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119話 ミドリムシ達の散策


 各国の王と褒賞の件に関して話した後、緑達はダンジョンの扉より獣人の国に来ていた。


「よし! 今日は街を散策するよ~」


 緑達が獣人の国に入った直後、琉璃、凛、珊瑚達のいたギルドの者達と結婚の問題に発展し、その直後に獣人国のスタンピードが発生したために、ろくに街を散策できてい居なかった事から本日からしばらくの間、街を散策することになった。


「と言っても私達はこの街に住んでいたから案内する形になるかのう」


「せやな! うちらが皆を案内するから、行きたいところがあったら遠慮くなく言ってや!」


「と言ってもこの人数だと動きにくいから別れましょうか」


 緑と蟲人5人に魔緑と嫁3人、干支緑達で合計21人にもなる。


「う~ん、2つでも10人と11人だよね~」


「3つくらいに分けた方がいいか?」


 緑と魔緑が2つか3つの組に分かれるか悩む。


 悩んだ結果、緑達は3つの組に分かれる。緑、魔緑、ファントムをリーダーに3つの組に分けるのであった。


 1つ目は緑、ヒカリ、兜、凛と干支緑の4人。


 2つ目は魔緑と琉璃、クウと干支緑の4人。


 3つ目はファントムとレイ、珊瑚のと干支緑の3人であった。




「凜さん僕達は食材を見たいので案内お願いできますか?」


「みーちゃん、まかしといて~ この街で琉璃と珊瑚でしばらく生活してたから、どこでも案内できるで~」


「凜さんよろしくお願いしますね」「凜さんよろしくっす」「「おねがいしま~す」」


 そう挨拶をすると市場に向かう。緑達は市場に着くと片っ端から商品を買いこんでいく。


「はい! ありがとうね! これ商品とおつりね!」


「ありがとうございます!」


 商品とおつりを受けた緑が大人しくついてきている干支緑達を見ると、それぞれ気になった商品を見ていた。そんな中ふと気づき、緑が1人の干支緑の様子が気になりたずねた。


 もぐもぐもぐもぐ


「確か丑ちゃんかな? いつも口をモグモグさせてるけど何を食べてるの?」


「これだよ~ おおにいちゃん♪」


 そう言って噛んでいる物の端をもって緑に見せる。


「これはワカメ?」


「ごはんでえだを出したのー このえだはいっぱいおいしいがはいってるのー」


 そう聞き緑は丑緑が持っている枝に【鑑定】をかける。


「なるほど」


 一言そう呟くと緑の髪の隙間に同じような枝が生え、それを切る。その途端、枝の切り口から香りが爆発的に辺りに漂い始める。


「ちょっと! みーちゃん何したん!? めっちゃいい匂いするねんけど!」


「緑様何をしたんですか?」「大将良い匂いっすね!」「「いいにおーい うしちゃんのやつににてるー」」


 枝から漂う香りにつられ皆が集まって来る。緑は人数分の枝を生やすとそれぞれに渡していく。


「「美味し~!」」


 緑から手渡された枝を皆がかじると思わず声を上げる。それまで周りに居る人々も香りに騒いでいたがその声を聞き視線を緑達に集中させる。


「す、すいません! ちょっとその咥えている物を分けてもらえませんか?」


 皆が緑達の持っている枝に視線を集める中1人の獣人が声をかける。


「あ、はい。どうぞ……」


 手渡された枝を口に含んだ瞬間目を見開き緑の方を向くと喋り始める。


「わ、私は! 近くで料理店で働く者です! この枝を売ってもらう事はできませんか!?」


「これは売り物じゃないので! これだけお渡しします!」


 その獣人の剣幕に大騒ぎになる予感がした緑は数本の枝を渡し、直ぐにその場を離れるのであった。




「俺達は特に予定はないが緑達が食材を見に言った様だし、俺達は飲料でも見てみようか?」


「ふむ、なら有名な酒屋に行こうかのう?」


 そう言った琉璃の案内のもと魔緑達は酒屋に向かう。


「店主は居るか?」


「はい、私ですがどういたしました?」


 店に入ったとたん魔緑の言葉に直ぐに店長が魔緑の元にかけよって来る。魔緑のそばに来た店長に魔緑が金を渡す。


「これでいくつか試飲をさせて欲しい」


 そういって魔緑が渡した金は店に並ぶ全ての種類の酒を買えるのではないかと思われるほど金額であった。


「ど、どうぞ! こちらに!」


 店長は受け取った金額をみて驚き、すぐに試飲するために準備をし始める。


「ではどのような物から始めましょうか?」


「全部頼む」「え!? 全部ですか?」


「ああ、全部だと言っても本当に少しづつで良いんだ。試飲の残りは店の好きにしてくれていい。良い物があればそれはまた別で買うから。あと子供達にジュースでもあれば出してやってくれないか?」


