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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第三章 貴族裁判

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093 噂の女史がやって来ました

 哀れな子羊達がお姉様達に連行されて行き、買い取り窓口での精算も終わったので、冒険者ギルドの用事はなくなった。

 依頼も何件か達成したので、暫くはギルドに来なくてもよくなった。

 帰り道、ロイド君やエメリーちゃんへのお土産のお菓子等を買い込み、アンジーに頼まれた食材も買った。

 馴染みになった植物の種や苗木を扱うお店で、他国から持ち込まれた苗木について相談されたりと道草しまくり、農園に帰ってきた。


「お帰りなさいませ。以前、お伺いしておりましたお客様が、おみえになっております」


 何処でもフィディルの荒業で帰宅した私を感知するなり、クリスが玄関口に出現する。

 家妖精(ブラウニー)の家魔法による移動技である。

 突然現れるブラウニー達に、最初は驚いていたマーベル一家やアンナマリーナさん達だったけど、慣れた今はもう驚かなくなった。

 私?

 そんなの、ゲーム内で慣れてます。


「客? ああ、マクレーン女史夫妻かな」

「はい、そうでございます。後、見習いのお弟子様もお連れです」

「シェライラからは、連絡なかったけど。直接、農園に来たんだろうか」


 家畜連れの移動だから、領主館によらずに来たようだね。

 家畜小屋を準備しておいて、良かった。


「変だな。家畜の気配はないけど。本当に、 本人なのか?」


 大地の大精霊たるレオンなら、農園内の事象は手に取るように分かる。

 そのレオンが、家畜はいないと言う。

 これ、如何に。

 まあ、でも農園に入れるのだから、危険思想の持ち主ではないみたいだけどさ。

 アンジーもクリスも、そんな輩を家に入れはしないしね。


「はい。身軽な荷馬車一台だけでしたので警戒致しましたが。ミーア様がシェライラ様にお渡しした、書類と農園に入れる鍵をお持ちでした。また、エメリー様付きのナナリー様が、危険はないと申されましたので、お客様として遇しております」

「そう。それなら、何らかの手段で家畜を運んできたんだろうね。じゃあ、お客さんに会うよ」


 私が知らないだけで、移動手段を持っているなら、心配いらないかな。

 ナナリーだって位階落ちはしたものの、上位よりの中位だし。

 エメリーちゃんの成長にあわせて、位階は戻る可能性は高い。

 なので、うちの農園にて休息する大地の精霊のおちびちゃん達も、ナナリーへの信頼は厚い。

 無論、大精霊のレオンに虚偽の報告なんてものは、しようがない。

 クリスにアンジーから頼まれた食材を渡して、お客さんが待つ客間に移動する。

 興味津々なうちの子達も続く。

 客間の扉をノックする前に、内側から開いた。

 お客さんをもてなしていたアンジーが、私の帰宅を感知して出迎えたようである。


「お帰りなさいませ。お客様のマクレーンご夫妻とお弟子さんの方でございます」


 客間には、眼鏡をかけた細身の栗色の髪の女性と、山賊かと思わせる程厳つい顔つきをした大柄な銀髪の男性と、まだ十代前半な金髪の少年がいた。


「お待たせしました。ランベリゼ農園の主人、ミーア=バーシーです」


 ソファセットに並んで座っていたお客さんの対面の位置に向かい、自己紹介をする。

 お茶を飲んでいたお客さん達が茶器を置いて立ち上がり、頭を下げた。


「先触れ無しに直に、農園に来訪した無礼をお詫びする。私は、アマンダ=マクラーレン。旦那のリクハルド=マクレーンと、養子に迎えたいヒューズである。私は動物学者で、旦那は魔物限定のテイマーで、ヒューズもテイマーの素質がある子だ。この度は、私達を受け入れていただいて、感謝する」

「あっ、あの。奥様は、男兄弟四人の中で育ちましたので、言葉が男性的な不遜な言い方ですが、根は優しい方です。旦那様も、外見は強面で子供には泣かれる顔をしていますが、子供には大変甘い方です。孤児の僕を養子にと言っていただけるお人好しな方々です」

「ん。私の挨拶は、不快に思われるものだったか?」

「俺は、一言も挨拶はしてないんだが」

「何を言われるんですか。何事も、第一印象が大切です。奥様と旦那様も、こちらの農園が受け入れてくださらなければ、可愛いあの子達を手放さないとならないんですよ。分かってます?

 ですから、友好的にいかないと、何ですからね」

「うっ、確かに。ヒューズの言う通りだ。俺のせいで、迷惑をかけて済まない」


 いや、あのね。

 事情は聞いてますよ。

 マクレーン女史の実家は、代々続く畜産業と優秀な馬を産み出す牧場を営んでいたそうで。

 何故か、お兄さん達は牧場を継ぐのを嫌がり、妹に押し付けて雲隠れしたとか。

 それで、女の子に後を継がせる教育をしていなかったご両親が目を付けたのが、知人の牧場の三男坊の旦那さん。

 女史は動物専門の医者、所謂獣医として二人は牧場を切り盛りしていたのだけど。

 旦那さんが魔物に好かれるあまり、牧場には魔物類に分類される牛型の魔物と鶏型の魔物が大挙して住み着きはじめたのが切っ掛けで、雲隠れしていたお兄さん達が、大枚はたいてまで高価な食材となり得る魔物達を勝手に販売する契約を複数の名店の飲食店と結び、お金を貰いまた雲隠れした。

 女史と旦那さんは、自分達の与り知らない事で、納品されない魔物のお肉類やらの違約金とか賠償金を支払う為、魔物達を手放すのではなく、牧場の権利を手放して、お兄さん達とも縁を切った。

