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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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078 着飾りました

 あれこれと話が進み、女王国ティファーラと獣人国ロンバルディアとの和平交渉がまとまり、休戦条約が結ばれた。

 一気に同盟まで進まなかった訳は、ロンバルディアの獣人の皆さん方、特に老齢の方々がいきなりな展開についていけず、反対意見があったからだ。

 それだけ、女王国に対する因縁の根が深い証拠で、獣王さんへの不信感が芽生えてしまった。

 しかし、女王国を侵略する旗頭だった狼の部族のハーシュさんが、虜囚になった自軍の兵がただ一人も生命を損なうことなく、身代金も支払わずに皆が帰還できた事情を事細かに演説した。

 また、女王国の内情を探るべき間諜の役割を持って移住した獣人種の皆さんからも、差別扱いされず、給金も人種と同等の額を支払われ、職にあぶれた者にも手厚く保護されては、職業斡旋所を仲介して甲斐甲斐しく世話を焼いてくれると擁護した。

 そうした経緯を経て、徐々に二国の交流が始まっていった。

 まあ、女王国にも獣人種を差別扱いする貴族はいて、和睦した女王を批難する阿呆がいた。

 その一派は、平和ボケした戦の経験を知らない特権階級にありがちな選民思想の塊の様な輩で、たいした役職に就いている訳でもなく、建国に先祖が尽力した為に得た爵位にしがみついている駄目貴族である。

 伝統やら歴史やらとかちらつかせて、新興貴族の栄華を妬み、ありもしない権力を乱用して寄生して資産をぶんどる犯罪者でもある。

 ユーリ先輩が残した貴族法により、建国以来の貴族は特権に守られて裁きを下せないのも笠にきて、良識ある貴族からは唾棄されていた。

 それで、宰相閣下からちょっと相談されて、こいつらを弾劾するお手伝いをすることになった。

 所謂、先頃のロンバルディアとの和平交渉へと至った諍いの、論功行賞を使った場での大捕物だ。

 本来の私なら、目立つ行為に参加したくはないが、ある事情を打ち明けられて話に乗った。

 んでもって、その論功行賞の当日。

 アルバレア家のオレリアさん一家と、侯爵家の後継者として御披露目するナイルさん一家と私は、王城へとやって来た。


「父ちゃんが無事に帰ってきてくれて、嬉しいんだけど。何で、俺やエメリーも招待されたんだろ」

「ううっ。お兄ちゃん、お父ちゃん。エメ、しっぱいしたら、どうしよう」

「にゃんで、うちらまでにゃんだろう」

「にゃぞにゃ」


 急遽仕立てたよそ行きの礼服を着たロイド君とエメリーちゃんに、猫妖精(ケットシー)のララとリリ。

 君達も、被害者という関係者だからね。

 強制参加は仕方がないんだよ。


「お祖母ちゃんのお父さん、ロイドやエメリーのひいお祖父ちゃんの爵位を女王様が還してくれるんだ。ひいお祖父ちゃんが、誰かに騙されて貴族でなくなった話はしただろ? その騙されていた中には女王様も入っていて、謝罪がしたいんだって」

「ええと、子爵だっけ。でも、父ちゃんはアルバレアの侯爵様にならないといけないんだろ? 二つも爵位貰っていいのか?」


 アンナマリーナさんの教育の賜物で、着々と貴族常識を学んでいるロイド君である。

 上位の爵位保持者が、下位の複数の爵位を保持しているのは昔のイギリスにもあったしね。

 此方の世界でも通用しているらしい。

 アルバレア家も分家のオレリアさんに爵位を譲っているし、ファレル家から剥奪した爵位も宙に浮いたままでいる。

 オレリアさん的には、エメリーちゃんが適齢期になったら持参金として持たせようと画策しているみたいである。

 ロイド君には、ナイルさんが侯爵家を継いだ後に、ひいお祖父さんの子爵位を譲渡する計画になっている。

 以降、子爵位はアルバレア家に組み込まれて、子息に受け継がせていくそうだ。


「うん、だから。お父さんは貴族の仕来たりなんかは、ロイドとエメリーと一緒で勉強中だからね。まずは、子爵位に就いてから、ある程度領地経営を学んで、侯爵家を継ぐんだよ。そうしたら、子爵位はロイドが継ぐ事になるんだ」

