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187話 ミドリムシと龍種のキッザニ〇


 カッ! カッ! カッ! カッ!


 はぐっ! はぐっ! もぐっもぐっ!


 子気味良くスプーンが器の底を叩く音が聞こえ、その後に食べ物をかむ音が聞こえる。


「ふふふふ、シェイドったら夢中に食べ過ぎよ」


「はははは。私達も、もしかしたらあの様だったのか?」


「くしししし、そんな事は無いよな緑?」


 シェイドが緑の出した昼飯を夢中になって食べてるのを見て、3人が温かく見守りながら思った事を口にする。


 そんな3人の言葉に緑は苦笑いして答える。


「シェイドほどでないけど3人共、はじめての食事は夢中になって食べてたよ」


「本当なの!? 緑!?」


「はははは、人の事は良く見えても自分の事はさっぱりだな」


「そうなのか…… まぁ、緑のダンジョンの飯はうまいからな。それも仕方ない!」


 予想外の緑の言葉に驚いた3人だが緑のダンジョンの飯の旨さに納得する。


 そんな、緑達の話を聞いていたシェイドが口を開く。


「しかしだな! この、カカアゲだったか!? 外の側のカリッとした歯ごたえとは裏腹に中の肉は柔らかく、そこから溢れる肉汁はなんと美味いのだ! こんな美味い物が存在するなど夢にまでも思わなかったぞ!」


「シェイド唐揚げだ! かっ! らっ! あっ! げっ! 確かに唐揚げは正義だ!」


 シェイドの言葉に中華料理が好きなサラマンダーが大きな声で反応する。


「ふふふふ、確かにそうね。揚げ物は美味しいとは思うけど、私の中ではクロケット。クリームコロッケが最高かしら。噛むと中のカニやエビの風味が口いっぱいに広がって海の恵みを感じるわ。やはりフランス料理が1番だわ」


 そう言ったウンディーネは視線をサラマンダーとノームに移す。


「まて! クロケットは確かにフランス料理だが、コロッケは日本食ではないか!? ウンディーネが好きなのはフランス料理だがコロッケは日本の食べ物だっただろう? やはり至高は緑が住んでた国の料理、日本の食べ物であろう! コロッケは日本料理だ!」


「確かにクロケットはフランス料理でコロッケは日本の料理かもしれないけど、日本料理ではないでしょう! クリームソースが1番合うものはクロケットでしょう! カニクリームコロッケやエビクリームコロッケあれは、中にクリームソースが入っていると言っても良いんじゃない!?」


「確かに! ぐぬぬぬぬ……」


 コロッケが日本料理かフランス料理かで白熱する、ノームとウンディーネ。


 緑も思うところはあるが、美味い物がどこの国に所属するかは気にならない。美味い物は美味い、それで良いと思うのが緑。


「おい、2人共そんな些細な事でケンカをするな。普段冷静な2人らしくない」


「「……些細な事ではない!」」


「……」


 2人の剣幕にサラマンダーが絶句する。


 そんな3人の要素を気に留めないシェイドが緑に尋ねる


「もぐもぐ……しかし……くちゃくちゃ……午後もさっきの……ごくり。作業を続けるのはたまらんな……」


「シェイド食べながら話すのはお行儀が悪いよ」


「む…… そうなのか、すまん……」


 シェイドが食べながら話したことを緑に注意され、素直に謝る。


「いやに素直だな、気味が悪いぜ」


 シェイドが素直に謝ったことにサラマンダーが思わず口を開く。


「ここではじめて知ることが多いが、どれもよく考えればおかしくない…… というかあたりまえの事が多い気がする。そんな当たり前のことを自分は考えすらしなかった、のだと思うと…… 緑の言う事は全てが正しい事を言ってる気がしてくる」


 シェイドの言葉に緑が慌てて口をひらく。


「ちょっとシェイド! 僕の言葉をよく考えてくれるのは良いけど、全部を正しい事だと思わないで!」


「んん? 緑は間違った事をいっているのか?」


 緑が慌てて言った言葉にシェイドは不思議そうに聞き返す。


「僕は…… 自分が良いと思った事を言っているだけで全てが正しいとは思っていないよ」


「だが、緑。お前の言ったことはすべて正しい事に聞こえるが?」


「それは、あくまでも僕の考えで。僕の言っている事は全ての人に当てはまらないと考えているんだ…… 僕が聞いたり知ったりした事で良いと思った事を言ってるけどそれが本当に正しいかどうかは、聞いた人によっては間違ってるかもしれない……」


