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153話 ミドリムシは蜘蛛をつかまえる


「お~い、今戻ったぞ~」


 そう言って魔緑達が帰った先は、蟲人と竜種達が戦い続ける大陸にある1つの国であった。


「あ! まーちゃんお帰り! どうだった!?」


「どうしたもねぇ、蟲毒の戦士の1人と戦ってきたよ」


 その魔緑の言葉に周りにいた蟲人達が驚き声を上げる。


「蟲毒の戦士と戦ったんですか!?」「ケガは!? 体は大丈夫ですか!?」


「どうやって逃げてきたんですか!?」「私達の国の部隊の遺品は!?」


 魔緑の返ってきた挨拶のトーンから緑は察していたが、周りにいた蟲人達は蟲毒の戦士と戦った魔緑達は逃げかえってきたと決めつけ話かける。


「おいおい、落ち着け。逃げかえってきたわけじゃないし、部隊の奴らも俺達が駆けつけた時に生きていた奴は全員無事だ」


 魔緑の言葉を聞き蟲人達は絶望した表情を浮かべ魔緑に詰め寄る。


「生存者がいるのか!?」「逃げかえってきたわけではないなら……」


「まさか降伏して蟲毒の戦士を連れて来たのか!?」


「だ! か! ら! 落ち着いて話をきけ!」


「「……」」


 蟲人達があまりに話を聞かないため魔緑が叫び蟲人達も押し黙る。


「あんた達の俺達に対する評価は大分低いらしいな……」


 魔緑がそういった瞬間外が騒がしくなる。


「おい! 蟲毒の戦士と戦いに行った部隊が返ってきたぞ!」


「しかもあれは! 蟲毒の戦士を生け捕りにしたのか!?」


「「えっ!?」」


「蟲毒の戦士は思ったほどじゃなかったぞ、干支緑達だけでも十分に対応できていた」


「それは、良かった。強さが龍種クラスであればどうしようかと思ったけど」


「「えっ!?」」


「なんだお前達が大陸の外に求めた戦士は蟲毒の戦士すら倒せない者なのか?」


 緑と魔緑の会話に驚きの声しかあげていなかった蟲人達に魔緑が尋ねる。尋ねられた蟲人達は気まずそうに口を開く。


「すまない。我らの目から見てどうしても貴方達が強そうに見えなかったため……」


「ちっ! アメンボの奴らちゃんと話をしたのかよ」


「か、彼等は悪くないのだ私達が信じられていなかったんだ! 彼等に非はない! ど、どうか許してくれ!」


 そう言って魔緑に平謝りをする蟲人達。そんな時、部屋の奥にあるドアが開かれる。


「おお! 魔緑さんお戻りになられたんですね」


「ああ、蟲毒の戦士は特別強くもなかったぞ」


「おお…… 流石だ…… 俺達の任務は成功だ…… 大成功だ…… ぐぅうううう」


 ドアを開けたのは緑達に救いを求めたアメンボの蟲人達の1人であった。その蟲人は魔緑の言葉を聞くなり涙を流し嗚咽する。その様子を見た魔緑は視線を緑に戻し話始める。


「そんで緑。今後倒した蟲毒の戦士はどうするんだ? 殺すのか?」


「う~ん、そうだね~ 蟲毒の戦士はこの大陸で有名だけどあんまり印象はよくないよね? それなら僕達のダンジョンかもしくはこの大陸で慈善事業でもしてもらおうかな?」


「そうだな、この大陸の戦争を終わらせればその線で行こう」


「簡単に楽にはさせないよ、罪を償ってもらおう」「そうだな……」


 2人が会話を終えると広場の方の騒がしさの様子が変わる。


「キャアアアア!!」「蟲毒の戦士が起きたぞぉおおお!」


「みんな離れろぉおお!」


「寄るんじゃねぇ! 雑魚どもがぁああ!」


 広場の方から聞こえる騒ぎを聞いた魔緑が口を開く。


「お! 起きたか。緑、一緒に来てくれ」「わかったよ、まーちゃん」


 そう言って2人は広場に向かうのであった。




