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145話 ミドリムシの仲直り


「まーちゃん! 落ち着いて!」


 魔法を腐緑に向かって放った魔緑に対して緑が慌てて声をかける。


「こいつは、少しばかりお仕置きが必要だろ?」


 こめかみに青筋を立てて魔緑が答える。


「ひっ! 落ち着いて! まだ感情の暴走が残っていたかも! ごめん! 本当にごめん!」


 そう言って腐緑は魔緑にどうか落ち着いて欲しいと懇願する。


「本当にそう思っているのか?」


 魔緑の問いかけに腐緑は壊れたおもちゃの様に首を縦にふる。


「うん! うん! 本当にごめん! まだ感情のバランスがうまく取れていないんだ!」


 その免罪符の様な言葉に魔緑は本当かと思うも落ち着きを取り戻し口を開く。


「次やったら、外さないぞ……」


 そんな2人の会話を聞いて緑が喋り始める。


「もう、2人共落ち着いて! フーちゃんも暴走しないように落ち着いて! まーちゃんも魔法なんか打たないで!」


 先ほどまでのお涙頂戴の話の結末として言ってはならな事を言った腐緑と感情のままに怒った魔緑を緑が落ち着く様に言う。


「こいつが今までの話を台無しにしたんだからな!」


「ごめんよ! まーちゃん! これから感情のバランスを取るように努力するから!」


 魔緑の怒りに腐緑があやまり、他の者達はヤレヤレと言った様子で見る。


「まーちゃんもふーちゃんの事にいちいち目くじらを立てないでほしいのう」


 琉璃が夫となる魔緑に些細な事で怒って欲しくないと言う。


「腐緑さんも感情のバランスを取るようにしてほしいですね」


 蟲人を代表してヒカリが腐緑に苦情を伝える。


「……」「ううう……」


 魔緑と腐緑が苦情を伝えた2人にそれぞれにバツが悪そうにする。


「すまない」「ごめんなさい!」


 その後、改めて魔緑と腐緑の2人はそれぞれお互いに取った行動を思い返しあやまる。


 蟲人のクウと魔緑の嫁の琉璃がそれぞれ苦言を言いその後、魔緑と腐緑があやまり今回の話は一件落着と思った時、それは突然に起こった。


 弱肉強食の世界で被捕食者と捕食者の関係の中で感じる被捕食者が感じる恐れや恐怖、喪失感など様々な負の感情をその場に居た全員が感じ取る。


「え? あ…… あか…… ん。まともにしゃべれ……へん」


「ま…… まってください 何を…… そん…… な…に……」


 思わず起こったことに声を上げた凜とクウ。 


 そんな状態の中声を上げる事ができた2人の後に魔緑が声を上げる。


「お、おい…… こ、こんな状態じゃ…… まとも……にしゃべ……れねぇよ……とにか…… く、すこ……し落ち着いてくれ……」


 その場に居た者は誰もまともに喋れない中、落ち着けと魔緑が声を上げる。


 その時まで言ってしまえば日常の中のたわいもない会話をしていた者全員が純粋な恐怖に声を上げれずにいた。その理由もその恐怖をまき散らした者の声に恐怖を感じた者達が理解する。


「み…… みどりさ…… ま。 どう……か……お怒りを……」


 緑に怒りを鎮めて欲しいと言ったレイの言葉はいつもの間延びした言葉ではなく途中で途切れたものであった。


 その場で怒りをあらわにした緑以外の者達は、まともに喋れずにただただ緑に怒りを鎮めてもらうように願った。


 あまりの緑の怒りにその場に居た者達は疑問に思った。自分達の言葉の中に緑をここまで怒らすものがあったのかと。


 その疑問は、直ぐに解消される。緑達が話し合いをしていた場所に美しい翅を背に生やした胡蝶がやってくる。


「緑様お怒りをお沈めください」


 胡蝶はいつもの子供の様子ではなく熟練の執事のように緑に礼をし、緑に怒りを鎮めるように願う。


 緑の怒りはファントムが来たことが原因だったのだと全員が理解した。緑はファントムの言葉に怒りを抑え、ファントムが来た理由を確認する。


「ファントム例の人達はどうしてる?」


 はい、先日捕らえた時は酷く衰弱していましたが今は健康になり、私が聞いた事にも素直に答えてくれています」


「彼らが嘘をついている可能性は?」


「私が魔法で幻覚を見せて質問をしても同じ答えが返ってきたためにそれは無いかと思われます」


「それで今回彼らが病の原因でいいのかな?」


「はい、それは間違いないかと…… ただ話を聞く限りでは彼らが意図的に病を広げたのではなく、彼らの敵が彼らに気づかぬように病を植え付け泳がしたと思われます」


 そのファントムの言葉に完全に緑の怒りがしずまる。緑は1度目をつむり深呼吸し口を開く。


「……それで敵の情報は?」


「……」


 緑の言葉にファントムは、言いにくそうに黙り込む。普段であればファントムが緑の問いかけに返事をしずらそうにすることなどない。その様子に周りのいた全ての者がファントムに注目する。


「敵は龍種かと……」


「それなら皆ですっごく頑張ればたおせますね」


 緑の怒りが完全におさまり、気を取り直した者達を代表するかのように珊瑚が思った事を口にする。


「……」「……」


 だが話しをしていた緑とファントムは沈黙する。そんな沈黙を緑は聞きずらそうにファントムに問いかける。


「僕達が勝てる可能性は?」


「……今のままでは0%かと……」


「「!?」」


 ファントムの言葉に全員が戦慄する。ファントムは、緑達の家族の中で1番賢く賢者のような存在であり、ファントムの知恵と緑達家族の力があれば、この世界に打ち破れない壁は無いと緑達家族は思っていたほどであった。


 そのためファントムの言葉は全員に重くのしかかった。家族全員が押し黙り僅かな時間静寂が生まれる。


「でも今のままではだよね?」


 だがその静寂は家族になってまだ日も浅い腐緑が質問したことで破られる。



「はい…… 今のままではです」


「じゃあ、その0%を何とかするために頑張ろうか」


 緑の言葉に家族全員が真剣な目でうなずくのであった。


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