「兄ちゃんも、貴族になるの? エメだけ、なかまはずれ?」

「いやいや、エメリーだって貴族になるんだよ。子爵令嬢とか侯爵令嬢とか呼ばれるようになるんだ」

「ふーん。だから、アンナお姉ちゃんが、マナーをまなびなさいって、いうんだね」

「そうだよ。エメリーは賢いね」


 ナイルさんが、エメリーちゃんの頭を気をつけて撫でる。

 エメリーちゃんの髪には、資産没収から逃れてララとリリが隠して守ってきた、お祖母さんの形見の装飾品が飾られていた。

 ナイルさんの礼服も子爵家の形見の品で、流行遅れだった礼服をうちのブラウニーのアンジーがリフォームした。

 私?

 私には、ゲーム内のアイテムを人外さんが復元して持たせてくれている。

 その中には数々の衣装も含まれていて、うちの守護者さん達が張りきって選びましたとさ。

 正直、白夜の星のあの衣装でないのなら、どれでも良かった。

 裁縫師エララの渾身の作品であるエンパイアドレスなんだが、肩口と胸元は緻密なレースで覆われ、淡い空色から裾にいくほど濃い濃紺へとグラデーションになっている。

 布地の素材は蒼い鉱石を主食とするメタルスパイダーの亜種サファイスパイダーからドロップする、レアアイテムのサファイアシルクが使われていて、僅かに宝石の煌めきが輝く逸品だ。

