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220話 ミドリムシは頭を抱える


 腐緑達と時を同じくして、龍種の国から北西方向に向かった魔緑達は、国境線上の村や町に、支援物資と技術者達を残しながら、進んでいた。


 魔緑は、国境線上を進む途中、腐緑からの手紙に書かれていた、各国の生活用水に使われている川があったため、その水の量が減った事を調査しようと、少し川沿いに進んでみたところ、とんでもないものを目にしていた。


「な、なんだあれは……俺は、悪い夢でも見ているのか……」


 魔緑がそう言って、見つめる先には、川をせき止めるように作られた巨大なダム。その中心には、大きな城の様なものが立っていた。


「これは、すごいのう。だが、川の水量が減ったのは、これが原因ではないかのう?」


「でもこれって何なん?」


「すっごく、お水がたまってます」


 魔緑達が話す中、城の様なものから跳ね橋が下ろされる。橋が下ろされると、湖の岸から中心に向かって伸びている、途中で途切れた橋と合わさり、岸から城への道が完成する。


 その橋の上を数台の馬車が通り、城の中に入っていく。


(川の水量が減ったのは、絶対にこのダムのせいだ!)


 そう思う、魔緑は内心怒り狂い、嫁の3姫でも近寄りがたい雰囲気が出ていた。


「の、のう、まーちゃん。す、少し落ち着かんか?」


 3姫の中でも常に冷静な、フェンリルの獣人の琉璃が、魔緑に声をかける。


「何を言っている。俺はいたって冷静だ……もしも、冷静じゃなかったら……今すぐ魔法であの城をふきとばしている!」


 そう恐ろしい事を口にする魔緑は、ギリギリの精神状態で踏みとどまっていた。


 魔緑の嫁の3姫は、このままであれば、魔緑が城に殴り込みに行くと思い。何とか、落ち着かせようと話をする。


「な、なぁ、まーちゃん。すごい怒っているのはわかるけど、あれは一体何なん?」


 グリフォンの獣人の凜は、ダムがわからず、魔緑にたずねる。


「ああ、あれは。川の水をためて、雨量が減った時に水を流すものだ。こっちでは、あまり有名じゃないのか?」


 緑がそう言うと、ヒュドラの獣人の珊瑚が、答える。


「私達の東の国では、めったに雨の量が減る事がないので、聞いたことがないですね。しかし、すっごく大きな湖ですね」


「ああ、きっと川をせき止めて、大きくしたんだろう……各国が水不足で苦しんでいる今、看過できないな……とりあえず、話をきいてみるか……」


 そう言うと魔緑は、馬車を降りると、湖上の城に向かう。魔緑達が城の向かう頃には、跳ね橋は上がった後で、仕方なしに魔緑が叫ぶ。


「おい、橋を下げてくれ! ここの代表者と話をしたい!」


 魔緑が叫ぶと、すぐに城の上から返事がある。


「誰だお前は⁉ 簡単に代表者に合わせるなんて、できるはずがないだろう!」


「ああ、たしかに、いきなり代表者に会わせろと言って来た者に、あっていたら時間がいくらあっても足らないな……だが、今は緊急事態だ! 凜、俺をあの城の上まで運んでくれ」


「ええけど、大丈夫なん? まーちゃん……」


「……大丈夫だ」


「きっと勘違いしてると思うけど、うちが心配しているのは、あの中におる人達やで?」


「……大丈夫だ」


「ほんまかいな。跳ね橋が下りてきて、中に入ったら、全員死んでたとか、ごめんやで~」


「俺を何だと思っている!」


「まぁ、そんな返事ができるなら、大丈夫やろ。じゃあいくで!」


 そう言うと凜は、その姿を変貌させ、グリンフォンの姿となる。


「じゃあ、頼む」


 緑がそう言うと、凜が頷き、魔緑の背に乗せ空に舞い上がる、




「おい、グリフォンだ! しかも背中にさっきの奴がのっているぞ! 撃ち落とせ!」


 そう警備の者がそう叫ぶと、一斉に城から槍や矢が魔緑と凜に向かって放たれる。だが、それらが2人に届きそうになると、凛が放った竜巻で叩き落していく。


 それでも、城の兵士達は必死に魔緑と凜に向かって攻撃し続ける。しばらくの間、槍や矢が放たれ続けたが、備蓄を使い果たしたのか攻撃が止まる。その瞬間、魔緑が凛の背から飛び降りた。


「おい! 飛び降りたぞ! 狙え!」


 魔緑が飛び降りたのを確認した兵士が叫ぶと、再び魔緑に向かって、大量の槍と矢が放たれる。だが、その全てが魔緑が飛び降りた途端に現われた、小さく真っ白な火の玉に触れると、一瞬で燃え尽きる。


「なんだあれは! 槍や矢が燃え尽きたぞ! 火の魔法だ! くっ! まずいっ!」


 城の兵士の一人がそう言った瞬間、魔緑はふわりと静かに着地した。


「風の魔法も使うのか! 気をつけろ!」


 兵士はそう叫んだが、それは魔緑が髪を先に地面に伸ばし、髪を操りゆっくりと着地しただけで、風の魔法を使ったわけではないのだが、兵士は知る由もない。


 兵士達は、魔緑が魔法を使えると知り、魔緑が降り立つとその場から距離を取る。魔緑は、兵士達が闇雲に襲ってこないとわかると口を開く。


「もう一度言う、代表者をだせ!」


 魔緑が再びそう言うと、兵士達は言う事を聞かず、魔法を警戒して取った距離を一気に踏み込んで、手に持った剣で魔緑に容赦なく斬りかかる。


 だが、彼等の剣は、槍や矢の二の舞となり、魔緑と剣の間に動いた火の玉に触れた瞬間に、溶け落ちた。


「なんなんだそれは⁉」


 兵士がそう叫ぶと中、魔緑が片手を上げる。すると、その先に火の玉は集まり1つになる。そして、1つになった火の玉は、魔緑が誰もいないと思われる方向に腕を振ると、その方向に発射された。


「「⁉」」


 その発射された火の玉の威力に、兵士達は戦慄する。


 発射された火の玉の、進行方向にあった物は、綺麗に削り取られており、近くにいた兵士達が手にしていた槍や剣だけにとどまらず、頑丈な城壁までも削り取り、穴を開けていた。


 それを見た兵士達は、手にした武器をおとし、降参したと青い顔をして両手をあげる。


「手荒な真似をしたくない、緊急事態だ。すぐに代表者に合わせろ!」


 再三の魔緑の叫びが伝わったのか、二人の人物が魔緑の前にやって来る。


「非常事態かなんだか知らないが、城壁に穴を開けて、手荒な真似をしたくないとは、なんて言い草だ!」


「ええ、珍しくあなたの意見にどういするわ」


 そう言って魔緑の前に現れたのは、ドワーフの男と獣人の女であった。



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