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159話 ミドリムシは怒り狂う


「クソがぁ!」


 そう言って近くの壁を殴りつける魔緑。周りにいた者達も魔緑の行動にその身を強張らせる。


 魔緑が振るった拳は壁を突き破り穴をあけるが、緑達が居るのは劣勢とは言え国で機密事項を話す場所で部屋の造りは、国の威信をかけて頑強に作られ相対する敵戦力の干渉を防ぐ場所であり、簡単に壊れない様に作ってある。


 もちろん外側からだけでなく内側からの干渉に対しても強固な部屋である。


 そんな部屋の壁を魔緑は怒りのまま殴りつけその壁を突き破る。それと同時に魔緑は、これまで出したことが無い様な大きな声で叫ぶ。


「おい! 俺はここに居るぞ! 今、この時からお前達が戦いたいと思ったらいくらでも相手になってやる! 簡単に殺せると思うなよ! 俺を殺せなけばお前達は滅ぶと思え!」


 そう言って魔緑は、龍種のブレスと同等の炎の魔法を空に向かって放つ。


 その魔法が同等なのはその威力と速度で本来なら強力な魔法の動きは直線的なものであるが魔緑の放った魔法は幾何学模様をえがき、放った方向の空を埋め尽くす。


 その空はこの世界では理解できない高温の魔法で白く染め上げられ、今まで誰も見たことが無い白い空となった。


 緑の家族の中、むしろ【水野 緑】の中で思想や考えで1番の常識を持つ魔緑。そんな彼が蟲毒の戦士の風習を聞き怒りを抑える事も出来ず空に向かって魔法を放つ。


 それに呼応するかのように魔法を放つ者がいた。


 それは、腐緑。


 彼女は魔緑より後ではあったがその怒りを魔緑と同じように魔法に込めた。


 だが、魔緑と違い腐緑の放った魔法は、自分達が居る国を覆うものであり、その効果は魔緑とは違い守るための物であった。緑達が幸せにすると言った国で緑の言葉を馬鹿にすることもなく、その言葉に感謝を述べた聖属性の龍種が蟲人達とおさめる国が光の壁に覆われる。


「ちょっと! 魔法の被害がこの国にまで届くとおもったよ!」


 怒りで感情が高ぶった腐緑が魔緑に向かって文句を言う。


「だがここに居る奴全員の代弁をしただろう!」


 敵の本拠地からもその存在を確認できたと思われるほどの魔法を放った魔緑は、腐緑の文句にすぐさま言葉を返すと敵がいると思われる方角をにらみつける。


 そんな、魔緑を見た腐緑は、自分自身を落ち着けるために深いため息をはく。


 緑の家族の中でも高い戦闘力を持つ魔緑の怒りが和らいだかと思った矢先、今度は緑が叫び始める。


 普段冷静な魔緑が感情を露わにし、敵に対して自分の位置を知らせるような行為に走るほどの怒りを行動にした。その話を同じように聞いたのに緑が無反応なはずがない。


「うぅああああああ!」


 緑も家族が驚くような声を上げる。


「馬鹿!緑落ち着け!」


 自分の事を棚に上げて魔緑は緑に落ち着く様に叫ぶがすぐさま緑が反論する。 


「こんな話落ち着いてきいてられないよ! うぎぃいいいい!」


 落ち着かせようと魔緑が叫ぶも緑は、感情を抑えることができずになおも叫び続ける。魔緑の次に緑が半狂乱になる中、腐緑があることに気づき緑の声に負けない大きさで叫ぶ。


「ちょっと! 魔力が溢れていない!?」


 緑が【超光合成】で作り出すエネルギーはいつもであれば、実にしてアイテムボックスに保管したり、配ったりするのだが緑の意志につられてかそのエネルギーが攻撃的な魔力に変換されていく。


「おい! マジでやばい! 緑、魔力に変換するな!」


 緑が魔力に変換した量があまりに膨大なために魔緑も叫ぶが緑に届かず、大量の魔力が緑よりあふれ出す。そんな中、蟲人達は歓喜しながら叫ぶ。


「さすが緑様! 膨大な魔力が溢れています!」「緑さんの魔力は世界一です♪」


「さすが大将!」「すごい魔力です~」


 蟲人のヒカリ、クウ、兜、レイは緑から溢れる魔力に関心して声を上げる。


「緑様! 落ち着いてください!」


 ただ、1人冷静なファントムは緑に落ち着く様に叫ぶ。


「緑! 落ち着け!」「そうだ! お前らしくない!」


「ちょっと! 他の皆が緑の魔力に当てられて死んでしまうわ!」


 サラマンダー、ノーム、ウンディーネの龍種達も思わず叫ぶ。そんな龍種達の叫びもむなしく、緑達の部屋を中心としその周りで緑の魔力に当てられた蟲人達が気絶し倒れていくのであった。






「えっ!? この魔力は?」


 緑達が居る場所から遠く離れた場所、次元が違う場所、明確な表現ができない場所にいる彼女。その彼女は、緑がこらえ切れずあふれ出した魔力に反応して思わず声を上げる。


「どうして!?」


 彼女が上げた声に驚いた彼女の部下達は尋ねる。


「ど、どうされたんですか? 女神様……」


 女神の部下たちは自分達の上司に恐る恐る尋ねるが返ってきたのは一言であった。


「すいません! 席を外します!」


 そう言った女神は部下達の前から姿を消すのであった。


 

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