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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第三章 貴族裁判

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096 商業ギルドに来ました

 そして、やって来ました。

 ライザスの商業ギルドへ。

 ただし、保護者代わりの冒険者ギルドのサブマスターのお姉様つきで。

 いやぁね。

 農園の登録申請をすっかり忘れていたのと、うちの農園の農作物を販売するには商業ギルドに加入していないとならない。

 女史夫妻の所の乳製品や卵を卸す業者との契約も、まだ申請をしてなかった。

 ので、ライザスの街に行く事にしたのだけど。

 農園の外周辺に、なんか変な集団がいるとレオンが警告してくれた。

 あれか、私が所持する装飾品やドレス目当てな他貴族のお抱え商会の従業員が、農園へ入れない代わりに置き土産として置いていった見張りなんだろうね。

 私かマーベル一家が農園外に一歩でも出たら、雇い主に連絡して着いて来る手筈になってるんだろうと思われる。

 しかし、その集団が寝泊まりする天幕を張っている土地はランカであり、土地主は私である。

 許可のない滞在は不法占有にあたるので、シェライラに通達して捕縛の騎士さんを既に呼んである。

 うちの子達任せにすると、領地外へ強制放置するからね。

 それも、手荒にだ。

 その時点で契約等させたら、慰謝料とか苦情を盾にして自分達の都合良い展開に持っていけると浅はかな考えをしている可能性も否定は出来ないのである。

 んで、近隣の領主であるシェライラに、不審な輩がいると連絡して騎士さんの派遣を要請した。

 これは、新興の貴族が未開の領地開発中の際に、捕縛権利を有する人材不足を補う施政であって、要請された側は悪事がない限りは協力を拒めないそうだ。

 うちの農園にいる捕縛権利を有する騎士さんは、アルバレア家からなし崩し的に派遣されているワイズさんだけだしね。

 子爵位を継いだナイルさんも有するのだけど、まだ騎士の位を与えられていないのと、 居住している土地が他家の伯爵位を叙爵された私の土地。

 マーベル一家を狙った輩なら、ナイルさんは問答無用で私の許可なく捕縛なり撃退できるが、私を狙った輩に対しては反撃が許されない縛りがある。

 この貴族法も、ユーリ先輩が残した悪法だった。

 叙爵されて貴族法が記載されている法律関連の分厚い本を渡されて、一通り目を通したけどさ。

 かなり、矛盾する法律も載っていて改訂すればいいのにと呟いた。

 聞いたアンナマリーナさんは、法律の改訂には伯爵以上の貴族や大臣を含めた役職付きの八割の署名と賛同が必要で、かなり手間がかかる為に、貴族院でも提案しようにも根回しだけで年単位の時間がかかるとか。

 おまけに、先代と先々代の女王は暗愚だったせいもあり、ここ数十年は議題に上らせる事も出来なかったそう。

 そして、今代の女王は平民出身であるから、高位貴族の反発が高めなので、改訂案も女王位の在り方に重きを置いて、女王ちゃんを引き摺り落とそうとする阿呆ばかりらしい。

 まだ、貴族院の重鎮方がまともな方々ばかりなので、女王ちゃんに関する議題は却下されていて、その反発によって改訂が進まないとか。

 やだねぇ。

 足の引っ張りあいは醜いよ。

 まあ、でも。

 女王ちゃんの守護者が、担ぎ上げる高位貴族の筆頭候補者であるシェライラの守護者より位階が高いのが判明したからか、声高に反発していた貴族は静かになってきてはいる。

 が、更に上の六柱の大精霊が守護者の私が登場したものだから、私を次代女王に押す馬鹿な貴族も出てきて始めているそうだ。

 それらの貴族は、私を支援する素振りを見せて、私に恩を押し売りして甘い汁を得ようとする考えなんだろう。

 誰が、そんな輩に利用されてやるかっての。

 宰相閣下と親交がある貴族家には、女王位を薦めてきたら国を出ていくよとは、脅し……もとい警告は出してある。

 だからか、政府側は火消しに躍起になっている。

 なにせ、私が出ていくと、女王国からは十柱の大精霊の恩恵が無くなる訳で、逃す訳にはいかない。

 頑張って、馬鹿な貴族を制御してくださいな。

 んで、シェライラも私の動向には、ジルコニアを経由して把握してないとならない仕事が舞い込み、大変だけれども馬鹿な輩の取り締まりには余念がない。

 私の要請に、勿論承諾して騎士を派遣してくれた。

 だから、帰宅する頃には、不審な滞在者はいなくなるだろう。

 それに、農園外に出るにも、うちにはフィディルがいるので、直接ライザスの街に出掛ける事が出来る。

 んで、今日もフィディルの力を借りて、ライザスの街に移動した。

 家の扉を開けたら、冒険者ギルドだった。

 あれ?

