197話 ミドリムシと洞窟3
「くしししし、干支緑やつらめこんな隠し玉があったとはな……」
獲物を狙うような目をしながら、サラマンダーは嬉しそうにつぶやく。
「これほど心が躍ったことはいつぶりだろうか」
サラマンダーに続きシェイドも嬉しそうにつぶやく。
2人の龍種が嬉しそうに見守る中、鵺が再び輝きだす。
「「まだ何かおきるのか!?」」
先ほど輝く事で鵺となった干支緑達にさらに何かが起きるのかと思い、龍種達は息を飲みその輝きが収まるのを待つ。
だが、輝きが収まるとそこには合体した寅、巳、申緑達が倒れていた。
「お、おい! どうした!」
今まで鵺となった干支緑達の強さを見て喜んでいた龍種の2人は、突然倒れている干支緑達の姿を見て慌てはじめる。
慌てたサラマンダーはすぐに3人の元に駆け寄る。
「おい! どうした!? しっかりしろ」
3人に駆け寄り抱き寄せるサラマンダー。
3人を抱き寄せたサラマンダーはどこが怪我でもしたのではないかと体を見るも、ケガはなく倒れた理由がわからない。
「おい! しっかりしろ!」
体にケガが無いことを確認したサラマンダーは、干支緑達をゆすりながら声をかけ続ける。
「お、おいサラマンダー」
そんなサラマンダーの後ろから、シェイドが声をかける。
「なんだ!?」
そう言って振り返るサラマンダーが見たのは、普段の子供の姿に他の干支緑達。
だが、普段と一緒なのは姿だけで、視線は虚ろの上に意識があるのすらわからない様子であった。
サラマンダーとシェイドがぼうぜんとその様子を見ていると、今度はサラマンダーが抱き寄せた3人もふらふらと立ち上がる。
「寅、巳、申! 気が付いたのか!?」
「「……」」
立ち上がった3人にサラマンダーが声をかけるも返事は帰ってこない。
「どうするサラマンダー!?」
「どうするも何も俺も何が起こっているのかわかんねー!」
2人がどうしたらいいのかわからず、しどろもどろになっていると入り口の方から足音が聞こえてくる。
「「2人ともどうした(の)!?」」
その足音は、ウンディーネを呼びにいきそのウンディーネを背中に乗せたノームの足音で、2人はサラマンダー達のそばに来るとサラマンダー達の様子が普段とは違うため思わずたずねる。
「ああ、ノームにウンディーネを呼びに行ってもらった後に干支緑の数人が合体と叫ぶと見たこともない獣になり、あれをやったんだ」
そう言って大量のゴブリンの死骸を指さすサラマンダー。
「あの子達だけで!?」
「本当に干支緑達が?」
サラマンダーが指さした方向にあるゴブリンんの大量の死体を見て、思わず声を上げるノームとサラマンダー。
そんな光景を見てぼうぜんとしそうになる2人。
「その後、獣の姿から戻ったら3人が倒れていたために声をかけていたんだが……」
サラマンダーの説明を引き継ぐ様に、シェイドがその後の説明をする。
「そして、今はあの状態だと……」
そう言ったノームの言葉にうなずく事しかできないサラマンダーとシェイド。
龍種達が事の成り行きを話していると事態が急変する。
それまでふらふらとしていた干支緑達であったが突然、龍種達の目の前でアイテムボックスから実を取り出し食べめる。
「おい、お前達! 数の制限の事を忘れるな!」
慌ててそう言ったのはノームであったが、干支緑達はノームの声が聞こえていないのか、決められた制限以上の実にも手を付けはじめる。
「だめだわ……完全に聞こえてないみたい……」
あきらめた様につぶやいたウンディーネをよそに干支緑達はなおも実を食べ続ける。
その様子をみて龍種の4人は干支緑達からの反応をあきらめ、黙って事の成り行きを見守り。
龍種達が黙って干支緑達を見ていると、ふいに干支緑達がその手をとめる。
「お、食い終わったのか?」
サラマンダーがそう言ったのも束の間、再び干支緑達が輝きはじめる。
「ま、まさか全員で合体するのか? 3人でも我らと同じくらいだったのに、全員で合体などすればいったいどれほどの強さになるんだ!? しかも無意識の状態で暴れでもしたら!?」
干支緑達全員が輝きはじめたのを見てシェイドが慌てて叫ぶ。
その言葉を聞き他の3人も息を飲みその様子を見つつ、何が起こっても大丈夫な様に戦闘態勢もとる。
そして龍種が見つめる中、輝きが収まるとそこに普段の子供の姿をした干支緑達が倒れていた。
その姿を見て1番初めに声を上げたのはウンディーネ。
「何が起こったのか分からないけど、私が水魔法でこの子達を包んで浮かせるから、ノームは背中に私達を乗せて最速で緑のダンジョンに戻って! もう依頼をこなす状況を確認している場合じゃないわ!」
