004.地図と坊ちゃん
俺は急いで街に向かっていた。
なぜ急いでいるかというと、ダーグはどうやらゴーシュさんから俺の情報を引き出すために
街の人々を人質に使っているらしい。
もし行くのならその人たちに危害が及ばないように頑張って欲しいと言われた。
走りながら思ったが、結構難しいこと言ってる!あの人!
だって、目の前でナイフ突きつけられて、抵抗するな!とか言われたら
もうこっちはどうすることもできないじゃん!
光一は復讐に燃えていたものの、急に言われた人質という要因に不安を感じていた。
でもなぜかそんな不安があってもいける気がする。
その変な自信の源はきっとこいつだろう、
こいつは相当強いらしいし、まぁ、生かすも殺すも、戦う俺次第ではあるのだが、
なんとかして、いつか、こいつにも戦わせたいところではある。
<何言ってんのよ!私たちは一心同体なんだから、あんたが戦えば私も戦ってることになるでしょ!>
あぁ、聞こえてるんだった。
「まぁ、そうだけど…。俺が言いたかったのは、カルティナにもなんかビーム撃ったりとか、
相手の攻撃かわしたりしてみて欲しいってこと!」
<嫌よ!そんなの危ないし!>
……んん!!!これからその危険を犯しに行くのは誰だと…!?
これは慣れるまで時間がかかりそうである…。
そうこうしてるうちに街に着いた。
門の前にわらわらと人が集まっている、やっぱりかなりの騒ぎになってるみたいだ。
光一は急いで門の近くに駆け寄る。
「すいません、今これはどういう状況ですか?」
光一が門の周りにいる街の住人らしき人に声をかける。
ん?なんか若干げっそりしている?
「あぁ、あんた新人クリエイターか、なんかかい?
今この街に来たのか?タイミング悪いねぇ。」
クリエイターになったことがバレたのかと一瞬ビクッ!としたが、
よくよく考えるとこれは俺の体格が良くなったから、強そうに見えたから、そう言ったのか?
ハッ!いい目をしてますね、どうも、僕、強いです。
<こんな、街の人の何気ない言葉をここまで膨らませるとは…、光一すごいわね…。
ある意味尊敬できるわ>
「そうだよ、俺のことはどしどし尊敬してくれ。」
光一もカルティナもお互いの発言にちょっとイラっときたが、
そこはグッとこらえた。なぜなら今優先すべきは、この街の状況を知り、ダーグを倒すことだから。
それに俺はあんな騒ぎを起こしたから、門前払いされないかが心配だった。
しかし、俺がこの街に来たのはこの世界に来て最初の日、つまり半年前だし、
俺だとわかる人はいなかった(もう一度言うが、別人のように、体格も良くなったしね!)。
「あぁ、そうだ!あんた今この街でクリエイターが1人かなり暴走しててね。
人質まで取って…、誰か探してるみたいなんだ!もしできそうなら!なんとか懲らしめてやってくれないかね?」
誰かを探してる………ん!それ俺だね。
光一はそう思ったが、その探し人が自分だとは言わず、街の人々の願いを聞き入れ、
ダーグの居場所を聞いた。
話によると、どうやらその人質の中にあの日、優しくしてくれたおじさんも含まれているらしい。
一刻も早く行こうと、この街に向かってきたときよりも更に速くダーグの元に向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
言われたところに向かうと立派な屋敷が立っていた。
中からは下にいる坊ちゃんの様子を見ようと、ほぼ全ての窓から誰かしらが顔を出していた。
家の前にはおじさんを含む数人の人質と思われる人たちと、
2人の部下を従えた、ダーグが椅子に座っている。
「やぁっっっとぉぉぉぉぉ!!!!!!!
見つけましたよ、光一くん。」
不気味な動きでそう言い放った”金髪坊ちゃん”ダーグ、やはりかなり俺のことを探していたようだ。
人質の様子は、おじさんは心配そうにこちらを見ててくれてるが、それ以外の人はかなり俺のこと恨んでいそうだ。
”なんで俺たちがこんな目に” そんな気持ちが表情から、視線から、痛いほど伝わってくる。
もし俺がダーグに勝てたのならば、何かしらの償いをしよう。そう光一は思った。
「やぁ、かなり俺のこと探してた?
