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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第三章 貴族裁判

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087 元女王は愚物でした

 さて、屋敷内に格上のお客様を迎える部屋がなかったので、急遽家妖精(ブラウニー)達が家魔法で特別な応接室を拵えた。

 その所要時間は、僅か一分にも満たないながらも、成金趣味全開な豪華に飾り付けた見映えの良い部屋にせず、適度に品質の高い調度品を要所要所に配置した居心地の良い部屋を設えてくれた。

 いゃあ、まさか我が家に公爵さんを迎えるとは思いもよらずだったから、何とかなり一安心である。

 まあ、ジルコニアやエルシフォーネ辺りは、シェライラや女王ちゃんの避難場所に我が家を指定してくれているから、彼女達が過ごし易い部屋は用意してあるけどね。

 当初の我が家の全体像が、二階建ての建物から三階建ての建物へと拡張していったり、部屋数が増えたりしていっていて、普通の一軒家ではなくこじんまりとした屋敷になっていってはいる。

 別棟まであるしね。

 そう言えば、マクレーン女史の部屋を何処にするかで、又変わったりするんだろうな。

 んで、応接室に移動した公爵さんは両隣に、曾孫のロイド君とエメリーちゃんを座らせてご満悦。

 私が応対する意味があるのか、分からなくなってきた。

 そうそう、公爵さんが運んできた馬車数台分のお土産は、ロイド君が女王ちゃんから受け取った鍵と、猫妖精(ケットシー)のララとリリが隠し持っていた大人の両掌に乗るサイズの小箱の中へ収納されている。

 どうも、マーベリック子爵家に伝わる秘密の小箱は、外交官だった子爵が女王への贈り物やらその国の特産品を収集する為に、女王から下賜された所謂ゲーム内でいうアイテムボックスらしかった。

 多分、ユーリ先輩が錬金術で作製したヤツっぽかった。

 断りを入れて鑑定してみたら、製作者がユーリ先輩だったし。

 ただ、私が人外さんから貰ったアイテムボックスとは異なり、完全な時間停止は付与されてなく、緩やかな時間経過はあって生物なんかは入れられないようだった。

 まあ、ユーリ先輩を毛嫌いしているフィディルが協力しなかったからだろうな。

 時空属性の精霊の協力がないと単なる空間拡張された魔法具ぐらいしか、錬金術では作製できないからね。

 でも、マーベリック子爵家に伝わる秘密の小箱からは、時空属性の精霊の加護がある。

 推測だけども、長年大切に扱っていたマーベリック子爵への温情かな。

 公爵さんの秘書的な立場に就いている邪精霊のベイツが、ナイルさんに目録を渡して小箱にお土産を入れている。

 膨大なお土産に、ナイルさんはやや及び腰でいるがな。

 曾孫へのお土産だけかと思ったら、ちゃんとナイルさん宛のお土産もあった。

 公爵さんの個人的な財産からのお土産らしいが、これはやり過ぎな気がしないでもない。


「あの、公爵様。この土地の権利書は、土産物にしてはならないのでは?」

「ん? ああ、その土地か。いや、元々マーベリック子爵家の領地であるからな。嫌らしくも不正に入手しよった阿呆から、取り返したまでよ。気にせず、受け取るがいい」

「王城には、既に名義人の書き換えは済んでいますから、エメリー嬢の持参金にでもしてください」

「うむ。ロイドはアルバレア家を継がないとならんだろうからな。マーベリック子爵家はエメリーが継ぐがいいぞ。我が国は女児にも継承権はあるからな」


 土地関連には王城の許可がないと不法行為とされるから、根回しは済んでいたらしい。

 ベイツが言うには、孫娘婿のマーベル一家がアルバレア家より正統な貴族家であるのを貴族院に通達した折り、ナイルさんの奥さんの家系も調査されたとか。

 そんでもって、アメリアさんの事情を知る貴族院の長老方が、公爵さんに孫娘の逝去とその婚家の不遇を報告したものだから、公爵さんは悪い笑顔を浮かべて、マーベル一家を貶めた輩に報復したんだって。

 先代女王にも苦汁を舐めさせられ、子供達を不幸な目にあわせた反動もあってか、マーベリック子爵家の案件にも裏で女王の威光を笠に着た馬鹿貴族がいたのもあり、かなり鬱憤が貯まっていたそうである。

 公爵さん自体も、なりたくてなった王配ではなかったんだって。


「儂は、幼少期より男児でありながら、精霊視の才があってな。姿を隠した精霊も視る事ができて、当時の女王に王配になるか、目を潰すか選択を迫られてなぁ。仕方なく、王配になったんだが。息子も娘も精霊視の才が受け継がれんで、女王との仲も悪くなってな。領地に引きこもっておったら、マーベリック子爵の事件やらが起きてなぁ。子爵は開拓放棄された地に追放になったのも、かなり時が過ぎて知ったんじゃ」

「女王は、王配を迎えたら死別以外の理由では離婚できませんからね。先々代女王が女王位に就けたのも、上級貴族家だったのと風の御方が守護者であったからで、錬金術の才はほどほどで、他の候補者より抜きん出て突出した実力もない方でした。本来なら別の方が女王になるはずでしたが、急な病により辞退された故もあって、かなり周囲の耳目を気にされていましたし、何か優秀な実力を示そうと躍起になっていました。そこで、フランツ様の才を利用してお隠れになっている他の大精霊様を見出だして契約しようと大層な事を考えたのです。まず、一番目に初代エンブリオ公爵家の守護精霊であられた我等邪属性の大精霊たるグレイス様を狙いました」


 あー。

 成る程。

 初代エンブリオ公爵はダレンだったから、必然的にグレイスが公爵家の守護精霊と認識されたのか。

 絶賛人見知りを発揮しているグレイスは、応接室の隅っこで隠れていやがりますが?

