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167話 ミドリムシと毒


 腐緑の髪に縛られて村長とその妻は、村の入り口まで腐緑達の先導により歩いてくると絶望した表情になる。それは、村の外に待っていた大量の魔物見たためであった。


 もちろん、魔物とはヒカリ、クウ、レイの子供達だがそんな事をしらない2人は怯えきっていた。2人は震えから歯をカチカチと鳴らし、絶望の涙を流す。


「あ、あ、あ、あ、何なんだこの大量の魔物は?」


「村のみ、皆は!? どこに!?」


 そう言いつつも2人は最悪の想像をしていたが、それはある意味裏切られる。おかしな表現になるが村人達は子供達によって手厚く拘束されていた。そんな事を知らない村長はすぐに返事をしなかった腐緑達の様子から村の者達はもれなく魔物の腹の中に収まったと勘違いする。


「くそ! くそ! くそ! こうなったらお前達も道ずれにしてやる!」


 そういった村長の口の端から紫色の煙がもれはじめる。周りに居た子供達はその様子を見るや素早く距離を取るがそんな様子を見た村長は笑い始める。


「くっくっく、そんな距離を取ったくらいでこれから逃げられるものか! 俺達の一族が長年集めた病の結晶だぞ! 俺達も殺されるだろうがお前達の仲間も大量に道ずれにしてやる!」


 村長はそう言うと龍種がブレスをはく様に紫色の煙を辺りに向かってはきはじめる。村長自身も自分がはいた紫色の煙に視界が遮られるがそれでも辺りに振りまく様に煙をしばらくの間はき続けた。


 村長の口から紫色の煙がでなくなると膝をつき震えはじめる。


「これで村の人々の仇が少しはとれただろう……」


そう呟いた村長の隣では妻の蟲人が吐血しながら倒れていた。村長が体を引きずりながら妻の傍まで行くと妻は血を吐きながら話しかける。


「ゲホッ! ゴホッ! 貴方、私は先に行くようです。あなたを皆と一緒にまっています」


「ああ、俺も直ぐにいくよ……」


 そんな2人の会話を遮る声が響く。


「浄化!」


 その声が聞こえた瞬間、村長と妻の周りの煙が消え失せる。


「なっ! なんだと!? 俺達の! 俺達の一族の結晶が一瞬で!?」


「そんなものを一族の結晶なんて言うもんじゃないよ……」


 いつも飄々としている腐緑が珍しく怒りの感情を漏らす。


「それに……奥さんも死にかけているじゃないか……」


 そう言って聖属性の魔法を使い村長の妻を治癒する。先ほどの会話を最後に意識を失った村長の妻は苦しそうな様子をしていたが腐緑が魔法を使うと穏やかな寝息をたてはじめる。


「お前達は俺達を一体どうしたいんだ!?」


「どうするもなにも私達は蟲毒の風習を潰しに来たんだ……」


 腐緑の言葉を聞くと村長は叫ぶ。


「それは蟲毒の戦士を輩出する一族を根絶やしにするんだろうが!」


 そういって村長は腐緑に殴りかかるが腐緑の髪に絡めとられ、殴りかかろうとする姿のまま動けなくなる。村長が動けなくなることを確認した腐緑は言葉を続ける。


「まだ、喋ってる途中なんだ。確かに風習を潰すと言ったが蟲毒の戦士を輩出していた各一族を皆殺しにするようなつもりはないよ……君達がそんな風習を律義に守ってきた理由もなんとなく想像つくしね」


「なら他の村皆はどうしたんだ!? こんな大量の魔物が村の外に待っている状態で無事なはずがないだろう!」


 そんな言葉を村長が叫ぶと、子供達の海が割れ道ができそこを村人達が歩いてくる。それに気づくと村長は叫ぶ。


「お前達! 無事だったのか!?」


「無事だったのかとは、どういう意味ですか? 村長はこの方たちに説得されていたんではないですか? この龍種の仲間の方たちに……」


「龍種だと!?」


 死んだと思っていた村人の言葉に驚いた村長は腐緑達の方に顔を向ける。その様子を見た腐緑が苦笑いをする。村長の視線が腐緑に向かっていたためにその視線を遮るようノームが一歩前にでて告げる。


「それは間違いだ、彼等の仲間に龍種がいるのだ」


 ノームの言葉に村長はに混乱する。


「一体何を言っているんだ……?」


 村長は自分達が他の種族の子供ほどの背丈にしかならない種族だと認識しており、自分達以外にも背丈が高くならない種族も居るだろうと考える村長はノームの事も小さな体ながら怪力を持つ種族だと思っていた。


 村人の言葉に混乱する村長に村人がさらに言葉をかける。


「我らの一族は龍種様の庇護下にはいれるのです! これで嫌な風習を守る必要もありません!」


 村人の言葉に村長は思わず視線を腐緑に戻す。


 そんな村長の様子を見たノームがヤレヤレと村長に話しかける。


「私が本当の姿を見せよう」


 そう言ってノームが本来の姿に変貌する。


「そのお姿は!?」


 総長がノームの本来の龍種の姿をみて驚きの声を上げる。ノームは人族の国がはじめ龍種と気づけなかったほど龍種の常識からはずれた小さな龍種。だが、その存在をはじめから土の属性の龍種と知っていれば忘れることができないほどの存在。


 知っていれば忘れる事のできない姿に村長は叫ぶ。


「ノーム様!」


「ノーム様!?」


 村長の言葉に今度は村人達が驚きの声を上げる。村人たちを説得する際にノームは自分の実力の一端を村人たちに見せていた。


 自分達の想像すらできない速度で動く子供姿を見せられて驚くも、それでも実力を測れない村人に地面に手を付き優しく手に力をこめる。


 地面は、音もたてずにゆっくりと陥没しはじめ、大きなクレーターを作る。それだけ自分達とはかけ離れた力を持つ者と認識した村人達はノームの説得に応じる。



 ノーム達の庇護下に入ると……



 だが村人達はしらなかったその子供姿をしたものが土属性の龍種のナンバー1のノームだと言う事を……自分達よりも強大な力を持つ小さな姿をした子供がまさかの龍種のナンバーだという事に子供の姿を目にしていた村人達は想像もできなかった。


 だが、村人達は村長の言葉で覚えていた、以前に各龍種のナンバー1の姿を目にした村長の言葉を聞いた者達は、村長は土の龍種のナンバー1だけは見間違う事はないと言っていたために、その言葉が間違いではないと。


 ノームの本来の姿を見た村長はノームの前で跪く。それを見た村人達もすぐさま跪いていく。


 そんな様子を見たノームが腐緑に尋ねる。


「これからどうすれば良いのだろうか?」


 そんなノームの言葉に腐緑は、少し悩んだ後にニコリと笑い答える。


「とりあえず、定期連絡の時に相談しようか」


 そう言って腐緑は、緑や魔緑に丸投げしようと思うのであった。



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