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174話 ミドリムシと冒険者の勘違い


「シャークさんにセリアいったいどうしたんですか?」


 ヒカリの子供達に運ばれた2人にいつもの調子で尋ねる緑。シャークとセリアはそんな緑とは違い真剣な眼差しで緑に答える。


「緑、今度は何と戦うんだ?」

「せや! なんでうちらに声をかけてくれへんかったん! 足手まといとおもわれたん? 今まで何度も一緒に戦ったのに!」


 緑の返事を許そうとしない2人の剣幕に思わず緑が驚き、どこから説明するべきかと考えていると2人は続ける。


「お前の事だ自分達で何とかなると思っていいるんだろう?」

「うちらは緑に一杯たすけられてばかりやけど…… うちらも緑の力になりたいねん!」


「いや、2人共落ち着いて、確かに戦いに行くけど大丈夫だから」


 スパイに侵入していたファントムの見立てに龍種のナンバー1達の考えが一致し、今回の戦いは負けるはずもない戦い。むしろサラマンダー達との戦いの方が危なかったと思うほど。それを知らない2人に緑は落ち着く様に言うがその言葉は2人の感情に火に油を注ぐ事になる。


「緑! お前はすでに人、エルフ、獣人、ドワーフの国の滅亡の危機から救ってるんだぞ! どの国もお前の力になりたいと思っている! 各国の王に応援を求めろ!」


「ほんまや! 緑達に救われた国々も緑の力になろうとするはずや」


「いや、本当に大丈夫なんです。2人共落ち着いて」


 緑が大丈夫と言えば言うほどに2人は危機感を募らせ、2人はどうすれば緑の助けになるか考えはじめる。


 少しの間2人が黙りこむ、緑がようやく落ち着いてくれたと思い口を開こうとした瞬間に先をこされシャークが口を開く。


「セリア、一旦戻るぞ」「え? なんでなん?」


「えっ!? 待って!? くシャークさんとにかく僕の話を聞いて!」


 セリアが思わずシャークの方を向くとそこには今まで見たこともない真剣な様子のシャーク、そんな様子のシャークに緑は待つように声をかけるがもはや聞く耳を持たれなかった。緑の言葉が聞こえていないかのように緑への返事もせずにシャークは口を開く。


「緑お前達は何時出発するんだ?」 


「今日、これから出発するつもりです……」


「ここに攻め込まれるわけではないのか…… なら、2日遅らせろ。それでこちらも準備を完了させる」


「僕達と一緒にいくんですか?」


「当たり前だ! お前達だけで行かせるつもりはない!」


「せや! 緑、2日まって! うちらも準備を間に合わせる!」


「時間が惜しい! 緑絶対に2日出発を遅らせろ! いいな! セリア戻るぞ!」


「うん! 緑2日待つんやでおいていったらしょうちせぇへんで! あと、うちらをさっきみたいにヒカリの子供達にダンジョンの入り口に運ばせて!」


「そ、それは構いませんけど……」


 緑がそう言うとヒカリの子供が2匹近づいて来る。


「緑! 絶対に2日待つんだぞ! いいな!」


 シャークがそう言うとヒカリの子供が2人を抱え飛び立つ。


「いっちゃった……」


 2人が運ばれていくのを見ながら緑が呟く。


「緑? どうした?」


「あ、まーちゃん。実は……」


 緑が魔緑に2人の話をする。


「お前は2人にちゃんと説明しなかったのか?」

「いや! 説明しようとしたけど2人の剣幕がすごくて……」


 魔緑の言葉に緑が間髪入れずに返事をする。その様子を見た魔緑も緑が真剣に理由を説明しようとした事を理解する。


「とにかく経緯をはなせ……」


 魔緑にそう言われて経緯を緑が話す。


「2人が尋常じゃない様子で2日待てと言ったんだな…… とりあえず、サラマンダー達にも話そう」


 魔緑がそう言い緑と2人で皆が待つ場所に向かう。


「まぁ、別に2日くらい待ってもいいんじゃねぇか」


「ああ、別に問題ないだろう。向こうも準備が整っているだろうが…… 2日くらいまたせてやれ」


「……そうね、自分達の都合が良い日に戦いがはじまらない事も良い経験になるわ」


 緑と魔緑が相談した3人の龍種は、特に問題もないために言われた通り待っても良いと返事をする。その事は家族全員に伝えられ緑達はそこから2日持つことになった。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「おお、戻ったか!」


