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131話 ミドリムシの衣食住

前の話に続き商人のはなしです。


「謝罪は先ほどして頂きました。どうかお2人共頭をお上げください、私の様な商人にそんなに謝ると弱みを握られてしまいますよ」


「ありがとうございます」「そう言ってもらうと助かる」


「私達も扉の直ぐ近くで待っていたも悪かったですし。もしそれでも気になさるようなら私達は王都に向かっている所なので【軍団(レギオン)】の皆さんと一緒に向かえたら嬉しいです」


「あれ? 僕まだ名乗ってなかったはずですし…… それに待っていた?」


「はい、緑さん達【軍団(レギオン)】の噂は聞いていましたし。実は、正直な話をすると緑さん達と縁を結びたくここまで急いで来たのです。扉を見つけた時は狂喜乱舞の思いでした。」


「縁をむすぶですか?」


 緑さんはキョトンと首を傾げ不思議そうに私を見る。その行動が少し可愛いと思ってしまった私は笑顔をになるがその途端寒気がしてきた。


「その縁とはどんなものだ?」


 その言葉は緑さんの隣にいる、もう1人の少しだけ目つきを悪くした緑さんが発した言葉だった。確か、緑さんには兄弟がいて目つきが少し悪いのは確か魔緑さんだったはず。そう思い魔緑さんに顔をむけ誤解を解くために話す。


「誤解しないでください! やましい気持ちは一切ありません! と言っても信用されませんよね!?」


 思わず自分の口から出た言葉に悔しく思う。自らやましい気持ちはないなんて言ってしまっては言い訳にしか聞こえない。このままでは話す前から疑われてしまう。私は悔しい感情と魔緑さんの発する殺気で普段の様に話をまとめて話す事が出来ずにいたが意を決して口を開く。


「もし、私がおかしな言動や行動を取ればあなた方は何時でも私を処分することができるでしょう?」


「そうだな……」


 魔緑さんがそう言うと殺気は霧散し、それを感じ私は安心する。しかし、否定をしなかったな……。それは、やむをえなければそのも考えている……という事だな……。


「それでは、商人の皆さんの出発の準備できたら教えてください」


「わかりました」




 その後、私達は準備を終え緑さんに話かける。


「緑さんお待たせしました出発の準備ができました」


 そう言った私であったが確実に自分で顔が引きつっていることがわかる。


 なぜなら、今私達の周りには大量の緑さん達のご家族がいるからだ。先ほど噴火したかのような勢いで出てきた緑さんの家族は今私達の周りで走り回ったり、飛び回ったりしている。


 世間一般ではアリ、ハチ、カマキリの魔物達でありこれほど大量に居た場合はすぐに発見次第、近くの街の冒険者ギルドから情報が駆け巡り、討伐のために国の軍や冒険者達が集められるだろう。


 だが、一見魔物に見える彼らは緑さんの家族であり、本来は本能で動く魔物と違い緑さん達親の元、軍隊の様に動く。この戦力は計り知れない。初めは怖かった子供達も時間が経つにつれ可愛く見えてくる。


 護衛の冒険者達は体の大きなホレストアントの子供達に乗せてもらってはしゃいでいた。虫の魔物は種類によってとてつもない膂力を持っている。特にホレストアントは自重の数十倍の者を簡単に持ち上げ運ぶことが出来る。少しの間冒険者を背中に乗せて走り回るなど苦にもならないだろう。


 しかも子供達は遊んでいる様に見えても私達では気づかないほど遠くにいた魔物に気づき、命令されるまでもなく、ホレストアント、キラービー、デッドマンティスで狩りに向かいその死体を持って帰ってくる。


 私達商隊のメンバーはその運んできた魔物の死体を見て驚愕する、その死体は驚くほど傷が少なく一刀のもとに切り伏せられており、血抜きも終わっていた。


「おいおい、こんな綺麗な死体はなかなかあるもんじゃねぇぞ」


 商隊をいつも護衛してくれる冒険者がこぼす。やはり冒険者から見ても子供達が運んできた魔物の死体は驚くほど綺麗な物だったらしい。


「しかし、これほど見事に一刀できるなら素材だけを持ち帰ることもできるんじゃないか?」


 そんな声が上がるとそれを聞いた緑さんが口を開く。


「僕達の場合ダンジョンで完全に解体して余すことなくギルドに全てを渡しているんです。余りお金にならない部位もありますが…… 魔物でもその命を奪うために、その亡骸は全て何かに使うべきかと思いまして……」


「「なるほど……」」


 この発言から魔物でも命を奪う事に抵抗を覚える人なのだなと私は思い、更に好感度があがり思わず呟いてしまう。


「緑さんは優しい人なんですね……」


「そうです緑様は優しいお方です」「緑さんはすごく優しい方です♪」「ですね~」


 女性の蟲人が私の言葉に同意しそれぞれニコリと笑うする。


 その言葉に私ははっとし思わず頬が熱くなっている事に気づく。


 そんなやり取りをしていると先頭の馬車から護衛の冒険者がやってくる。


「今日の野営はどうするんですか?」


 それを聞き太陽が沈みかけて何時事に気づき緑さん達はどうするのだろうかと思い隣の馬車の御者をしている緑さんに顔を向けると笑顔を返される。


「野営の事なら心配いらないので日が沈む少し前まで進みましょう」


 私はどうするのか不思議に思うが緑さんの笑顔を前にして頷くしかできなかった。




 私はその夜に楽園を知ってしまった。


 緑さんに案内され緑さんの持つダンジョンに入る。そこには広大な自然が広がりその中にある施設は洗練されたものだった。特に食事はすごいの一言であった。今まで食べてきた食材が何だったのかと思うほど馴染みのある食材の質の味が1段も2段も高く、その食材が合わさり料理の質を遥か高みに押し上げていた。


 さらに、その料理と一緒に飲む酒。酒屋顔負けの種類が用意されており、味やアルコール濃度などで細分化されて自分ぴったりの酒を選べた。


 幸せを噛みしめながら食後も酒をいただいていると風呂に案内される。もう少し飲んでいたかったが歓迎していくれている以上あまりわがままを言ってはダメだと自分に言い聞かせ案内されるままに付いていく。


 案内されるままに行くと私の前に緑さん達家族の女性陣が案内をしてくれた。どうやら緑さんは私を男性と思っていたらしい。まぁ、私も服装から良く男性の様だと言われるので無理もないと緑さんに伝えるとすごく申し訳なさそうに謝られた。


 その後、女性陣に案内され風呂に入る。





 ああ、素晴らしすぎる! 外で入る風呂がここまで心地いいとは知らなかった! 体を洗い湯につかり心地よさに酔いしれているとなんと酒が運ばれてくる。


 先ほど案内を断り飲み続けなくてよかった。女性陣が言うにはこのダンジョンは衣食住の食と住に特に力を入れているとの事であった。


 その後、案内された寝室の寝具も素晴らしいものであった。一緒に風呂に入った冒険者達も昨日緑さん達と出会い私と同じように感じたらしい。


 その後、私はベッドに入るとすぐさま意識を失うのであった。



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