 ドレスの次に白熱したのが装飾品で、ドレス自体が輝いているので光りモノは止めて、ウズラの卵程の大きさの虹色真珠をメインにした首飾りをしている。

 その他にも、腕にはさりげなく小粒のサファイアを連ねた銀鎖の腕輪があり、髪飾りも白真珠とサファイアで纏めた。

 割りと着飾りましたよ。

 だって、オレリアさんにも着飾るように言われたからね。

 論功行賞にドレスとは如何にとか思ったけど、祝勝会も兼ねるので貴族の皆さんも競って着飾るようだ。

 ただし、私のドレス姿を見たオレリアさんとアンナマリーナさんは、やり過ぎたかもとか感想をくれた。

 まず、ドレスの素材が此方では入手不可能であるらしく、珍しいモノには目がない貴婦人にはくいついてくる話題を提供したようなものだとか。

 おまけに、海に面していない女王国にて真珠は、高価な宝石との認識らしい。

 ましてや、大粒の虹色真珠なら、喉から手が出る装飾品で、絶対に高位貴族が暗に献上しろとか言い出す輩も出てくるはず。

 騒ぎになるのは必定だそう。

 あはは。

 来るなら、どんと来い。

 権力行使してまで脅してきたら、やり返すのみ。

 親指立てたら、アンナマリーナさんに呆れた溜め息吐かれた。

 マーベル一家より目立ってなんぼ。

 敵対者の目を、独占してあげてよ。

 宰相閣下からも大捕物の助力の代償にと、ちょっとした騒ぎの無礼講は許可済みである。

 出る杭を討ちにくる輩には、徹底して対抗してあげようではないか。

 楽しみだなぁ。


「失礼致します。バーシー嬢、マーベル御一家殿。謁見の間まで、ご案内致します」

「あら、ユークレス卿。騎士団総長御自らがですか?」

「ウィンチェスタ嬢も、此方におられましたか。はい、宰相閣下からのご指示であります。お二方の不興を買う恐れのある馬鹿者は、既に排除致しました」


 おや。

 確か、国防大臣の真面の方の息子さんだったかな。

 部下さん連れて、入室してきた。

 平民差別した息子さんは鍛え直し中とかで、一兵卒からやり直しだとか聞いたな。

 どうでもいい情報なんで、聞き流していたけど。

 私を悪し様にした連中は、うちの子達から要注意人物扱いなので、レオンを中心に動向は監視されている。

 まあ、関わりがない場所でうちの子達が嫌がらせしているのは、大目にみておこう。

 生命の危険に晒す悪戯は注意してあるので、些細な悪戯で済んでいるだろう。

 そして、さらっと何気ない発言にて、マーベル一家を排除したい爵位を剥奪した原因の黒幕が動いているのが知れた。


「バーシー嬢におかれては、初対面時での無礼をお詫び致します。また、愚兄の騎士道精神を見誤る発言と行いにつきましても、改めて父が謝罪したいと申しておりました。宰相閣下やアルバレア家領主代行殿を交えて、お話が出きればと願います」


 真面目だ。

 この人真面目過ぎて、職務に忠実だから、不審者だった私を警戒しただけなんだけどね。

 それが分かっていたから、お詫びは受け入れますよ。

 国防大臣さんが宰相閣下とか交えて話し合いとやら、謝罪を隠れ蓑にしたこれから起こるであろう騒ぎの跡始末だろうね。

 それと、聖母教会やら冒険者ギルド本部の輩とかの問題をどうするかだね。


「分かりました。本日は、アルバレア家の王都屋敷に滞在する予定でしたけど、王城に一泊してもいいですよ」

「ありがとうございます。では、ユークレス家が責任を持ち、手配させていただきます」


 私の返事を受け取り一安心したであろう総長さんが、信頼する部下さんに指示を出す。

 頷いた部下さんが一礼して退出していった。


「初めてお目見え致します。王都騎士団総長を拝命致しましたユークレス家のフレッドと申します。マーベル家の皆様のお家再興、貴族家に連なる身としてお慶び申し上げます」

「ありがとうございます。祖父や父母の名誉が回復できたこと、突然ながらも嬉しく思います。しかし、我が身と子供達は平民として生きて参りました。私自身は従騎士見習いの経験があり、貴族の仕来たりは一応は学びましたが、子供達は農民の子として高度な教育は施されてはいません。そんな子供達が、今更貴族家に受け入れて貰えるかが心配な限りです」


 自分だけが侮られるのは許容範囲だろうが、可愛い子供達が農民育ちと罵られるのは避けたいのが、親の本音だね。

 しかも、下手に継承放棄出来ない事情があって、受け入れるしかないのなら尚更心配だ。


「自分は未婚の身であり、親ではありませんので、単なる戯言だと思われても構いません。アルバレア家のご事情を鑑みると、マーベル御一家が継承を憂慮なさるのも理解出来ます。アルバレア家は南の守護家、英雄の家系として伝統を重んじる方々には庶子の子供が当主に選ばれるのは、納得されないでしょう。ですが、ナイル殿はアルバレア家の家宝を所持して力を示された。中央の貴族にて、ナイル殿のご活躍にアルバレア家の復活を支持する方々がおられるのを、此度の論功行賞でお知りになられるかと。また、お子様方におかれましても、女王陛下が先手を打たれると思われます。どうか、困難が振りかかりましたら、ユークレス家なりにもご相談ください。足を悪くして登城できない祖父は、マーベリック子爵の再興をことのほか慶び、お子様方の後ろ楯を買ってでてきますから」


 悪戯小僧の様に、総長さんは場を馴染ませるかの如く、気取ってウィンクされた。

 どうやら、マーベル一家の味方は少なくない数でいそうだね。

 ご年配の方々は、窮状を救えなかった苛立ちを、マーベル一家を擁護する事で償おうとしているのかも。

 ロイド君とエメリーちゃんには、敵対すると怖いおじさん達が援護してくれるみたいだよ。

 良かったね。

 胸を張って、マーベリック子爵家の再興を見せつけてやればいい。

 私も、陰ながら支援するぞ。

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