「「わかった!」」
ウンディーネがそう言うと短く返事をした龍種達が次々とノームの背に乗っていく。
ウンディーネはノームの背に乗ると大きな水の塊を魔法でつくりだし干支緑達に近づける。
ウンディーネの魔法で作り出された水の塊は、ウンディーネの意志で形を変えながら干支緑達に近づくと、呼吸ができるように優しく包み込む。
「よし! 干支ちゃん達は全員包んだわ! このまま浮かせてるからノームは王都に向かって!」
「わかった! お前達しっかりつかまっておけ!」
「おう!」「頼む!」
ウンディーネにそう言うわれ、ノームは返事をすると猛スピードで洞窟の入り口に向かい走りはじめた。
そんな中、不意にサラマンダーが叫ぶ。
「おい、冒険者! まだ奥にやばいのがいるからお前達も逃げろよ!」
そう言ったサラマンダーは忠告はしたからなと思い、ノームが向かう洞窟の入り口に目をむけるのであった。
龍種達が王都に向かってしばらくしてから洞窟の壁にある窪みに姿を隠していた者達がでてくる。
「行ったか?」
「ああ」
「俺達の正体ばれていたな……」
「俺、もう何を見てもおどろかない気がする……」
「興味本位で子供達の後をつけて来たが、人生の中で今日ほど驚いた日はなかった」
「ああ、そして今日ほど驚くことはもうないだろう……」
リーダーと思わしき男がそう言うと他の者達も頷く。
「しかし、最後の音がすごかったな……本当に雷が落ちたんじゃないかと思ったぜ」
「ああ、たしかにな……あれも魔法の音か?」
「魔法で雷か……使える魔法使いもいるようだがそんな奴は国が囲っていると聞いたが……」
「だな、しかもあいつらあの若さだぜ国がほっとくわけねぇ」
「忠告通りなら、まだ奥にやばいのがいるらしいが……しかし、何が起こったかわからないにしろ跡だけでも見ていくか?」
そう言ったのはこの冒険者チームの副リーダと思われる男。
「ああ、あの子供達はやばい奴から逃げてる感じはしなかったからな、俺達にとってやばいやつなのかもしれない……細心の注意をはらいながら進むぞ……」
リーダの男がそう言うと冒険者達は立ち位置を確認して洞窟の奥へとすすむ。
しばらくして冒険者達は目の前にあらわれ光景に絶句する。
冒険者達の目の前には、干支緑達が鵺となり雷の力で倒したゴブリンの死体が山の様にある光景が広がっていた。
「おい、なんて数のゴブリンだ……」
「しかも多分、道の中心に居たのは後も残ってないんじゃねぇか?」
「これもあいつらの仕業か?」
「だとしたら、子供の皮をかぶった龍種かなんかじゃねぇか?」
「まさかな……」
会話の途中で冒険者達は見事にサラマンダー達の正体を言い当てるが、冒険者は気づかない。
「しかし、来る途中もそうだったがこの洞窟は広い上に、ゴブリンが多すぎないか?」
「ああ、こんなに悠長に話てられるのも、この光景を見て感覚がおかしくなったのかもしれない」
「どうする、報告するか?」
「いや、今の俺達は普通に隣国から来た商人だ。まぁ、あの子供にはばれてしまったようだが……」
そう言った冒険者達は、商人の服を着ていた。
だが自分達の命を守る武器を持たない事は無く、商品の様に見せて他の商品と一緒に自分の愛用する武器を背負子で運んでいた。
もちろん防具は、背負子の取り出しやすい場所に入れている魔法のバッグの中。
そんな事を話していると洞窟の奥から低く大きな声とたくさんの声をが聞こえる。
「あの声は、ゴブリンキングか!?」
「こんな王都に近い場所で!?」
「しかも、この声の大きさだと尋常じゃない大物だな……逃げるぞ」
「しかし、ここの情報伝えないとやばくないか?」
「ああ、スタンピードまでは行かないがまだ奥に結構な数がいそうだぜ?」
「ああ、たしかに数は多そうだ。しかし、ここまで増えたことを考えるとどこかで大量に食いもんを拾ったか集めたんだろう。洞窟の外にいた量から考えるとまだ食いもんに余裕はありそうだ。俺達は王都に行って、街道から外れた場所に大量のゴブリンが居たといえば、冒険者をよこして調べるだろう」
「たしかに食料事情は、洞窟から出ていた量を考えるとまだ問題はなさそうだな。リーダーの言った通りにして、ここに来る冒険者のランクや数を見てみよう」
「ちょうどいい情報収集になるな」
「ああ、サークル王国の状況を確認する。もともといた奴らの報告が本当かどうかを俺達は確認してきたのだから」
「それじゃあ行くぞ」
リーダーの冒険者の男がそう言うと他の者達が黙って頷き、その後をついていくのであった。