 公爵さんが気付いていないのは、年と共に精霊視が弱体されたか、グレイスの本気の隠行によって、気付いていない。

 眷属のベイツは気付いているが、グレイスの意思を汲み取って口は挟まない主義みたいだ。

 しかし、肝心のグレイスは出奔したダレンを追って、公爵家の守護を配下に任せて捜索に奔走した。

 んで、捕まらないグレイスを諦めて、次に狙ったのがうちの子達と言う訳か。

 初代女王すら契約できてない大精霊を従える功績で劣等感を払拭して、優秀さを内外に知らしめたかったんだろうね。

 が、うちの子達は完全な無視を決め込んで、雲隠れ。

 公爵さんでも発見には至らない。

 ならば、精霊が幼子には優しい性質に注目した。

 自分と公爵さんの精霊視を受け継いだ子供達に、大精霊との邂逅と契約を強要する。

 けれども、子供達には精霊視が受け継がれなくて、計画は頓挫した。

 利用できない子供達と公爵さんを見限り、内政に励んだものの、あまり錬金術の才に恵まれず、新しい錬金術の技術を開発するには至らない、私利私欲に邁進する貴族の台頭を許し、不正に走る官吏や大臣が続出する始末。

 次代を見出だして教育を施すも、俗物過ぎて自分の子供達を巻き込んで自滅した。

 先々代と先代の女王がやらかした不始末により、庶民の評判は悪くなるばかり。

 周囲の辺境を守護する貴族と、貴族院の重鎮がまともに役目を担ってくれてなかったら、女王国の存続は危うかった。

 当代の庶民出身の女王ちゃんが、自力で嵐の大精霊たるエルシフォーネと友誼を結び、契約して守護者を得て女王位に冊立したのも、苦肉の策だったりする。

 しかも、ユーリ先輩が残した錬金人形の教本は紛い物で、器がまともに機能しないエルシフォーネは大精霊の本領発揮にならず、次点の筆頭候補者のシェライラを押す貴族の声が上がりはじめていた頃に、私が顕現してエルシフォーネをリペアした。

 それから、エルシフォーネが上位の大精霊だと暴露したから、何ら瑕疵のない女王ちゃんを退位させる理由がなくなった。

 貴族院の重鎮も、庶民の人気取りで冊立した女王ちゃんを中継ぎ要員にしていた節もあった負い目もあり、沈黙するしかなくなった。

 代々女王位に就けるには、風のジルコニアか火のアリスが守護者であるのが望ましいとされていた。

 けれども、先々代と先代の守護者はその二柱ではなく、宰相なり補佐役がアリスとジルコニアのマスターだった。

 その慣例を打ち破ったのが女王ちゃんだ。

 アリスとジルコニアより上位の大精霊であるのは、二柱が上位者として優遇するから疑いようがない。

 また、エルシフォーネも、采配できる権能で女王国の気象を操作して農耕地には、雨や必要な栄養素を含む雷を落として豊作に導いたりしていた。

 それだけでも、先々代や先代のやらかした不始末を払拭する希望となった。

 実は、先々代の女王さんは未だに健在でいるらしい。

 と言うのも、公爵さんとは不仲だし、愛情があって結ばれた婚姻ではなかったのもあるしで、離婚はできないから、愛人宅にて軟禁状態だとか。

 自分の期待通りにならない子供達を捨てて、育児放棄した癖に、孫娘婿がアルバレア侯爵家の継承者であるのを知り、庇護下に入ろうと接触しようとしているのだそうだ。

 なので、公爵さんは先んじて、やって来たんだって。


「まあ、貴族院からはきつい監視があるでな。簡単には接触できるとは思わんが、あれには守護者がいる。監視の目を潜って、何らか仕出かすだろうて」

「情に訴えて窮状を打開する策を、計画する才には恵まれていますからね。純情なナイル卿やお子様方を、口八丁手八丁でたらしこめると思い込みが激しい方です。お気を付けてくださいね」

「退位したとは言え、かつては女王であった癖が抜けず、命令すれば何でも叶えられると考えを改めない女じゃ。厄介な案件となるが、儂個人ではどうにもならん。警告しても、自分あっての王配であり、公爵位を賜ったのも自分の温情だと宣う、話の通じん老害よ。愛人は子爵だからな、あまり贅沢三昧できんで、自分から見限った儂にでさえ、無心するような愚者じゃ。婿殿も、良い寄生先ぐらいとしか思われとらんわ」


 退位した元女王には、かなりの額の年金が与えられる規定があるも、一度覚えた贅沢三昧は鳴りを潜める事なく、軟禁状態であろうが構わず散財しているのを止めない。

 愛人の子爵家の財産も使い込んでいる様子で、公爵さんにも夫だから補填しろとか、厚顔無恥な手紙が頻繁に来るのだとか。

 貴族院の方にも、支援の手紙を送りつけて、元女王に相応しい地位と財産を要求している阿呆でもある。

 そんな様子でいるから、国外にも出せずに軟禁されているのに、孫娘の婿の爵位を把握して、自身にも正統な財産分与を請求出来る頭がお花畑である。

 何で、そんな阿呆な思考で女王になれたんだか。

 棚からぼた餅にしては、作為的なモノを感じるわ。

 空回り過ぎて、自分を見失っているとしか感想が湧かない。

 黙って聞いていたアンナマリーナさんも、表情を堅くしている。

 南の国境を守護してきたアルバレア家に、寄生しようとする元女王は必要はないからね。

 国境の諍いは無くなったのに、新たな火種が舞い込んで来た。

 さて、どうやって乗り越えようかね。


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