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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第三章 貴族裁判

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094 ケットシーの秘密を聞きました

 マクレーン夫妻と弟子さんは、荷馬車一台で越してきたようだけど。

 肝心の家畜はどうしたのかな。

 レオンは気配がないと言ったけど。

 私から聞いていいのかな。


「そうだ。そろそろ、旦那も限界だろう。済まない。家畜達を外に出してやりたいのだが、家畜を放牧して構わない場所は、何処であろうか」


 躊躇っていたら、マクレーン女史の方から切り出してくれた。

 前以て、放牧場所の条件は聞いていたので、レオンが家畜小屋と放牧地を準備してくれている。

 畑地区とは離した外れの土地に、家畜小屋と仮眠出来る簡易小屋も建ててある。

 最初は、マクレーン女史一家は、家畜小屋に近い場所で寝起き出来る家を建てても良いかと打診されていた。

 しかし、農園は魔物が跳梁跋扈するベルゼの森に近い。

 魔物避けの結界があるとはいえ、ファティマの守護結界も万能ではないし、人海戦術で結界破りをされたら、危険が付きまとう恐れがある。

 幾ら、うちの農園に大精霊が居着いていて、眷属の精霊がいても、何事も安全を軽視する訳にはいかない。

 その点、我が家には家魔法を強化されたブラウニー達がいる。

 ファティマ不在の折りには、ブラウニー達無双の家魔法で我が家に籠城して貰えば、火急の事件が起きてもフィディルの精霊魔法で駆けつけるまで、持ちこたえる事ができる。

 農園に引き取る条件で、私側から女史の一家も我が家に住み込むのを提案した。

 それは、苦もなく受け入れられて、女史一家の部屋が離れの家に増築された。

 引っ越し荷物はブラウニー達によって我が家に納入され、女史一家を連れて家畜小屋に案内する事に。


「お姉ちゃん。その人たちが、新しい家族の人?」

「うむ。アマンダ=マクレーンだ。よろしく頼む」

「おじさんは、リクハルトだ。こっちは、義息子のヒューズだ。よろしくな」

「初めまして。ヒューズです」

「此方こそ、初めまして。ナイル=マーベルと申します。息子のロイドと娘のエメリーです」

「「初めまして」」

「この子た……」

「おおう、猫妖精(ケットシー)ではないか、珍しい」


 外に出るとすぐに、ナイルさん達と行き合った。

 休憩時間になり、農作業を中断して戻って来た所だろう。

 ナイルさん達には、マクレーン女史夫妻が農園に来る事は伝えてある。

 アンナマリーナさんは、細工師の非常識農園に被害者が新たに加わるのかなどと、嘆いていたけどさ。

 自己紹介をしあっていたら、ララとリリに気付いた女史が興奮して、ナイルさんの言葉を遮った。

 流石、動物学の先駆者。

 人前に姿を表すのが珍しいケットシーを前に、観察始めちゃった。


「ちょっと、奥様。駄目です。見るだけです。触ったり、体毛やらを採取するのは、ご法度です。ほら、警戒されちゃったではないですか」


 いや、初めは観察だけだったんだよ。

 ララとリリも攻撃の意思がない、単なる観察だけなら容認した。

 しかし、学者としての本能か、好奇心が刺激されたのか、ララとリリに確認もせずに、体毛を引っこ抜こうとして、困惑された。

 んで、にこにこしていたエメリーちゃんが、警戒してララを抱っこしてロイド君に渡し、自分はリリを抱っこして、ナイルさんの背後に隠れてしまった。

 それでも、諦めない女史が追いすがろうとして、ヒューズ君に制止される。

 旦那さんはどうしているかと視線を向けたら、旦那さんも目を輝かせてララとリリを注視していたというね。

 どうやら、テイマーのさがらしく、希少なケットシーを発見して、テイム仕掛けていた。


「旦那様も、人様の処の子に手を出さない」


 きっと、苦労していただろう養父母の有り様に、ヒューズ君は女史の襟首を離さず捕獲して、反対の手で旦那さんの頭をはたいた。

 それから、既定路線なのか、正気に返した女史夫妻を地面に正座させて、お説教タイム発生。

 養子になったのも、常識的な自分がいないと女史夫妻が路頭に迷うと思われたんじゃね?

