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114話 ミドリムシのおかたずけ3


 魔緑とギルは城門から伸びる道の進行方向にある迷路の壁を溶かし続ける。


 冒険者達はその光景を見て驚くがそんな事が壁をごとに起こる。冒険者達は壁に阻まれ倒した魔物を王都に運びこむために緑達によって壁が取り払われるのを待っていた。


 冒険者達は腕っぷしだけで生計を立てている者が多い。邪魔なものは力で排除という考えに行きつくものは多くそんな冒険者達が一丸になって今回のスタピードにい挑み見事勝利した暁には、倒した魔物を解体しそれを売り美味い酒を飲む。そんなご褒美を待っていられる冒険者はいない。


 壁が通れるようになるとは聞いていたがその壁ごとに冒険者達は待つことが出来ず自分達で壁に穴を開けようとするが大きな傷すらつける事も出来ず途方にくれいた。


 冒険者が待っていると迷路の壁の上部から高ランクの冒険者が降りてくるなり叫ぶ。


「おい! 壁から離れろ! 今から壁を反対側から溶かすぞ!」


 冒険者達は舐められたら終わりと思う者が多く、その言葉を聞き各々に口を開く。


「おいおい! 本当にこの壁が壊せるのかよ!? 俺達が束になっても無理だったんだぜ!」


 このような事を言う冒険者も壁ごとに居るのであったがその言葉は氷が解ける音で静かになる。


じゅううううぅぅぅぅっ!


 冒険者達が話をしていると氷が溶かされる音が聞こえてくる。その音に文句を言っていた冒険者もその音に気づき音の方向に顔を向ける。


 しばらくすると3人の会話が始まる。


「よし! これでいいだろう」


「だな! 次の壁にいくか! 緑もたのむな!」


「うん! まーちゃんもギルも魔力が減ったらいつでも言ってね」


「「マジか……」」


そんな様子を見ていた冒険者達は驚くも壁が溶かされ荷車が通れるようになると自分達の仕事をしなければならないために移動していく。


 緑達が最後の迷路の壁に穴をあけ通路を通すと振り返る。


「やっと終わったな」


 魔緑がぼそりとこぼす。


「かなりの時間がかかったな。お腹も実でぱんぱんだね」


 緑が言うように朝から作業をしていたが今はもう太陽が沈みかけていた。


 朝から実を食べつつ魔力を回復し壁を溶かし続けた魔緑とギルはお腹を満腹にしていた。


 そんな3人の働きで真っ直ぐに城門までの道ができ冒険者達は倒した魔物を荷車に乗せ城門を通り街に入っていく。そんな光景を見ながら少しだけ休憩を入れていると魔緑が思わず口を開く。


「なぁ、緑」


「何? まーちゃん?」


「俺達が倒した魔物ってギルドで買い取ってもらえると思うか?」


「……まぁ、僕達はお金に困ってないし……」


 2人が今回討伐した魔物の数は計り知れない。そのため、2人は自分達がアイテムボックスに収納した魔物はギルドやまして国でも買ってもらう事が出来ないと思い話していた。そんな2人の会話を聞いていたギルが思わず尋ねる。


「緑達はお金がまだ必要なのか?」


 そんなギルの言葉聞き緑と魔緑は顔を見合わせクスリと笑い声を合わせる。


「「必要な居ないな~」」


 緑達は自給自足がすでにダンジョン内で確立してしまっている。むしろダンジョン内で生産した農作物やダンジョンに招き入れた野生動物はその他では見れない良い環境のため増え続けており、それらはダンジョンの外の国で売ると緑達の懐は潤ってしまう。


 その為、ダンジョンの中で働く者達にはしっかりと給金を渡してダンジョンの外でお金を使えるよにしているが食べ物や日用品もダンジョンの中で売っている物の方が美味く高品質であるためにわざわざダンジョンから出て外でお金を使わなくため緑達は困っているのであった。


 そんな風に緑と魔緑、ギルが一仕事を終えてくつろぎながら会話をしていると緑と魔緑の警戒網に引っかかる反応があった。


「だれ?」「だれだ!?」


 ギルはその者に気づけず突然声を合わせた2人に驚き、2人が声をかけた方に顔を向ける。すると景色が広がっている光景が歪み1人の人が姿を現す。


「私は王より2人に城に来て頂く様に伝えるように言われここに来ました」


 そう言って本来なら自分の素性隠すためにしていた仮面を外し膝まづく使者。そんな様子を見た緑と魔緑は頷く。その者の行動を見たレッドが口を開く。


「俺はここまでかな? ダンジョンを通ってレッドさんが居るとこに向かうけど良いかな?」


「はい! ギルさんありがとうございました!」「ギル、助かった……」


「はは、俺も依頼で来たから報酬はいただくし緑と魔緑が礼を言う事じゃない」


 そう言ってギルは街に向かって歩いていく。しばらくギルの後ろを眺めていると不意に先ほど現れた者が話始める。


「ではこのまま城に案内してもよろしいでしょうか?」


「はい」「ああ」


 2人の返事を聞いた王の使者は歩き始める。2人はてっきりこのまま真直ぐ城に向かうと思っていたのだが案内されたのは、後かたずけをしている者達からは見る事が出来ない王都から伸びる道から外れた山の中を進む。


