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168話 ミドリムシと蟲毒の種族


 村長が村人の生存確認して落ち着いたのを見計らって腐緑が声をかける。


「村長さん、ちょっといいかな?」


 腐緑が何気なく村長に声をかけるが思わぬ反応が返ってくる。


「はい! 腐緑様! どのような御用でしょうか!?」


 村長から帰ってきたこの上なく腐緑達に敬意を払った言葉に腐緑は驚きつつも気になっていたことを尋ねる。


「村長達がこの大陸から他の大陸に助けを求める蟲人に病を感染させたのですか?」


 腐緑に尋ねられ少しだけ沈黙した後に村長が答える。


「……はい、我らでございます……」


 カタカタカタカタ


 そう言った後、村長は答えると会話をする腐緑がすぐに気づくほどに体を震わしはじめる。


「村長……それほど僕達を怖がらないで……」


 腐緑の言葉に跪き顔を伏せていた村長が思わず顔を上げるがはっとした様子で顔を再び伏せて再び震えはじめる。


 腐緑の言葉に村長のみが震えており、他の村人達は龍種の庇護下に入ると聞き喜んでいた。


 しかし、村長は気づいた。腐緑と同行した3姫が獣人であり、思い返せば会った当初からうっすらと緊張した雰囲気をまとっていたことに。


 そんな村長の心の内を知ってか知らずか腐緑が優しく話しかける。


「僕達を率いる人は蟲毒の戦士を輩出していた部族に関しても酷い事を考えている人ではないよ。むしろ同情しているくらいだよ……」


 腐緑にそう言われた村長は目を見開き驚く、だがすぐに視線を正し口を開く。


「今まで我等一族の罪は何卒私のみに課していただきたい」


 そう言って村長は頭を下げるがそれを見て腐緑は困った顔をする。


『うちのリーダーはそう言われるとめっぽう弱いんだよね~ 本当にどうすればいいんだろう……皆みーちゃんの考えを聞いていたらなおさら蟲毒の戦士の種族には同情しちゃうよね~」


「ああ、僕達を率いている人にはそう伝えるよ……」


 内心とは裏腹に困りながらも村長にそう返事をする腐緑であった。




◇◆◇◆◇◆◇◆



シェイドの本居地のとある部屋


「う~ん妙ですね……闇の龍種のナンバー1のシェイドは龍種のナンバー1の中で1番お年と聞きましたがサラマンダーさんよりも若く感じます……」


 レイとシェイドが居る本拠地に侵入したファントムは、それまで集めた情報と事前に聞いた情報を照らし合わせ出した自分の考えに思わず呟く。


 ファントムの呟きを聞いたレイも思わず小声でファントムに自分の意見を伝える。


「龍種の様な長寿の種族の感覚の話だから、私達には理解できないのではないでしょうか~?」


 レイの意見を聞き、シェイドの様子がおかしい事をもう一度考えるファントムだがそれでも違和感をぬぐえずレイに考えを伝える。


「いや……どうしても、他の龍種の方達から聞いた話と我々が監視している間の行動や考え方に大きなズレを感じます……」


 そう言ったファントムはブツブツと言いながら自分が監視している間のシェイドと他の龍種からきいたシェイドの行動を思い出し、何だも予測をたてる。


 そんな様子を見て思わずレイが呟く。


「それなら別人だったりするんですかね~」


 そんなレイの言葉を聞いたファントムがレイの方に振り返り思わず答える。


「レイさん、それを言うなら別龍で……す……よ……!? 確かに……レイさんの言ったことが正解なのかもしれませんね……ありがとうございます」


 ファントムの中で謎が解けたのかレイにこれでもかという笑顔を見せる。そんな様子を見てレイがファントムに尋ねる。


「謎はとけたのですか~?」


「はい、おかげさまで……後は、その推測が正しいか確認しましょう」


 そう言うとファントムがあるきはじめ、その後を追うレイ。2人の姿は徐々に見えなくなりその後コツコツと鳴っていた足音も消えるのであった。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「あ~、やっぱり蟲毒の戦士を輩出する各種族も問題をかかえているよね~」


