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19話 ミドリムシのスタンピード


ヒカリは黙って先ほど預かった短剣を渡す。それを見たゴランのギルドマスターは目を見開く。


「これで身元の保証になったでしょうか?」


 ゴランのギルドマスターは頷きヒカリになぜこれを渡したか尋ねると口を開く。


「少し、離れてください。ダンジョンオープン!」


 するとヒカリのそばに人が2人ほど通れる扉が出現し開く。


 その扉が開くと1人のエルフが現れ叫ぶ。


「よお!クソチビドワーフ!」


「うるさいわい! ガリガリエルフ!」


 顔を合わしたとたん罵声を浴びせあう2人。その隣で続いて出てきた緑が首を傾げている。


 しばらく罵り合った2人はにやりと笑い拳を合わす。


「ピーエルよくもまぁこんな場所まで来たもんだ! なんだ長生きも飽きたか?」


「ゴードン、エルフにしたら私はまだまだ若者だ! 長生きにはまだ程遠い! まぁ冗談はさて置き、ゴランの人々を助けにきた」


 ゴランのマスターのゴードンはここから全員助け出すことが本当にできるのかと真面目な顔になりダンジョンの扉を見る、その様子を見たピエールが緑を指さす。


「救世主を連れてきた。こいつがこの間会議にあげた冒険者だ」


「ほう、こ奴が」


 そんな会話をしている中叫び声があがる。


「うあああああ! たすけてくれぇぇぇ!」


 そう叫びながら1人の冒険者が城壁から落ちる。


 城壁から下に向かって槍で攻撃していたところを槍を掴まれ引きずり落されたようだ。


 他の冒険者も自分に精一杯で誰も手を伸ばせない。冒険者が自分が落ちていく場所を見るとそこは、モンスターの海。

 

 冒険者自身もあきらめ落ちていく中、急に落下が止まる。冒険者はそのままの体制で宙に浮きそのまま城壁の内側に降り立つ。


 冒険者が不思議そうに周りを見ていたが状況を思い出し城壁の上からの攻撃を再開するのであった。


「今のもそいつの仕業か?」


 ゴードンがピーエルを見た後、視線を緑に移すとピエールと緑は頷く。ピエールはゴードンに城壁の上の広めの場所を聞きそこに緑と共に向かう。


 その場所に着くとピエールがゴードンにゴランの街の冒険者に何があってもこの扉から出てくるものに対して攻撃をしないように命令させる。


 ゴードンはしきりに理由を聞こうとしたがピエールは見ればわかるから今は理由を聞くなと言う。


「ダンジョンオープン!」


 先ほどピエールと緑が出てきた扉は、ヒカリがダンジョンに戻るとは緑によって閉じられた。


 そして、今またダンジョンが緑によって開かれるとヒカリが出てくる。


 扉から出てきたヒカリは緑の実がパンパンに入ったカバンを持っている。


「ヒカリ準備は大丈夫?」


「はい! なにも問題ありません!」


「では、お願いするね。できるなら広い範囲にばら撒いて欲しいんだ」


「はい! では行ってきます!」


 ヒカリがダンジョンの入口より飛び立ち上空に上がっていく。


 その姿を周りにいたもの達が目で追う中、大量の虫の羽音が響きわたる。


 ヒカリを追うようにダンジョンの入り口から大量のキラービーがヒカリを追うように飛び立つ。その数200匹、緑たち以外は気付かなかったがキラービー達もカバンを抱えて飛んでいく。


 その光景を目にしたゴードンとゴランの街の冒険者達が目を見開いて固まる。それを見たピエールがゴードンの肩を組みニヤリと笑いささやく。


「あいつら全部こいつの家族らしいぞ」


「はぁっ!?」




「がははははは」


 ピエールのはなしを聞いたゴードンがしばしの沈黙の後、大きな声で笑い始める。


 少しの間笑い続けたゴードンは笑い終わるとピエールに振り返る。


「この戦局をひっくり返せるなら推薦の件よろこんで引き受けよう!」


 ゴードンがそう言った瞬間。


 ドッカーン! ドッカーン!


 城壁の外で爆発音が鳴り響く。その爆発音は城壁から徐々に遠ざかりながら10分ほど鳴り続けたあと止まる。


 城壁からゴランの冒険者達が恐る恐る外を見る数えきれないほどのクレータが出来ており、外のモンスターの7割ほどが戦闘不能もしくは死んでいた。


 それを緑が確認した直後にヒカリが戻ってくる。ヒカリは緑にこのまま残りのモンスターの殲滅に入るか聞くが緑がそれに待ったをかける。


 緑は今回のスタンピードで全員が戦闘をするように考えていたためにヒカリたちだけでモンスターを殲滅することを良しとしなかった。


 そんなやり取りをしていると開いたままのダンジョンの入り口から兜、クウ、レイが顔出し自分達も戦いたいと言い始める。


 それを聞いた緑が蟲人達に一旦落ち着くように言い聞かせる。兜、クウ、レイが落ち着くのを確認した緑は振り返りピエールに確認をする。


「マスター行ってきてもいいですか?」


「ああ! 好きなようにしてこい!」


 緑は笑顔で頷くと兜に先陣を任せる。 


「兜お願い!」


 その言葉を聞いた兜は喜々としそのまま城壁から飛び降りる。


「やっと大暴れできるぜ!かかって来い!」


 それを見た残りのモンスター達が兜に殺到するが兜が以前にダンジョンで冒険者チームと戦った時のように変身する。


 2mの大男の兜がさらに大きくなり昆虫の外骨格を持った5mほどの巨人に変身しモンスターを蹴散らしていく。


 兜が城壁から離れると緑が降り立ち横幅20mほどのダンジョンの扉を開けるそこからクウとレイが飛び出していく。クウはモンスターを打撃や投げ技、関節技で倒していき、レイは手首の内側より両刃の鎌を生やしモンスターを切り刻んでいく。それぞれが3方向に進む後を黒い絨毯が追いかけるように広がっていく。


 その黒い絨毯はクウの子供のホレストアント達だった。その数500匹。


 3人が進んだ後に所々に強いモンスターの個体が残っていた。


 しかし、そのモンスター達が1人でに倒れていく。それは、兜、クウ、レイが走り抜けた後ホレストアントが到達する前に、姿を消したレイの子供のデッドマンティス達の仕業であった。およそ50匹。


 ゴランの冒険者達は唖然としていた。本来、本能のまま襲い掛かってくるモンスター達が連携をとって戦っていることに、その戦っている相手が自分達ではなく同じモンスターであることに。


 城壁から見えるほとんどのモンスターが動かなくなったころ。2人のギルドマスターのもとに蟲人が戻ってくる。


「みんなケガはない?」


「大将の実での攻撃の後だから楽勝だったな!」


「そうです♪ 楽勝でした♪ 」


「ヒカリさんの初めの攻撃が無かったらきつかったと思いますよ~」


 そんな風に和気あいあいと戻ってきた緑達を見てゴードンどころかピエールまでが顔を引きつらせながら尋ねる。


「被害はあったのか?」


「いえ! 0です!」


 顔を引きつらせていたギルドマスター2人が大笑いをしはじめお互いの肩をたたき初める。緑が不思議そうに首を傾げているがそれはしばらく続くのであった。


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