 広場に向かう緑と魔緑は人をかき分けながら進む。


「すいませーん! 通してくださーい!」「すまないが通してくれ!」


 人をかき分け進んだ先には、蜘蛛の戦士を髪でグルグル巻きにした干支緑達がいた。


「みんなお疲れ様ー!」「お前達、髪は緩めてないか?」


「「おにいちゃーん!」」「あっ! バカ!」


 2人の姿を見た干支緑達が戦闘の時とは違い全員がその顔を笑顔にして、2人の元に向かって走ってくる。その瞬間、髪が緩み蜘蛛の戦士が髪から逃れる。


「「あ!?」」


 それに気づいた干支緑達が声を上げるがその時には完全に蜘蛛の戦士は髪の拘束から抜け出していた。髪の拘束から抜け出した蜘蛛の戦士は叫ぶ。


「ぎゃははは! 戦略的撤退だ! ついでに雑魚どもを殺しながら逃げてやる! あばよっ!」


 そう言って振り返り逃げ出そうとした蜘蛛の戦士は壁にぶつかる。


「痛てっ! 壁!?」


 蜘蛛の戦士が振り向きざまにぶつかり壁と思ったのは巨人化した兜であった。


「よう! あんた蟲毒の戦士の1人だってな! いっちょ俺と勝負してくれねぇか?」


 兜の声を聞いた蜘蛛の戦士は視線を上に向ける。蜘蛛の戦士も地面から目線は3mの高さにあるが巨人化した兜は5mほどの高さのため視線を上げるが返事もせずに兜に向かって糸を放つ。


「愚鈍なビートルの蟲人か!? お前みたいなデカくて鈍いのは今まで何人もぶっ殺してきたんだよ! お前も直ぐに死にな! ぎゃははは!」


 蜘蛛の糸で兜を雁字搦めにした兜に向かって蜘蛛の戦士が下卑た笑い声を上げ蜘蛛の足で串刺しにしようと思い飛び掛かる。だが、その行動は兜から聞こえる音によって変更される。


 ブチブチブチ


 その音を耳にした蜘蛛の戦士は飛び掛かるも何もせずすぐさま兜から距離を取りに睨みつける。


「てめぇっ!」


 蜘蛛の戦士の視線の先には蜘蛛の巣を簡単に引き千切る兜の姿があった。


「これが蜘蛛の糸か…… 俺にはあまり効果がないようだな……」


「糸を引き千切ったからっていい気になるなよ!」


 干支緑達との戦闘では、自分を中心に円状に張った蜘蛛の巣を今は範囲を狭めて扇状にし、兜の居る方向に放ちながら蜘蛛の戦士は叫ぶ。


「お前達ビートルの蟲人は馬鹿力だからな! だが愚鈍なお前につかまる俺様じゃねぇ! なぶり殺しにしてやる!」


 そう言って蜘蛛の戦士は兜の周りに張った蜘蛛の巣の上を兜を中心に高速で動きまわる。


「どうだ! 俺様の動きについてこれねぇだろう! 木偶がそのまま死っぐあっ!」


 蜘蛛の戦士が死ねと言いかけた所で兜が蜘蛛の戦士を掴みそのまま握力を込めていく。


「クソがっ! 話せ! 話せ! ぐあああああ!」


 はじめこそ、蜘蛛の足を捕まえた兜であったがすぐさま、その足を引くともう片方の手で人の形をした上半身を掴む。


 バキバキバキバキ


「クソがぁ! グゾガアアアア! ウゲェエエエエ!」


 兜の握力によって上半身を握りこまれ、そのダメージが内臓に達し血を吐きはじめた蜘蛛の戦士。その姿を見た兜は残念な顔をして緑達の方を向き叫ぶ。


「大将、蟲毒の戦士捕まえました」


「うん、兜ありがとうね。でも殺さないでね」


「兜なら緑に何も聞かづに殺したりしないだろう……」


 ギリギリギリギリ


「ちょっと兜それ以上はだめー!」


 蟲毒の戦士との戦いを楽しみにしていた兜はそのあっけなさに思わず握った手に力を込めてしまうのであった。


「グゾガァア゛!」


 蜘蛛の戦士はそう叫ぶと再び意識を失った。

 



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