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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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082 お華さん達との会話でした

 ぱちくりと、ロズレーヌ嬢が瞬きを繰り返す。

 彼女の守護者は位階が高めな精霊からか、私の背後で威圧しているフィディルとファティマに及び腰になりながらもマスターである令嬢から離れようとはしなかった。

 うむ。

 令嬢の側に残された取り巻きさん達も、守護者との仲は良好であり、中には大精霊の視線から守ろうとさりげなく間に割って入っていたりする。

 よしよし。

 先程の不届き者の取り巻き擬き令嬢とは違い、なかなか心が通っている。

 心配されるのも重要なファクターなんだよね。

 でないと、簡単に見限られちゃうからね。

 精霊は良き隣人であるも、一柱一柱性格や感情を持っている。

 駒扱い、道具扱いは止めましょう。

 だから、金儲けの手段に成り下がった聖母教会は破綻したのだ。

 私がマスター権限を使用して守護者システムを停止しなくても、システムに組み込まれていたレットとレッタは存在消失しかけていた。

 近い日にシステムは停止していただろうし、教会に束縛されていた精霊も解放されていただろうね。

 先程守護者契約を破棄を受け入れ、微塵もなくマスターを見限った精霊と同じく、聖母教会にも残る精霊は一柱もいなかったと思う。

 それを鑑みるに、現在もマスターの側に残った守護者は、メンテナンスも欠かされる事なく大事に扱われていたと見る。


「あー。ロズレーヌ侯爵令嬢、大丈夫かな? 放心している場所と周りを気にしようか」

「あ、の」

「はい?」

「もしかしまして、バーシー宮廷伯は、聖母教会に鉄槌をくだされた方でしょうか。そして、精霊の代弁者であらせられる?」


 まあ、確かに聖母教会には小さい鉄槌をくだしたかな。

 んで、精霊の代弁者とは、称号の関連性があるかな。

 どう返したらいいか困って苦笑していたら、なにやら精霊同士の会話がマスターに知らされる事なく交わされたようで、各々の守護者がマスターに耳打ちした。

 それを聞いた令嬢達が、真っ青な顔色をした。

 ああ、背後の二柱が誇張して主張したかも。

 振り返れば、善い笑顔なフィディルとファティマがいた。


「概ね、あっているわ。だから、この危険人物に喧嘩は売らないようにした方がよいから」

「アンナさん。言葉に棘あるんですけど」

「私は、細工師に常識を教える立場になっている。怖い守護者にもきつい発言も了承を得ているけど。少しだけ、危険察知のスキルがあがったのは、悲しいわ」


 アンナマリーナさん。

 それは、現にうちの子達が、特に悪戯お子様ズが遊び感覚で殺気をぶつけていたりしているのかも。

 済みません。

 後で、話し合いしてみる案件だね。

 しかし、アンナマリーナさんの説明を聞いたら、ますます恐縮されたんですが。


「申し訳ありません。無知故の発言、お許しください」

「はい、分かりました。それでは、初対面の言動は水に流します」

「ありがとうございます」


 主にロズレーヌ侯爵令嬢が喋っているのだけど。

 取り巻きさん達も、仲良く頭を下げるのには驚いた。

