204話 ミドリムシは冒険者と話す
「世界樹様が弱っているんですか?」
「はい、葉の一部が枯れたり、枝が折れて落ちたりしているんです」
「なるほどエルフの国は、世界樹様が弱っているんだね」
そう言って、腐緑がメモをとる。
「まてまて、エルフの国の情報だけを離すんじゃない、人もドワーフも獣人、龍種、蟲人も困っているんだ」
そう言ったのは、険者達のリーダーの龍種。
「ああ、すまない。どうも世界樹様の事となると私達エルフは冷静でいられないんだ」
「まぁ、落ち着け…… 俺達もできる限り協力はするつもりだ。……だが、各国の話を聞かない事には、どこから手を付けるか決められない。その問題がエルフの国だけで解決するかもわからない。もしかしたら他の国に原因があるかもしれないだろう?」
エルフの冒険者を落ち着かせようと魔緑がゆっくりと話しかける。
「魔緑、あんたは、世界樹が弱っている原因は他の国のせいだと思うのか?」
魔緑の言葉を聞いた、他の冒険者が思わず尋ねた
「まぁ、落ち着いて。他の国が原因になっているかもしれないと、まーちゃんは言ってるだけで、必ずしもそうと言っているわけではないから」
声を荒げそうになる、他の冒険者に腐緑が待ったをかける。
「皆さん落ち着いてください。皆さんの国が大変なのはわかりますが、まずは落ち着いて話をしましょう。そうしなければ、上手くいかないかもしれないですから」
緑がそう言うとファントムがお茶を持ってあらわれる。
「皆様、お茶です。まずは、これを飲んで落ち着きましょう」
「ありがとうファントム。皆さんもどうぞ」
緑がそう言うとファントムがお茶を配っていく。
配られたお茶を冒険者達が一口飲むと、目をむき、話はじめる。
「「うまいな…… 国を思い出す」」
そう言った瞬間、冒険者達は顔を見合わす。
冒険者達は、各々の国を出てここまで来るのに、数か月を費やしていたために、故郷を懐かしむ。
そして、ある事に気づいた人の冒険者がファントムに尋ねる。
「もしかして、それぞれに違うお茶を?」
「ええ、それぞれの種族が好むお茶を出しました。このダンジョンには各国のお茶もそろってますので……」
「……ありがとう。落ち着くことができた。皆も落ち着いて話をしよう」
落ち着きを取り戻した人の冒険者が、仲間にそう声をかけると、仲間達も落ち着きを取り戻したのか頷く。
「じゃあ、他の国の情報を聞いてもいいかな?」
冒険者達が落ち着いたのを見て、メモを持った腐緑が尋ねる。
「ああ、じゃあ人の国の話をさせてもう」
「どうぞ」
「人の国は食料難もそうなのだが、他の国々からの仕入れをしていた物が少なくなって来てて、生活で必要な物が不足してきているんだ」
「他の国々も自国の事で手が回らなくなってきているんだね」
「次、獣人の国だがいいか?」
「は、どうぞ」
「獣人の国は、食料難が特にひどくてな…… 特に肉を多く消費している。普段なら余った肉は他の国に売っているんだが……」
獣人の冒険者がそう言うと、蟲人の冒険者が話はじめる。
「蟲人の国は逆に野菜が不足している。肉を食べる種族もいるが圧倒的に野菜を食べる種族が多い。普段は獣人の国と一緒で、余った野菜は他の国に売っている」
「次は俺でいいか?」
そう言ったのはドワーフの冒険者でリーダーを見る。
リーダーの冒険者は黙って、頷く。
「ドワーフの国は獣人の国と蟲人の国から食べ物を買っている。もちろん自国でも狩りや農業もしているがドワーフの性質上、鍛冶を行うために鉱物が良く取れる場所に国があるせいであまり、農業も狩りもうまくいかないのでな……」
ドワーフの冒険者が話終わると龍種の冒険者が腐緑を見つめる。
「どうぞ」
「龍種の国と言っていいのかわからないが、龍種は魔力が薄くなりどうしたものかと思っている。周りの国がうまくいっている間は、魔力が満ちていたのだが…… 異常気象で周りの国々が困りはじめたころから魔力が減りはじめたのでな……」
「むずかしいね……」
話を聞いた緑が思わずつぶやく。
「ああ、誰かが悪いわけでもなく、しいて言うならやはり、異常気象が原因か」
「だね、今までみたいにスタンピードや悪人が居るわけでもないしね」