 どちらが、保護者なんだか、分からない状態に、私達は呆気に取られておりますわ。


「ああ、類は友を呼ぶ。先達の格言は偉大なり」


 こら、アンナマリーナさん。

 納得すんな。

 それだと、原因は私にあるじゃないか。

 貴女も、類友の範囲内だからね。

 遠い目をするでない。


「いいですか。何度も何度も、同じお説教させないで、いい加減、己の性格と本質を制御してくだ……。ひゃあ?」

「ん。ぎやっ!?」

「うわっ!?」

「……お仕置き、完了」


 私達の存在をまるっと無視された事態に、セレナが動いた。

 小さな氷の塊を、女史一家の背中に落とす荒業をなす。

 エスカとユリスが、握り拳に親指を立てて称賛する。

 レオンが窘めないとこ見るに、指示を出したんだろう。

 まぁね。

 炎天下の中、農作業をしていたナイルさん達には、水分補給と疲労回復して貰わないとだしね。

 付き合わされている騎士ワイズさんと、アンナマリーナさんにナイルさん達大人組だけなら、ヒューズ君劇場に付き合ったけども。

 ロイド君とエメリーちゃんという、お子様もいるんだった。

 早めな、休憩が望ましい。

 なので、セレナの頭を撫でて誉めておく。


「あー。お説教は後に回してください。旦那さんが限界なんでしたよね。それと、ケットシーのララとリリは、マーベル一家のれっきとした家族なので、過剰な観察と嫌がる行為は止めてください。守ってくださらないなら、速攻で農園から叩き出します」

「はい、了解であります。ええ、もう、それは必ず遵守させます。いいですね。理解しましたね。バウルハウト侯爵令嬢と、クラーゼン侯爵様のご厚意に、泥を塗らないでくださいね。分かりましたか」

「うむ。理解した。だが、一つだけ質問させて欲しい」


 ヒューズ君の気迫に押された女史だったけど、知的好奇心が優ったようで挙手して、ララとリリから視線を外さない。

 更に、身を隠す兄妹。

 この状態は、どうしたものかね。


「ロイド、エメリー。一つだけの質問には、答えてあげよう。でないと、執拗に付きまとわれるだけだからね」

「……はぁい」

「質問に答えたら、もうララとリリに近付かないなら、いい」


 父親の配慮に、渋々といった形でロイド君とエメリーちゃんが、ナイルさんの背後から出てきた。

 うん。

 女史みたいに知的好奇心の塊な学者の目の前で観察対象がいれば、満たされるまで他人の迷惑行為となるのを、学術的見解やら、学説の正しさを証明する為だとか言い訳を建前にして、強引に自分の欲求を満たそうとするのが、研究者の常。

 下手に逆らうと、お偉いさんを出汁にして、脅迫までするからね。

 学者の横の繋がりは、侮れない。

 しかし、ヒューズ君が宣言する通り、マクレーン女史夫妻の後ろ楯には、私をよく知る人物と大精霊がいる。

 私の不興を買うぐらいなら、マクレーン女史夫妻を切り捨てるだろう。

 ほんでもって、私の与り知らない裏側で各属性の精霊から報復がいく可能性大有り。

 あはは、笑えねぇよ。

 セレナのお仕置きが可愛いで済まされる範囲を越えるのは、止めて欲しいわ。

 ヒューズ君も養父母の安寧の為、口喧しくなるのは仕方がない。


「分かりました。絶対に一つだけです。そして、以降は付きまとうのは厳禁です。何か、気になる案件が出てきましたら、僕の監視の元で保護者の方の了解を得てから接触してください。これが、守られないのなら、奥様が旦那様より大切な研究日誌と記録は、廃棄します。旦那様も、奥様より溺愛しているテイムした魔物を、食材として処理します。いいですね」

