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202話 ミドリムシの常識


「すいません、おまたせしました」


 6人の冒険者の前に、そう言いながら戻ってきた緑。


「ご飯は口に合いました?」


「はい、どれも美味かった……です……」


 冒険者達は、先ほどまでの態度とは違い、何とか丁寧な口調で緑話そうとしていた。


「大丈夫ですよ、無理に丁寧に喋ろうとしなくても。無理な喋り方をすると伝えたい事が伝わらなかったりするんで」


「ありがとう。それで、俺達の話は聞いてもらえるのか?」


「はい、もともと僕達の事を調べたりする冒険者や商人が居た場合、教えてもらえるようにギルドにお願いしています。もちろん、教えてもらった場合の報酬も用意してあるので、結構な数の報告が来るのですが、1人1人もしくは1つのグループごとに対応しています」


「それで俺達はあれほど早く見つかったのか……」


「いえ、それだけではここまで早く見つけてません。実は僕達の家族があなた達を気にかけていたんです」


「いったい誰が?」


「俺が緑達に報告していたんだ」


 そう言ってやってきたのはサラマンダー。


「たしかサラマンダーって言ったか?」


 そう言って冒険者達はサラマンダーを見ると話しはじめる。


「たしか、緑色の子供達と一緒に洞窟にいた子供だな。お前が言っておいてくれたのか?」


「ああ、そうだ。干支達のはじめての依頼について行っていたんだ。まぁ、まさか失敗に終わるとは思っていなかったがな。お前達が干支達を止めないか冷や冷やしながらみていたんだ」


「ああ、心配はしていたんだがな。あの子達の本当の姿を見て、どうしたものかと迷っているうちに帰ってしまったからな。しかし、あの跡を見れば心配することもなかったと後で思ったんだが……失敗だったのか?」


「ああ、そうだ。あの子達は自力で帰れる状態ではなかったから。報告を完了してこそ成功だろう?」


「たしかに……いや、だが年齢を考えると……」


 サラマンダーと冒険者が話しているのを見ていた緑が口をはさむ。


「もしサラマンダー達が居なかったら死んでいたかもしれません。あの子達は大きな力を持っていますが、それを過信してしまってはダメだといつも言い聞かせていたんですが……今回は能力の暴走もあったみたいですが、それでも失敗は失敗です」


「厳しい……いや、違うな優しいんだな……あの子達を本当に心配してるんだな……」


 冒険者の言葉を聞いた緑が嬉しそうに笑う。


「はい、家族ですから……っと脱線してしまいましたね。以上の事で僕達は、皆さんを気にしていたんです。もし、困っていそうなら、僕達に連絡をするようにと依頼を即座にかけて」


「その依頼と、軍団(レギオン)を調べていた事で直ぐに見つかったのか……」


「それもあるが、今日は辰緑の歓迎会をしていたのも理由だな」


 緑達の会話に魔緑が参加する。


「あ、まーちゃんお疲れ様。身代わりありがとうね」


「気にするな。なめられては困るからな。少しは、俺達の力を見てもらっていた方がいいだろう」


「しかし、本当にそっくりだな双子か?」


「う~ん、僕達は双子ではないんですけどね……」


 冒険者達の言葉に緑は、困りながら答える。


「まぁ、あまり詮索するつもりはない。気にしないでくれ」


「まぁ、言えない事は無いんですが、説明がむずかしくて……」


「だね、私もいるしね」


 そう言ってやってきたのは腐緑。


「!?」


 腐緑が来たのを見て、冒険者達の仲間のエルフが、驚いた顔を見せ、独り言をいいはじめる」


「まさか、いや気配は小さいが……。まさか、遠い場所から顕現されている……?」


 そんなエルフの独り言を聞いた、緑達は苦笑いする。


「ところで皆さんは何故、私達と会おうとしていたんですか?」


 そう言って、話をかえようと腐緑がたずねる。


「ああ、軍団(レギオン)は、国と太いパイプを持っていると聞いたので、レギオン経由でこちらの国々に力をかしてもらえればと思ってな」


「がははは、それなら国々に頼むより軍団(レギオン)に頼む方がはやいな! 王様、ご機嫌麗しゅうございます」


 笑いながらやってきたのはシャーク達であった。


「聞きましたよ、いきなり襲われたそうですね。くくくくっ」


「もう、シャークさん。そんな喋り方して……いつも通りにしてください」


「がはははは、すまん、すまん。ついな!」


「つい、じゃありませんよ」


 シャークの言葉に困った顔を見せる緑。


「だが、シャークの言葉はあたっているな。国々に頼むと、やはり時間がかかる。緑達なら即断、即決、即行動だ。時間がないなら緑達に頼むのが良い。俺達も手伝えるかもしれないしな」


