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003.力と決意


あれからどれだけの月日が流れただろう…。

そんな、言うほど経ってはいないが、

まぁ、半年くらいは経っただろう。


俺は完全にこの森に順応していた。

太陽が昇ったら起き、顔を洗い、朝食を食う、

朝食と言っても皆さんの想像するような白米に味噌汁やパンにマーガリンとかではなく、木の実やそこらへんに生えてる食べられる草である。

食べられる木の実や草はガイドで調べました。そんなものまでわかるのかと、最初は驚きました。

他にも魚、肉類を調べたり、さらには英和辞典、ドイツ語の辞典まで!

本当にこの『ガイド』と言う能力は便利である。

思った以上にこの能力もチート能力なのかもしれない。最近そう思い始めている。


木の実や草に味はないので、近くの海から掬った海水を煮沸して塩を作り、それをかけて食う。飲み水も近くの川から確保(2回ほど腹壊した)。


そして、なにより、俺は狩りができるようになった!

え?何を狩ってる狩って?そりゃここらへんにいるものと言ったら…、魔物でしょ!

魔物も前の世界で言う動物に近いものばかりなので、焼けば食えるのだ。

気持ち悪いと思うかもしれない。最初は俺もそうだった。

しかし、慣れればどうってことはない!今ではもう、それはそれは、ムッシャムッシャ食っている。

貯蓄もたっぷりで、2ヶ月分くらい、人数で言えば1000人分くらい賄える量がある。


狩りは弓でシュパァン!って感じ。弓はナイフで木を削って作ったものだ。

弓と矢を作るのに3日、初狩りに成功するまで一週間。計9日!

その間、俺は木の実と草しか食ってなかった。

もぉ…、やばかったぁ。

今思えば海で魚か魔物を取ってくればよかった話なのだが、その時の俺は全然そのことに気づかなかった。


たまに精霊を契約させに街に向かうゴーシュさんが通りかかってたのだが、かなり心配された。

ボーボーに伸びた髪の毛を魔法で良い感じにチョチョッ!と切ってくれたりもした。

街で俺のことを見なかったかと物騒な奴らに聞かれたらしいが、俺のことは黙っていてくれたらしい。

本当にいい人である。

彼がいなければ俺の異世界ライフは一瞬で終わりを迎えていたことだろう。



そんなところで次は俺の成長した点について教えよう!

俺は半年間、やることが筋トレくらいしかなかったもんで、そこそこムキムキになった…!

う〜ん、ごめん!筋トレはやってなかったかなぁ〜?

サボってたけど、日々の重労働が身を結んだって感じです。

そしてムキムキは盛ったわ、元々そんなに肉付きがいい方ではなかったので、

まぁ、細マッチョって感じである。

とにかく!今、人生最高の肉体を誇ることは間違いないだろう!


そしてなんといっても!なんといっても!!!

俺はなんと…、想像(クリエイト)ができるようになったのだぁ!!!

