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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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077 打開策が出てきました

 ふぅむ。

 人外さんも、どうやら枢機卿の立場で奮闘しているらしいね。

 私の農園の近場であるベルゼの森に、件の魔導師の拠点があり、災害級の迷宮になっているんだよね。

 裏街道を歩く方々には、聖地扱いになっているんだっけ。

 そういえば、森林狼のアルビノ君が近々、他の管理者も挨拶に来るとか言っていたな。

 アルバレア家に関わる案件が続いていて、すっかり忘れていたけど。

 すっかり、農園の番犬の役割を全うしている灰色君が、様子見している種がいるとは教えてくれていたな。

 騒動が終わったら、其方に探りを入れてみるべきかも。


「因縁ある女王国の言葉にご納得いただけないようでしたら、神聖国のエルネスト枢機卿を頼ってください。その方が、私達中央諸国の調停者であり相談役となられております」

「分かった。彼の御人なら、我々を差別なく相談に応じていただける。また、それとなく支援もいただいている。国に戻れば、すぐにでも問い合わせてみる」

「はい、そうしていただければ幸いです」

「でだ。本当に、我が国からの賠償はいらないと申されるが。国の上層部は納得されているのだろうか」

「その点につきましては、我がアルバレア家が一任されております」


 進行役のオレリアさんが、口を挟んだ。

 何でも、王都に常駐する貴族の中でも領地を持たない法衣貴族と、領地を持ちながら役職に就く貴族と違い、国境を守護する辺境伯とアルバレア侯爵家には独自の裁量がある程度許可されてはいる。

 まあ、被害にあっていない他の貴族にとったら、対岸の火事みたいなもので、多少の支援だけして後は当事者にお任せして、干渉しないのはざらにあるそうだ。

 だから、利権が発生して賠償金なり資産をどっさり獲得しても、一定の税を支払えば被害にあった領地の好きに活用していい法律がある。

 大概が、被害にあった損害賠償に回されたり、次回の諍いに対抗する策の資金に回されるのが常。

 そこへ、利権に目が眩んで横入りするのは、貴族の恥晒し以外の何者でもなく、非難されるだけである。

 その法律を逆手に取り、アルバレア家は賠償金よりも和解案、同盟の口約束だけでも取れたら御の字だそう。

 まあ、国境争いに終止符となり、国境の砦に送る人員を減らし、領地の田畑を荒らす魔獣討伐に力を入れて領民の負担が軽くなるのが狙いらしい。

 今までも、定期的に魔獣の間引きはしていたそうだけど。

 アルバレア家の家宝の聖剣を扱える人材がいなくて、脅威者となり得る人がいないのを魔獣側も覚えてしまっていて、襲撃する回数が増えてきているのだとか。

 狭くはない領地を限られた騎士が巡回してはいるも、間に合わずに領民が冒険者に依頼しては少なくない依頼料を負担しなくてはならない事態が発生している。

 また、他の領地の領軍よりもフォレスト領の騎士は精鋭揃いな為か、他の領地への援軍も依頼されて見過ごす訳にもいかない事情もある。

 オレリアさん曰く、ロンバルディアの脅威がなくなれば、それだけ騎士や領民の負担が少なくなるので、賠償金よりも安全を保証してもらいたいのだそう。

 いや、我が農園にナイルさんをとどめている私も悪いのか。

 後で埋め合わせしとこうか。


「建国以来、武門の誉れである当家に、面と向かって場違いな喧嘩を売る阿呆な貴族はいません。ですから、当家が仲介となり貴国と同盟を結び、枢機卿猊下が危惧する事態の対策を練るには相応しき時期であるかと。それに、フォレスト領の領民には、貴国からの移住者もおります。その方々を、我が領民は虐げることなく、良き隣人となる見本もあります。宜しければ、我が領民が農業支援として、貴国に移住しても構わないでしょうか」

「それは、願ってもない話ではある。我が国には人種を嫌い、人種が薦める農業方法を邪道と受け止め、折角開墾した田畑を更なる荒れ地にとする始末。他国の輸入に食糧を頼るしかない身。だが、和解したからといって、散々侵略してきた領地に、我が物顔で足を踏み入れていいものか悩む」


 ああ、そうだよね。

 何代にも渡って、女王国は敵だと認識してきているのに、裏で支援してもらっていた事実を打ち明けてはいないでいたしね。

 獣王の命令で、今日からは味方です。

 手を取り合って仲良くしていきましょう、とはいかないのは分かりきっている。


「できるなら、自分が率先して移住しても構わないが」

「いや、お前が行くとだなぁ。俺が敗戦の人身御供に差し出したみたいに反発されるだろう。爺様達や事情通な側近は了承してくれるだろうが、お前の部族や従軍した部族には話が通じん」

「しかし、人身御供には甘んじて受け入れるが。今後の対策の事を考えると、部族の意識改革に皹を入れかねないのか。難しいな」


 司令官だった狼の部族のハーシュさんは、侵略してしまった責任を償おうと率先して行動に移そうとしているも、部族の長に等しいハーシュさんが他国へ移住=人質扱いにと突拍子のない尾鰭がつきそうだね。

 獣王さんにしても、厄介払いしたと悪評を立てられたりしてね。


「でしたら、こうするのはどうでしょうか」

「ジルコニア?」

「幸いにも、女王国には獣人種の恩人たる白夜の星がおられます。何より、彼の方は農園を経営されている。そして、その農園にはアルバレア家の次代当主となられる御一家も、農業に携わっておられる。ハーシュ殿にお子様がおられるのなら、交流を果たすには持ってこいの場所になるのでは?」