「ここです」


 そういって使者が地面に隠れていた蓋を開ける。そこには地下に入るハシゴが見えた。


「ここから城に向かうのですか?」


「はい、ここは王族の方が城から逃げる際に使う道の1つです」


 そういって使者はハシゴを降りる。使者の後を追い2人も後を追いハシゴを下りる。ハシゴを降りたとろには横に進める通路がありそこを3人は進んで行く。


 しばらく歩くと広間に出る、そこには大勢の完全武装した騎士や冒険者と思われる者達がいた。


 その者達をみて使者が驚き声を上げる。


「お前達は何者だ!?」


 緑と魔緑は、この使者も待っていた者達の仲間で罠にかけられたと思ったが、使者とここで3人を待っていた者達は無関係であったらしい。


 なぜなら緑と魔緑の目には使者は本当に驚いたからであった。


「お2人共来た道を引き返してください! ここは私が時間を稼ぎます!」


 待っていた者達から視線をそらさず2人に叫ぶ使者であったがその言葉を聞いた緑は魔緑と一緒に使者の前に出て使者に尋ねる。


「貴方は僕達の情報を王様から聞きました?」


「いいえ…… お2人を丁重に案内せよと言われただけでお2人についての情報はお聞きしておりません」


「……本当か?」


 魔緑の問いかけに使者はただ頷いて見せる。


「なら、お前がここから戻り地上で呼ばれるまで待機していろ。その行動がお前の実の潔白を証明する」


「しかし!」


 思わず叫ぶ使者であったが緑が使者に言い聞かせる。


「僕もそれがいいですね…… これから戦うのに貴方を巻き込みたくない…… というか疲れているなか貴方に気を使いながら戦うのは面倒くさいんです」


「本当に大丈夫なのですか?」


「はい」「ああ」


 そう2人に言われ2人を案内していた使者は2人の事を振り返りながら来た道を戻っていく。魔緑が広場に集まっていた者達を見張って、緑が使者がはしごを上がっていくのを見届けると魔緑に話しかける。


「使者の人は言った通りハシゴを上がりきったみたいだね」


「なら、万が一にも巻き込むことはないな……」


 そう言うと肩の力を抜く2人だったが待ち構えていた者達から1人の男が出てくる。


「お前達をここで消せとあるお方から言われているんだ悪いが死んでもらう」


 そう言った者は油断なく2人を見るがその後ろの者達は相手が2人と思い油断し挙句の果てに仲間内で会話をしている。2人に話しかけた冒険者の目は真っすぐで他の冒険者達の様に素行が悪い者達には思えない。そのため魔緑はその男を含め待っていた者達に向かって最終勧告を告げる。


「ちなみに頼まれた仕事をあきらめて俺達が城に行くのを邪魔しなければ命は助けると言っても意味がないか?」


 そう言って魔緑は普段抑えている気配を解き放つ。その瞬間話していた男は魔緑の気配を察知して小刻みに震え始める。男はそんな状態の中、聞かれた質問に対して言葉を絞り出す。


「……わ、わかった! 俺と俺の仲間はお前達の邪魔は今をもってやめる。それなら見逃してくれるのか!?」


「ああ、俺はそのつもりだ…… 決定はリーダーの意志次第だが……」


「まーちゃんにまかせるよ」


「だそうだ。他の奴らはどうする?」


 魔緑の問いに複数の冒険者と思われる者達が前に出てくる。


「ああ!? 2人だけで俺達に提案を持ち掛けているのか? 馬鹿かお前達やるぞ!」


 そう言った冒険者と思われると男の言葉に従って緑と魔緑に向かってくる冒険者や騎士達と先ほどの魔緑の言葉の後に集団から抜け出し壁により両手を上げて戦う意志がないとアピールする者達とに分かれるのであった。


「じゃあ始めるか……」


「馬鹿かてめぇ!」


 冒険者の言葉を皮切りに戦いが始まるが数分後には立っているのは緑と魔緑だけであった。



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