ガイドで『想像(クリエイト)』というものは体内の魔素により出来るものだと知った、

さらに人間も元々体内に魔素を宿していることも知り、

「え?今できんじゃん!」と思い、実際にやってみたのである。


クリエイトはイメージしたものと言葉の組み合わせによって効果や威力は無限大らしい。

例えば、剣のような実際の物質を作り出すこともできるし、魔法のように使うこともできる。

神ことゴーシュさんの使ったクリエイトを例にとると、

彼は「ウインドジェイル」と唱え、イメージは風の檻。

………うん、ほぼ直訳である。

おそらく風でできた檻で相手を捕えるようなイメージで発しているのだろう。


そして俺が手始めに開発したのは……

強すぎず弱すぎずの調節可能な炎………「調理火(コンロ)!」である。

どうだろう? ちょっとダサいが火起こしが大変だった俺からすれば、革命的クリエイトである。

しかし、精霊と違って人間は体内の魔素を使いきった時、死んでしまうと聞いてもう使えずにいる。

一回のクリエイトでどれだけの魔素を使うかは知らんが、

精霊と契約し、魔素を分けてもらえるようになるまでは封印だ。


精霊で思い出したのだが、俺は最近新しい出会いがあった。


あれは俺が狩りができるようになってから、ちょっと経った時だった。




========================================



初日に命を削りながら作った木の上の寝床を、海外ドラマで見たようなツリーハウスにするために

朝から夜まで重労働をしていた。

当然のように日課にしようと決めた筋トレをサボり、肉をむさぼり食っていると、

黄色い光の玉がどこからともなく現れた。

しばらく様子を見るようにグルグル、グルグルと俺の周りを回っていたので、

思い切って「やぁ!」と好青年風挨拶をかましてみた。

すると3mくらいの距離を保って、俺の正面で止まった。


「君は精霊だよね?喋ったりできる?」


「…………。」


返答はなかった。おそらく下位の精霊なんだろう。

喋れずに、実体化できないことからもそれは明白だろう。

そしてずっと1人で生活していて人恋しさがMAXまで達していた俺は、その精霊に話し相手になってもらうことにした。

意思のない精霊、話の途中でフラッとどこかへ行ってしまうかもしれないというのに…

俺の前の世界での話や、好きだったもの、ついでにライラックで起きたテンション激下がりの出来事まで。

毎日、ちょっとずつ。

お察しかもしれないが、この精霊毎日来るようになったのである。どうやら話を聞くのが好きらしい。

それはつまりこの精霊が意思を持っていることを示している。

前にガイドで精霊について調べた時、Dランク以上の精霊が意思を持っているとあったので、

一応この精霊はDランク以上らしい。


愛着が湧いた俺はこの精霊を友達とし、名前をつけた、「セイレーン」である。

精霊だから、精霊…、せいれい…、セイレーイ…、セイレーン!!!

………うん、名前のつけ方は完全に語感のみで、意味なんてなかった。

しかも後から調べて知ったのだが、セイレーンというのはギリシャ神話に出て来る怪物らしい、

ナンセンスな名前をつけてしまったかも、とちょっと後悔した。

まぁ、名前なんて関係ない! 俺は話を聞いてくれる友達ができれば良いので。


そしてセイレーンと出会ってからしばらく経ったある日、

俺はいつものように自分の話をしていると…




()()()()()


「うぉお!!!なんだこれ!!!」


急に頭に流れ込んでくる何かに、俺は腰を抜かした。

そしてしばらく考え、、、



あっ、俺主人公スキル覚醒した!?



自分の望まない主人公適正にいい意味で頭を抱えていた…



……………違った。



俺じゃないってことは、どうやらセイレーンがクリエイトしてるっぽい?

完全なる勘違いだったことに、今度は悪い意味で頭を抱えた…



「あー、車ね!そりゃ知らんよね!!! ほー、そうだよね…」


自分の主人公スキルではないことに多少ショックはあったが、

そんなことより、俺は人間ではないものと意思の疎通が取れたことにとてつもない感動を覚えていた。

飼い犬が初めてお手をした時のような…!


「すごいなぁ、セイレーン…、お前クリエイト出来るの?」


()()


やっぱりか…

以外にセイレーンは高位の精霊なのかもしれない。

クリエイト出来るのは限られたランクの精霊だけだし………


あ! も・し・か・し・た・ら!!!!!!!


セイレーンはラノベでありがちな特殊個体っていうやつなのか!!!

なんて淡い幻想を抱いたりなんかもした。

しかし、俺は深く考えないことにした。

セイレーンが強いか弱いかなんてどうでも良い。

それ以前に俺たちは友達なんだ、

まぁ、セイレーンがそう思っているかはわからないが…

と・に・か・く!意思の疎通が取れるようになった、それだけでいい。

それ以上のことは求めたくない、、、




========================================




ってなわけで、太陽が真上まで登って来たので、そろそろセイレーンが来るだろう!


すると、茂みがガサゴソと揺れるのが見えた。

おっ!セイレーンか!?と思ったが、

そこから出てきたのは頭から血を流した、血だらけのゴーシュさんだった。


「えっ…!!!あっ…ちょっ…。」


目の前に起きていることに俺は衝撃を隠せなかった。

ゴーシュさんという俺の中で最強とも言える存在がかなりのダメージを受けているのだ


「大丈夫ですか!!!何があったんですか!?」


とっさに出た言葉がこれだった

倒れかかって来るゴーシュさんを抱きかかえ、俺は問うた。

引きで見ると恋愛映画みたいな構図だね!


