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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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076 事情を打ち明けました

 エスカの悲鳴染みた泣き声に、心が痛む。

 精霊を一柱亡くして、安易に声をかける事ができない苛立ちから、さっさと獣王を拉致してフォレスト領に帰還する。

 泣きじゃくるエスカを抱く私に気付いたジルコニアとエルシフォーネに後を任して、一旦普段着に着替える。

 間借りしたアルバレア家の客間で、エスカの気が済むまで泣くのに付き合った。

 一時間位が過ぎて、アンナマリーナさんが呼びに来た。

 何でも、獣王さんは単身残留していた司令官と話し合い、女王ちゃんとの会談に承諾したとかで、白夜の星にも同席して貰いたいらしい。

 エスカの状態を鑑みて、断りをいれたいのだけど、私の相談役の役職を忘れる訳にもいかないので、渋々応じることにした。

 アルバレア家の要人が集まる会議室には、既に女王ちゃんとシェライラと進行役の領主代行のオレリアさんが、獣王さんと司令官の二人が対峙していた。

 細長い長方形の机のお誕生日席に、何故か椅子が準備してあった。

 オブザーバーだからかな。

 意気消沈するエスカを膝に座らせ、両隣にはユリスとセレナが陣取る。

 レオンと大人組二人は、私達の背後に佇む。

 巫女装束を脱いだ私の姿に、獣王さん側は誰かと怪訝そうな表情を見せた。

 そりゃ、そうだろう。

 装束に付随する神聖さがない、どっからみても一般人な少女が女王よりも後に入室するわ、上座に座るわで疑問だらけだろう。


「失礼だが。其方の方は?」

「貴方方が同席を願われました白夜の星と呼ばれる方です」

「はあ?」

「ご紹介いただきました、白夜の星ことミーア=バーシーです。こっちが、素の姿になるんで、今後とも宜しくです」


 オレリアさんの説明に、一応自己紹介をしてみる。

 幼児と思わしきエスカを抱いていて、威厳もありはしないけどさ。

 まあ、少しだけ威圧のスキルを発動してみた。


「「!」」


 殺気ではないのだが、獣王さん側は露骨に反応して立ち上がり、臨戦態勢になった。

 ただし、すぐに思い止まり、力なく席に座り直した。

 エスカを除く大精霊達が、反撃しようモノなら徹底的に潰すと冷めた眼力で釘を刺したのもあり、実力主義の獣人種的に敵わないと判断がついたのだろう。

 逆立った毛並みが元に戻り、獣耳と尻尾が垂れ下がっていた。

 強者には逆らえない種族性もあるのだろう。

 見事に、牙を抜かれた子犬みたいになってしまった。

 これで、話し合いができるのか甚だ謎だ。


「済まない。お見苦しい姿を見せた。詫びる」

「いえ。こちらも、私達を守護してくださる大精霊の過保護な姿に、非礼をお詫びします」


 喧嘩両成敗。

 女王ちゃんと獣王さんが、互いに謝罪しあう。

 原因は私な筈だが、謝った方が良さげかな。

 しかし、女王ちゃんが視線で止めるように訴えているので、よしておいた。


「では、人員も集まりましたので非公式ではありますが、首脳会談を行わせていただきます」

「ああ」

「はい、構いません」


 会議室には、獣王さん側を下手に刺激しないように人数を極力減らしてあった。

 勿論、侵略されたフォレスト領側には、次期侯爵となるナイルさんも同席してはいる。

 警備の騎士さん達は、数名扉の警護にいるだけだけど、獣王さん側が暴れたりしたとしても、負傷者をだすことなく制圧できる大精霊がいるので、不安はいらないしね。


「先ず始めに、獣人種の国ロンバルディアの国王である虎の部族たるガーランドだ。此度の貴国への侵略を制止できず、申し訳なく思う。また、貴国へ侵略した各部族の獣人種を一人も欠ける事なく、帰還させていただいた懐の深さに、有り難くも謝罪させていただく」

「此度の侵略は獣王には非はなく。狼の部族たる我が身ハーシュに責はある。賠償諸々については、我が身が背負わせていただきたい」

「女王国ティファーラ十五代女王、シャロンと申します」

「次代女王筆頭候補者、シェライラと申します」

「フォレスト領主アルバレア侯爵家後継者、ナイルと申します」

「先代フォレスト領主が妹にて、ナイル殿がアルバレア家当主となる期間、当主代行となりますオレリアです」


 獣人種はファミリーネームの代わりに、何々部族と名乗るのが仕来りだそうで、女王ちゃん達もそれに習って名前だけの紹介となった。

 私だけ、フルネームで自己紹介したのが地味に恥ずかしい。

 いまだに落ち込むエスカを撫でて、気持ちを落ち着かせよう。


「此度の侵略についてや、これ迄の侵略につきましても、ロンバルディアの皆様方には正統な理由あっての事と認識しております」

「それは?」

「本来なら、ロンバルディアとティファーラは兄妹国として手を取り合い、奴隷と虐げられている獣人種や犯罪者扱いされた人種が、何者にも脅かされない搾取されない国を興し、列強国と渡り合える国となるはずでした。ですが、初代女王陛下は、約束を違えました。立ち回りを誤ったとも口伝に残されています。初代女王陛下は、弱小国と侮られない為にロンバルディアよりも優位に立つのを望みました。そして、禁断の手法を使い、獣人種に流行り病を罹患させ、特効薬を出し惜しみして、数多の犠牲者を出した。到底、許される行為ではありません。ですから、初代女王陛下は大精霊や精霊王の怒りに触れる事に相成りました」


