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210話 ミドリムシと龍種の国


 エルフ達がダンジョンに案内されて数日後、ヒカリと三日月が西方にある龍種の国に着いたと、緑に報告をした。


「やっぱり、二人なら早かったね」


「うんうん、ヒカリちゃんってば、凄く速くて驚いちゃった。ヒカリちゃんみたいに独力で戦闘機と同じかそれ以上の速さで空を飛べるこちらの世界は夢が膨らんじゃうね」


「私は、元がキラービーですし、生まれ持った力なので……」


 ヒカリは道中、三日月に褒められ続けたのを思い出し、思わず謙遜する。


 そんなヒカリの態度を見た三日月は、道中の会話を思い出し、口をとがらせながら緑に言った。


「そうだ、緑ちゃん。ヒカリちゃんから聞いたよ!」


 三日月が眉間にしわを寄せ、緑にそう言う。普段の三日月は怒ることなど無く、その態度に驚いた緑は思わず聞き返す。


「み、三日月ちゃん何を怒っているの? いったい何を聞いたの?」


「何をって緑ちゃん。二人とチューすらしてないんだって?」


 三日月の言葉にヒカリと緑は、顔を赤くする。


「緑ちゃんは、ヒカリちゃんとクウちゃんの二人とも好きなんでしょう? それならちゃんと態度で示してあげないと二人に逃げられちゃうよ!」


「わ、私が緑様から逃げるなんてありえません!」


「僕だってちゃんと二人を抱きしめたりしてるよ……」


「そんな中学生みたいな……って緑ちゃんは、中学生のままこっちに来たんだった。それなら仕方ないか……ん?」


 くいっ くいっ


 そう言った三日月の袖を引っ張る者がいた。三日月が振り向くとそこには腐緑が立っており、自分の事を指さしていた。


 三日月が腐緑の顔を数秒間見つめていると、はっとする。


 その態度で腐緑は三日月が気づいたと思い、口を開く。


「私がちゃんと知識として知ってるから、みーちゃんも知ってるはず」


 その言葉を聞き三日月は緑の方に振り向くと、緑は顔はおろか耳まで赤くしていた。


「これは、少し会議が必要だね……」


 そう言うと三日月は、ヒカリと腐緑を呼ぶと食堂の方に歩いて行った。


 そんな三日月達の向こうから魔緑が3姫とやって来るのが緑に見えたが、すれ違いに何か話をすると、そのまま緑の元に向かってきたのは、魔緑だけであった。


 そばまで来た魔緑は緑の方をポンと叩く。


「がんばれよ」


「な、何を!?」


「ナニをだ……さて、西の国の話をしよう、サラマンダーとノームとシェイドを探そう」


 緑は、魔緑が龍種の中からウンディーネの名前を外した事に気づくが何も言えなかった。




 それからしばらくして、緑達は場所を変え、会議室にいた。


「龍種の御三方はどうコンタクトをとるのが良いとおもわれますか?」


 そう言ってサラマンダーとノーム、シェイドに尋ねたのは会議の進行役のファントム。


「正面から、堂々と俺達の事と来た理由を言えばいいぜ。それで文句が出るなら俺達が戦ってぶっ飛ばせばいい」


 サラマンダーがそう言うとノームもシェイドも頷く。


 サラマンダーの言葉に、緑がそれで良いのかと考え込むが、サラマンダーの隣のノームが口を開く。


「緑よ緑が思慮深いのは、良いが事だが今回の件に至っては、それは無意味だと思う」

「我もそう思う、今回は我々は別に相手を亡ぼすために動くのではないだろう? なら堂々と理由を伝えなければ時間がイタズラに進むだけだ」


 ノームの言葉にシェイドも追随する。


「俺もそう思う」


「まーちゃん……うん、じゃあ正面から堂々と龍種の国にいこう!」


「それでは、今から向かうか緑はこれから忙しくなりそうだからな。くしししし」


 緑の言葉の後にサラマンダーがそう言うと、皆が笑う。


「そんなに笑わなくても……ぐすっ」


 緑は涙声でそう言うのが精いっぱいであった。




「こんにちわー」


「なんだお前達は!? 何処からここに来た! ここに何をしに来た!」


「僕達は、冒険者チーム軍団(レギオン)と言います。ここからずっと東の国から来ました。彼等に言われて、戦争を止めに来ました」


 緑がそう言うと、軍団(レギオン)に助けを求めた、6人の冒険者達のリーダーの男が前にでた。


「お前は、東の国々に助けを求めに向かった……すぐに長の所に行ってくれ」


 門番と思われる男がそう言って道をあける。


 緑達が真直ぐに道を進むと大きな建物が見えてくる。その建物の前にも警備をしている男がいたがリーダーの男を見ると扉を開けて中に案内される。


 案内され建物の中を進むと、周りが騒がしくなる。


 そんな中、緑達は扉の前で立ち止まる。


「ただいま戻りました!」


「よくぞ戻った! 入れ!」


 扉が開かれるとそこは円卓があり、数人の男たちが座っていた。


「客人の方々、どうか座ってください」


 言われるままに緑達が席に着くと、緑達に座るように言った男が頭を下げた。


「わざわざここまで来ていただき、ありがとうございます。失礼ですがどこの国の代表のかたでしょうか?」


「僕達は、国の代表ではありません。冒険者のチーム軍団(レギオン)と言います」


「では、貴方達が国の代わりとしてここに来て話を進めると考えてよいのでしょうか?」


「国の代わりでもありません。僕達は、チームとして戦争を止めにきました」


「たかが一つの冒険者のチームで戦争が止められるか!」


 そう言ったのは緑達に話しかけていた、長と思われる者を警護するかのように椅子の後ろで立っていたもの。


「東の国々に助けを求めて送った者達が、たかが一つの冒険者チームを連れて帰っただとふざけるな! しかも長の前に子供まで連れて来ているなどふざけているとしか思えない! お前達のチームのランクはなんだ!? まさかCやDであるまいな! そんなチームなら全員殺してやる!」


「おい! 客人に対して失礼だろう! だまれ!」


「しかし長!」


「だまれと言っている!」


 長は、緑達の方を向き再び頭を下げる。


「うちの者が失礼いたしました。お話をうかがってもよろしいでしょうか?」


「はやく説明した方がよさそうですね。まず、質問に対してお答えしていきます。僕達チーム軍団(レギオン)のランクはI(アイ)です。これは東の国にある冒険者ギルドから言い渡されましたがイレギュラーなランクと言う意味です。もともとSランクになる予定だったのですがIランクと言われました」


「ほうSランクと言われていたのにですか!? それは、素晴らしい! そこの枠に収まらなかったということですね」


「ギルドからはそう言われています。強さは後で、僕達の誰かを指名してもらって、実際に戦ってもらい、確かめてもらうのが良いのかと思います」


「今すぐ俺と戦え! 指名できる者はここに居る全員か!? 子供もいるではないか!」


 先ほどの護衛の男が再び声を上げる。


「では俺が…「俺達3名から選べ」」


 魔緑が手を上げようとした時、そう言って立ち上がったサラマンダー、ノーム、シェイド。


「は? 子供が相手だと?」


「喜べ、魔緑では跡形間のなくこの世から消されるかもしれないからな、手加減なら我等がしてやる。どうせ死ななければ何とかなるのだ。さぁ選べ!」


「子供相手に選べだと、3人まとめて叩き潰してやる! 表にでろ!」


「し、師匠いけません! だれか一人を選んでください!」


 そう叫んだのは6人の冒険者のリーダーの男だった。

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