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115話 ミドリムシのおかたずけ4


「だいたいこんなものか……」


「ちょっとかわいそうだけど僕達の事を殺す気で居たみたいだからしょうがないね」


「こんな奴らでも始末しないのか?」


 魔緑は殺されそうになったにも関わらず、緑が捕まえるのみだったために確認する。


「この人達の雇い主がどんな人かもわからないからあんまり事を大きくしたくないだよね~」


「確かに……こいつ等を雇ったのがどこぞの貴族だったらややこしくなりそうだな……」


「とりあえずこいつ等は髪で簀巻きにして運ぶか」


「だね、でもこんなに居たら運ぶの一苦労だね……」


 そう言って考え込む緑であったがすぐにいい考えが浮かんだのか魔緑の方を向く。


「まーちゃん、この人たち一度ダンジョンに入れちゃおうか?」


「確かにその方がいいな。ダンジョンに残っている子供達に少しの間だけ見張ってもらって城に付いたら引き渡そう」


 そう言って緑がダンジョンの扉を開き、緑達を待ち伏せしていた者達を次々とダンジョンに放り込む。


 その後、ダンジョンに残っていた子供達に見張りを頼むと扉を閉じる。


「じゃあさっきの案内人の人を呼んでこの先を進もうか」


 そういって先ほど来た道を戻った案内人を呼びに戻る。


「ああ、お2人共ご無事でしたか!」


「そんな心配してるってことは俺達の事は何も知らないのか?」


「はい、私はお2人をお連れするように言われただけなので……」


「それでよく俺達を見つける事が出来たな……」


「はい騒ぎが起こっているはずだから、その中心部に居る綺麗なエメラルドグリーンの肌をした2人を案内しろと言われまして……」


「「……」」


 その言葉を聞いた緑と魔緑はなんとも言えない心情になり文句を言いたくなるが実際に騒ぎの中心に居る事が多く何も言えなかった。


 案内され緑と魔緑は通路を歩く。


 案内人が進む中、行き止まりにつく。案内人は壁のそばまで歩くと壁の一部を押す。すると壁が動き出口が現れる。案内人を先頭に通路を出るとそこは会議室の様な部屋だった。


 3人は明るい部屋に出たために目を細める。


「なんでお前達が!? 通路に居た者達は何をしているのだ!?」


 緑達が部屋に出ると貴族と思わしき者が驚きの声を上げる。


「こいつ馬鹿だな」「だね~」


「私が馬鹿だと!?」


 そういって男は顔を真っ赤に怒り始める。


「おい、こいつらを取り押さえろ!」


 男がそう言うと部屋に完全武装した騎士達が入ってくる。


 男は騎士達が部屋に全員揃うとニヤリと笑いながら口を開く。


「さぁ! お前達後悔するがいい!」


 男の言葉で騎士達が動き出す。


「まーちゃん、僕が戦うね」


「ああ、頼む。 俺では騎士を殺してしまうかもしれない……」


「何をふざけたことを!」


 緑と魔緑の会話を聞いて男が叫ぶ。その間にも男の指示で動き出した騎士たちは緑との距離を縮める。


 騎士達は緑に一斉に飛び掛かり、捕まえたと思った瞬間に騎士達は自分の体が動かなくなったことに気づく。


「何をしている! お前達さっさとそいつ等を捕えんか!」


 騎士達が動かなくなり男が騎士達に叫ぶが、騎士たちは一向に動く気配がない。すると騎士達に囲まれていた緑が口を開く。


「残念ですが皆さんは捕えさせてもらいました……」


 緑がそう言い放つも男は緑の言葉を信じれず叫び続ける。


「お前達何をやっている! さっさとあの者達を捕えよ!」


 男は騎士達が捕らえられるとは思っていおらず、緑の言葉は自分達を動揺させるための嘘だと思い騎士達に指示を出す。


 しかし、騎士たちの口からは事実が告げられる。


「申し訳ございません……体を動かす事が出来ません……」


 そう言った騎士を皮切りに他の騎士達も次々に動けない事を口にする。


「本当に動けないだと!?」


 男は事実を知ると焦り始め、踵を返し逃げ出そうとする。だが男が出来たのは振り返る事だけであった。


「体が動かぬ……」


 男は何とか動こうとするも動けず、その間に緑と魔緑が男の隣に立つ。


「あきらめろ…… s級冒険者でもなければ俺達の髪からは逃げれない」


 実際はs級冒険者でも逃げ出す事は不可能だが、そんな事を知らない男は魔緑にそう言われガクリとうなだれるのであった。



 男と騎士達をダンジョンに放り込んだ緑達は案内人を先頭に進んで行く。


 会議室の様な部屋を出る。さらに城の中を歩きある部屋の前で止まるのであった。案内人は部屋の扉をノックする。


「誰だ?」


「お2人を案内いたしました」


「うむ、入るが良い」


 そう言われ3人が部屋に入る。


「案内ご苦労であった下がって良い」


 王の言葉で案内人が部屋を出る。


 部屋ににはサークル王国の王と宰相が椅子に座ってまっているのであった。2人は案内人が出ていくと席を立ちあがる。


「緑、まずは礼を言わせてくれ国を守ってくれてありがとう」


 そういって王は緑に頭を下げる。本来、王は違う国の王に対しても簡単には頭を下げない、それは自分の国と相手の国の力関係を示す事になるため、感謝をしていても頭を下げたくても下げれないのであった。