 ダンジョンの入り口近くに作られた施設ではシャークの仲間より話を聞き、多くの冒険者があつまっていた。


「やはり緑達は、魔王と戦うみたいだ……」


「それは本当か!?」


「ああ、間違いない」「せや! まちがいないわ」


 2人の返事を聞いた冒険者達は、お互い顔を合わせ頷く。


「各国にこの事を知らせるぞ! 相手は魔王だ各国の力を結集してたたかうぞ!」


「「おおおおおっ!!」」


 冒険者達は声を上げるとそれぞれが所属するに国の扉に向かって走り始める。冒険者達は知らない、緑が悲しみのあまりそれを怒りにかえ魔王になってしまった事を。


 冒険者達は予想もしなかった各種族の国が勇者召喚を決定し、団結力して勇者召喚を行い現れる勇者が緑と渡り合えるほどの力を持つことを。


 緑達は、シャークとセリアときちんと話をしなかった事で2人が勘違いし、緑を殺せるほどの力を持った勇者が召喚されるなど予想できなかった。




 緑が待つように言われた日の夜、ダンジョンの中にある、人族、エルフ、ドワーフ、獣人の国へと続く扉が開かえれると人がダンジョンに流れ込む。


 それは、各国の精鋭と思われる騎士や魔法使い達、普段緑のダンジョンに入れる人数はギルドで管理されており、この様な大人数が入ることなどない。


 だが今回ダンジョンから出てきた者達の話を聞きギルドとそれぞれの国は即決した。


「「非常事態だ!」」


 冒険者達の話を聞いてギルドはすぐに非常時用の連絡網を使い魔王の発現を共有する。そこで決断されたものは近隣の各国の力を集結し勇者を召喚するというものであった。


 冒険者ギルドの中ではようやく各部署に【軍団(レギオン)】の情報が浸透するようになっていた。そのためにギルドとしては、直ぐに動くことのできる最大戦力でありその性質が善であると認識していたIらんくチームの【軍団(レギオン)】が密かに全戦力を集結し魔王と戦うという情報がもたらされるとギルドの中は大パニックを起こした。


 緑達の情報を伝えるためにダンジョンから出て慌ててギルドに駆け込むと叫ぶ。


「おい! 【軍団(レギオン)】が魔王と戦うらしいぞ!」


「なにっ! それは本当か!?」


 駆け込んできた冒険者の言葉にギルド内にいた他の冒険者や職員達が思わず声を上げる。


「ああ、ダンジョンに入っていた冒険者達が各国のギルドに走っている状態でここには俺が来たんだ!」


 冒険者の言葉を聞き、相手が魔王だと言われればここで万が一【軍団(レギオン)】が負けるとなるとその後の勝利は見込めない、なら冒険者ギルドは【軍団(レギオン)】と歩みを合わせ戦うしかないと判断した。


「相手が魔王だと! これは国の存亡にかかわるぞ! すぐに王の元に報告を走らせる!」


 その考えは各国にあるギルドの代表により各国の王に伝えられる。王は聞かされた情報からすぐに勇者召喚を決定する。そこからは、各国の主要人物が緑のダンジョンに向かいそこでさらに会議をする。


「緑達が魔王と戦うだと……もし、緑達が負けると……後は……どの国も滅亡しかない。すぐに各国に連絡をしろ! 人、エルフ、ドワーフ、獣人の国の総力をあげて勇者を召喚すると!」


 各国の王族に伝わる切り札【勇者召喚】、この術式は各国同じものであると認識していたがこの召喚時に使われる触媒が違った。それは各国が他の国に無い自国独自のものを使いそれぞれの国の特色にあった勇者を召喚が召喚される。


 人族であれば人族の勇者という風にエルフの国にはエルフの勇者となる。今回突然現れた【軍団(レギオン)】という冒険者のチームは勇者をの力を軽く超えると、どの国も考えられていた。


 本来なら、物置程度としか使えないダンジョンコアを使えばどの国もがうらやむ様な自然豊かな広大な世界が作られる膨大な魔力。


 魔物を進化させ人にするのはどこぞのおとぎ話のような話。だがそこまでにとどまらず、その進化した魔物は家族を次々と生み溢れかえる。


 召喚された勇者はあくまでも数人、圧倒的物量に対しても負ける事はないカもしれないが勝つまでの間に勇者以外が滅んでしまっては意味がない、それをあざ笑うかのように【軍団(レギオン)】は数の力も持っている。


 加えてダンジョンの複数の入り口の設置による各国をつなぐ。今まで以上に国と国との連絡にかかる時間の削減による各国の結びつきを強固なものにした。この異常なダンジョンの力を借りれるのも【軍団(レギオン)】がいればこそ。