 女王ちゃん曰く、女王国には十三柱の大精霊が勢揃いしていた。

 国を興した当初は、初代女王との仲は良くもなく悪くもなく、淡々と協力はしてくれてはいた。

 しかし、ロンバルディアへの義理を欠いた行動に、七柱(うちの子達とグレイス)が離反して対立した。

 残りの三柱(アリスとジュリエットとエルシフォーネ)は静観の構えで中立の立場を貫き、非協力になった。

 初代女王と契約していた二柱(ヴァイオレットとヴィオレッタ)は早々と守護者システムに組み込まれて、沈黙するしかなかった。

 必然的に最後の一柱のジルコニアだけが、初代女王を擁護して、奔走していた。

 けれども、初代女王は精霊王と何かしら密約を交わしていて、離反した大精霊が女王国に縛られ、他国に干渉する術を封じられてしまっていた。

 はて、なら何故にうちの子達は、ロンバルディアに干渉できたのだろうか。

 如何に、大精霊でも精霊王には従わないとならないのだよね。

 疑問に思っていたら、女王ちゃんは謎の解決案を教えてくれた。


「ロンバルディアの窮状は、神聖国を動かしました。数名の枢機卿の方々による恩情で、ただ一度だけ大精霊がロンバルディアへ干渉する事を許されることとなりました。ですが、既にロンバルディアの皆様方には、女王国への不信と反感が産まれてしまい、女王国とは関わりのない方に救援を託すしかありませんでした」

「その救援者が、我々の恩人となる白夜の星」

「はい。此方に居られるミーア様がどのようにして、皆様方を救援したのかまでは口伝には残されてはおりませんが。ミーア様が何かしらの手段で、皆様方を救援されたとは思います」

「俺も獣王になり初めて知り得たのだが。白夜の星以外にも、女王国から他国を経由して支援をしてくれていたのは何故だ」

「ロンバルディアの皆様方への贖罪をする事が、代々女王位に就く者の使命であるからです。それは、神聖国からの女王国への罰則であり、怠れば女王国は神聖国から宗敵となり破門となります。神聖国は永世中立国です。彼の国を宗主国と崇める国々も多々あり、列強国もまた敵対する意思はありません。そんな神聖国に見放されれば、女王国自体が危うい。そんな危険を犯してまで、女王位にしがみつく愚者はいないでしょう」


 あー。

 多分、野心家な女王候補者は、大精霊が篩にかけて蹴落としてきたんだろうな。

 あのライザスの街にいたシスターが、いい例だよね。

 しかし、腑に落ちないのはジルコニアの態度なんだけど。

 敬愛して盲信するユーリ先輩を貶されて、反論しないのはどうしてか。

 シェライラの背後で、苦笑しているだけなんですが。

 ユーリ先輩との契約が切れて、新しいマスターを得ているからかな。

 それとも、ユーリ先輩を慕っていた姿は、ジルコニアの本心ではなかったとか?

 違和感が半端ないなぁ。

 そういえば、以前にフィディルが言っていたっけ。

 風は、自由。

 束縛を嫌う。

 風は穏やかな微風の一面も、荒れ狂う暴風の一面もある。

 だとしたら、ジルコニアは……。


「私の代で、ミーア様が現世に顕現なされたのは幸いでもあり、凶報でもあります。過去の遺恨は拭いさるのは難しいとは思いますが、どうかこれから襲いくる困難に一緒に立ち向かってはいただけないでしょうか」

「その凶報とは、何か判明しているのだろうか」

「はい。過去、我が国には狂気の魔導師がおりました。その魔導師は知的好奇心を満たす為だけに、異界の住人を本人の了承を得ずに拉致同然に私達の世界に招いていました。ロンバルディアの皆様は、勇者召喚のお伽噺をご存知でしょうか」

「まあ、少しだけな。ティグレア国だったな」


 私を巻き添え召喚した国の名が出てきたぞ。

 かなり、有名みたいだ。

 まあ、二年後にやらかすんだけどさ。

 大陸の盟主に返り咲く手段で、召喚するんだったかな。

 絶対に、元クラスメートとは関わりたくはない。


「その勇者召喚と等しく、異界の住人を召喚していました。そうして、奴隷以下の扱いをしては、虐殺したと言われています。魔導師は、反旗を翻した異界の住人によって討ち取られましたが。その悪意の源となる黒幕が、数年ののちに復活すると神聖国から通達が来ました。神聖国が我が国に通達してきた事情によると、一番被害にあうのは女王国と近隣諸国となるそうです」

「うちも巻き込まれるのは、確定なのか」

「はい、残念ながら。黒幕にとっては、獣人種は遊びやすい種族であるとか」

「ふざけるな! 遊びで厄介事に巻き込まれるのは、ごめんだ」


 獣王さんの憤りには、共感できる。

 人外さんが、あれ指定した神様とやらが虎視眈々と復活を狙い、争乱の種を撒き散らすのを阻止できないのが痛いな。

 封印されていても神様なだけあって、ちまちまと長い年月かけて下準備しているんだろう。

 人外さんも対抗手段を講じてはいるだろうが、単純にあれな神様を処分できない事情もありそうだ。

 更正を期待して封印しても、本質は変わりようがなかった。

 ただし、次に世界を遊び場にして多大なる犠牲者をだしたら、二度目の寛容はなし。

 でないと、私に物騒な魔法を与えはしないよなぁ。

 魔法リストにある発動不可能な、危ない魔法。

 時がこないと使用可能にはならないと分かっていても、リストから消したくなる。

 対あれな神様専用であって欲しいモノである。

 だからといって、出し惜しみして抵抗しない訳にもいかないけど。

 でもさぁ。

 かなりな確率で、ダレンとも邂逅するかもだよなぁ。

 闇落ちしたダレンに対して、私はどうできるか。

 グレイスを泣かせる結末だけは、回避したいな。

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