「まあ、そうですね。ミーア様のお膝元なら大概の粗相は、調教いえ意識改革に適しておりますね」


 ジルコニアの発言に、エルシフォーネまで乗っかる。

 おい、調教とか物騒な単語がでているぞ。


「私怨に懲り固まった大人より、柔軟な思考に対応できる子供同士なら、些細な諍いから友情に発展するには充分かと」

「そうですわ。下手に種族的な閉鎖を束縛する先人の教えに染まり切っていないお子様なら、過酷な環境に身を置いて他者を思いやれるナイル卿の純粋万能なお子様は、良い友情をきずけますわね」

「ジルコニアやエルシフォーネに賛同致しますわ。過日、養護院の子供がミーア様の農園で働きたいと申し入れがありましたし。ライザスの街には獣人種も多々おり、見慣れておりますし、差別意識は生まれないでしょう。わたくしも、賛同致します」


 シェライラまで、乗っかってきた。

 働きたいと言ってきた少年達は冒険者ギルドを介して、領主のシェライラにも相談を持ちかけてきていたそうだ。

 ただし、回復した母親代わりの女性は裏表がない立派な方であるが、父親代わりの男性にはギャンブル癖があり、浪費家の一面があって、現状推薦状は出せないみたいである。

 無茶をやらかした子供達を迎えにきた親思いな姿をみせていたが、どうも借金の形に奉公とは名ばかりな人身売買紛いな人材派遣を隠れ蓑にした奴隷商に引き渡す予定であったらしい。

 一攫千金を狙ったギャンブルが、バカ高い薬を求めてなら情状酌量もあったのだけど。

 自己満足の趣味にひた走った結果なので、弁護する余地なく離縁した。

 んで、膨れ上がった借金は返さないと、連座制で借金奴隷にされてしまうのが一般的な法律が定められていた。

 シェライラが手を回して、連座制が発生する寸前で離縁手続きは済んだ。

 今は職がない状態で、領主館で保護されている状態でいる。

 できるなら、子供達を助けてくれた農園で仕事がいただけたら、有り難いとか。

 私的には、ナイルさん一家がいつまでも恩義を感じて農園にて農業に従事するのも何だし、雇用してもいいかなぁとは思う。

 まさか、それに獣人種も加わるのは寝耳に水だったけど。


「確か、白夜殿の農園に近い冒険者ギルドには、姉の息子が勤務していたな。ふむ、白夜殿の農園なら恩返しの意味もあり、異論はなさそうだな」

「そうだな。我が子の代には、人種との交流による人種差別撤廃が意識に刷り込まれるのは、良い策だな」

「ネリエの悲願であった、他種族との交流に役立てるなら、売国奴の汚名は望んで着よう」

「そうだ。白夜殿、ネリエの精霊殿は逝去されたと聞く。我等の祈りにより、復活はできないのであろうか」


 ハーシュさんの期待に満ちた眼差しを受けるが、首を横に振るしかなかった。

 ネリエは存在力を消費してまで、ロンバルディアに尽くした。

 最期を看取った私は事実を言うしかない。

 腕の中のエスカに聞かせるのは忍びないが、ロンバルディア側にも期待を抱かせるには遅すぎであった。


「残念だけど、無理。ネリエは、人種や獣人種と同じく死の概念に当たる、存在自体を消失した。純度の高い精霊石を何億と消費しても呼び戻せないよ」

「僭越ながら、話に横入りさせていただきます。自分は、精霊王に次ぐ位階の大精霊です。精霊は存在を消失する際に、自我を失い、力の塊として世界に溶け込みます。幾ら、精霊王といえど世界の(ことわり)に反してまで、一柱の精霊を救う権利は有しません。それは残酷に思われますが、精霊王も理に束縛される側。ただ、観測するしかできない憤りやもどかしさを考慮にしていただきたい」


 常にない、フィディルの擁護に言葉が出てこない。

 精霊は万能ではない。

 不変の存在でもない。

 世界の理は精霊王をも従わざるを得ないのだと、改めて認識させられた。

 そうであるから、エスカの悲しみは本物であり。

 後悔は消えない痛みとなる。


「ただ、一言申し上げるとしたら。ロンバルディアの皆様方にも、驕りがあったと言えます」

「それは、何だ。この際だ、忌憚なく意見してくれていい」

「では、まず貴方方はネリエの樹木に肥料なり、定期的な水やりを施しておられましたか?

 これは、他の作物と同じく、樹木が果実を実らせるには栄養は不可欠。樹木も作物も、貴方方と等しく栄養補給が無ければ、餓死して枯れるだけです」

「誠に、耳の痛い事実だな。我々は、ネリエの樹木は神に等しい信仰の対象であり、肥料や水やりをしなくても枯れない神聖な樹木と位置付けてきた。その代償が、ネリエの精霊の死。恐らく、事実を打ち明けても、ネリエを悼む声は少ないだろうな」

「年々、ネリエの樹木は数を少なくしている。そこで、質問だが。先の諍いで、急成長したネリエの樹木を国に移植しても構わないだろうか?」

「それは、駄目。あのネリエはロンバルディアの皆さんの度肝を抜く為にだけ準備した、紛い物。数日経ったら、自然と枯れるし、果実が実ることはないから」


 エスカにネリエの樹木を再度産み出せるか問うたら、悲しい表情をされた。

 紛い物は産み出せるが、同じ精霊付きの樹木の苗を産み出すには、年単位の細やかな調整が必要となる。

 マスターの頼みでも、出来ないと真実を教えてくれた。

 で、対策として似ていて、急成長したらすぐに枯れてしまう紛い物でも大量に産み出してはくれたんだ。

 可哀想だけど、諦めて貰うしかない。

 エスカの頑張りに対して、結果がこれだけど、責めるにはお門違いだ。

 ふむ。

 要は、ネリエの樹木に変わる信仰の依り代があればいいだろう。

 ちょっと、私が頑張ってみるかな。

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