表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

230/293

229話 ミドリムシは昼飯にする


 ノームとシェイドが本来の姿で先頭を歩き、その後ろに辰緑がついていく。


「ふむ、やはり龍種と竜の区別は、あまり外見では区別されないのだな……龍種には知性があると言うのに……」


「俺達に知性があるかないか以前に、俺達の姿を見た時点で大騒ぎになるからな……」


 ノームとシェイドがそう言ったのは、辰緑と酉緑が飛龍となり辺りを飛んで戻って来た時、姿を見たドワーフ達が大慌てで逃げていく気配を感じたから。


「ノーム殿、シェイド殿の言う通りだ、魔緑も龍の姿になれるようだが、いつも驚かれると言っていた」


「ああ、あいつの場合は特に珍しい姿をしているからな……ウンディーネが体を水に変えた様な姿になるからな」


「俺も一度見たが、たしかスライムが龍の姿をまねたような姿だったな……透き通っていた」


「ふむ、我はどうなんだろうな……」


 辰緑がそう言うと、辰緑の姿が変貌し、小型で黒い龍となる。2人はそれを見ると、上機嫌になる。


「ほう、そなたは闇属性の魔法を使うからか、体が黒い色をしているな……大きさは我と同じくらいか……」


 そう言ってノームはチラリとシェイドを見る。するとシェイドが口を開く。


「おお、辰緑の黒は美しいな……それに、年月が経てば、俺くらいまで成長するんじゃないか?」


 今度はシェイドがノームをチラリと見る。


「「我(俺)とお似合いだな!」」


 二人の声が重なると、ノームとシェイドは、にらみ合いながら話しはじめる。


「我の方が辰緑とお似合いだ!」


「いいや、俺の方が良い!」


 2人の会話を聞き、辰緑はヤレヤレと思う。


(我は本来の姿が人のため、他龍の姿を見ても、良い悪いなど思う事はないのだが……いっそのこと我はふたりの(つがい)にならないと、はっきり言った方がよいのだろうか? いや……楽しい遠足(ピクニック)なのだ、今はまだ言わない方が良いだろう。とりあえず話を変えよう)


「ところで、お2人は先頭を歩いているが、ドワーフの国の王都の場所は、ご存じなのか?」


「「⁉」」


「とにかく中心に行けば良いのではないか? それにシェイドが知っているのだろう?」


「まてまて、ノームは知らないのか?」


 2人の会話が不穏なものになり、思わず辰緑が2人に尋ねる。


「お2人とも知らずに歩いていたのか⁉」


「「……」」


 辰緑の言葉に思わず、黙り込む2人だが、そんな二人に6人の冒険者のドワーフの男が助け舟をだす。


「お、お2人とも大丈夫です! 今向かっている、国の中心で間違いありません! もしも方向がずれそうならお声をおかけします!」


 2人の龍種の姿を見て、ドワーフの男はかしこまって、そう言った。


「なら、よかった。ドワーフの冒険者殿、方向がずれたらすぐに知らせて欲しい」


「わ、わかりました」


 そう言ってドワーフの男は、3人から少し後ろに下がり、子供達にかこまれる。

 それは、ドワーフの男が集団の中にいる事を知られないため。

 もっと言うなら、辰緑達後に続くスタンピードと思わせる集団が理性を持ち、集団行動を取っていると思わせないためであった。


 だが、この思いは他の4か国も含め失敗に終わっていた。


 辰緑達の場合は、逃げたドワーフ達が国に情報を報告したあと、すぐに監視する者達が派遣され、その者達がすぐに気づいたためであった。




「おい、あれは本当にスタンピードか? どうもおかしくないか?」


「ああ、俺も思っていた。本来スタンピードで局所的に起こる、魔物同士の共食いがない。しかも蟲の魔物達なら、途中にある草木を食べならが進んでもおかしくないのに……」


「それは、まずくないか? あれだけの魔物が共食いをしないなんて……誰かに統率されているわけでもあるまいし」


 ドワーフ達がそう話していると、目の前で集団の進みがおそくなり、完全に止まる。


「おい、止まったぞ! 何が起きるんだ⁉ 外側の魔物がまわりを見張るように見ているぞ」


「こんなタイミングでスタンピードが止まるなんて! もし一気に四方八方にばらけるなんて地獄だぞ!」


 そんな事を言って、慎重に辰緑達の様子をうかがうドワーフ達。そんな戦々恐々としているドワーフ達をよそに彼等は、食事の時間となっていた。




「ふむ、そろそろ飯の時間だな……ノーム殿、シェイド殿一度止まってもらえるか?」


「ふむ、もうそんな時間か……楽しい時間とは、早くすすむものだな」


「まったくだ、辰緑と一緒に歩くのは楽しいものだ」


 そう言うと、シェイドは爪を使い、鱗の隙間に隠していた、マジックバッグをそっと地面に下ろす。さらにシェイドは子供の姿になり、持っていたマジックバッグから、弁当箱をとりだす。