 この常軌を逸した【軍団(レギオン)】の助けになるには各国の触媒を集め1国ではできない勇者召喚をすることと考えた各国の王達。


 騎士や魔術師達はダンジョンに入る。入り口近くの施設を通り、緑達が集結している場所へと向かう途中、陣を作りそこから数十名を緑達の元へと向かわせる。


 その者達は緑達と縁がある者や勇者召喚に関連する魔法使いと騎士達。彼等は緑が各国にもたらせた体力や魔力を回復する実を持たされ強行軍で緑達の元に向かう。


「はぁ、はぁ、やっとついた…… 緑はいるか!」


 その先頭に居た者が声を上げる。


「はい」


 彼等の接近に気づいた緑が彼等を待っていた。


「ジークさん、こんな夜にどうしたんですか?」


「お前達の応援にきた」


 先頭を走っていたのは人族の王都の東のギルドマスターのジーク。


「緑さん、魔緑お久しぶりです」


 そう言ったのはエルフのイリス。


「我らの娘の旦那はいそがしいのう」「まったくやわ」「いつも騒ぎの中心にいますね」


 3姫の父親のフェン、ヒューイ、グリン。


「俺は、作った中の武器で1番できの良いものをいくつか持ってきた」


 そう言ったのはダンジョンで鍛冶を教えているドワーフのビル。


「他に見たことが無い人たちがいるんですが……」


「ああ、この者達は今から行う術式を行う者達だ」


「戦う前に何かするんですね……」


「ああ、この術式は緑達の助けになるはずだ」


「わかりました、皆さんは良ければあの家を使ってください」


 そう言って緑が指さす方向を見るといくつものログハウスが見えた。


「これは助かる、走り通しだったんだ」


「なら今日はもう遅いですしゆっくり休んでください」


「いや、俺達はこれから術式構築の準備をする、寝るのはその後だ。緑達は俺達を気にせず十分に休みを取ってくれ」


「……わかりました。では、お先に失礼します……皆さんもあまり無理はしないように」


 そう言って緑は自分達が休む場所に向かって離れていく。普段であれば無理やりにでも休まそうとする緑であったがシャークやセリアに続き、尋常ではない雰囲気のジーク達に無理を言えずジークの提案を受け入れた。


 翌朝、緑達は普段の日課の鍛錬を行い明日の戦いに向け、疲れを残さない様にやすんでいた。


「2日待つことで急に休みができてしまった」


「そうだねまーちゃん。でもたまにはこうして何も考えずに過ごすのも悪くないね」


 緑達家族は、唐突にできた休みに戸惑っていた。


 普段であれば皆なにかしら行動を開始する時間なのだが、明日は負ける事がない戦いと言われてもやはり万全の体調で向かうつもりの緑達家族は明日に疲れが残るような鍛錬もできなければダンジョンの入り口から離れているために施設の利用もできずにいた。


 場所はダンジョンの入り口から離れた自然が豊かな広めの平原そこにある小さな扉の前に緑の全家族が集結していた。


 その扉の近くには台座がありその上にはダンジョンの入り口の管理できるダンジョンコアが置かれていた。今、そのダンジョンコアに触れる者がいた。


「「!?」」


 のんびりしていた緑と魔緑だが2人に緊張が走る、扉が開く前の雰囲気に気づいた2人は水の張られたタライから飛び出すと真直ぐに扉に向かう。


「なんだクウか…… もう、驚かせないでよ~」


 ダンジョンコアに何かあったのかと焦った2人は慌てて確認をしに来たところ、クウを見つける。


「良いことを思いついたんです♪ 少し先にダンジョンの扉を開けて出ても良いすか?」


「えっ!? 明日は皆でたたかうんだよ?」


 クウの言葉に思わず緑が返事をするがそれを魔緑が止める。


「まぁ、待て緑。クウ、お前に危険はないのか?」


 緑を止めた魔緑がクウ達に危険はないかと確認する。


「はい♪ 私に危険はありません♪」


「なら構わないんじゃないか? 緑……」


「……本当に危ないと思ったらすぐに帰って来るんだよ……」


「はい♪ わかりました♪」


 そう言ったクウは緑に突然飛びつき抱き着く。


「わわっ! ちょっとクウいきなりびっくりするじゃないか」


「心配されて嬉しくなっちゃいました♪ では行ってきます♪」


 クウが緑から離れるとダンジョンコアに触れる。するとそれまで小さな扉だったものが巨大な門にかわる。


「では、みんな行くよー♪」


「「えっ!?」」


 巨大な門が開くとクウとその子供達がまるで土石流のように門にはいってく。


「大丈夫かな?」「大丈夫なのか?」


 クウだけで扉を出ると思っていた緑と魔緑は思わず顔を見合わせるのであった。



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