「わかりました、直ぐに準備をしますね! 皆! 大仕事だこちらのお客様が店の全ての種類の酒を試飲する様だ準備の手伝いを頼む!」


 そう言って店の者達全員で魔緑達の試飲の準備をはじめる。


 魔緑達は渡された小さなお猪口の様なグラスを使い店にある酒を少しづつ飲んでいく。


 魔緑が試飲の間、干支緑達は同じように店に置いてあるジュースを少しづつ試飲をしていく。


「店の者達、酔わない私達をみて驚いていたのう…… しかし、二日酔い用の実をまーちゃんも作れたんだのう…… しかもあんなに小さな実で」


「ああ、緑がいつも出す実は朝飯もかねているからな。しかし、結構いい酒があったな。これをダンジョンに持って帰ればまた研究が進むだろう」


「結構おいしいお酒がありましたね♪」


「ピーエルとゴードンが喜びそうだのう」


 皆がそれぞれ酒やジュースを選んでそれを魔緑の【アイテムボックス】に入れたために手ぶらで歩いていた。


 そんな中、ちらりと魔緑が干支緑に視線を移す。


「「むむむむむむ」」


「お前達!? 何をするつもりだ!?」


 何やら、うなっている干支緑達を見て魔緑が思わず叫ぶ。すると干支緑達の髪の隙間に瓢箪ができ始める。


「できたー!」


 申緑が喜び声を上げる。


「えへへへ、ジュースをつくったのー」


 そう言って魔緑に瓢箪を見せると瓢箪を配り中身を飲み始める。


「「おいしいー!」」


 その様子を見て魔緑が尋ねる。


「まさか…… 中身は酒じゃねぇだろう?」


「おさけはにがいから、きらーい」


 そんな会話をしていると濃厚なフルーツの香りが辺りに漂い始める。


「ふむ、いい香りがするのう。申坊よ一口くれんか?」「申君、クウもほしいです♪」「おねぇちゃんたち、はい」


 干支緑が新たに瓢箪を作り琉璃とクウに渡すと2人も中身を飲み始める。


「おいしいです♪」「こ、これは美味すぎるのう……」


 そんな会話をしている魔緑達の周りで獣人達が騒ぎ始める。


「なんだ、この香りは!」「すごくいい香り!」


 獣人達の嗅覚は優れているために匂いをたどると魔緑達に行きつき視線が集まる。


「あの…… 一口もらえませんか?」


 不意に香りにつられた見知らぬ獣人から声を掛けられる。


「いいよー」


 そう言って干支緑が瓢箪を渡す。


「あ、ばか!」


 魔緑が止める間もなく瓢箪を渡してしまう干支緑。獣人は瓢箪を受け取り中身を飲むと驚き声をあげる。


「こ! これは! 美味しすぎる!」


 獣人は魔緑の方を向くと申し訳なさそうに話す。


「あ、あのう。これを売ってもらう事はできませんか?」


 瓢箪の中身を飲んだ獣人は売って欲しいと言う。


「おい、申この人にいくつか作ってやれるか?」


「うん! ちょっとまってね! むむむむ! はい!」


 申緑から瓢箪を魔緑が受け取ると獣人の方をむく。


「これで最後だ…… じゃあ俺達はいく」


「あ! あの!」


 獣人が声をかけるも魔緑は無視して去るのであった。




「さてられ我々は何を見て回りましょうか?」


「そうですね~ 私は特に見たいものはありませんね~ 干支ちゃん達は何か見たいものがありますか~?」


「「なんでもいいーよー」」


「う~ん、これは、すっごく困りますね」


「なら、ファントムさんはたまにしか出てこれないのでファントムさんが見たいものを見ましょうー」