 私達のやり取りを耳を澄まして聞いている出歯亀さん達貴族連中は、私の不興を買ったと見ているのか、嫌らしい笑みを浮かべている。

 よし、お子様ズ。

 あの方々に、悪戯オッケーだ。

 私は見て見ぬ振りをしよう。


「ロズレーヌ侯爵令嬢。少し時間あるかな。お喋りしませんか?」


 ここは仲良い所を見せつけて、ロズレーヌ侯爵令嬢達の汚名とならないようにしよう。

 だって、令嬢達には陰湿な虐めをするようには見えないんだよね。

 もしかしてでもなく、嫌がらせ的な悪評を広めている第三者がいそうだ。

 折よく、きついコルセットを強いられている令嬢達向けに、男子禁制の休憩スペースがある。

 アンナマリーナさんは中身は男性だが、外見は女性。

 いてもおかしくはない。


「お喋りですか?」

「そっ、貴族の仲間入りを果たした新米貴族に、王侯貴族との付き合い方とか教えて貰いたいなと。ほら、教師役のアンナさんは、社交界に疎いしね」

「確かに、そうですわね。ウィンチェスタ伯爵令嬢は、お家と領地のために武芸専念でしたから。わたくし達に分かる事なら、お教え致します」

「ありがとう。助かります」


 美味しい食事は諦めよう。

 まあ、大してお腹空いてないしね。

 やはり、ロズレーヌ侯爵令嬢は気配りが出来る女性である。

 アンナマリーナさんを持ち出しても、彼女の役割を充分に知り得ていた。

 社交界の華だけあって、情報収集には余念がない。

 それから、休憩スペースに移動した後、取り巻きの令嬢が自己紹介と相成った。

 栗色の髪で琥珀の瞳のチェイス伯爵令嬢。

 漆黒の髪で碧玉の瞳のエアハルト伯爵令嬢。

 金色の髪で翡翠の瞳のクロス子爵令嬢。

 銀色の髪で紫水晶の瞳のラックベリ子爵令嬢。

 各々の守護者の名前まで、教えてくれた。

 皆さん、礼儀正しくて意地悪する様にはみえないんだけどなぁ。

 給仕から、それぞれ飲み物を手にして、簡易テーブルに置く。

 簡単なお摘みなどのスイーツを、飲食スペースにフィディルが取りに行った。

 皆さん、間近に見る男性体の守護者に興味津々なれど、話題には出さない素振りでいる。

 多分、男性体の守護者関連について、聖母教会と対立していると思われていて、耳目が集まる場で晒さない配慮をしてくれているんだと思う。

 いい子達なんだけどなぁ。

 何故に、悪評が広まっているかな。

 先程の守護者を不正に入手した元取り巻きには、苛烈に断罪していたから、それが原因だろうか。

 となると、ロズレーヌ侯爵令嬢的には致命傷な悪評を正さないのは、何か思惑があってのことかもね。


「改めて謝罪致します。バーシー宮廷伯におかれては、寛大な対応に感謝致します」

「うん。でも、ロズレーヌ侯爵令嬢達は、何も悪くはないでしょ。ただ、単純に見兼ねて苦言を言っただけだしね。もう、それは止めましょう」

「はい、分かりました。では、わたくしから質問をしてもよろしいでしょうか」

「どうぞ」

「ウィンチェスタ伯爵令嬢が、妖精の悪戯で性別が逆に産まれてしまったのは、本当にでしょうか。何分にも、おとぎ話でしか知らない事柄故に、あまり理解力が乏しくて申し訳ないのですが」

「その事柄については、本当だ。兄二人がいるから、兄達と同様に育てられたからとも言われるが。俺は成長するにつれて、自身の身体と精神が違うと思い始め、母上や父上を大分困らせてしまった。母上が伯父上に相談して、当時の女王陛下から嘆願された賢者殿に診断されて、取り違えられたと判明した」


