148話 ミドリムシはお話する
彼らは、久々の休暇を満喫していた。休暇と言っても自分達より圧倒な強者につかまり、部屋の中は自由に動けるが外に出る事はできないために彼等は体を休める事に専念していた。
彼らが課せられた任務を達成するためには、これから彼等を捕まえた者の主と対面するのは好都合であり、もし助力を得られたとしたら任務を達成した事になると全員が考えていた。
ぐ~~
生活する上で上質な部屋にいる事になっても腹は減る。彼らの誰もが腹が減り、本来なら全員が任務を達成するために渡されていた魔法のバッグ(中が見た目よりも数十倍もの物が入る袋)を取り上げられていたために食事ができず腹の虫がなっていた。
彼等は自分達に与えられた部屋より移動して、全員が座れる机の前に集まっていた。
「久々の休暇と思っていたが腹は減るな……」
リーダーの男の呟きを聞き部下は全員が無言で頷く。
「「ごはんで~す♪」」
その声に彼等は声がする方向に頭を向ける。彼らが集まった部屋には内側から開けれない扉があり、そこが唯一の外部へつながるのだと推測していた。彼らが顔向けたその扉から小さなエメラルドグリーンをした子供達が皿をかかえて入ってくる。
ぐぐ~!
子供達が持ってきた皿には食べ物が乗っており、彼等が今まで嗅いだこともない良い匂いがしさらに腹の虫が泣き声を上げる。
だが、彼らの視線は子供達の最後に入ってきたのは彼等が部屋にいたことを気づかせなかった、背に鮮やかな翅を生やした子供であった。彼等の目はその子供の釘付けになる。
「皆様それほど警戒をしないでください。その気になれば皆様が警戒したところで全員が気づくこともなく殺す事ができるのですから……」
その言葉に蟲人達は、一瞬、警戒するも自分達が生きている事に、入ってきた彼らの目的は自分達を殺す事ではないと気づき思考を切り替え持ってこられた食事に視線を移す。
そんな蟲人達を代表するかの様にリーダーの男が尋ねる。
「我らが食事をいただいてもいいのでしょうか?」
そんな質問にファントムは返事をする。
「私達の主は無暗に相手を殺すようなお方ではありません。むしろ貴方達から話も聞かずに殺したら、話も聞かずに殺したことを怒る方です」
「なるほど……」
リーダーの男は一言だけ呟くと敵対するかもしれない相手を無暗に殺さない主とそれを踏まえた上で自分達の世話をする子供達に関心する。
彼が黙るのをみてファントムが口を開く。
「では皆様、食事をお取りください。一様、私達が作れる幾つかの料理をお持ちしましたが食べれない物などございましたら遠慮なく行ってください」
「ありがたく頂きます…… 貴方と貴方の主に感謝を……」
「感謝を……」
リーダーの男が感謝の返事をすると部下達も後を追うように感謝を伝える。彼等が食事をはじめると直ぐに部下達が声を上げ始める。
「美味い! 美味すぎる!」「ああ、俺達だけこんな美味い物を食べても良いんだろうか!?」「ううう…… こんな美味い飯を家族にも食わせてやりたい」「ぐすぐす…… 飢えている子供達がいるのに…… 今も私達がこうしてる間にも飢えていく子供達が居るのに……」
彼等は出された物を食べるにつれて涙を流し始める。そんな彼等の様子を確認したファントムは部屋から姿を消す。彼らの様子を見て食事を運んで来た干支緑達が話始める。
「わるいひとじゃないよね~」「ごはんをたべてなくひとにわるいひとはいなよね~」「はやくおにいちゃんとおはなしできるといいね~」
干支緑達の会話をよそに彼等は涙を流しながら食事をする、そんな中リーダーの男だけが泣かずに決意をした目で食事を取るのであった。
彼等はそれから数日の間、任務のついてからむしゃらに進み続けた疲れを癒すように体を休めていた。
そして、その日はやってきた。
「皆様、そろそろ疲れも癒えたかと思いますので私達の主に会っていただこうかと思います。皆様にはこの数日でお話を聞きましたが、もう一度私達の主の前で同じお話を聞くことになります。ですが落ち着いて嘘偽りなく我らの主にお話をしてください」
「「よろしくお願いします!!」」
ファントムの言葉に彼等は無意識に同じ返事をする。彼らの返事をニコリと笑い、返事を確認をするファントムであったがその後に彼等に釘を刺す。
「皆様の事はこの数日の間、お話をさせていただきましたが我らの主は、皆様の世話をした私達と比べるのも烏滸がましい方です…… 万が一、億が一、危害を加えようと思わないでください。そう思った瞬間に私以外の誰かに皆様がすり潰される事になりますのであしからず……」
そういってファントムから出た殺気を浴びた彼等は、動くことはもちろんの事、息をする事すらできなかった。さらに、彼等はファントムの言葉に驚愕する。
彼等は、自分達の前に居る小さな少年の姿をしたファントムに加え、全員が見ただけで気絶を余儀なくされた男の他にまだ強者が数人いる事を把握する。
さらに、冷静になればそんな実力の者が珍しくものないという事にファントムの言葉から感じ取る。
そんな悪夢の様な言葉を聞いた数日後、彼等は自分達の世話をしてくれた者達の主に合うのであった。
彼等は、自分達に与えられていた部屋より案内され、自分達が集まっていた部屋よりさらに大きな部屋に案内された。
その部屋にはただ1つだけイスが用意されており、そのイスに座っているいる優しい目をした、全身エメラルドグリーンの中性的な男に声をかけられる。
「はじめまして! 僕は、水野 緑と言います! 皆さんどうか楽にしてください」
そう言って緑は彼等に楽にするように勧める。
カタカタカタカタ……
彼等は、全員が震えていた。その理由は自分達にきやすく声をかけてくれた主と言われる男の後ろにに控える、ほぼ人族にしか見えない蟲人達がかもしだす雰囲気に飲まれていた。
「緑様はこうおっしゃっています」
「緑様は優しいんです♪」
「大将が話をきいてくれぜ!」
彼らが怯えるのも無理がなく、今まで家族以外に厳しい姿勢を見せてきたヒカリ、さらに今は、クウと兜までが同じ蟲人のせいなのか、あからさまに威圧をしながら彼等に話しかけていた。
彼等は今話している【水野 緑】この人に自分達の任務を伝える事ができれば任務を達成されると考える。
彼等が震えながら任務の事を考える中、緑が尋ねる。
「皆さんはどういう意図で獣人の王国に病を運んできたのかな? 獣人の国に病を広げるため?」
緑が彼等にそう尋ねた瞬間、緑から溢れた殺気にそばにいた、ヒカリ、クウ、兜、レイ、ファントムの蟲人達が一斉に跪く。彼等もまた先ほどまで優しい雰囲気を出していた【水野 緑】から出た殺気に思わず跪く。
【水野 緑】の殺気にさらされ、跪く彼等であったが殺気に耐えられるはずもなくリーダーの男を残して、その部下達は残らず気絶しその場に倒れるのであった。