「今月の…、精霊の契約を…、ライラックで…、してたら…、

 ダーグくん…だっけぇ…? に絡まれちゃってさぁ…

 今までは…、なんとなく…、大丈夫だったんだけど……」


ゴーシュさんは必死に何かを言ってくれてはいたが、

俺の脳内は色々な思考が駆け巡っていた。


ーなんでゴーシュさんは負けた? ーあんなのに負けるはずがないだろ

ーこの人は元クリエイターだぞ。 ーあの風の檻(ウインドジェイル)ってやつ使えば一発だろ

ー許さねぇあの金髪頭 ー俺に関わった人ばかりを!

ーもしかして俺のせいなのか? ー俺が関わったばかりにゴーシュさんが?

ーならやっぱり俺があいつを倒してやる ー俺だってこの半年で強くなった!

ーでも強くなったって言っても少し筋肉がついただけ ー想像(クリエイト)なんて使えない

ーゴーシュさんが勝てなかったやつに俺が勝てるのか? ークソ、俺にもっと力があれば、

ー俺は半年も何してたんだ? ー何も成し遂げていない ー何もできない ー無力だ

ー恩人がこんなことになってい…


下を向き、ずっと難しい顔をしている俺の頬に痛みが走った

パチン!という破裂音のようなものと聞いたことのない高い声が森に響き渡った


「いつまでそんな暗い顔してんのさっ!!!」


顔を上げると見たことのない銀髪の少女がそこには立っていた。

誰だ?こいつ…。

なんで知らない少女(ガキ)にこんなぶっ叩かれなきゃいけないんだ。

そんな顔で少女を見ていると、パチン!という音とともにまた俺の頬に痛みが走った。


痛すぎる…。あまりの理不尽さに俺は言い返さずにはいられなかった。


「痛てぇよ!なんでそんな叩くんだよ!てか誰だよ!?」


俺の急な反撃に彼女は顔を赤らめて、言い返してきた。


「ほぼ毎日会ってたのに!誰かもわかんないの?ひどいっ!」


もう一度聞いて確信した。この声は間違いなく聞いたことのない声だと。

しかも、毎日会ってた?こんな時におふざけも大概にしろよ!

だいたい俺がこの森に入ってから会ってる人なんて、

ゴーシュさんと人間ではないけど、セイレーンと…、と…、と?


この目の前にいる少女が誰なのか、俺は心の中で1つの答えを出した。

しかしその答えはどう考えてもありえないようなものだった、が、

この少女の言うことを信じるのならば、それしか考えられなかった。


「…………、セ、イ、レーン…?」


恐る恐る、それはもう恐る恐る聞いた。


「んん……、違うけど、合ってる!」


んんん??? なんだそりゃ!!!

やっぱりセイレーンなのか!!! てかこいつ実体化してやがる!!!

なんだよそんなこと出来んのかよ!なんで今までしてなかったんだよ!てか喋れるのかよ!

てか違うけど合ってるってなんだよ!てか…、ブフォッ!!!


どうやら全部声に出ていたみたいだ。

するとセイレーンと名乗る少女は得意げに、俺と横たわるゴーシュさんの周りをグルグル回りながら話し始めた。


「実体化してなかったのには2つ理由があるわ。

 1つ目は私が高位の精霊だと気づかれないため、

 2つ目はランクで判断しないような好みの相棒(バディ)を探すため!

 あと勝手にセイレーンって呼んでたけど、私はセイレーンじゃない!

 私の名前はカルティナだから!!!わかった?」


あっけにとられた俺は口をあんぐり開けていた。



「どうすんの?これから!」


セイレーンは…、じゃなかった!カルティナは、ネガティブになっていた俺の目を覚ましてくれた。

あのままでは俺は恨みと絶望で復讐の鬼と化していたかもしれない。

そんな悪役路線はご免だ。ありがとうセイレ…、んんっ!カルティナ!


