222話 ミドリムシの相談する
魔緑は6つの国の冒険者達が自分達【軍団】とコンタクトを取るために、東の国に来たところから話をする。
「そんな事があったのか……」
そう一言ドワーフの代表がこぼす。魔緑からエルフ達の話を聞いた2人は、眉間にしわを寄せていた。
「エルフを攫って、東に奴隷として売ろうとするなど、他種族とは言え、胸糞が悪い話だわ」
「ああ、そいつらは、デッドマンティスが文字通り、バラバラにしたらしいから、問題ない」
「「……」」
魔緑の言葉を聞き、2人は青い顔をする。
「一つ聞きたいんだが……」
青い顔をしたまま、恐る恐るドワーフの代表が魔緑に尋ねる。
「ん? なんだ?」
「いきなり、ここを襲って、ダムを壊そうとは考えなかったのか?」
「ああ、全く無かったわけじゃないが、俺達が判断を間違えれば、多くの人が死ぬことになるかもしれない……だから、まずは話をと思ってな……俺は、はじめから代表者を出せと言っただろう?」
「ええ、そうね……正直、あなた達家族の判断で国が亡ぶ事にもなるでしょうね」
魔緑の言葉に、獣人の代表も顔が青いままそう言った。
そんな言葉を聞き、魔緑が続ける。
「俺達のチームは、東の国々には国として扱われているからな。国が何も聞かずにいきなり城を落とせば、武力侵攻になるだろう? まぁ、俺達のリーダーは、世界を幸せにしたいらしいから、そんな事は絶対にしないがな……」
「お前達の家族で一番えらいのは、お前じゃないのか?」
「ああ、俺じゃない。さっきも言ったが、リーダーは子供達の父親だ……まぁ、普通の父親の定義に当てはまるかはわからないが……」
「じゃあ、その父親は今、どこで、何をしているんだ?」
「ああ、その父親は、嫁さん連れて、人と蟲人の国境線上をすすんでいる」
魔緑の言葉に獣人の代表が尋ねる。
「ん? ちょっとまって。もしかして、あなた達は、ここだけじゃなく、人と蟲人の国境線上にも支援物資を運んでいるの?」
「ん? ああ、違う違う」
「そ、そうよね、大家族でもこちらに来ている、倍の数になんてならないわよね……」
魔緑の言葉を勘違いした、獣人の代表は安堵して、胸をなでおろすが、魔緑が言葉を続ける。
「俺達の家族は、今5つの国境線上にわかれて支援物資を運んでいる」
「「はぁ⁉」」
「ちょっと待て! と言う事は、お前達の家族はここに来た5倍ほどの数がいると言う事か⁉」
「と言っても、俺達が依頼を出して手伝ってくれている冒険者達もいるがな」
「いやいや、そんな人数は子供達の数からしたら微々たるものでしょう? まって、情報の処理がおいつかないわ」
「ここに来た数なら、出発時点からは少なくなっているからなぁ……まぁ、少なく見積もっても、ここに来た数はさっき言った通り、3分の1ほどだから、単純計算で15倍はいるな……」
「「15倍⁉」」
そこで今までの間、黙っていた凜が少し悪い顔をしながら話はじめる。
「まぁ、リーダーと付き合いの長い冒険者は、うちらが6つの国を全て傘下におさめたらいいんじゃないかと、言ってたで」
「ああ、たしかシャークがそんな事を言ってたな……」
「ちょっと待って、シャークって【海の守護者】のシャークのこと?」
「シャークのおっさん、結構有名なんだな」
「ほんまやね~ 最近はダンジョンに入り浸ってるけど」
「獣人達の中では彼等は、有名人よ」
「そうなのか……っと話が脱線したな。話を戻そうここまでの経緯をはなしたんだ。俺達【軍団】のことも話しておく」
そう言って魔緑は、【軍団】の話を2人に聞かせる。
「俺はなんだか頭が痛くなってきた」
