愛園教の人達
若者たちは「失礼します」と言って部屋に入って来るなり、
「いらっしゃい」
「ようこそ」
と言いながら空いた椅子に座っていく。
「岩沢さん、こんにちは。私は森田早苗と言います。よろしくお願いしますね」
舞の隣に座った森田はそう言って親し気に微笑んだ。
「あ…ああ、こちらこそ宜しくお願いします」
知らない人達ばかりなので、舞は少し緊張気味に挨拶した。
「緊張しなくて良いのよ。皆年も同じくらいだから」
坂口がにっこり笑いながら言った。
「舞さん、今日は来てくれて有難う。とっても嬉しいです。僕はここで一番イケメンの田口勇樹です。仲良くしてね」
坂口の隣に座った田口が言うと、
「自分からそんなこと言うか?普通…。おっと自己紹介しないと、えっと僕は飯岡翔馬と言います。顔は田口君に負けるけど、頭脳では勝ってます。しかもスポーツ万能で…」
田口の隣に座った飯岡が話し出すと、
「飯岡君、自己紹介はその位にして、はい次」
坂口が静止させた。
「私は稲本香苗、高校2年です。ここでは一番年下になるんです。私もここに来てまだ2ヶ月位しか経っていないのでいろいろ教えてもらっている所です」
稲本は栗色の艶やかなボブヘヤーに大きな瞳が愛らしい美少女で、アイドルにも負けない位可愛い娘だと舞は思った。
「私は水辺萌19才です。ちなみに田口君と飯岡君は1つ上で20才です」
「そうで~す。ここでは坂口さんが平均年齢をあげてま~す」
飯岡がふざけたように言ったので、
「人を年寄り扱いすんな。私はまだ25才だぞ。うら若き乙女だろうが」
坂口が飯岡を睨みつけるフリをしたので皆が笑った。
最初は緊張したけど、皆明るくて楽しい人達だわ。舞はホッとした。
「何か皆若い人達ばかりなんですね。信仰をしている人達だから年配の人が多いと思っていたんですけど…」
「確かにこの宗教は平均年齢が若いわね。さて、ところで今日は神様に会って頂くわ。舞さんついて来て」
促すように坂口が言ったので、
「はい」と舞は答えた。
「それじゃ、行きましょう」
森田も頷き他のメンバーを見た。舞は先頭を歩く坂口の次を歩きその後ろを森田が歩き、その後ろを他のメンバーがぞろぞろ歩いて付いてくる。一番奥の部屋のドアの前で
「この部屋に神様がいらっしゃるわ」
坂口が舞の方に振り返り小さな声で言うと、静かにドアを開けた。
ドアを開けると、部屋の壁一面は白い布で覆われていて、ガランとした部屋の正面に大きなテレビだけがあった。
「岩沢さん入って」
キョロキョロしている舞に坂口が言った。
「は……はい」
舞が部屋に入ると他の人達も続いて入りテレビの前に向かった。
「まずは私達の活動している様子をテレビで紹介するので見て下さいね。他の人も一緒に見ましょう」
坂口の言葉に皆は「はい」と答えると横一列にならんだ。そして坂口がテレビのリモコンのスイッチをいれた。
ビデオの内容は全員で掃除をしたり、リビングで会議したり、また街頭でビラを配って通行人の人達に話し掛けたり……と日常の活動の様子を映したものだった。