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213話 ミドリムシの救援


 ニヤリと笑った長に返す様に、緑もニヤリと笑い尋ねる。


「長は、どうするのが最善だと思いますか?」


「ここから5方向、各国の国境上を進みながら、国境周りの村や町に支援物資を運んでいく。それが今選択できる手段の中で最善のものだと思われる。だが、それには莫大な支援物資と輸送能力が必要となる……」


 長はそう言って、頭を振りながら続ける。


「だが、我等龍種には届ける支援物資がない……」


 先ほどニヤリと笑った長だが、今はうつむき歯を食いしばっている。


 そんな長を見ながら、緑はニヤリと笑った表情のまま長の話を聞いていた。


「あります……」


「えっ!? 今なんと?」


 緑の呟きを聞いた長は顔を上げて聞き返す。


「大量の支援物資があります! 長、6つの国の書かれた地図はありますか? あればすぐに出して下さい!」


「おい! すぐに地図を!」


 長が叫ぶとすぐに地図が運ばれてくる。


「地図はここに!」


 龍種の1人が慌てて地図を持ってくる。


 そこから、進む国境とメンバーを選出していく。


五角形の右上にエルフ、右下に人、下に蟲人、左下にドワーフ、右上に獣人の国、中心に小さい五角形の龍種の国がそれぞれあり、龍種の国以外の国がそれぞれ龍種の国と隣接する二つの国と接していた。


 エルフと人の国境、人と蟲人、蟲人とドワーフ、ドワーフと獣人、獣人とエルフ、それぞれの国境に派遣するメンバーには、それぞれ2種族の人員が必要と話した。


 さらに5つの国境それぞれに【水野 緑】が必要と考え、緑、魔緑、腐緑、干支緑を6名づつと5グループに分ける。


 

 エルフと人の国境には、腐緑。

 人と蟲人の国境には、緑。

 蟲人とドワーフの国境には、干支緑の内の6人。

 ドワーフと獣人の国には、魔緑。

 獣人とエルフの国境には、干支緑の6人がそれぞれ行くこととなる。


 【水野 緑】の補佐として、それぞれの国境に関連のある、冒険者や緑達のダンジョンの住人から人員を選ぶ。


 特に干支緑達のグループには火、水、土、闇の龍種を2名づつ補佐に着ける。


「こんな感じでどうでしょうか?」


 緑は、龍種の長に尋ねる。


「まさか、全ての国境にそれぞれ関連する、人種を派遣できるとは思っていなかった……これ以上ない采配だと思う。この采配であれば、それぞれの種族に対して同じ種族の者を交渉人として派遣して話し合う事ができる」


 そう言って龍種の長は安堵する。


「後は、持っていく支援物資ですね……水は、各国境にドワーフの人達を送って、場合によって井戸を作ってもらいましょう。食料に関しては、ダンジョンで生産した肉や野菜を持っていきます! 最近は本当に腐らせるんじゃないかと、本気で心配していたんです」


「ああ、本当に心配していたな……かと言って龍種達に何の労働もせずに与えるのもダメだと、話していたしな……」


 長と緑の話に頷く魔緑。


 緑のダンジョンの食料需給率は余裕で100%を超えていた。だが、その消費先がなく、さらには保存期間も限られているために頭を悩ましていた。


 本来なら食料を必要としない龍種達。彼等は、その場にある魔力を吸収し、生き続ける。


 だが、緑のダンジョンで暮らす様になった龍種達は、様々な事で必要としない食料を食べていた。

 彼等にとって食事することは、嗜好品であり、人であれば酒やタバコ、菓子などの様な物であった。


 そのために、ダンジョンでは無条件で龍種に食料を提供することを緑達はためらい、龍種達に労働をさせ、その対価として食料を提供してた。


 そのために無尽蔵に食べるであろう、龍種の者達はその食料消費を制限されていた。元々、ダンジョンの食料自給率は余裕で100%超えていたために、食料を貯蔵することになっていたが、その食料を保存する限界が近いと危機感を覚えていた。


 一度、つながりのある国々に販売することを考えたが、緑のダンジョン産の食料が優れていたために、販売すれば貨幣が緑のダンジョンに集まり、他の国々の貨幣が減ることを危惧した。


 そのために緑達は、ここぞとばかりに食料の放出を考えていた。


 と言っても、緑は食料支援をした国で余るほどの物を支援するつもりはなく、家族や冒険者を派遣して、飢える事が無いようにする量を送るつもりであった。


「子供達が飢える事のない量を支援したいと考えています」


 緑がそう言うと長はニコリと笑う。


「緑さんの思うようにすればいいと思います。本来であればそんな事をすれば力に訴え、それを搾取しようとする輩が現れますが、緑さん達はそんな者達から守る強さをもっています。そうであれば緑さん達を止める者はいませんし、かといって安易な考えで支援をするつもりもないのであれば、それはとても良い事と私は思います」


「本来、食料を必要としない龍種の長にそう言ってもらえると安心します。僕達の考えが足りずに不幸になる人がでないか、とても心配でした」


 緑達が無理やり、ダンジョンの中の食料を支援に使い、ダンジョンの中が食料不足になる事は無いうえでの考えであった。


「ただ、緑さん達や我々龍種の者達を人員に入れても大量の支援物資を運ぶのは難しいかと……そのためにどこにどれほど運ぶのかを我々も選別しないといけないかもしれません……やはり、ここから近い国境付近の町や村は支援物資を運ぶのにそう時間はかかりませんが五つの国の外側にまでなるとやはり時間がかかるために……それに国境付近の村や町に支援物資を届けても、各国の中央がそれを奪いに来かねないために……」


「支援物資を運んで、更にそれを守る戦力も必要ですね……」


「緑、普段仕事に飢えてる子供達に頑張ってもらうのはどうだ?」


「うん、まーちゃん。僕もそう思っていたよ」


「東の国に頼めば馬車を大量に準備することもできるだろう。馬車だけ借りて、馬の代わりに子供達が交代で走れば、馬以上の速さで走り抜けるだろう」


「皆、頑張ってくれるかな?」


「子供達は、仕事が足りないくらいだったから喜んで走ってくれるだろう、馬車が足りなかったら、マジックバックを持っている冒険者にも声をかけて、彼等を子供達に運んでもらおう」


「うん! そうしよう、冒険者の皆には報酬も出さないとだめだね」


「それを何にするかもめそうだが、報酬が少ないと言われる事もないだろう」


「じゃあ、ダンジョンで準備をしないとね!」


「ああ、急がないとな!」


 2人の会話が異常なスピードで進むのを聞き長が尋ねる。


「緑さんに魔緑さん。いったいなんの話を……」


「長にはまだ僕達の事を詳しく話していませんでしたね、道すがら話をしますのでついてきて下さい」


 緑に言われ、長たちは言われるままに緑のダンジョンに向かうのであった。

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