「だが、今まで聞いて事は全てが良い事だと思うのだが……」


「考えた上でそう思ってくれるなら良いんだけど…… 何も考えずに僕の言ったことをそのまま言ったり、行ったりすると場所や時間、立場によっては間違ったりするんだ」


「そういうものなのか……」


「シェイドあなたが言った事を部下に言った事で間違った事はない?」


「む…… それは……」


 緑の言葉に助け舟を出す様にウンディーネがシェイドに尋ねる。


「私もお前の命令で他の大陸に行くことになって、緑と出会ってから自分の言ったことや行った事を思い返す事がおおくなった」


「ああ、俺もだ」


 ウンディーネの言葉にノームとサラマンダーが肯定する様に口を開く。


「自分ができるから、他の者に同じようにやれと言うのは……」


 ノームが言いはじめた事を最後まで言えずいたのを見てサラマンダーが補足する。


「特に部下達に命令する場合、無理難題を押し付ける事になる場合もあるな」


「ええ、サラマンダーの言う通り。自分の部下に期待を込めて目標を高く設定することがあるけど、それは本当に正しい目標なのかと…… よく考えて言わないとダメだわ……」


「そうなのか……」


 そんなやり取りをした後に緑達は、再び開墾の作業に戻る。


それから数時間後


 ほじほじほじほじほじ


 龍種からすれば、こよりで穴を掘るような作業。


「「もう我慢できない!!」」


 そういった龍種4人の声で、緑達のその日の作業は終了した。




 翌日


 食堂に集まった龍種4人の中でも特にシェイドが疲れていた。


「おはよう。シェイド。昨日はよく眠れた?」


「私達の様な龍種は、細かい作業を長い時間するのはむずかしいようだな……」


「俺も細かい作業を長い間つづけるのは苦手だ!」


 あからさまに昨日の疲れが残っているシェイドを見て3人の龍種が声をかける。


「この俺の姿を見て昨日の疲れがとれているとでも? しかし、こんな事ははじめてだ。数日の間、戦った後でさえひと眠りすれば疲れはとれるのだが…… ノームの言うと通り、龍種に細かい作業は向かないのだろうな……」


 3人の言葉にシェイドが返事をするがそこで、シェイドがある言葉を思い出す。


「これが他の種族に劣っている部分か!?」


「そうだ」「うむ」「そうね」


 シェイドの言葉に3人が力強く頷く。


(それは、皆が苦手なだけじゃないかな~)


 と思いながらも口には出さない緑。


 シェイド達と緑の戦いの前にダンジョンに来た、龍種達の中には戦いより畑仕事の方が向いていると言っている者達もいた。


「しかし、今日の朝飯は昨日と比べると少ないな…… これでは疲れもとれないぞ」


「シェイド…… 昨日はお前の歓迎も兼ねていたんだ。いつも昨日みたいに沢山飯を食おうと思ったら沢山働かないとダメだぞ」


「ああ、サラマンダーの言う通りだ。緑のダンジョンでは働けば働くほど、美味い飯が沢山食べれる」


「そうね、私達は基本的には食事をとる必要はないけど…… 美味しいご飯は沢山たべたいわよね? それならば、働くしかないわね」


「しかし、昨日の畑仕事は難しいな……」


 そう言ったシェイドはあからさまに落ち込み、うつむく。


 緑には、その目尻には涙が見える。


「あれでは疲れがとれない上に飯の量も多くできなさそうだ……」


なでなでなでなで


「ん? なんだ? 緑」


 シェイドは黒髪黒目の子供の姿をしており、その姿のままであからさまに落ち込んだのを見て思わず緑が頭をなでる。


 緑が小さな姿のシェイドの目線に合わせてしゃがみ込み、ニコリと笑い口を開く。


「大丈夫。ここにたくさんの仕事があって、自分に合った仕事が必ず見つかるからはずだから。すぐにお腹いっぱい食べれるようになるよ」


「本当か!?」


 緑の言葉を聞きシェイドは目を輝かせる。


「うん、きっと見つかるよ!」


「よし! 今日は私に合った仕事を見つけるぞ!」


「じゃあ、今日は鍛冶の仕事場を見にいこう」


 緑とシェイドのやり取りを見ていた3人の龍種が笑う。


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