 元々、牧場経営に乗り気ではなかった女史は、両親からも育児放棄紛いな扱いをされていて、両親や兄達を家族とは認識していなかった。

 それなのに、女性ながら学者として身を立て独立したのに、後継ぎを強要されて不満があったのは隠してはなかった。

 宛がわれた旦那さんとは、同じく振り回された同士として仲は良好であったが、二人に子供が恵まれないのを理由に、父親は牧場から逃げた息子を頼りにして、手を尽くして呼び戻した。

 兄達は、女史の旦那さんを慕う魔物達で一攫千金を狙い、詐欺行為を働いて大金を入手したら、また牧場から消えた。

 残された借金の責任は、息子にあるのに娘を責める毒親が縁を切られるのも当然な話だ。

 女史の学者の師とシェライラとアナスタシアちゃんの錬金術の師が親友との縁で、私の農園が渡りに船とばかりに女史夫妻に推薦されたのが実情である。

 どうやら、旦那さんを慕う魔物達は、大変美味な食材として有名だったらしい。

 繁殖させて、流通させれば一攫千金は約束されたようなもの。

 支援しようとする貴族達がいたが、彼等も利権狙いなのが丸分かり。

 下手したら、女史夫妻には一セリンも手に入らない契約を結ばせようとしていた阿呆貴族もいた。

 だから、お金儲けに関心がない、私が選ばれた訳だ。

 おまけに、その魔物達は肉食系の魔物にも格好の獲物として認識されていて、肉食系の魔物の襲撃は日常茶飯事だったりする。

 まあ、うちの農園なら大概の魔物は侵入不可なので、襲撃の頻度が多かろうが大抵は排除されるだろうね。


「其方のご事情は、ある程度把握しています。ようこそ、ランベリゼ農園へ。私達は、貴方方を歓迎します」

「……ありがとうございます」

「うん、私の実家に関しては、手続きは正式に終了している。あれらが、ご主人に何らか難癖をつけてきたら、容赦なく商業ギルドや王都のクラーゼン侯爵閣下に進言してくれ。あの方は、私の師に盛大な借りがあり、師は私へ借りを返せと仰ったらしい。もし、ご主人の手に余る難題があれば、躊躇わず頼ってくれて構わない」

「ふむ。なら、最初からクラーゼン侯爵を頼りにされなかった理由をお聞きしても?」


 尋ねたら、女史夫妻が微妙な表情をした。

 聞いたら駄目だったかな。


「クラーゼン侯爵閣下は、貴族にしては平民への親しみをお持ちなのだが。如何せん、奥方様が悋気を起こす方で、貴族にありがちな選民意識の高い方でな。私は生まれは平民であるが、学者である研究発表の成果で、準男爵位を拝命した。奥方様は、私が閣下の側室になるのではないかと疑い、裏で兄を擁護する発言をしている節があってな。閣下に迷惑をお掛けするのを忍びなく、奥方様の悪意に屈しない方の支援者がバーシー伯だと言われて、この話に飛び付いたのだ。ご迷惑であっただろうか」

「捕足させていただきますと。バーシー伯の庇護を受け入れると、旦那様が愛情を掛けて育てられている魔物達を、金儲けの手段として手放さなくて良くなると言われたんです」


 魔物に分類されるとはいえ、旦那さんを慕う魔物達は比較的おとなしく、旦那さんの指示には従う。

 牧場の他の家畜を襲わず、与えられた餌で満足していた。

 旦那さんの愛情をたらふく受けた魔物は、恩返しをする可愛らしい一面を見せて、他者に目をつけられた。

 クラーゼン侯爵の疑問に、鑑定を受けたら特定の魔物をテイマーする能力が判明して、権力者に狙われる羽目になった。

 高額な食材が冒険者ギルドに依頼しなくても、安定に供給できるなら牧場と飲食店は、ウィンウィンな関係でいられただろう。

 が、大金を手に入れた女史のお兄さん達は、大金を詐取して逃げた。

 クラーゼン侯爵は、その詐欺行為を働いたお兄さん達が犯罪者であるとして既に手を回した。

 その行為を、奥方様は不貞行為と見なして、奥方様の実家に掛け合って、原因を作った女史夫妻の方が断罪されるべきの一点張り。

 阿呆くさ。

 貴族が、優秀な人材を育成して支援するのは、ノブレスオブリージュとして果たすべき行いであるそうな。

 平民の中には、魔力を保有するも学ぶ機会に恵まれない環境にいる子供もいる。

 そうした、子供達を支援するのも貴族に課せられた義務なんだって。

 曲がりなりにも、貴族の一員になった私は、農園で学のない平民を雇用して、農業の知識を授ける事が、義務として有効な手段であるらしい。

 マクラーレン女史夫妻は、魔物の繁殖可能性を弟子に伝授する行為が、その義務にあたる。

 クラーゼン侯爵の奥方様は、義務を平然と放棄する性格であるので、そろそろクラーゼン侯爵から離縁を申し立てられても許可されるだろうと、社交界では噂が絶えないそうだ。

 貴族って、ただ平民から搾取するだけの地位ではないんだよ。

 税金を納める平民を、如何に恙無く日常生活を送れるか、領地から離れていかないか苦心しないとならないんだよ。

 でないと、領地から平民が去れば、税収は減少して領地運営が成り立たないからね。

 その辺りの教育を大事にせず、納められた税収で贅沢三昧するのはお門違いだ。

 本当に、貴族には守らないとならない決まりがあり、道を外れたら厄介な難物件でしかなくなる。

 民あっての、貴族に国だからさ。

 それを、忘れたら駄目駄目だ。

 私も、気をつけないとね。

 まあ、相談先には事欠かないから、大丈夫かなぁ。

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