 てっきり、街の何処かだと思った。


「何で冒険者ギルドに?」

「商業ギルドに行くには、冒険者ギルドの女性を伴った方が良いと思いました」


 フィディルに尋ねたら、そう返ってきた。

 本日の護衛役はフィディルとファティマの二柱。

 他の子達は、お留守番である。

 レオンは新しい住人の家畜達を監視し、お子様ズは見回りから帰宅した灰色君に群がる女史夫妻を警戒して匿っていた。

 何でも、森林狼のアルビノ種や近い種の存在は、学説にも懐疑的なのが主流派で、生きた存在は希少だからと離れやしなかった。

 旦那さんは、又もやテイムしようとして、灰色君に盛大に引っ掛かれ、ヒューズ君にしこたま怒声を浴びた。

 女史は灰色君に了承を得てから質問攻めにしたから、雷は落とされなかった。

 旦那さんは諦めようとしなかったので、ヒューズ君に頼まれたエスカがぶっとい蔦を生やして拘束して家畜の世話をしろとレオンに連れて行かれた。

 まだ理性的な女史も、灰色君からは離れなかった為に、商業ギルドへ行く羽目になったヒューズ君である。

 転移の魔法を体験したも、前もって私が非常識な塊の規格外な魔法師と説明されていたからか、落ち着いていた。


「あら、ミーア様。何か、御用でしょうか」


 入り口近くに佇む私達を目敏く見つけてくれたお姉様は、相変わらず受け付け窓際にいた。

 商業ギルドの件を話したら、お姉様は快く快諾して商業ギルドへ案内してくれて、今に至る。


「こんにちは。テオドールギルド長はいるかしら?」

「あ、はい。すぐに、お呼び致します。又、何か珍しい希少な素材でも入手されましたか?」

「違うわね。ほら、ライザスのお隣の王領地を拝命されたバーシー伯爵様をご案内したのよ。本来なら、うちのギルドマスターと此方のギルドマスターが、お伺いを立てて領地に赴かないとならないのを、わざわざご足労いただいたの」


 だから、不作法は止めなさいね。

 おっとり笑顔で、詮索してくる商業ギルドの受け付け嬢を窘めるお姉様。

 ざわりと、周辺が一瞬だけ騒ぎ慌てて口を押さえる職員と、売買に訪れた客達がいる。

 冒険者ギルドも商業ギルドも、希少な素材を買い取り利益を儲ける敵でも味方でもある(ライバル)の仲だ。

 ただし、冒険者ギルドは加入している冒険者を優遇して庇護し、商業ギルドは加入している商会を優遇して庇護する役割りを担う。

 買い取り価格に納得いかない冒険者が、商業ギルドに素材を持ち込むのは可であり、冒険者ギルドからペナルティはないが心証は悪くなる。

 そして、商業ギルド側は素行の悪い冒険者は庇護する冒険者ギルドや各商会に通達し、売買を規制して反省を促したりして、行商や商いの為に他領への移動に護衛依頼を冒険者に要請する際に依頼料を低めに設定し、差額を冒険者ギルドが負担したりと持ちつ持たれつの仲。

 一介の受け付け嬢が、冒険者ギルドの思惑を探ろうとするなぞ相手が悪かった。

 お姉様的には、私を出汁にして牽制したのも、ある意味商業ギルドに下手な策を講じるなと教えてあげたようなものだしね。

 海千山千の商会を相手取る商業ギルドの職員も、すぐに事態を把握してベテランな受け付け嬢に相手が代わった。


「ごめんなさい、レオーネ。この子も悪気はなかったのよ。ほら、最近王城からの噂に踊らされた商会がひっきりなしに押し掛けてきたりで、うちの職員も対応に四苦八苦するわ、大店の商会なんか上から目線で見下してきたりと、ストレスを抱えた職員も出てきているのよ」


 どうやらお姉様と親しい受け付け嬢が、私達の背後を睨み付けて謝罪を口にする。

 ありゃ。

 それは、私にも責任があるわ。

 私は農園に引きこもる事で、難をかわしているけども。

 私に近い位置にある商業ギルドへ、その鬱憤が向かっているみたいだね。

 そして、商業ギルドを見張る輩がいて、業務を妨げている様である。

 なら、商業ギルドに何か補填するべきかな。

 見張り役の視線が突き刺さる中、ベテラン受け付け嬢に二階の部屋に案内された。

 きっと、階下では騒ぎが起きているはず。

 見張り役から、連絡を受けた商会の人間が集まっていくだろう。

 はあ、帰りもフィディルを頼ろう。

 ほんでもって、商業ギルドにはシェライラの騎士さんを再び派遣してもらって、事をおさめて貰うかな。

 私の意図を汲んだファティマが、微笑して頷いた。

 ジルコニアに念話で伝えたのだろう。

 もう一度頷いて、了解を得たのを教えてくれる。

 案内してくれたベテラン受け付け嬢が、備え付けの魔道具を使用してお茶を淹れてくれた。

 どうも案内された部屋は、高級な家具を配置された特別室なようで、ずっと静かにしていたヒューズ君が居心地悪そうにフカフカなソファに座って、お茶を啜る。

 まあね。

 私と一緒にいたのを見られた以上、別室にとはいかんだろう。

 ヒューズ君は孤児からの養子であるから、身分は平民でも財力を持つ権力者に逆らう術がない。

 動物学者の女史がいれば、彼女は名誉ある学者なので盾にはなり得る。

 が、今は我が家で灰色君を観察しているだろう。

 養子の息子を放置してだ。

 仕方なく、私が盾になるしかない。

 レオンにでも頼んで、大地のおちびちゃん達に見守って貰うよう手筈を整えておこう。

 と、茶器に手を伸ばしかけていたら、バタンと大きな音をたてて扉が開いた。


「ギルド長。お客様の前で、不作法ですわよ」

「……はぁ、はぁ。いや、伯爵様をお待たせしてはならないと思ってね。走ってきたよ」


 入室してきたのは小太りの背が低めの中年男性だ。

 柔和な顔立ちだが、ギルド長までのしあがったのだから、お腹の中は真っ黒だろうね。

 ベテラン受け付け嬢にお小言言われても何のその。

 自分から備え付けの茶器セットの水差しから、水をコップに淹れて一気飲み。

 汗だくの額をハンカチで拭い、身だしなみを整えて深呼吸一つ。


「良し。さあ、化かしあいを始めようか」


 あー。

 さいですか。

 裏を読ませず、単刀直入に来ましたか。

 やっぱり、商売を担当する商業ギルドのギルド長さんは、狸を演じますか。

 ならば、お付き合い致しましょう。

 私も、にっこりと微笑んだ。


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