緑の後に、魔緑と腐緑も考え込む。
「ああ、それぞれの負の感情が大きくなってきているせいか分からないが、魔物の動きが活発にもなっている。それも手伝って、国と国の間を行き来する商人が減っている」
そこで緑がはたと気づき尋ねる。
「各国には川や湖はあるんですか?」
緑の言葉に人の冒険者が返事をする。
「もちろんある。全ての国が砂漠の真ん中にあるわけではない」
「それでも異常気象に対応できなかったのか……」
「ああ、しかもこのまま今の状態が続くと、各国で他の国に戦争を仕掛けようとする者達の声が大きくなってしまう。全くうっとおしい連中だ」
「そいつ等だけでも先に暗殺でもするか?」
「ちょっと、それは乱暴すぎだよ、まーちゃん。ふーちゃん何かいい案ある?」
「動物や食物が育たないのは、異常気象でおこった水不足が原因だけど…… 川の水を増やしてもすぐに動物や食物はそだたないしね~ 【水野 緑】全員で花粉をまきにいく? そうすれば作物も一時的に急成長するだろうけど……」
「う~ん」
「6つの国を同時は難しいね~」
「いや、それなら5つの国だろう? 龍種達は、魔力が満ちればいいのだから」
「ああ、龍種は…… と言ってもすでに知っているか…… 100名以上もいるんだから」
「ちなみに5つの国はどんな配置?」
「配置か…… 5角形を想像して欲しい。その5つの角から中心に線を引いてい国がわかれていて、中心に小さな5角形の龍種の国があると想像したらわかりやすいだろうか……」
「なら、龍種の国にお邪魔してそこから5か国に支援をする?」
「そうだな、こっちから近い国に入って支援をしていくと、反対の国に行くのが時間がかかるから、1度突っ切って龍種の国に着いてからの方がいいな」
「各国の支援も話を聞いただけでは、足りないかもしれないからそれが良いかもね、どうするみーちゃん?」
「それが良さそうだね♪ じゃあ、どうやっていこうか? 冒険ができるかな?」
緑がそう言うと、ヒカリと三日月がやってくる。
「緑様、その役は私と三日月さんに任せてもらえませんか?」
「私も緑の役に立ちたいな」
「2人で?」
「はい」「うん」
「でも、三日月ちゃんは、空をとべないよね?」
「うん♪ ヒカリちゃんに抱いて飛んでもらう」
「ヒカリは大丈夫?」
「はい、問題ありません」
「じゃあ、お願いするね。ダンジョンコアはどちらに渡せばいいかな?」
「ヒカリちゃんにお願い! 万が一があったら飛んで逃げれるひかりちゃんに」
「いえ、そんな事がおこれば私が相手を近づけさせないので、その間にダンジョンを開いてください」
「そうだね、ヒカリの言う通りだね、龍種の国に行くまでは、扉の近くに交代で何人かいつもいるようにしよう。毎日、扉を開いてここに戻ってくれば安心して寝れるし。扉を出している間は、外にも人を置いて守っていれば、敵が間違って入ってくることもないだろうし。まーちゃんもふーちゃんもそれならいいよね?」
「ああ、そうしよう」
「それがいいね!」
緑達が話していると、冒険者達が不思議そうに尋ねる。
「すまないが、扉ってのはなんなんだ?」
「皆さんは、ここに来るとき王都の西のギルドからきましたよね?」
「ああ、ここに来た時、広場に沢山の扉があったが…… まさか!? あの扉全てがどこかにつながっているのか!?」
「はい、こちらの人、エルフ、ドワーフ、獣人、龍種、蟲人の国にそれぞれ繋がってます」
「あれだけの数の!?」
唖然とする冒険者達に、腐緑が追い打ちをかける。
「もちろん、各国の王城への直通の扉もあるよ。もちろん許可は喜んでもらえたよ。まぁ、龍種の国は王城への扉はないけど……」
「腐緑、我が作らせた城には、おいてないのか?」
腐緑の言葉にシェイドが尋ねる。
「シェイドの部下の人達は、ほとんがダンジョンに来たでしょう? 向こうに残った人達はウィプスの所にいるだろうし。
「ああ、そうだったな…… 話の腰を折ってすまん」
「緑様、途中も扉を置いて行っていいのでしょうか?」
「うん、途中の宿とかがあれば、そこの人達に確認をして、宿の人達が良いなら置かせてもらおう」
そんな会話を冒険者達は、ぼうぜんとしながら聞いていた。