 しばらくして、子供達の食事の準備が整うとシェイドがノームに言う。


「では、ノーム弁当を食わせてもらう」


 シェイドが取り出した弁当は、ノームが作った物で、シェイドは弁当のふたを横に置くと手を合わせる。


「「いただきます」」


 辰緑、ノーム、シェイドの言葉に子供達も後に続く。


 チキチキチキチキ


 そう鳴くと子供達も食事を開始する。子供達は、馬車を隠す様に移動しており、その馬車には余った支援物資がのっていた。


 その支援物資とはほぼ食料であり、さらに6人の干支緑達が持つ、スキルのアイテムボックスより、食材を出して子供達に配り、その食料や食材を受け取った子供達は、器用に料理していた。

 

 そんな辰緑達を監視しているドワーフ達もまた食事をしていた。






「完全に動きが止まったが、四方にばらける様子もない、今の間に俺達はわかれて、食事をしておこう」


「そうだな……たしかに動きが止まった今しかないな……」


「見張りと役と食事にする者に分けて後で交代しよう」


 ドワーフ達がそんな話をしていると、子供達が動く。


「お、おい! ホレストアント達が重なりあって、壁を作りはじめたぞ。綺麗に重なりあって奥がみえないな……あれは、絶対に統率されているな……」


「さて、中で何をしているのやら。監視班は注意深く見ておいてくれ。すぐに食事をおわらせる」


「ああ、任せろ」




 それからしばらくして、食事をおわらせた者達が戻ってくる。


「交代だ。どうだ何かあったか?」


「いや、何もなかった。あいつらはいったい何をしているだ?」


「これで大人しくしてくれていればいいんだが……」


 そんな話をしていると、子供達が動きはじめる。


「「動きはじめた!」」


 そう言って、話をしていたドワーフは子供達の行動を、何も見逃すまいと注意深く見る。


「……なんだ? あれは交代しているのか? なんのために? 壁を作っていた魔物がわかれていったが、その内側にまた壁を作っている。見せたくないものでもあるのか?」


 そんな言葉にほかのものがニヤリと笑い言う。


「実は、俺達みたいに食事をしていたりしてな……」


 その言葉を聞いた仲間は、そんな事はあるはずがないと、無視をして監視を続けていた。その者があるものに気づく。


「ん? なんだあれは?」


 そう言ったドワーフの言葉に他のドワーフ達も目をこらす。


「煙が上がっているな、もしも食事だとしたら、魔物が火を使って飯をつくる? がはははは」


「がはははは」


 そう言ってドワーフ達が笑っていると、煙の量が増えていく。


「「……まさかな?」」






「ふむ、食事の交代も終わったから、そろそろ進むか……」


「そうだな、片付けもそろそろ終わっただろう」


 2人の言葉に辰緑が反応する。


「ノーム殿、シェイド殿の言う通り、そろそろ進もうか」


 辰緑がそう言うと、数匹の子供達が辰緑のそばに寄って来る。それに気づいた辰緑は子供達に話しかける。


「そろそろ出発しようと思うのだが、大丈夫だろうか?」


 チキチキチキチキ


 辰緑の言葉に返事をする子供達は、大きくを頭を縦にふり、散って行く。


 その子供達が散って行くと、他の大勢の子供達の視線が辰緑に集まっていく。それを見た辰緑は大きな声で言う。


「それでは出発する!」


 そう言って辰緑が振り向き、歩き出すと子供達もそれについて動き出す。


 すると、ドワーフの冒険者が口をひらく。


「少し方向がずれています」


 それを聞いた辰緑は、振り返るとニコリと笑い。


「その調子でお願いする」


 辰緑はそう言って、ドワーフの冒険者が方向を教える前に方向を変え進みはじめる。


 それを見たドワーフは呟く。


「間違ってねぇ……俺をためしたのか……小さくてもすげぇな……がはははは!」


 先ほどまでの緊張はどこへ行ったのか、ドワーフの冒険者は、笑いながら歩きはじめるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