 見たいものが無いために困っているとレイが提案する。


「ふむ、なら紅茶をみたいですね」


「ファントムさんの紅茶はすっごく美味しいからいいですね! では、案内しますね!」


 そう言ってファントム達は紅茶の葉を販売する店に向かう。


「ふむ、なかなか良いものがありますね」「お店の中が良い香りですねー」


「ここは獣人の国ですっごく有名なお店なんです」


「ふむ、買ったものをそこで試せるようですし、試しにブレンドしてみましょうか?」


 ファントム達は店にあるスペースで買った茶葉を早速試しはじめる。


「「おいしー」」「ファントムさんが居れた紅茶は美味しいですねー」「すっごくおいしです」


 皆がファントムがブレンドした紅茶を飲み喜んでいたがファントムだけは浮かない顔をしていた。


「残念ながらやはり混ぜる事無くこの味がだせればいいのですが……」


 ファントムがそうポツリとこぼすと干支緑の1人がうなり始める。


「むむむむー」


 すると髪の隙間に葉っぱが生え始めみるみる色が変わっていく。


「はい、どうぞー」


 葉の色が変わり切るとそれをファントムに差し出す。


「これは、午さんありがとうございます。これでもう一度紅茶をいれてみましょう」


 そういって午緑からもらった葉っぱでファントムが紅茶をいれる。すると辺りに紅茶の香りが漂う。


「さっきのも良かったですが、これはさらに良い香りですねー」


「味もすっごく良いです」


「おいしー」


 すると、他にも自分達のブレンド試していた他の客たちも匂いの元に視線を集める。


「坊やすまないが、私にも一杯いただけないかな?」


 1人の獣人が小さな子供の姿のファントムに話かけてくる。


「はい、どうぞー」


 それに午緑がこたえてしまう。


「む…… 美味いな、これは貴方達の持ち込みかな? 良ければ売ってもらえないだろうか?」


 それを聞いたファントムが午緑の方を見ると葉っぱが生え始める。葉の色がかわると午緑は葉ファントムに渡す。


「残念ですがこの葉っぱは売り物ではないのでこれだけお渡します」


 そう言ったファントムから葉っぱを受け取る獣人であったがさらに尋ねる。


「何とかならないだろうか私はある店で紅茶をだしているのだがこの茶葉は素晴らしい」


「残念ですがそれは、無理です。それでは失礼します」


 そう言って話しかけてきた者の話を打ち切りファントム達は店をでる。




 その後全員が集まる。


「皆、全員揃ったね。何か問題は無かった?」


 緑の言葉に魔緑とファントムが口を開く。


「「実は……」」


 声が重なったことに驚いた魔緑とファントムはお互いを見る。その様子を見て緑も口を開く。


「やっぱり干支ちゃん達?」


「という事はそっちもか」「緑様もですか?」


「うん、僕達もなんだ……」


 それから緑達はお互いあったことを話す。


「緑、お前がやらかしたのか!?」「ご、ごめん。まーちゃん」


 皆で話した後、起こってしまった事はしょうがないと結論付ける緑達。


 しかし、この時は誰も気づいていなかった、緑達に声をかけた者は全員が同じ店で働く者たちだった事を。


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