう言って頭を横に振る緑を見て、セリアはナイフを持ち飛び掛かる。
セリアが緑に飛び掛かるのを見て皆が驚く中、緑とアランだけが冷静に動く。
セリアが緑に飛び掛かるのを見てアランはすかさず緑とセリアの間に入り、緑はそのアランの影に隠れ、アランはセリアの短剣を手に持つ大きな盾で受けるとめる。
「アラン! なにしとん⁉ 緑がうちらから財宝を盗るかもしれんねんで!」
「セリア冷静になれ! 自分が何をしているのかわかっているのか⁉」
「そんな事わかっている!」
冒険者と依頼者の関係を知るセリアなら普段絶対に言わない事を言いつつ、緑に襲い掛かるセリアの攻撃を盾で弾き返すアラン。
アランはすかさずセリアを盾で抑え込むと、盾と地面でセリアをはさみ身動きをとれなくし緑が叫ぶ。
「緑すまん! 状態異常を回復する実をセリアに!」
緑はアランに返事をしないままセリアに近づくと、その口に状態異常を回復する実をねじ込む。
すると状態異常を回復する実を飲み込んだセリアは、しばらくの間暴れていたがピタリと止まり、体を震えさせながら話しはじめる。
「えっ⁉ いったいうちは何を⁉」
セリアはおかしな言動をした時の記憶があるのか、そう言うと体を震わせながらみるみる顔を青くしていく。
そんなセリアを盾で地面に押さえつけたままアランはセリアを落ち着かせるかのように言う。
「落ち着いたか? セリア……自分が何をしたかわかるか?」
そう言ったアランの言葉を聞いたセリアは目尻に涙を浮かべてそっぽをむく。
「うん……緑ちゃんに文句を言って短剣で斬りかかった……」
「ああ、そうだ。これが何を意味するかわかるな……」
「うん……依頼主と仲間を殺そうとした……」
そう言うとセリアはポロポロと涙を流しはじめる。そんなセリアにアランは追い打ちをかける。
「今回、緑達は同じ冒険者でも俺達に依頼を出していた。それは正に依頼者とそれを請け負った冒険者の関係だ……そんな依頼者にお前は短剣を向けたんだ。これがどういう意味かわかるよな……」
「うん……冒険者としてはおしまい」
セリアの言葉はアランのチームメンバーに重くのしかかる。
「アランさん……」
そう言って声をかけたのは腐緑。彼女は緑やアランを見て目尻に涙をためながら呟く。
「もう限界……」
その言葉を聞いた瞬間緑は魔法で水を作り出すと慌てて腐緑をその水で包み込むのであった。