「私もよ……さっきまででも情報が多かったのに、何なのあなた達は、家族に魔王や勇者がいるとか……話をきけば本当に6つの国があなた達の傘下に入れば、すぐに問題が解決しそうだけど……」
そんな言葉に魔緑が口をひらく。
「なんで俺達が6つも国を養わなければならない……」
そう言った魔緑に2人は、声をそろえて答える。
「「無理っていわないのか(ね)」」
「……」
「まぁ、あなた達の事はこれ以上聞かないわ。それにしても、龍種の国以外で食料不足が発生しているなんて初耳だわ」
「ああ、そうだな……これは、意図的に誰かが情報操作をしてるんじゃねぇか?」
ドワーフの代表の言葉に、魔緑が反応する。
「ああ、俺もそう思う。だが、誰がなんのために?」
「わからないわ。でも実際、国境線上の村や町が食料不足に陥ってる上に、人を王都にやっても帰ってこないとなると……」
「王都に向かった奴は捕まっているか、もしくは殺されているかもしれねぇな」
「考えたくないけど、その可能性が高いわね。それに、国と国の間での人の移動もあるわ、その時に一部の村や町が食料不足になっているなら、気づくはずだわ」
「あと、俺達に助けを求めに来た、冒険者達が言っていた戦争の原因は異常気象による食料不足で、川の水が減ったなんてことは聞かなかった」
「なあなあ、まーちゃん。もしかしてやけど、どっかで川をせき止めてるんやないかな? それに国と国との移動も今まで通ってた道以外の道を作ったりしたら、国境沿いの村や町を通らずに行き来もできるで」
凜の言葉に、魔緑とドワーフと獣人の代表は考え込む。
「たしかにそれなら、不可能ではねぇな……もし誰も通らない街道があって、そこに町を作ってしまったら……しかもそこがでかけりゃあ、みんなそっちの町を通っちまうか……」
「しかも、国に報告もしなければ税も払わなくても良いわね」
「だが、そんな事をできる奴らなんかいるのか?」
凜の言葉を聞き、話を膨らます代表2人に魔緑が尋ねる。
「ああ、そんな事ができそうな奴らに最近であったなぁ」
「確かに、私もよ」
そう言った代表の2人は、じっと魔緑を見つめる。2人が何を言わんとしているか気づいた魔緑は、口をひらく。
「俺達をうたがっているのか? だが俺達は、支援物資を配って回ってるんだ。どう考えても赤字だろう?」
「ああ、冗談だ」
「ええ、もちろん冗談よ」
「だがよぉ。お前達ほどじゃなくても金を持ってるやつらはいるな……」
「そうね……さっき凜さんが言ったことであれば、【軍団】ほど資産を持ってなくても、新たに作った町で回収できるでしょうし」
「その新しい町の税が安くて得をする奴らって言やぁ。商人だな……」
「徴税官は町の存在を知らなければ、その町に行くこともないわね……そんな町を作れれば、情報操作にお金を使っても回収できるでしょうし」
「ああ、それだと王都から国境線上の村や町に送られる支援物資を運ぶ奴らを買収したり、自分達の息のかかった人間を使って支援物資を自分達の作った町に運ばせれば」
「国境線上の村や町が全滅しても王都はわからねぇ……」
「でもそれって、国境を挟んだ両方の国で同時にしないと効果はないわよね?」
「なら、両方の国の商人が手を組んだんちゃう?」
「たしかに、エルフやドワーフは数が少なく結束も固いが、少し閉鎖的だ。商売の話なんかは外とのバランスもあるから商人に言われてしまえば、外の情報をしらない場合、それを信じてしまうかもしれないな」
「それに、この考えに気づかんかったら、新しい町を探すとも思えへんな~」
「とりあえず、定時連絡の時に、この話を伝えてみる」
そう言った魔緑は、紙を取り出し、今話していたことを書き、アイテムボックスに入れるのであった。