 アンナマリーナさんは、ロズレーヌ侯爵令嬢の疑問に男性口調で説明をする。

 おとぎ話では、最終的には望む性別に変更できるのだけども。

 アンナマリーナさんには、呪いかとも思える神々の加護があり、神聖国の枢機卿でも性別を変更する手段がないと通達された。

 そうして、判明してからは、父親が反対するなか母親の鶴の一声で淑女教育は最低限の教育だけされ、武芸の道を歩ましてくれた。

 女性の身で武芸に専念するのは、武門の家系であったこともあり、ゆくゆくは女王陛下を守護する守護騎士になるつもりだった。

 けれども、女性であるからには結婚の話は避けられない。

 しかし、アルバレア家の血筋に聖剣の所持資格を持つ人材がいなくなり、兄か自分の子供が資格属性を持つかもしれないから、子供を期待されて大変苦しい時期があった。

 幸いにも、母親の異腹の兄の息子とその子供達が資格属性を持っているのが判明した。

 今まで、彼の一家を放置していた責任もあり、自分が白い結婚をして、伯父の息子を支え、子供達を養育していく選択肢ができた。

 外見が女性でも、男性と性的行為は拒絶反応が出る為、マーベル一家の存在は奇跡に値する。

 白い結婚、万歳である。

 アンナマリーナさんが、明け透けと打ち明けた。

 いやぁ、ロズレーヌ侯爵令嬢達も熱心に相槌をうっているわ。

 私は、フィディルが配膳してくれたスイーツに舌鼓をうっている。


「まあ、ですが。ナイル殿の亡くなられた奥様が、まさかエンブリオ公爵家の血筋とは思いもよらず。後日、老公爵を交えて会談する予定になりますね」


 最後は女性口調に戻して締め括る。

 喉が渇いたのか、アルコール度が低い飲み物を口にした。


「そうですわね。となると、お兄様がエンブリオ公爵家を、妹様がアルバレア侯爵家を継ぐ事になるのでしょうか。それとも、ウィンチェスタ伯爵令嬢の子供をとか、望まれそうですわね」

「話の腰を折って悪いけど。エンブリオ公爵家は、初代女王の遺産管理する家系なんだよね。近い身内を養子に迎えるのは、駄目なの?」


 気になった点があったので、会話に交じってみた。

 社交界どころか、女王国内の事情も知らないんだ。

 誰か教えてくださいな。


「細工師。エンブリオ公爵の初代はダレン=マグナスであって、彼が行方不明になった際の万が一の遺言状により、彼の養子となった弟子が継いだ訳」

「あら、そうなんだ」

「そう。元々エンブリオ公爵位自体が王配に与えられる爵位に成り変わったのだけど。当代公爵は先々代の王配であって、女王陛下の王配がいない時期はその子供が継ぐのが貴族院の法律。そして、先代の女王陛下は王配を迎える前に退位したから、先々代の王配が未だに現役なの」

「先々代の女王陛下と公爵様の間にはお二人のお子様がおられましたが、お一人は男性で他国の身分が低い女性と駆け落ちなさり、公爵家から籍を抜かれました。残されたお子様は女性で、とある貴族と結婚なさりお子をお産みなされて病死されました。しかし、その伴侶の方を先代女王陛下が見初められ、結婚を強要して断られ大惨事となり、伴侶とお子様が亡くなられました」


 うわっ。

 嫉妬による怨恨かいな。

 何故に、人格に問題がある女王が座に就いたんだろ?


「細工師。逆ハーレムの意味は、分かるよね。先代女王陛下は、それがしたかったんだという噂があるのよ」


 さらに、うわっ。

 逆ハーって、乙女ゲームかよ。

 なら、先代女王は私達同様に転生者かもっていう訳ね。


「逆ハーレムとやらが男性を侍らかす程度でしたら、まだ許容範囲内でしたけれども。妻子ある男性にまで強要するのは、人格的に劣る行為でしたし、娘婿と孫を亡くした公爵様による事後調査で、先代女王陛下が亡くなる原因を作ったとして、老公爵様は女王陛下と距離を開けてしまわれました。そうして、駆け落ちされた息子夫妻も亡くなられていたのが判明して、手元に保護されましたのがアメリア様です。ただ、アメリア様は平民としてお育ちになり、貴族社会に馴染めてはおられてなく、又父君と等しく駆け落ちなさいまして、行方不明に」


 ああ、そうか。

 平民として育ったから、貴族社会に馴染めず、責任を放棄して駆け落ちしちゃったのか。

 軽率だとは思うけれども、馴染めずに精神が磨耗するぐらいなら、捨ててしまえと自棄になったんだろうか。

 まぁ、でも。

 継承する血筋を残したのは、本当に幸いだ。

 ただし、義務を放棄したつけがロイド君とエメリーちゃんに回されたのは、本望ではないか。

 その辺りも、女王ちゃんや宰相閣下と要相談だね。

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