「まずゴーシュさんを治療する!それから…、それから…」


今思った自分のしたいことに、自分の実力が見合わないので、俺は口をつぐんだ。


「それから…?」


あー、これ見透かされてるなぁ…。

観念して自分の思いを正直に打ち明けた。


「…………ダーグを倒したい。

 でもゴーシュさんが勝てなかったんだ、俺にどうこうできる相手じゃないのはわかってる!!!

 でも、でも…」


「ああー!!!でもでも、うるさい!

 力を貸してあげる!この数ヶ月一緒に過ごしてわかった。あんたは信頼に足る人物だと。

 私と契約しなよ!そうすればもっと強くなれる。」


突然の思っても見なかった提案に俺は動揺を隠せなかった。


「はっ!?契約って、お前の相棒になるんだぞ!いいのか俺で!?」


「もぉー、良いって言ってんでしょ?

 もっとあんたの世界の話も聞きたいしねっ!」


驚いたものの、欲しかった力を手にすることができるんだ、俺に迷いはなかった。

今までは友達だったが、バディになったからといって友達じゃなくなるわけじゃない。

俺たちは契約したら相棒(ともだち)になるんだ。


「そんなの…、力を手にできるなら、いくらでも聞かせてやる!」


「ええ、もう一度言うわ、私の名前はカルティナ。

 あなたは?」


おぉ…!!!

これって、すごく憧れてた展開じゃないか?

なんか、名前を聞かれたら、こう名乗れと数々のマンガ、ラノベを読んできた俺の心に刻み込まれてるものがある!


「コウイチ…、唐戸光一(からとこういち)だ!」


決まった…。

その時だった、体が光り輝き何かが俺の体に流れ込んでくるのを感じた。

頭の中が真っ白になり、体が硬直する。

俺の体は数秒間光り輝き、やがてその光は消えた。




…………何も…、変化はない?




<これで光一もクリエイターってわけね!>


「………うん。」


光一はあまり目に見える変化がなかったため、最初はあまり自分がクリエイターになった実感がなかった。

しかし、自分の体に集中すると奥底から湧き上がる何かしらのエネルギーが自分は強くなったのだと、

強者(クリエイター)なったのだと、だんだん確信を持たせてくれていた。


「セイッ……、カルティナ!ゴーシュさんを家まで運んだら、ライラックに行こう!」


今までの彼にはあり得ない強気な発言だった。それはその湧き出てくるエネルギーが故だった。

しかしそう言って振り返った先にカルティナはいなかった。

声は聞こえるのに姿はなかった。


「セッ……、カルティナ?」


<心配しなくてもいるわよ!>


んっ!? どこからか声が聞こえる…、けど姿はない…。

ってことは…? 頭の中にだけ流れてるってことか!

確かに、今まではなんというか、頭の中に文字の並びが流れてくるような感じだったが…

今は違う!明確に頭の中に流れ込んできてるカルティナの言葉が!声が!


「なんで声だけ聞こえる?」


当たり前の疑問だった。


「それは…、私が…、答えよう…!」


すると、力ない声を振り絞ってゴーシュが名乗りをあげた。

自分のせいでこれから彼はライラックに戦いに行くのだろう、そう思ったゴーシュなりのせめてもの力添えだった。

光一からすれば、いやこの人自分の状況わかってるのか?あんた死にかけてるんだぞ?という気持ちであった。

しかし、実際は見た目こそ血だらけであるが、ゴーシュの怪我は致命傷に至るようなものではなく

割と話せるといえば話せる状態だった。


<でもあんたボロボ…>


「いいんだ!僕のことは!

 こう見えてもっ…、意外と平気なんだよ…?

 それに僕にも…、バディがいるからね!家までは彼女に運んでもらうよ…。」


そう言うと彼の体から、猫耳のようなものが生えたナイスバディお姉さんが出てきた

そのお姉さんは少し辺りを見回すと、


「ハァーイ!久しぶりね、光一くん!元気だった?」


誰なんだ、この人は?

