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246話 ミドリムシとコロシアム


 呆然としながらコロシアムを見上げる緑にヒカリとクウが尋ねる。


「緑様、子供達の所に行ってきても良いでしょうか?」


「クウもです♪」


「うん、皆久しぶりだもんね。僕は王様と王女様と一緒に中に入ってるから、2人は子供達のところに行ってきて」


「「はい、いってきます」」


 緑が笑顔でヒカリとクウに答えると、2人はコロシアムのまわりの森に向かう。


 ヒカリとクウの2人を見送った緑は改めてコロシアムを見上げる。


「確か川の工事の依頼を受けたけど……なんでコロシアム?」


 緑がそう呟いて不思議そうにコロシアムを見上げる中、獣人の王と王女は愕然としながらコロシアムを見上げていた。


「緑、なんなのだこれは……」


「緑様、これはなんの建物なんでしょうか?」


 見たこともない建物を見た2人は、緑の呟きから緑が何か知っていると思い尋ねる。


「あくまで、僕の想像なんですけど……この建物の中心では誰かが戦っているはずです」


 緑の言葉に王と王女は、緑の方に振り返る。


「誰が戦っているのだ⁉」


「それは何のために戦うのでしょうか⁉」


 緑は2人に詰め寄られ慌てて説明する。


「待ってください! 僕も何も聞かされていないんです。もしかしたら他の目的に建てられたのかもしれません。とりあえず中に入って確認しない事には詳しい事もわかりません!」


