Ⅴ.Ⅴ 天の独白
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我はこの地にただ一匹の竜。
気付いた時には自我があり、ひたすらに見下ろす毎日。何をするでもなく、ただそこに居る。下で蠢くもの達に関心を持つことも無い。
「つまらぬか?」
「我はなんのためにここにいるのでしょうかアウス様。」
「なんのため……か。
ティノスよ、汝は何れこの地に君臨するもの。汝はこのアウスを継ぐモノとして創造されたとだけ覚えておけばよいのだ。
この命、既に桁は九を越えておる。世代交代するのも悪くなかろうと思っておるのだ。
分かるか、ティノス。汝がこの地を納める日が来るということが。
何れ嫌でも関わらなくてはならないのだから、よく見ておくがよい。
醜くつまらなく、くだらないものだとしても汝と同じくこの我が創造した言わば汝の兄弟なのだから。」
大きく白き輝きを放つそれは我の創造主。表情も無く無機質な言葉が我には全てだった。
兄弟。そう言われようと、根本的に違うことをまだ幼子であろう自身にすらも想像ができる。
「我には少々荷が重いと感じております。
我にはアウス様の様な力も知識も、そして何より大切な慈悲もありませぬ。
我にあのようなモノを統率することは出来ないと思われるのですが。」
「なに、今すぐと言うわけではない。
汝に必要なだけの能力が養われるまでは我が理を教えてやろう。」
「アウス様……。」
その教えに言葉は無い。知識として流れ込んでくるそれを我なりに解釈せよとでも言うように頭に直接与えられる。
「少し留守にする。」
神と言うものは常に忙しいらしい。アウス様はそう残し、どこかへと消えて行った。
これだけの広大な世界。翼を持ち、遠くまで見通すことの出来るこの我であっても全てを把握するということはとんでもない苦行に思える。
しかし、それを常に行っているというのだから神と言うものも我とは根本的に違うのだと感じている。
我は面白くも無いが小さく醜く蠢くそれを見下ろしていた。
それは数年に及び、自身の体は既に白く輝いているその姿にすら並ぶほどになっていた。
我に神はいくつもの権能を渡した。
しかし、自身にその量は余りにも多く感じた。
数千年、我はたった一人受け継いだ下界を育てた。
やることは分からず、ただ滅びの未来が無くなるよう監視し管理するだけの暇な日々。
無理であると感じていた千里眼も、アウス様程ではないが身についているようだった。
ただし、自身に存在している意味も行動の必要性も見つけることは出来なかった。
何年、何千年と経っても自身の幸福へ至るものは何も得られなかった。
そしていつしか、人間という知能を持った生き物まで産まれていた。
彼らはモノを創造し、知能を受け継ぐ。しかし、醜く争う姿はそれまでの生き物とは比較にならない。
それだけに常に監視をしていれば、それまでのものよりは我の興味をそそるものだったのかもしれない。
だが我は何も満たされない。寂しいという感情なのだろうか、自身と対等に話せるような存在を求めた。
そして、我は四匹の竜を創造することにした。
赤青緑白。四色の竜には自身の知識と権能、そして無機質な中から産まれた少しの感情をそれぞれ別に与えることにした。
遠き未来を見通す力。
近き未来を見通す力。
全ての可能性を見る力。
現世の全てを見通す力。
竜達は我の与えた自身の権能、そして長い時間をかけて得た知識を用いてそれぞれの大地を発展させて行くだろう。我と同じような寂しさ。我と同じような報われない存在にだけはならないように……と。
我は人の大地を四つに分断した。大地を穿ち引き裂いたその十字の溝は我の放った水に満たされ、簡単には渡ることの出来ない後に海と呼ばれるものとなったのだった。それぞれの竜たち、人間達が余り過多に干渉出来ぬようにと。