知らない&馴れ馴れしい人の登場だったがカルティナの事とで本日2度目だったのであまり戸惑いはなかった。


「あのぉ、初めまして…ですよね?」


するとゴーシュさんは一瞬、あっ!って感じの顔を見せた後、いつも通りの優しい笑顔で答えてくれた


「光一くんの前で出てくるのは初めてだったね!彼女は僕のバディのレミーナだよ。

 僕の中から見ていたから、レミーナの方は光一くんのことをずぅ〜っと前から知っているんだけどね!」


なるほど今の俺の中のカルティナみたいな感じでずっと見られていたのか…。


「そうよぉ、だから私からしたらぁ、久しぶりなのよぉ〜」


おっとりとした、艶っぽい声でレミーナは話す


「はぁ…。」


優しいゴーシュさんからは想像もつかないようなバディだと見た瞬間は思ったが、

話し始めてみるとなんとなく相性がいいような気がする。

どちらも穏やかで、優しそうで……、話が長い(レミーナも喋り方が遅いので多分そうだと思う)!



そしてこんな時でもゴーシュさんは笑顔でいてくれる、どこまでも優しい人だ。

人のためになることをするのが彼にとっての幸せであり、

それをさせてあげることが彼のためになるんだと思った。


光一が「じゃあ、お願いします!」と元気よく一礼すると、

レミーナに助けられながら、ゴーシュは近くの木にもたれかかり、カルティナが見えなくなった理由を語ってくれた。


「彼女は光一くんの中に取り込まれたんだよ!

 精霊と契約するっていうのはね、知ってると思うけど、

 精霊から湧き出てくる魔素を2人で共有するってことでもあるんだ!

 つまり、2人は契約すると一心同体となり、話さずして意識の疎通が常に可能になる!」


「……あー、一心同体ね。一心…、どう……たい…? 一心同体!?!?」


おいおいおい!契約=一心同体ってことなの!?

それに意識の疎通も。って…、俺まだこいつとそんなに仲良くないぞぉ!!!

力をくれるからって契約したけど、よく考えたらほぼ毎日会ってただけで向こうは知ってるかも知んないけど、

俺はこいつのことなんも知らねぇぞ!?


<ちょっと!今更何言ってんのよ!私だってめちゃくちゃ勇気出したんだからね!>


「うわぁあああ!!!………聞こえてたの?」


<当たり前でしょ!聞いてなかったの?喋らなくても意思の疎通は出来るようになるのよ!>


どうやら契約っていうのは思った以上に重いもののようだ…。って考えてるのも?


<き・こ・え・て・る!>


だよねぇ〜…。ねぇ…。


そのやりとりを見ていたゴーシュはニヤニヤしながら言った。


「ん〜!どうやらうまくやっていけそうだね!」


「<どこが!>」


光一とカルティナの声が揃った。

すると、ゴーシュは吹き出すように、


「ハハハハハハ!!!ほらね!」


光一は口を曲げて不満そうな顔を浮かべた。

きっとカルティナも光一の中で、同じような態度をとっていたことだろう。


一通り笑い終えると、ゴーシュは苦しそうにしながらも立ち上がり、静かに光一の肩を叩いた。


「僕が止めても、行くんだよね?」


ゴーシュ自身出会ってからまだ日は浅いが、彼なりに光一という人間を理解し、

止めても無駄だということをわかっていた。それ故の確認だった。


「はい、行きます。

 ゴーシュさんが傷つけられたことが決心のきっかけであることは間違いありません。

 しかし、俺はゴーシュさんに救っていただいた時より前から!初めてライラックを訪れてあいつに出会い、

 そしてあの街を出た時から!俺はあいつを!いつか倒すと…!誓いました…。

 それに他にも倒さなきゃいけない理由はあります(女神様とかおじさんとかね!)。」


少し興奮気味になっている光一を諭すようにゴーシュが言った。


「わかった。頼むよ、くれぐれも無理だけはしないようにね。」


光一は静かに頷いた


「はいっ!わかってます!行くぞ!カルティナ!」


そう言いながら、ライラックがある方角に体を向けた


<わかってるわよ!さっさと歩きなさいよ!あんたが進まなきゃ、わたしも進まないんだから!>


光一は少しだけ恥ずかしそうに「わかってるよぉ、ただの確認だろぉ?」

と言いながら、ライラックへと歩を進め始めた。


むっず!小説、むっず!

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