来たからさ、その人たちをまず解放しようか」
光一はあまり刺激しないように人質の解放を促した。
「…………………あぁ?解放しようか、だと?
…………………ふざぁけるなぁぁぁ!!!!!!!
お前は何様のつもりだ、このダーグに向かって!!!!!
自分の身をわきまえろ。
それにわかってんだろぉ?いいからさっさとあの地図を返せぇ!!!!!
わかってんだよ!お前が俺にやられた腹いせに、俺の屋敷に盗みに入ったんだろぉ!!!」
街中に響き渡りそうなほどの声でダーグは叫んだ。
初めて光一に出会った時のような元貴族と感じ取れる上品な言葉遣いなんてものは微塵もなかった。
んん、凄い言われようだが、まぁ、前半の方は許してやる。
だが後半!!!
返せぇ!だ? あれは元々俺のものだ!こいつにあげた覚えはない。
光一が言い返そうと息を吸った時、
「お前あれを拾ったと言ったな!
お前はあの地図の価値をわかってない!
あれは金剛級のお宝アイテムなんだぞぉ!!!
この世にたった一枚しか存在しない世界地図だ!
あれが、あれがあれば…、俺はクリエイターとして、貴族として永久の地位が確約される!
わかったら早く返せ!そして跪き、謝罪しろぉ!」
ダーグの肩が上下する。
かなり熱くなっているようだ。
そして、金剛級だとぉ?
それって前に本で読んだが、この世のアイテム全てに位置付けられてる級のことか!
全部で7、8個あった気がする、もうほとんど忘れたが…。
でも、確かぁ…、金剛級は、
……………………最高位のアイテムじゃねぇか!!!
金剛級ってこの世に5つか6つしか無いんだぞ!確か!
結局、俺はチートスタート切ってたってことじゃねぇか!
クッソ!あの女神ぃ………様ぁ…めぇ!!!
どんなに怒ってもこの世界に飛ばされた時の女神の姿を思い出すと、
”様”を付けずにはいられない光一であった。
「何をモタモタしている!早くしろ!
想像!”ロングソード”!」
そういうとダーグはロングソードを作り出して、人質に向けて構えた。
「こいつ……、殺すぞ?」
ロングソードを向けられた女性はビビリ切って今にも泣き出しそうである。
「わかった!ストップ!ストップ…
地図だろ?渡すから!」
少し緊張感がなさすぎたと自分の思考していたことの甘さに少し後悔をする。
光一はダーグに一瞬背を向け、能力を使い、地図を出す。
「ほらこれだろ?これを渡せば人質、解放するんだよな?」
ダーグは一瞬で光一のどこかから取り出された地図に目を輝かせていた。
それと同時に少し疑念も持っていた。
こいつ…、今あの地図をどこから出した?
ん?まさか…、こいつもクリエイターなのか?
だとしたらあの地図を作り出せるだけの精霊を従えているということ!
つまり、かなり高位の精霊と契約している…?
俺が見つけられなかったSランク精霊を見つけて、契約した?
いや、それはない、だとしたらこいつと初めて会った時、あんな一方的にやられないはずだ!
だってやり返せるだけの力を持っているということになるのだから!
それにこっちには人質だっている!!! 大丈夫だ…、大丈夫だ。
光一とダーグが初めてあった時から今までの間に光一は精霊と契約したかもしれない。
という発想が抜け落ちている時点でダーグは冷静ではないということがよくわかる。
「あぁ、解放してやる!」
小声で「多分な…』と言ったダーグの声は光一には届いていない。
2人の距離が近く、
光一はもう渡す気満々だった。
彼には秘策があった。
その時、光一の右耳に黒いイヤホンがクリエイトされた。
これからはできる限りで、このくらいの文量での毎日投稿をしたいと思います。