「「うん。了解した」」


 ヒューズ君の酷い暴露と対処方法に、マクレーン女史夫妻は安易に了解した。

 これ、最初の脅しじゃないね。

 頻繁にやらかしている案件だよ。

 ヒューズ君の陰の努力によって、女史夫妻がこれまで無事にいれたのだと判明した。

 この性格なら、騙され易いし、押し付けられ易いわ。

 女史夫妻に、ヒューズ君を引き合わせた幸運を手放しで褒め称えてあげたい。


「よし、では聞くが。ケットシーといった、動物型の妖精種族の住まう楽園は、何処にあるのだろうか。長年、動物学者の間では、研究尽くされているテーマなのだが、誰一人実証出来なくて、謎になっているのだ」

「取り分け、動物型の妖精種族は別大陸の住人ではないかとの説もある。そこの所だけでも、教えて欲しい」


 おい。

 質問が二つになっとるがな。

 一人に一つと、誰が了解したよ。

 内心、動物学者ではない旦那さんの参加に突っ込みを入れてみた。

 ヒューズ君も、片眉をあげて不快を示した。

 が、お人好しのララとリリは、頓着しないで答えた。


「そうにゃ。うちらみたいな、動物型の妖精種族が住まう妖精郷は、別大陸にあるにゃ」

「うちらは、その別大陸で捕らわれて、海を越えて、此方の大陸のある国の王様に売られたにゃ」

「でも、捕らわれたのはうちらの親世代にゃんで、うちらは別大陸に返されても、妖精郷へと至る扉の鍵を持たないから、居場所がにゃいにゃ」

「それで、権力の象徴みたいな扱いされて、繁殖されてうちらが産まれて、その国からさらに売られる所を、ケイティが助けてくれたにゃ」

「ケイティの父親が持つ秘密の小箱に、一時的な仮死状態の薬を飲んで、死んだ状態にして保護されて、外交官特権で女王様への貢ぎ物の中へ隠して運ばれたにゃ」

「でも、当時の女王様と周りの大臣達が、にゃんか争っていて、うちらの保護の申請書類が受理されにゃくて、ケイティが女王候補の権利を駆使して、マーベル家に保護されることににゃったにゃ」

「それが、気に入らないケイティのライバル令嬢が、父親の権力使ってうちらを使った呪いの道具にされて、マーベル家が没落したにゃ」

「本当にゃら、うちらはそのライバル令嬢の家に没収される予定だったけど。ある貴族様が擁護して、うちらはマーベル家が唯一保持される財産として処理されて、マーベル家から離されなくて済んだにゃ」

「今思えば、その貴族様、ケイティの旦那さんに似ていたにゃ」

「もしかしたら、ベイルートの身内だったかもにゃ」

「なら、アルバレア家の伯父様か、お祖父様が手を回したのかもね」


 アンナマリーナさんの呟きに、賛同する。

 資産没収の憂き目にあったマーベル家が、希少なケットシーを保護し続けられたのも、アルバレア家の擁護なくしては出来ないからね。

 まあ、そのアルバレア家も、マーベル家の再興には苦慮して、フォレスト領に迎えられなかったのも、痛恨の極みだったのだろう。

 ケットシーを黙認する代わりに、マーベル家に関わるのを阻止された。

 また、別大陸の妖精境に帰れないララとリリの処遇を巡って、裏では牽制し続けてはいたのだろうね。

 でないと、辻褄があわないし。

 けれども、その牽制を領主代行のオレリアさんは知らないでいた。

 だから、マーベル家に隠されたケットシーを奪取しようとした、偽代官一派がナイルさんを有りもしない罪状で捕らえて、残された子供達の安全を対価に、ララとリリが自分から身を差し出すように仕向けた可能性がある。

 ちょっと、シェライラ辺りに愚痴ってみよう。

 敏いシェライラなら、思惑を看破して探ってくれるだろう。

 うちの子達に助力を求めないのは、これが人の悪意と貴族の傲慢による行為だからだ。

 より、上位の貴族に睨まれるといいさ。

 針の筵を経験してみろっての。

 密かに画策してみた。

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