108話 ミドリムシの家族はエルフの国を守る3
琉璃、凛、珊瑚は小さな緑たちが操る黒い魔物たちを先頭に森の外に向かっていた。
「いや~ 敵なら厄介やけど味方になったら頼もしいな~」
「すっごく安心できますね!」
「2人とも気を抜いてはいかんのう」
黒い魔物達が優秀でしかも魔物が行動不能になると、次の魔物に黒いもやが乗り移るため戦力が減らない、そのため安心して気の緩みそうになった凛と珊瑚を琉璃が注意する。
「しかし、あの子達自身は戦えんのかな?」
「本人達は大丈夫と言ってたのう」
「皆んな素直で、すっごく良い子達みたいですね」
話しながら進む3人はチラリと後ろを振り返る。
小さな緑たちが遅れてはないかと時折確認する3人であったが今のところ遅れるそぶりが見られないどころか余裕すら感じられる様子であった。
「もう少し速度をはやめても大丈夫かのう?」
琉璃は小さな緑達に尋ねる。
「「うん! だいじょうぶ!」」
子供達は完全に声をそろえて返事をする。
「大丈夫みたいやからスピードアップすんで~」
3人の言葉を聞いて黒い魔物達が進むスピードを上げる。3人はスピードを上げた黒い魔物達と距離を一定に保ちついていくがそのスピードに驚きを隠せずにいた。
「黒い魔物達はわかるが小さな緑達も余裕そうだのう」
「ほんまやね、というか実はうちらより早く進めたりして……もし、そうなら自身がなくってまうわ」
「まーちゃんやみーちゃんの兄弟ならありえそうでこわいですね……」
「しかし、どんどん連携が上手くなっていくのう」
「ほんまそれ! どんどん連携が上手くなっていくし、見てたら黒い魔物全部の感覚を共有してる気がするんよね~」
「すっごく簡単そうに死角からの攻撃を対処してますね。死角から襲った魔物の方が反応されて驚いて倒されています……」
今、3人と小さな緑達、黒い魔物達は連携を取って襲ってくる大量の猿の魔物達を倒しながら森の外を目指しているのだが先ほど防衛地点に戻る時に手を焼いた魔物達を黒い魔物達が蹴散らしている。
「「おねぇちゃんたちは、ゆっくりしてて」」
3人が話していると後ろから声をかけられる。
「私達すっごく楽をしてますけどいいのですか?」
子供達の言葉に珊瑚が尋ねると子供達がすぐに返事をする。
「「うん! ぼく(わたし)は、ひろくこうげきができないから!」」
「それならお言葉に甘えるかのう」
そんな会話をしながら進んで行く。
「そろそろ森の端やで!」
黒い魔物達は止まり、3人と小さな緑達を守るように円形に陣形を作る。
「すっごい数ですね~ とりあえず数をへらすために攻撃しましょうか」
そう言うと3人は獣の姿に変異する。
「じゃあ私からいきま~す」
珊瑚が巨大口を開け毒を含んだ煙を吐く。その煙に触れた魔物達が溶けていき魔物の群れはパニックをおこす。
その様子を見た凜が魔力を圧縮し魔法を放つ。凜の魔法は強大な竜巻をいくつも作り出す。
「琉璃、動ける場所は作ったで!」
凜の竜巻により魔物が空に巻き上げられ魔物の海にいくつもの隙間が作られる。
「ワオーン!」
琉璃は遠吠えをすると目に留まらないスピードで魔物がいない場所に向かって跳躍し地面に着地すると魔法を放つ。琉璃の居た場所を中心とし円状に地面より石の棘が飛び出し魔物を貫いていく。
石の棘の広がりがとまると琉璃はその棘を足場にし他の隙間に跳躍し、魔法を再び使う。凜の魔法によって魔物の海にできた隙間が広がる。そんな光景を小さな緑達はじっと見つめていた。
「「う~ん、まほう…… ぼく(わたし)もまほうをつかう~!」」
そう言うと小さな緑達は魔力を圧縮していく。そんな様子に気付いた凜が叫ぶ。
「琉璃戻ってき! 小さな緑達が魔法をうつみたいや! あほみたいな魔力を圧縮してるから何が起きるかわからんで!」
その言葉を聞き、琉璃が木の上に戻ってくる。それを確認した小さな緑達は魔法を撃つ。魔法が撃たれると、彼、彼女達から影が扇状に影が広がっていく。その様子を3人がじっと見ていると影が広がるのが止まる。すると広がった影が今度はその範囲内にいた魔物達を飲み込み始める。
琉璃、凛、珊瑚の攻撃で起こったパニックがさらに加速する。魔物達は影から逃げようとするが、密集していたのが仇となり、動けず影に飲み込まれる。魔物達が呑み込まれると1度だけ地面が揺れる。
ズン!
地面が揺れた後、影から飲み込まれた魔物が浮上してくる。その浮上してきた魔物達を見た3人は驚きの声を上げる。
「うわ~ あれどうなってんの?」
「ふむ、一様にみな、綺麗に潰されておるな」
「さっきは広範囲の攻撃手段をもってないといってましたけど……」
「ふむ、もしかしたら、魔法の使い方をしらなかったのかもしれんのう」
そんな会話を他所に小さな緑達が騒ぎ始める。
「まほうができた~!」「もっと他のまほうもためしす~♪」「まほうたのし~♪」
「「よ~し! もう1回だ!」」
すると先ほどよりも魔力を圧縮し魔法を放つ。先ほどと同じように魔法を放つと影が魔物に向かって伸びていくと影より黒い棘が飛び出し魔物を串刺しにしていく。その棘は琉璃の魔法よりも範囲が広く魔物達の屍の山を築く。
「魔法を1度見ただけで、簡単に使いこなすとは、さすがはあの2人の兄弟のだのう」
「むちゃくちゃなのは同じやね~」
「これもうあの子達だけでスタンピードもどうにかしそうですね~」
小さな緑達はさらに魔法を撃つ。今度の魔法は影が伸びていくと、死んだ魔物の包み込む。森の端まで先頭を進んできた、魔物達の様に黒い色に染まった。黒い魔物達は潰された様な傷はなくなり、他の魔物達を襲い始める。
「あれほどの大量の魔物を操るのは可能なのかのう?」
「魔物を操ったりする魔法は数が多くなると難しくなっていくんちゃうのかな?」
「あ! でも今できた黒い魔物達は連携は取らずに手当たり次第に周りの魔物を攻撃し始めましたね~」
新たに作られた黒い魔物達は、森の端に行くまで取っていた前の魔物とは違い、連携を取らずに暴れまわる。そんな様子を見ていた3人の脇を、黒い魔物達が走り抜け魔物の海に飛び込んでいく。
「うわ! びっくりした~ あ、でもここまで一緒にきた黒い魔物達は、連携をきちんととって戦い始めたわ」
「もしかしたら黒いもやを纏わせるときに、自分達で操るか決める事が出来るのかもしれんのう」
魔物を倒せば、黒い魔物が作られていき、その数を爆発的に増やしていく。
「これはもうほっといても黒い魔物が増えていって終わりそうやな……」
凜の言葉に琉璃と珊瑚も頷くのであった。




