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186話 ミドリムシの開墾


「王様、今日は畑のおしごとですか?」


「もう王様なんて呼ばないで緑って呼んでよ」


「いえ、私達を救っていただいた方の名前を簡単に呼べません」


 畑に向かう途中で緑に声をかけたのは孤児院にいた男の子。


 彼はダンジョンで歓迎され、それまで食べたことがない美味い料理を食べた時、それが最後の晩餐で自分達が売られると勘違いした子。


「残念だけどしょうがないか…… 皆、ご飯はたくさん食べれてる?」


「はい! ここでは働けば働くほどお腹いっぱいたべれますし、仕事も勉強もできる夢の国です!」


「それは良かった! じゃあ、そろそろ僕達は畑に向かうね!」


「はい! いってらっしゃいませ!」


 緑がダンジョンの暮らしを確認して畑に向かうと、彼は大きな声で緑を見送る。


「ふむ、緑はやはり王にしては気安く声をかけられるが、あなどられてはいないな……」


「ええ、きっとそれはこれからも嫌というほど見るわよ」


「ああ、そうだな!」「うむ」


ウンディーネの言葉にサラマンダーとノームが同意する。




 緑達がしばらく歩き畑に着くと、そこに大人と子供達が畑仕事をしていた。


 子供達の1人が緑を見つけると声を上げる。


「ああ! 王様だ!」「本当だ!」


「「おはようございます!」」


 その声に子供達が気づくと、緑の前に集まりそろって挨拶をする。


「みんなおはよう! 畑仕事は楽しい?」


「うん、こんなおっきな大根がとれた!」「がんばったら、いーっぱいごはんがたべれるー」


「みんなといっしょにがんばるー」「おなかがすいて動けなくならなーい」


「ぐす…… ぐす……」


 緑の質問に皆が明るい口調で返事をするが、その中にたまに過去の悲しいえエピソードが含まれており緑の涙腺を攻撃する。


「もう緑たっら…… 今は皆が幸せそうにしているじゃない」


「そうだ緑、お前はまだまだこれからたくさんの人日を幸せにしていくんだろう?」


 緑が子供の様に泣き出すのを見て、ウンディーネとノームがあやす様に緑に優しく声をかける。


「くしししし、見ろシェイド緑は強いのにすぐに泣くんだぜ」


「なぜ緑は泣くのだ? 泣くのは悲しいからだろう? だが緑自身は悲しくないはずだ」


 緑が泣くのを見てその様子を愛おしそうに笑うサラマンダー。そのサラマンダーの言葉にシェイドが尋ねる。


「緑は誰よりも優しいんだろうな。緑は他の者の悲しい出来事を自分の事の様に悲しむんだ……」


「ああ、そして緑はその悲しみを忘れてしまうほど、その者を幸せにする」


「ええ、それが緑の強さの秘密なのかもしれないわね」


「なぜ、それで強くなるんだ?」


「「その悲しみをなくす努力をするからだ(よ)」


 シェイドの質問に3人の言葉が重なり、思わず顔を見合わせる。


「くしししし」「くくくく」「うふふふふ」


 3人は声を合わせたことに驚くがすぐに笑い出す。


 そんな3人を不思議そうに見ていると、


 ドーン! ドーン!


