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215話 ミドリムシと工房


 緑達のダンジョンの中には、鍛冶師達の工房

が密集している場所がある。


「おい! ビル! 聞いたか?」


「何をだ?」


軍団(レギオン)()()、どこかの国を助けるみたいだぞ」


「ああ、聞いている、6つだか5だか知らねぇが、異常気象が原因で食い物が足りなくなって、奪い合いの戦争をしそうなんだろ?」


「なんだ聞いてるじゃねぇか! って今作ってんのは馬車の部品かよ!」


「あったりめぇだ! 頑丈な馬車がいるってぇ話だ! しかも大量にな! 今度は5つの国の国境線場を移動しながら物資を配って回るらしいからな! 丈夫な馬車が大量にいるって、魔緑にいわれたんだ! おめぇも話しているだけなら出ていけぇ!」


 ビルの言葉を聞いた仲間のドワーフは、ビルの工房を後にする。彼はビルの工房から自分の工房に戻る途中、思わずつぶやく。


「あの堅物のビルが魔緑に言われれば、ほいほいとなんでも作るんだなぁ。まぁ、魔緑の知識は俺達が知らない事も多いかならなぁ……まぁ、その知識を無償で貰ってんだ俺達もきばるか」


 ぼんやりと独り言を言っている間に、彼は自分の工房の前に立っていた。彼は、工房に入るなり声を上げる。


「おう! 帰ったぞ! 何やら頑丈な馬車が大量にいるらしい! 俺達も馬車の部品をつくるぞ!」


「なんだ、今更かい? もう僕は、いくつか作った後だよ。君が帰って来るのを1人で部品を作りながら待っていたんだ。みんなでやった方が何倍も速いんだ。さっさと準備してくれるかな?」


「くそっ! 俺が遅かったのか! ビルは、魔緑が今は居ねぇから1人でやってんだ、俺達であいつの作る数に負けてらんねぇ! おい! エルフ! 足をひぱるんじゃあねぇぞ!」


「それはこっちのセリフだよ。そんな事を言ってる間にさっさと準備をしてくれ」


「あったりめぇよ!」


 そう言ってドワーフの男も金槌を持ち、相方のエルフいる炉に向かって歩いった。




 緑達が今までに各国を救ったさいに、報酬として各国に願ったのは技術者の提供だった。技術者たちは、緑達の話を聞くと、今まで知らなかった知識や想像もしなかった発想を聞き、喜びに体を震わせた。


 そんな彼等だが、緑のダンジョンに住まいを移し、そこで技術を磨くことに迷いをおぼえた。


 その理由は、緑のダンジョンには他の種族達がおり、その彼等と技術や情報の共有をすると聞いたためだ。自分達の技術を共有することは、ベテランであればあるほど、その理由に尻込みした。


 そんな彼等の中でも、一握りの者達が手を上げる。その者達は仲間からも一目を置かれるも、その技術を磨くために、それ以外の事のほとんどを捨ててしまった者達。


 それは、同じ種族から見ても狂気じみていた。


 そんな一握りの者達だけではじまった、緑のダンジョンの中での技術の情報共有。手を上げなかった者達は彼等を馬鹿にしたような目で見ていたが、その効果はすぐに実を結び、手を上げなかった者達をおおいに悔しがらせる。


 今までほとんど交換をしなかった技術情報。彼等、種族独自の技術は、混ざる事、掛けあわせる事で今までの技術を嘲笑うかのように1歩2歩飛ばしで進んで行く。


 1歩を進める事に、どれほどの思いや時間をかけても進まない事がある中で……。


 特に目覚ましい発展を見せたのは、ドワーフとエルフの技術者達が組んだ時。緑達が現れるまで、エルフとドワーフの仲はあまり良いとは言えなかった。


 いや、正直に言うと目の敵にしていたほど仲が悪かった。


 エルフはドワーフの考え方や生活スタイルが理解できなかった。その逆も同じく、ドワーフはエルフの考え方や生活スタイルが理解できなかった。


 だが、それは表面上でしか相手を見ていなかったため。さらに、緑のダンジョンに来た者達は、その内に狂気を持っていた。


 彼等の頭にあったのは、ただ技術の向上。


 そのためであるならば、いけ好かない者達とでも仲良くし、相手の技術を手に入れる。そんな思いではじまった生活。


 だが、狂気を持った彼等は異常なほどにうまがあった。


 些細な思いつきからはじめる、研究。もちろん構想段階では意見の食い違いもあり、相手が気に食わなければ、相手を()()させるまで懇切丁寧に説明する。


 そのさいに、相手から突き付けられる指摘は1人では思いもよらなかった事、更に同種族の者達からもそんな考えはできなかったと思われる指摘。


 彼等は思った。


(1人や種族単位で考えているだけでは思いつかなかった……それに、こいつはどこか自分に似ている……)


 そこからは、話が早かった。数人単位での話し合いは、徐々にその人数を増やしていき、最後には数百名が参加する学会の様になっていた。




「おいおい、戻ったら教えてくれと言っていただろう?」


 そう言って、エルフの男に不満顔を見せるのは人族の男。


「ああ、すまない。少し熱が入ってしまっていたようだ」


「お前達2人は、本当に仲が良いな……」


「仲が良いわけあるか!」「目を悪くしたんじゃないかい?」


 獣人族の男の言葉に、エルフとドワーフの男が同時に文句を言う。


「あははは、同時に文句を言いはじまたら世話がない」


 その様子に笑い声をあげる蟲人の男。


「話は聞いた、俺達の様に何か一緒に向かうべき目標があれば、奪い合いの戦争などしないのにな……」


 そう言ったのは龍種の男。


「「……お前が言うな」」


 その龍種の男の言葉に他の5人が声をそろえる。


 彼らは、緑のダンジョンの中で唯一の6種族が1つの工房にいる者達。


 彼等は、緑のダンジョンの中でもトップクラスの技術力を持ち、様々な技術を躍進させていた。


 彼等の工房の名前は混合種(カクテル)。はじめ彼等は混合酒(カクテル)とつけようとしたが、魔緑がさすがに工房なのに名前に酒が入るのはまずいだろうと、6つの種族がいるために酒を種にする様に言った者達。


 なお、偉業を求められ緑達から、緑達の蜜で作られた酒を5()()貰ったさいに、6人で殴り合いをはじめ、最後に龍種の男が立っていたが見苦しいと言われ魔緑に叩きのめされていた。


 その後、緑が1本追加して、1人1本の酒を貰いほくほく顔で居た6人だが、魔緑に2本減らして2人で1本を仲良く分けた方が良いのではないかと言われて顔を青くし、その授与を見に来ていた者達がおおいに笑っていた。


 彼等はこの時に自分達の工房のマークを作るのだが、そのマークはグラスの中にミドリムシが描かれていた。だが、これも魔緑に却下され、今はグラスの中に6種それぞれを示すマークが刻まれていた。


 ちなみに、この時の喧嘩の様子から、緑達の蜜で作られる酒。飲んだ者の好みに合わせ少しだけ味を変える酒なのだが名前を【もう我慢できない】と命名される。

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[一言] お酒の名前だ
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