 そう言って緑は、興奮する王と王女を落ち着かせるとコロシアムの中に入っていく。


 緑達がコロシアムの中に入ると、緑達の元になんとも言えない良い香りが漂ってくる。


「これって……」


 緑が香りに驚く中、王は再び興奮してに話し出す。


「緑! 知っているぞ! これはたこ焼きの香りだ! この間、食ったがあれは美味い! 食いに行くぞ!」


 王は香りで先日食べたたこ焼きを思い出すと、舌なめずりをしながら駆け出す。そんな王の姿を見て王女が呆れた様に話しはじめる。


「王様ったら子供の様に……緑様なんとも情けない姿をお見せして申し訳ありません。ですが私も先日いただきましたが、あれは王が言うようにとても美味しいものでした」


 王女は王にあきれた様子で緑に話しかけるが王へのフォローも忘れない。緑はそんな王女の態度を見て笑顔になる。


「はい。僕も大好きですし、獣人の方の口にあったようで良かったです」


 王女は緑が王に愛想をつかさないか冷や冷やしていたが、緑の笑顔を見てほっとする。


「それじゃあ、僕達も王様の後を追いましょうか」


「はい、そういたしましょう」


 2人がそう言って建物の中を進むと、広く開けた場所があり、そこには多くのイスや机が置かれ緑達がいた世界のフードコートのようになっていた。


「外側はコロシアムで内側は、野球場みたいにフードコートがある……」


 緑はその光景に驚きつつもイスや机のそばにある一軒の屋台を見つける。その屋台には大柄な男の姿があり、その男を見た緑が思わず声を上げる。


「あ、兜がたこ焼きを焼いてる! 兜! 久しぶり!」


  兜に気づいた緑が声をかけると、兜は笑顔で返事をする。


「大将! お久しぶりです! 王様へいお待ち!」


 兜は緑に挨拶をすると、焼きあがったたこ焼きを葉で包むと獣人の王に手渡す。王は手渡された、たこ焼きを1つつまむと口にほりこんだ。


「みぎゃぁあああ!」


 王はあつあつのたこ焼きを口に放り込んむと叫び声を上げその場で転げまわる。そんな王を見た緑は慌ててアイテムボックスからコップ取り出し、魔法で水を注ぐと王に手渡す。


「すまない緑、慌ててしまった」


 そう言って緑に冷静に礼を言う王だが、地面で転げまわった後のため、自慢のたてがみも薄汚れ、威厳もへったくれもなかった。


「ぷっ! あはははは! 自慢のたてがみまで汚して何をしているんですか!」


 そんな間抜けな王の様子に王女は腹を抱えて笑い出す。


「シ、シンシア何もそこまで笑わなくても……」


 王も父親で娘に大笑いされると落ち込み、立派なたてがみも今は汚れた上に今は少ししぼんで見える。そんな王に緑はアイテムボックスから取り出した治癒の実を渡す。


「なんだこれは?」


「舌が酷い火傷になってませんか? それを食べればなおりますので」


 王は緑にそう言われ実をかじる。


「美味い! それに確かに舌がなおった!」


 そう言って王はかじりかけの実をまじまじと見ると、王女が王に声をかける。


「王様、残りを私にいただけますか?」


 王が王女の言葉に黙って実を渡すと、王女は自分の手を爪を使い傷つける。


「シンシアさん何をしているんですか⁉」


 王女が自分自身を傷つけたのを見て緑が慌てて声を上げる中、王女は実を全て食べるきるとじっと傷口を見つめる。


「本当に綺麗になおりました……」


 王女は自分でつけた傷が綺麗になおったのを見て、真剣な目で王と視線をあわせる。


「また、話をしなければならない事が増えたな……」


「はい……」


 2人の真剣な視線にどう声をかけようかと緑が迷っていると、2人はぱっと笑顔になり緑に尋ねる。


「そういえば、ここでは先ほど誰かが戦っていると言っていたが……」


 王がそう緑に尋ねると、ホレストアントの子供が兜の元に走って来る。


「大将ちょっと行ってきます!」


「まって僕も行く!」


 緑はそう言うと王と王女に振り返る。


「きっと僕の想像だと兜が今から戦います。一緒に見に行きましょう」


 王と王女はうなずくと緑と一緒に兜の後を追った。




「やっぱり……」


 兜の後を追った緑達はコロシアムの内側にでる。そこは観客席がすり鉢状に作られており、いくつも出入口があった。


 緑達はその出入り口の1つから出た所で、コロシアムの内側のを見下ろしていた。


 すり鉢状に作られた観客席の中心には川があり、その川はコロシアムの外からダンジョンの入り口に流れ込んでいる。

 そして、すり鉢状の観客席には多くの兵士がおり、彼等の視線はダンジョンから出て来たと思われる魔物と仲間の兵士の戦いに集まっていた。


「よし、交代だ」


 兜はそう言って兵士と魔物の間に割って入り、兜に魔物からかばわれた兵士達は慌てて観客席へと非難する。


「なるほど、兵士の人達の手に負えない魔物のが出てきた場合兜が代わりに戦うのか……」


 緑は兜と兵士達の交代を見て、コロシアムでの兜の役割を予想すると声をかけられる。


「半分正解で半分不正解だ」


「まーちゃん! 久しぶり!」


「ああ、久しぶりだなって抱き着くな!」


 緑は久しぶりの再会に喜びのあまり魔緑に抱き着くのだが、そんな緑を魔緑は引きはがす。


「半分正解で半分不正解って言うのはまーちゃんも戦うの?」


「ああ、正確には()()()()()


 魔緑がそう言うと魔緑の嫁の3姫が姿をあらわし挨拶する。


「みーちゃん、ひさしぶりだのう」


「おひさやで、みーちゃん」


「すっごくお久しぶりです」


「琉璃さん! 凜さん! 珊瑚さん! 久しぶり!」


 緑と3姫は挨拶をしながらハイタッチをしていく。


「喜んでいるところ悪いが魔緑、何でこんなものを作ったのか説明してくれるか?」


 獣人の王の言葉を聞き魔緑は嫌そうな顔をして、渋々と質問に答える。


「ああ、それなんだが……子供達が張りきった」


「子供達が張りきった?」


 緑は意味がわからないとオウム返しのよう聞き直す。


「ああ、兜に通訳してもらって話したはずなんだが、俺達が近くで野営をして寝て起きたらできていた」


「こんな構造物を一夜にして建てたのか⁉」


「まぁ、なんという事でしょう……」


 魔緑の説明に獣人の王と王女はただただ驚く事しかできなかった。


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