「王様頭を上げてください」


「いや、本当にありがとう」


 王はしばらく緑に頭を下げ続ける。緑は困った顔をしながら魔緑に助ける様に顔を向ける。


 だが、魔緑も困った顔をするだけで何も言えず、そんなやり取りをしていると王が顔を上げる。


「緑よ今回の褒賞なのだが……」


「褒賞はいらないです、僕は大好きな人達を守っただけにすぎません」


 緑がそう言うと王は黙って顔を横に振る。


「それは無理な話だ……今回大勢の人間がお前達の活躍を目にしている。そんな緑に褒賞を出さない事は出来ない。もし出さなければ国の威信にかかわる。そこで1つ頼みなのだが褒賞のタイミングをこちらに決めさせて欲しいのだ」


「そういう事でしたらお任せますので王様が良いタイミングが来たら連絡をください」


「うむ、そうさせてもらう。 作業の途中で来てもらって悪かったな」


 緑と王の会話が和やかに終わると魔緑が手を上げる。


「魔緑どうした?」


「ここに来るまでに俺達を殺そうとした奴らが居たんだが……ここまでの通路は王族が万が一の時に逃げる通路と聞いたが……大丈夫なのか?」


「何!? 本当か!?」


 魔緑の言葉に王が声を上げる。


「その者達はどうした!?」


 声を荒げる王に対して緑はいつもの調子で返事をする。


「捕まえてダンジョンに放り込んでいます。雇われた冒険者や騎士を合わせると30人以上になりますね」


「どこの馬鹿がそんな事を……」


 王は緑の言葉を聞くと目を見開く。そんな様子を見た緑がさらに王に伝える。


「ちなみに首謀者と思われる貴族の様な者を一緒に捕まえていますよ」


 その言葉を聞き王はヤレヤレと頭を振る。


「緑、悪いが城の訓練所にその馬鹿どもを出してもらってもいいか?」


「はい、わかりました」


「王様私は先に騎士達を訓練所に集めて置きます」


 そういって宰相が部屋を足早に出ていく。


「では、我らも行こうか」


 そう言った王を先頭に緑達は城の訓練所に向かうのであった。



 訓練所に着いた時には城の騎士達が緑達を襲撃した者達を受け取るために待っていた。


「ではここに扉を開くので捕まえた者達を運びますね」


 緑がダンジョンの入り口を出すと中に入る。しばらくするとクウの子供達により、緑の髪で縛られた者達が次々に運び出される。


 そして、最後に運び出された男の顔を見てその場に居た城の関係者が驚愕し思わずこぼす。


「「王子!?」」


「「え!?」」


 今度は城の関係者の言葉に緑と魔緑が驚きの声を上げる。緑と魔緑が顔を見合わせていると王が口を開く。


「皆の者、ここで見たことは他言無用だ」


「「かしこまりました」」


 王の言葉に城の関係者は全員声をそろえる。王はその返事を聞くと緑と魔緑の方をみて口を開く。


「緑と魔緑もこの事は他言無用で頼めるか」


「はい」「ああ」


「この者の処遇と説明もまたおって連絡をする」


 そう言って城の騎士達が男とその部下たちを連れていく。


「2人も本当に申し訳ない……全ての事が整ったら連絡をする。しばらくの間待っていてくれ……では私はこれからこの馬鹿どもの処理をしなければならないために失礼する」


 王が訓練所を出たために緑と魔緑も城をあとにするのであった。




 城を出た2人は何か手伝う事はないかとシャークの元を訪れていた。


「シャークさん戻りました。何を手伝いをましょうか?」


「ああ、緑かわざわざ戻ってきてもらって悪いが、今緑達に手伝ってもらう事はないから自由にしてもらっていいぞ」


「わかりました、では他の国に行ってみる事にします」


「ああ、また何かあれば連絡をする」


「では」「じゃあな」


 緑と魔緑はシャークに挨拶をするとダンジョンへの扉を開き中にはいるのであった。


 ダンジョンに入りエルフの国の扉に向かう緑と魔緑であったが不意に緑が呟く。


「まーちゃん王子様殺さなくてよかったね♪ もし殺していたら大問題になっていたね」


「ぐ! ああ、そうだな……お前の判断に感謝だ……」


 そんな話をしながら2人はエルフの国の扉をくぐるのであった。


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