 緑達が居る畑のさらに奥から大きな爆発音が聞こえる。


「兜にクウは派手にやっているみたいだね」


 緑と子供達のやり取りを畑仕事の止め、微笑ましくみていた大人たちが口を開く。


「兜さんもクウさんも私達には、重労働の開墾をしてくれています」


「だね、僕らもそこに向かおうかな。じゃあ、みんな僕達は兜達の方に行くよ!」


「「「いってらっしゃーい」」


「「いってらっしゃいませ」」


 緑はその言葉に手を振ると畑の奥の方に進んで行く。


 緑達が畑のお国に進むにつれて各種族の中でも屈強な者達が畑仕事をしていた。


「「王様おはようございます!」」


 そこには、人、獣人、エルフ、ドワーフ、龍種がいた。


「王様、初めは他の種族と一緒に畑仕事なんかできないとおもっていたぜ!」


 挨拶が終わるとはじめに口を開いたのはドワーフの男。


「それはこっちこそだ、ドワーフが畑仕事など力任せのいい加減な畑づくりになるとおもっていた」


 その言葉に反論する様に口を開くエルフ。


「エルフの知識を元にドワーフの力をつかい、獣人の統率力、人の応用力でこんなに良い畑ができるとは」


「ええ、バラバラな個々の力を合わせると良いとこどりになるなんて」


 獣人と人がそれぞれ後を追って口を開く。


「私はまだ細々とした作業にイライラするがな」


 人の姿になった龍種はまだ慣れないと頭をかく。


「ほう、戦の途中で居なくなっていたと思っていた者達は、ここにいたんだな?」


「シェ! シェイド様!」


 シェイドの存在に驚く龍種。


「ああ、もう気にするな俺は負けて緑の軍門にくだった」


「もう、軍門なんて言い方。僕は皆に家族になってもらいたいんだよ」


「「我等は王様の家族!?」」


「じゃあ、王様じゃなくお父様と言った方がいいのでしょうか?」


 と獣人。


「いや、親父か?」


 とドワーフ。


「パパでしょうか?」


 エルフ。


「お父さん……」


 人。


「もう! 緑で良いってば!」


「「わははははは」」


 そんなやり取りの後、緑達はさらに奥に進む。


 そこは鬱蒼とした森になりさらに進むと、森が突然に開ける。


「大将!」「緑さん♪」


 チキチキチキチキ


「「おはようございます!」」


 その開けた場所では兜とクウ、大量の子供達が森を開墾していた。


「おう! 兜」


「おはようクウ」


「みんな精が出るわね」


「……」


「お! シェイドか!」「本当です♪ シェイドさんもいますね!」


「シェイドと一緒に手伝いにきたんだ! じゃあ2人共シェイドにお手本を見せてくれるかな?」


「「わかりました!」」


 緑の言葉に2人返事をするとおもむろに地面に手を付く。


「この辺には大きな石はないな」「ですね♪」


「じゃあ次の場所だ」


 兜がそう言うと子供達が兜とクウの居た場所のまわりを猛烈な勢いで耕しはじめる。


 クウの子供達はアリの魔物といこともあり、木と雑草が抜かれた土地を人の力ではできない速度でふかふかな畑にかえていく。


 先ほど兜が言った大きな石のサイズだが、それは緑が見上げるような石のサイズで子供達が地面をふかふかに耕す途中、数匹が土の中に潜っていき1mはありそうな石を持ってはい出てくる。


 そして、その石は直ぐ近くの広場に積み上げられていく。


 緑達が子供達の作業を見ているとクウが声を上げる。


「兜さん大きな石があります!」「こっちも見つけた!」


 その声が聞こえるとすぐさま兜とクウの周りに子供達が集まりはじめる。


「それじゃみんなお願い♪」


 クウがそう言うと子供達が土を運びはじめすぐに20mほどの岩が現れる。


「よし!」「いきます♪」


 2人はがそう言うと兜は斧を持ち、クウは両手に外骨格をまとう。


 ドゴーン! ドゴーン!


 兜はその斧でクウはその拳で岩を割る。さきほど緑達が聞いた音は、兜とクウが岩を砕く音であった。


 兜とクウによってバラバラにされた岩は子供達が持てるほどの大きさに砕かれ、先ほどの石置き場に運ばれていく。


「ふむ……」


 兜達を見てシェイドが兜達から離れた場所で地面に手をつく。


 ジェイドの手から闇属性の魔法が地面に染み込んでいく。


「……あった。ふん!」


 ジェイドが力を込めると、魔法により岩に圧力がかかり岩が粉砕される。


 ズン!


「別にわざわざ掘り起こさずに地面の中で粉砕すれば良いだろう?」


「「あっ!」」


 チキチキチキチキ


 シェイドの言葉にその場に居た全員が声を上げる。


「シェイドよ、私もはじめにそうしてしまったが、それではダメなのだ」


「何? ダメなのか?」


 皆を代表する様にノームが口を開き、兜が集められた小さめの石を持ってきて斧で割る。


「シェイドさん石の中には様々な鉱石が眠っているんです♪」


「そうなのよシェイド地面の中でそのまま砕いてしまうとそれが回収できないのよ」


「難しいものなのだな……」


 クウとウンディーネの言葉にそう言ってシェイドが積み上げられた石に向かう。


 シェイドは両手を鱗におおわれた龍の手に戻し、1つの石を鷲掴みにするともう一方の手で殴りつける。


 石は見事に割れたが、サラマンダーがその砕かれた石を指さしながら口を開く。


「シェイドそれもダメなんだぜ」


 そう言われてシェイドは自分の殴りつけた石に目をむけると砕くだけではなく、所々で鉱石が粉砕されていた。


「難しいものだな……」


 そう言ったシェイドは兜達に聞きながら手伝いをはじめる。




「ぬぁあああ! やってられるかっ! 気がくるってしまう!」


「お、シェイドもねを上げたか! くしししし!」


「シェイドにしてはもったほうではないか?」


「そうね私もシェイドと比べてもそれほど長く続かなかったしね」


 シェイドの叫び声に3人が思い思いの言葉を口にする。


 その様子を見た緑が手を叩く。


 パンパン


「じゃあ、そろそろお昼にしようか!」


 シェイドがもう我慢できないと叫んだ時、太陽は緑達の真上に来ていた。


 そのために、緑が皆に休憩にして昼飯を提案するのであった。


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