「そうね、私達もこんな風にかかわらなければ何も知らなかったわ」


「あれ? 蟲毒の戦士達と龍種が手を組んだからてっきり昔から交流があったんだと思ってたけど違うの?」


「ええ、もちろん交流はあったけど、それはごくごく僅かなものだったわ。たまに物々交換するくらいかしら……でも、もし交流相手が緑達だったら交流はもっと盛んになったとおもうけどね」


 そう言ったウンディーネの手には緑の果物があり、それを少しづつ食べていた。


「う~ん、美味しい! でもこの大陸の蟲人達はこんな風に果物をたくさん食べる事はできなかったのね……」


 そう言って悲しそうなウンディーネ。それにつられて同じように悲しそうな顔をする緑は続ける。


「各種族間の距離が遠すぎたんだろうね……でもそれもわかっちゃうね。自然界の蟲達も相性の良し悪しで簡単に大きな巣や強い蟲が他の蟲に捕食されることも多いし。それが蟲人にもなると徹底的に天敵の蟲人を避けたり逃げたりしてきたせいで他の蟲人とも距離を取ってしまったんだね」


「そうなのかしら、もともと他の種族と関係性をあまりきずかなかった龍種の私には少し理解できないかも……」


 生まれた瞬間に食物連鎖の上位に居た龍種のウンディーネには、緑の話したことはあまりできなかった。自分にも理解できない事や認識できない事がたくさんあると知りつつも緑は、それらに気づいた事をそのまま放置することができず、考え、想像し、予測する。


「やっぱり、自分達を弱い者だと思う者達は、生き延びる手段を模索すると思うんだ。それが良い事か悪いことかわからないまま……」


 緑達が蟲毒の戦士を生み出す部族の風習を聞いた時、緑の感情は悪い習慣、悲しい習慣と考えた。だが、その種族達にすれば自分達が生き残るため考えた答えであり、その答えが世間一般の常識から外れていたことに気づかなかったとしても、他の種族達と関係を結べなかった種族達の責任ではない。


 根本として皆が同じ立場ではなく、それぞれの立場がありその立場も周りの環境に大きく影響を受け風習は形作られた。考えら続けた風習が残酷で悲しいものにも関わらず蟲毒の戦士を輩出する種族達で似たものに到達したのは根本が生き残るために強くなろうと考えたためだったのかもしれない。


「貧しい土地や場所はそれこそ人も動物も蟲も魔物も弱肉強食か……いや、どこも一緒か……」


 そう呟いた緑は悲しそうな顔をする。そんな緑にウンディーネがやさしく語り掛ける。


「緑、あなたが悩む事じゃないわ、この世は弱肉強食だもの。でもねそんな弱肉強食の外に立つ、半分植物のようなあなたなら、蟲人達も幸せにできるんじゃない?」


 緑達、【超ミドリムシ】は普段人々と同じ食生活をしており忘れそうになるが水と空気と太陽さえあれば食事もいらない。


 ウンディーネの言葉を聞いた緑の表情は明るくなる。


「うん! そうだね♪ 蟲人も龍種も皆幸せにするよ!」


 緑はそう言って立ち上がる緑を隣に座って話していたウンディーネが嬉しそうに見上げる。


 ツンツン


「りゅうさんおきないね~」「おきないね~」


 数人がかりで二桁代の強さの龍種を倒した干支緑が話していた。


『まずい、どうすればいい。こんな小さな子供に負けるとは……初めはゴブリンかと思ったが強さが段違いだ……よく見ればゴブリンの様な醜い姿でもないし、途中ドライアドの子供かとも思ったがそれも違った。ドライアドと比べても強さすぎる……しかも今更気づいたがあそこに居るのは水のナンバー1のウンディーネだ……」


 その様に思っていた龍種のそばの干支緑達は、アイテムボックスから回復の実を取り出し龍種に与えようとする。そんな姿を見てウンディーネが声をかける。


「待って干支ちゃん達、その実を上げる前に気絶したふりをしているその子に聞かないとだめなの」


 そんな言葉に干支緑達の傍に倒れていた龍種はぎくりとするのであった。


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