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142話 ミドリムシの新しい家族


 新たに出会った水野 緑は女性であった。干支緑達の中にいる女児ではなく美しい女性。緑と魔緑も中性的でイケメンであったが2人の顔をさらに女性に寄らせ歳を少しとった美しい顔に細いが女性らしさをきちんと持った容姿をしていた。


 こちらの世界に渡る前の緑は中学三年生であったが異世界に来るに至って、女神が緑に与えた能力が大きすぎたために世界の壁を越えるさいに緑は何人かに分かれた。


 その中の1人が元の緑より歳を得ていた。


 緑はそのことに驚いていたが今は先に病の事が気になり新しい緑に尋ねる。


「本当は色々話したい事があるんだけど先に病の事を聞いても良いかな?」


「ああ、構わないよ。ここまであらゆる手段を使ってきたんだと思うし」


 女性の緑がそう返事をすると緑は幾つかの事を確認する。


「まず1つ目にお姉さんも【鑑定】を持っているの?」


「お姉さんもって事は君も持っているのかい?【鑑定】を」


「はい、僕達も鑑定を持っています」


 この時、緑の返事の【僕達】とは、他の水野 緑の事をさしたのだが女性の緑は、緑の仲間に【鑑定】持ちがいると勘違いする。


 なぜなら、今目の前にいる緑以外に水野 緑が居るとは想像するできなかった。


「なら話は早いね、わかると思うけど、この町の人々は僕が1人残らず【鑑定】をかけて確認したから間違いないよ。町の責任者の人が理解のある人で本当によかったよ……」


 女性の緑の言葉に緑は安心する。


「では2つ目の質問ですがお姉さんはどうやって病をなおしたんですか?」


 緑は、病が完全に治っていることを確認したときに1つ不思議な思いをした。


 それは、緑達がしたように状態異常回復の実を作り、町の人間に配ったなら医者と呼ばれる事にはならないだろうと思ったのであった。


「ああ、それなら私が使ったのは毒だよ」


「毒!?」


 女性の緑の返事に思わず緑が大きな声を出してしまう。そんな様子を見て説明をし始める女性の緑。


「まぁ、少し落ち着いて。毒と言っても病に対しての毒の事だから安心して、私は髪の先から毒を出せるみたいなんだけど…… あなたはできない?」


 女性の緑に聞かれ緑は実をつけるつもりで毒を意識してみるが緑には毒を作り出す事は出来なかった。何度か緑は毒を出そうとするも毒を作り出す事はできず返事をする。


「残念ながら実を作るみたいに毒を作るのは無理見たいです……」


「えっ? 実を作るなんてことができるの!?」


 その女性緑の質問に緑が不思議そうにしていると女性の緑の髪の間に実がなりはじめる。


「わわ、本当だ♪」


 そう言って実をつんだ女性緑はそのまま口に運ぶ。実を口に入れた時は笑顔であったが噛めば噛むほど表情は曇っていきぼそりと呟く。


「おいしくない……」


 そんな様子を見て緑は苦笑いしながら答える。


「後で美味しくなる方法を教えます。話を戻しますがその毒をどうやって人々にいきわたらせたのですか?」


「ああ、それは街の人々に集まってもらって1人1人髪をチクリと刺して毒を出していったんだ。 いやー大変だったよ毒を出すと直ぐに元気がなくなってしまってね。 寝込んでは刺し、寝込んでは刺しでなかなか進まなくてね、【超光合成】でできるエネルギーも普通の生活をするなら問題はなかったけど毒を作り続けるにはいささか足りなかったんだ」


 女性緑の言葉を聞き緑は無言で魔法で水を作り出す。突然目の前に現れた大きな水の塊に目を丸くする女性の緑であったが、さらにその水が自分の体を包みこんできたために驚きの声を上げる。


「わあ! もしかして君の魔法!?」


 バシャ!


「ってきゃあ! 何するの!?」


 水に包まれ不満の声を上げる女性の緑であったが直ぐになんともいえない声を上げる。


「ふあぁぁぁぁ! 体の中からエネルギーがあふれてくるぅぅぅぅ!」


 しばらく悶絶していた女性緑だが落ち着くと緑に顔を向け話始める。


「【超光合成】には水が必要だったんだね。気づかなかったよ」


「僕もそうでした。ところで今の状態だと毒はどれくらい作れそうですか?」


「また、水を貰えるなら無限につくりだせそうだよ」


 そう言ってニコリと笑う。


「ならこれから、この町から王都に向かう途中にある町を一緒にまわって病が進んで動けなくなったものに毒を刺していってもらってもいいですか?」


「お安い御用だよ。人々を助けるのを手伝うよ!」


 そこから2人を中心に王都から1番離れた町から順に町や村の病を治しながら、王都に向かうのであった。


 


 数日後、緑達は獣人の王都の城に来ていた。


「緑よ今回の病の件、礼を言う。この事は後日に獣人の国の町村全てに発表する」


「どうかお気になさらず…… と言っても無理なんですよね」


「ああ、大きな働きをしたものに感謝を伝えるだけでは誰も向上心を持つことをやめてまう。緑達には無用な物であって冒険者や学者、騎士達、何かしらの努力をする者達はそれをもとめるだろう」


「そうですね、まぁ僕達にすれば新しい水野 緑を見つけることが出来たからそれだけでもよかったんですけどね」


「何!? 新しい水野 緑だと!? それはどういった人物なのだ!?」


 王は緑が思わずこぼしてしまった事に驚きの声を上げ、そのまま新しい水野 緑がどんな人物か問いただす。


 王のそんな様子に緑はとても歯切れ悪くしながら説明をするのであった。




 緑が王に呼ばれる前日、ダンジョンの中にある建物のとある一室で魔緑がこめかみに青筋を浮かべながら考え込んでいた。


「あいつは、病の治療が終わってから部屋に引きこもっているらしいな」


「完全に引きこもっているわけではなく日に数時間、ダンジョンの外にでて【超光合成】をしている様なんですがそれ以外は……」


 魔緑の質問に顔を青くして答えるのは、緑達が普段外に出る事が多い事から緑達の家の管理をするものであった。


 緑達のダンジョンでは今多くの人が集まり、学問、武術、魔術やその他の様々な分野で今まで情報交換をしなかった国同士が情報を共有し発展させていた。


 そんな中ろくに部屋から出ず、ほぼこもりっきりになっている女性の緑に魔緑は腹を立てていた。


「俺が言ってくる!」


 そう言って女性の緑の部屋の前にいき扉をノックする。


 ドン! ドン! ドン!


 ノックをしてしばらく待つも返事が返ってこない事にいら立ちを覚え魔緑が叫ぶ。


「おい! いるんだろう! 入るぞ!」


 魔緑が部屋に入ると部屋の窓から刺す光を浴び椅子に腰かけ花を両手に1本づつ持ち姿が見られた。さらにその2本の花をくっつけたりはなしながら何やらブツブツとつぶやいていた。


 魔緑が部屋に入っても気づいてない様子の女性の緑に魔緑は歩みよる。すると女性の緑がブツブツと言っていた内容を魔緑は聞きとった。


「みーちゃんのおしべ、まーちゃんのおしべを ツン♪ ツンツン♪」


 その呟いている内容を理解した魔緑は全身に鳥肌をたて呟く。


「こいつ腐ってやがる……」


 その事が皆に知られると女性の緑は腐緑またはふーちゃんと呼ばれるようになるのであった。



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