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125話 ミドリムシと龍


 双眼鏡を除いていた冒険者達が見たものは、小さな子供が習得できるはずもない高度な武術を使い狼の魔物を次々と倒していく光景であった。


 冒険者達も自分の持つ武器が無かった時のために武術をおさめる者が多い。そのため3人の子供が使う武術のレベルの高さに驚く。


 だが、それだけでは先ほどのような驚きの声は上がらない。冒険者達が驚きの声を上げた理由は魔物達が3人に襲いかかると、体の1部が消失し倒れていくからであった。




「むぅ、討伐部位を残す様に言われたが消し飛んでしまったな」


「私達の力じゃ簡単に魔物の体なんてバラバラになってしまうわね」


「むぅ、どうしたものか」


 冒険者達が驚きの声を上げているころ3人は悩んでいた。


「確か毛皮も売れるとはずだな」


「私、半分吹き飛ばしちゃったわ・・・・」


「我もだな・・・・」


 そんな時ノームと言われた子供がぽんと手を叩く。


「そうだ、確かこうか?」


 そう言って繰り出したのは手刀であった。ノームに飛び掛かった魔物が空中に飛び上がった瞬間、側面に回り込み、その首に手刀をはなつ。


 魔物はそのままの体制で地面に着地もせず倒れこむと頭が落ちる。


「なるほどな」「そうすればいいわね」


 そういってサラマンダーとウンディーネもノームを見習うように手刀で次々に魔物の首を落としていく。


 3人が残りの魔物を手刀で1匹1匹丁寧に魔物を倒したため全滅させるのに思った以上に時間がかかってしまうのであった。





「ふむ思った以上に時間がかかってしまった」


「しかたないわよ、綺麗に倒した方が緑達が喜ぶんですもの」


「そうだな、しかしこの死体はどうやって運ぼうか・・・・」


 3人は倒した魔物の素材をどうやって運ぼうかと話していると干支緑達がやってくる。


「みんなー おわったー?」


「おお、干支緑達よ丁度良い魔物の素材を緑の元まで運ぶのを手伝ってくれ」


「「はーい」」


 そうノームがいうと干支緑達がそれぞれ魔物の死体を髪で持ち上げる。


「では、みんな戻りましょう」


 ウンディーネの声で干支緑と3人は緑の元に歩き出す。




「ば、化け物だ・・・・」「あんな小さい子が・・・・」


「緑色の子供達もあれは魔法か何かか? どう見ても魔物の死体が浮いてるように見える・・・・」


 3人が魔物を倒す光景と干支緑達がその倒した魔物を運んでくるのを見て冒険者達は思わずこぼす。


 冒険者達はその後、干支緑達と3人が戻って来るまで声を発せずにいた。


 それは、近くにいた緑が原因であった。得体のしれない子供達を温かい目で見る緑の姿に冒険者達が徐々に恐怖を覚えていった。


「みんな、おかえりー ケガはない?」


「「なーい♪」」「「あるはずがなかろう」」


「心配はしてなかったけど、いちおうね」


 そう言って緑はニコリと笑う。


「じゃあ倒した魔物を預かろうか」


 緑がそう言うと3人が申し訳なさそうに話始める。


「緑よ、すまぬ。いくつか潰してしまった魔物がある」


「ごめんねー 私もー」


「我もそうだ」


 あやまる3人に驚いて目を丸くする緑であったがすぐさまニコリと笑い話始める。


「ごめんね。3人とも魔物の死体は残ったら他の魔物を集めちゃうから持っていくだけで、無理にきれいにのこさなくてよかったんだ」


「だが売れるのであろう?」


「私達はごはんが無くても生きていけるけど緑のダンジョンのご飯はおいしいから食べたいし」


「ああ、その食費分くらいは稼がないとな」


「お金の事は気にしなくてもいいのに・・・・ でも、ありがとう! 3人共できればでいいからね。それで3人が危なくなったら・・・・ってそんな事はないか! じゃ魔物の死体は僕が預かるから」


 そう言って緑は魔物の死体をアイテムボックスに入れていく。それを見た冒険者達は驚くがその恐怖から声も上げる事ができづにいた。


「すごいな・・・・ アイテムボックス持ちか」「ほんとうね」


 だがリーダーと斥候の冒険者だけは驚きの声を上げる。


 その声を聞き緑が1番状態の良い魔物の死体を運びながら冒険者達に話しかける。


「譲ってもらったお礼に1番状態の良い物をさしあげます」


「そうか・・・・ ありがたく頂戴する」


 そう言ってリーダーの男が緑より魔物の死体を預かると他のメンバーに預ける。


「あ、そうかどうせなら解体してからお渡しすればよかったですね。すいません」


「いや、ただで貰ったようなものだ気にしないでくれ」


 緑が話していると干支緑が緑の周りに集まる。


「お兄ちゃん、おなかすいたー」「僕もー」「私もー」


「そうだねお昼にしようか。そうだ、皆さんも一緒に食べませんか?」


「お言葉にあまえよう」「そうねさっきからとってもいい匂いがするもの」


 リーダーと斥候の冒険者の言葉に他の仲間は顔見合わせる。


「お前達、そろそろビビるのをやめろ」


「そうよもし彼らがその気なら騙すような事なんかせず全員がすでに死んでるわ」


「「たしかに・・・・」」


 そんな会話を聞いた緑は苦笑いしながら頬をかきながら呟いた。


「こんな怖がられるのは初めてだ・・・・」


 そんな会話をしている緑達に近づいて来るものがいた。


「おーい、緑飯にするぞー」


 魔物の討伐が終わってから長々と緑達が話していたために魔緑が呼びに来る。


「あ、まーちゃん。こちらの人達の分のごはんも頼んでもらえる?」


「ああ、それは大丈夫だろう」


「皆さんもどうぞこちらに」


 冒険者達は緑に言われるままに自分達の馬車を緑達が止めた馬車の近くに動かすのであった。




「みんな今日のご飯はカレーだよー」


「「わーい♪」」


 緑がその場の全員にカレーを配っていく。全員にカレーが配られると緑が声を上げる。


「では、いただきまーす!」「「いただきまーす!」


「「おいしー♪」」


「「美味い!!」」


 緑に食事に誘われた冒険者達もカレーを一口食べると思わず叫ぶ。


 冒険者達は先ほどまで緑達に怯えていたのも忘れ一心不乱にカレーを食べ続けるのであった。 



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