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183話 ミドリムシの家族は戦う4


 緑達家族が腐緑の恐ろしさを話していると、罵詈雑言を垂れ流していたシェイドが突然大きな叫び声を上げる。


「そろそろ死にたくなってきただろう? 許しを求めるなら苦しまずにぎゃあああああああ!」




「あいつ…… これでもかというタイミングでシェイドが幻を見せている毒を切ったな……」


「うん、まーちゃんしかも今まで痛みを止めていた麻酔も一緒にね……」


「緑さん麻酔も毒なのですか?」


 緑と魔緑の会話を聞いたクウが質問する。


「麻酔も濃度を上げちゃうとそのまま起きなくなっちゃうからねー」


「ああ、毒にも薬にもなる。しかもあいつの場合は聖属性の魔法で一気に解毒もできるからな。今のがそのいい例だな。毒の量を調整して、シェイドにとって都合の良い幻覚を見せている間に別の毒で体を溶かしていく」


「しかも溶かしている間の痛みも消しながらだからねー。あの様子じゃいつから幻を見ていたのかもシェイドはわかっていないだろうね……」


「私の鎌も腐緑さんの毒で溶かされちゃうかもしれないですね~」


「レイ、私達は緑様達と戦う事などありえません」


「しかも腐緑の姉さんは聖属性で結界もはれるから、その中にこもっちまって毒を飛ばされたら結界を破れない奴は一方的に溶かされて死んじまうな」


 クウ以外の蟲人達も緑達の話を聞きながら、もし戦うならと想像して話はじめる。


 緑達から離れた場所で戦いの様子を見ていた勇者召喚のために来ていた各国の代表者も青い顔をしながら話していた。


「やはり【水野 緑】さんはどの方もとんでもない力をもっていますね…… 腐緑さんは、敵とみなしたら容赦ない方のようですね…… 正直、もしエルフの国に来ていたのが魔緑さんでなく腐緑さんだったらいったいどうなっていた事か……」


 そう言ったのはエルフのイリス。


「だが、腐緑は我々の国にはじめて来た際に病で倒れていく人々を助けてくれたのだ。敵に対して容赦がないのは皆同じだ。力を持っているからと言っても恐れてやってはかわいそうだのう」


 イリスの言葉に反応したのは、魔緑の義理の父になるフェン。


「フェン殿の言う通りだ。だが正直な話をすると腐緑があれほどこえぇとは思っていなかったぜ。うっかり尻でもなでた日にゃあ溶かされかねんな。がははははは」


「ビル殿…… しかし、緑達が我々人族の国に居た時は、【水野 緑】まだ1人だったのだが…… それが今や子供や女性までいる。しかも全員が恐ろしい力を秘めている…… もう考えるの嫌になってくる」


「ジーク殿人族は深く考えすぎなんちゃいます? 緑達は、基本ええ子らやし、もし間違った時だけ人生の先輩として何が悪いか教えたったらええねん」


「ですね、緑さん達はすっごく良い子です。悪い事は言えばすぐに直すと思います」


 ジークの疲れたとばかりに話す内容にグリンとヒューイが思わずこぼす。


「いや、人族の国では色々やらかしているんですよ……」


「それは、ギルドが困るくらいで人に迷惑がかかることではないのでは? どうせ、大量の素材や効果が高すぎるもの、絡まれて返り討ちにしたくらいではないかのう」


「たしかにそうですが…… こちらも緑達のことを考えていたのに時期やタイミングが……」


「まぁ、あいつらなら大概の事は自分達で片付けるし。誰かが害そうとしてもできると思うか? 人、エルフ、ドワーフ、獣人全部の国でもあいつらは無理だろう? がはははははは」




舞台上


「ぐうぅ! これはどういう事だ! 先ほどまでお前は這いつくばっていただろうが!」


 カラダをグズグズに溶かされた状態で横たわっているシェイドは腐緑を睨みつけながら叫ぶ。


「私はね怒っているんだよ。この世界に来てはじめて会った私に優しくしてくれた村の人達に病気をまき散らす命令を出したあなたにね」


「俺達は戦争をしているんだ。相手を殺すのはあたりまえだろ!?」


「うん、たしかにね。でも私はわかっているんだ。シェイド、貴方の達の軍勢は戦争をしている中でも戦争を楽しんでいるよね? もし、貴方たちが本気で相手を亡ぼすつもりならとっくに戦争なんか終わってる。それでも私達がくるまで戦争が続いてたのは、そこで苦しむ人達をみて喜んでいたからだろう?」