「あ、アランさんこんにちわ」


「ああ、緑、お邪魔している。あんた達の上から渡される、軍団(レギオン)へ報酬の一部を貰えれば、ダンジョンに居てる他の冒険者達も喜んで手伝うだろう」


「戦争でもか?」


「戦争か……その内容によるな……」


「僕達に戦争の手伝いをお願いしにきたんですか?」


 冒険者達の言葉に緑が反応する。


「たとえ話……ではないか……。俺達の願いは戦争を止める事だ。もし軍団(レギオン)に戦争を止める力があるのなら、借りたいと思う……」


「がはははは、なんなら戦争している国を全部軍団(レギオン)が平らげちまってもいいんじゃないか?」


「!? まさかな……」


「まぁ、シャークの言方は問題だが、それも可能だろうな……」


「何を馬鹿な…… 1つのチームで国々をたおすなど……」


「くしししし、可能だろうな……」


 シャークとアランの言葉を信じない冒険者をみてサラマンダーが笑う。


「おい、お前は俺の強さがわかるか?」


 そこまで笑っていたサラマンダーが鋭い視線をし、冒険者達のリーダーの龍種を指さす。


「子供が何を言っている? 子供の強さ?」


「ふむ、情けない…… 洞窟ではのノームの本当の姿を見たにも関わらず、強さがわからないとは……」


「ノームの本当の姿を見ても力がわからないのか? それなら俺達でも倒せるかもな」


 サラマンダーの言葉にシャークが意気揚々と答える。


「ぐるうぅ。試してみるか? そこらにいる冒険者に後れを取るとは思わんぞ」


 リーダーの龍種は、そう言って眉間にしわを寄せる。


「はぁ、全く持ってなさけない…… 2桁……いや下手すれば3桁ぐらいだろうか?」


「2桁? 3桁? なんの話だ?」


「お前達の強さだ……」


「ぎりぃっ……何を言っている?」


 怒りの矛先をシャークに向けていた龍種だが、サラマンダーの言葉に矛先をサラマンダーに向け、歯ぎしりをする。


「子供だと思って、見逃していれば!」


「ほう、俺と戦ってみるか?」


 サラマンダーがそう言うと、その体をみるみると変貌させる。


「なっ!? そんなっ!?」


 以前のサラマンダーと比べても小さな龍種であったが、ダンジョンで生活する様になったサラマンダー達は、その体が一回りほど大きくなったために、まさに大人と子供の様な体格差が見られた。


「っく! 体格差がなんだ!」


「馬鹿が! 体格差だけしかわからないのか!? 恥をしれ!」


 そう言ってサラマンダーはブレスを吐く。


((ああ、リーダー以外は死んだ))


 そう思ったのは、残り5人の冒険者達であった。


 サラマンダーのブレスを受けたリーダーの龍種は全身を炎に焼かれる。


 その後ろにいた冒険者達は、死んだと思い目をつむるが、予想していた熱を感じず、おそるおそる目をあける。


 リーダーと他の冒険者達の間には、魔緑が立っており、火属性の魔法で結界を張り、サラマンダーのブレスを防いでいた。


 サラマンダーのブレスが止まると、そこにいたリーダーは、龍種にも関わらず酷い火傷をおっていた。 


「ううううぅぅぅぅ」


「これでちっとは力の差がわかったか!」


 サラマンダーがそう言っている間も、冒険者は立ち上がる事すらできず、サラマンダーのブレスでできた火傷に呻いていた。


「リーダー!?」


 そう叫んだのは仲間の冒険者であった。


 彼等は、リーダーにかけより、その状態をしらべる。


「だめだ、ここから治療なんて無理だ。助からない……」


 そう言ったのはエルフの冒険者。


 彼等のチームでは、エルフの冒険者が回復の魔術を使っていたようだが、リーダーの状態を見て絶望していた。


「そんな……こんなところで……」


 仲間達に悲壮感が漂う。


「お前達が気づかなかかった力の差がこれだ……子供だからだと甘く見たのが間違いだ。子供でも干支緑達なら、お前達くらいなど1対1で完封するだろう……」


「うあぁぁぁ」


 サラマンダーがそう言って、倒れているリーダーの龍種の頭を鷲掴みにして持ち上げると、思わずリーダーの龍種が呻き声を上げる。


 さらにサラマンダーがその口に【緑の実】をねじ込む。


「んんんん!?」


 リーダーの龍種が痛みと苦しさで声にならない声を上げる。


「もう! これ以上はやめてくれリーダーが死んでしまう!」


 ごくり


 リーダーの龍種が、ねじ込まれた【緑の実】を飲み込むと、体が光りだす。


「なんだ! この光は! リーダー!?」


 冒険者達が叫んだ後、光が収まると無傷のリーダーが立っていた。


「これでわかったか、お前達の常識でここをはかるな」


 リーダーの様子を見たエルフが茫然となりながら呟く。


「そんなあの傷がこんな一瞬で治るなんて……」


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