「強者が弱者を思いのままにするのはあたりまえだろう!? この世は弱肉強食だ!」


「それも正しい。じゃあ弱いあなたをどうしようが私のかってだよね?」


「ふん! くやしいがその通りだ。さっと殺せ!」


「誰が殺すものか! 簡単に殺されてそれで終わりなはずないよ! 君には苦しみ抜いてもらわないとだめだよ。公開処刑をするよ。緑ちゃん!」


 腐緑が緑の名を叫ぶと緑が声を上げる。


「それまで! 勝者腐緑! この戦いは僕達の勝ちだ!」


 緑の宣言で戦いの幕は閉じた。






数日後


「これより闇属性の龍種のナンバー1のシェイドの処刑をとりおこないます!」


 そう叫んだのは聖属性の龍種のナンバー1のウィスプ。


 処刑台の上で人になったシェイドが膝をつきその横にウィスプが剣を携えて立っていた。


 舞台の前にはウィスプ達と手を取りシェイド達と戦っていた蟲人達と龍種が集まっていた。その数は膨大で後ろの方になると望遠鏡を持たないと処刑すら見えないほどであった。


 その光景を全ての蟲人達と龍種が見えるようにファントムが空に魔法で処刑台の光景を映し出す。


「これは土地を豊かにして戦争をやめようした者の悲願。皆この光景を夢見ていた! シェイドよ何か言う事はあるか?」


「ふん! さっさと殺せ!」


 シェイドの言葉の後、ウィスプは剣を抜くとシェイドの首に当てる。


「さらばシェイド!」


 そう言ってウィスプは剣をシェイドの首からから振り上げると勢いよく下ろした。


 蟲人、龍種の目の前でシェイドの首がおち。さらに魔石をそのまま突き刺し魔法を使いシェイドの体を浄化し消し去った。


 シェイドの姿が消えた瞬間、龍種と蟲人達から喜びの声が上がった。


 そこからは、大陸が平和になった事で宴が開かれた。緑達は平和の立役者とされ蟲人や龍種から感謝の言葉を贈られ、もみくちゃにされた。


 宴がはじまると緑達もダンジョン産の酒や食べ物を渡し、大いに楽しんだ。


 宴は夜遅くまで続けられ、最後まで騒いでいた者達が休んだのは夜が明けかけていたころだった。


 そんな者達とは違い、緑達は日が変わる頃にはダンジョンの扉を開け中に入った。




「ファントムご苦労様。うまくいってよかったよ」


「緑様の蜜までいただいて失敗するわけにはいけませんから」


 そうかしこまって返事をするファントムだが姿は琥珀なので小さな少年がニコリと笑っていた。


 宴の前に行ったシェイドの処刑は、全てが緑から蜜を貰いファントムが膨大な魔力を使って作り出した幻であった。


 緑とファントムの会話を聞き口を開くものがいた。


「ふん、俺を生かしてどうする気だ?」


 そう言ったのは人の姿をしたシェイド。


「言ったよね、死んで簡単に楽になってもらったら困る」


「腐緑の言う通りだシェイド。お前はここでもっと広い世界を見るべきだ」


「くしししし、弱い物いじめよりよっぽど楽しい物があるぜ」


「私達も緑と出会わなければ面白味のない龍生だったわ」


「私も皆さんと一緒に居たいですが蟲人の皆さんと一緒に大陸を豊かにしないといけないですし」


 シェイドの言葉に反応した腐緑に続きノーム、サラマンダー、ウンディーネ、ウィスプが思い思いの言葉を口にする。


「まぁ、まず初めに世界にはまだまだ面白い事があることを知ってもらおう」


「そうだな、そのうえで面白い事を楽しむには、楽しくない事もしなきゃならい事を知ってもらおうか」


「緑様、今日は遅いので歓迎は明日にしましょう」


「そうだね、今日は遅くなったから歓迎会は明日にしよう」


 ファントムの言葉に緑も頷き、シェイド達を部屋に案内する。


「なんだこれは! こんな良い寝床があったのか!?」


 案内されたベッドに横になった瞬間あまりのベッドの心地よさにシェイドが叫びその声を聞き、緑達はニヤリと笑うのであった。






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